この記事の要点
- 固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村(東京23区は都税事務所)で請求する
- 所有者が亡くなっている場合、相続人も請求できる扱いの自治体がある。亡くなったことと相続人であることを示す戸籍などを用意する
- 手数料は自治体ごとに条例で決められていて、金額は一律ではない
- 相続登記で使うのは「申請する日の年度」の価格。4月1日をまたぐと、必要な年度が切り替わる
- 毎年届く課税明細書で足りるかどうかは、管轄の法務局に確認してから動くと二度手間を防げる
相続登記の準備で「固定資産評価証明書を用意してください」と言われたら、まずは不動産がある市区町村の固定資産税の担当窓口に請求するのが基本です。所有者が亡くなっている場合でも、相続人が戸籍などで相続人であることを示せば請求できる扱いの自治体があります。ただ、その前に、手元にある固定資産税の課税明細書で用が足りないかを、登記を申請する法務局に確かめておくと、取らなくて済む場合もあります。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度と公開資料に基づく一般的な解説です。
固定資産評価証明書とは
固定資産税は、土地や建物がある市町村が課す税金で(地方税法342条1項)、市町村は不動産の状況や価格を記録した「固定資産課税台帳」を備えることになっています(同法380条1項)。固定資産評価証明書は、この台帳に登録された価格(評価額)などを証明する書類です。東京23区では、固定資産税は区ではなく東京都が課しているため(同法734条1項・5条2項2号)、証明書の窓口も都税事務所になります。
相続登記では、登記のときに納める登録免許税を計算するもとになる数字として、この価格を使います。どの欄の数字をどう計算に使うかは相続登記の登録免許税を自分で計算する方法で、固定資産税の評価額がほかの「価格」とどう違うかは不動産の『価格』が3つある理由で説明しています。この記事では、証明書の「取り方」に絞ります。
請求できる人
固定資産評価証明書は、誰でも取れるわけではありません。法律で請求できる人が決められています。
- 所有者(固定資産税の納税義務者)本人:自分の税金に関する証明書として、台帳に登録された事項の証明を請求できます(地方税法20条の10、同法施行令6条の21第1項4号)。
- 借地人・借家人など:土地や建物を有料で借りている人は、借りている土地・建物(建物の場合はその敷地を含む)の証明を請求できます(地方税法382条の3、同法施行令52条の15)。
- そのほか法令で定められた人:固定資産を処分する権利を持つ人として省令で定められた人や、裁判所への一定の申立てをしようとする人なども、同じ条文で定められています。
所有者が亡くなっている場合については、たとえば東京23区の都税事務所は、法定相続人が証明を申請できると案内しています。あわせて、先の順位の相続人が存命の場合、後の順位の人は法定相続人にならない、という注意書きもあります。ただし、先の順位の人が全員相続放棄をした場合などは、存命でも後の順位の人が相続人になります(民法939条)。こうした場合の扱いも含め、相続人として請求できるかどうかや、その範囲は自治体ごとに案内を確認してください。
相続人が請求するときに用意するもの
用意する書類は自治体によって違うため、請求する窓口の案内で確認するのが確実です。参考として、東京23区の都税事務所が案内している内容を挙げます。
配偶者または子が請求する場合
- 証明・閲覧申請書
- 請求する人の本人確認書類
- 亡くなった方が亡くなったことがわかる書類(住民票の除票、除籍謄本など)
- 請求する相続人の現在の戸籍謄本・抄本
親など(第2順位)が請求する場合は亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、兄弟姉妹(第3順位)が請求する場合はさらに第2順位の相続人が亡くなっていることがわかる書類が必要とされています。
戸籍の束の代わりに、法務局で交付を受けた「法定相続情報一覧図」の写しを使える、とも案内されています。窓口では、申請書や委任状は原本を提出し、そのほかの書類は原本を見せるのが原則とされています。
窓口と郵送
請求先は、不動産がある市区町村の固定資産税の担当窓口です。東京23区の場合は都税事務所で、23区内の不動産であれば、別の区にある不動産の証明も請求できるとされています。
遠方の不動産の場合は、郵送での請求を受け付けている自治体もあります。東京23区の都税事務所では、窓口のほか、郵送(定額小為替またはキャッシュレス決済)や電子申請の方法が案内されており、郵送の場合は受付から発送まで1週間〜10日程度かかるとされています。郵送の方法や必要書類は自治体ごとに違うため、請求する自治体のホームページで確認してください。
手数料
証明書の手数料は、発行する自治体(市区町村。東京23区の不動産は東京都)が条例で定めることになっています(地方自治法227条・228条1項)。このため、金額は自治体ごとに異なり、「全国一律でいくら」とは言えません。不動産1件ごとにかかる、2件目以降は別の金額になる、といった数え方も自治体によって違いますので、請求する自治体の案内で確認してください。
4月1日をまたぐと、必要な年度が切り替わる
相続登記で使う価格は、登記を申請する日によって決まります。申請の日が1月1日から3月31日までなら前年12月31日現在の価格、4月1日から12月31日までならその年の1月1日現在の価格を使います(登録免許税法施行令附則3項)。法務局の案内でも、登記の申請をする年度(4月1日から翌年3月31日)の価格で確認する必要があるとされています。
つまり、3月に評価証明書を取ったものの、申請が4月以降にずれ込んだ場合には、新しい年度の証明書を取り直すことになります。新しい年度の証明書をいつから発行するかは自治体の案内で確認が必要です。東京23区の都税事務所では、評価証明は毎年4月1日(土日・祝日の場合は翌開庁日)から発行するとされ、4月初めの数日間は窓口が大変混雑するとも案内されています。
また、東京23区の案内では、1月2日以降に完成した建物は評価額がまだ決まっていないため、翌年の4月以降まで評価証明を発行できないとされています。
課税明細書で足りるか──申請する法務局に確かめる
毎年、固定資産税の納税通知書と一緒に届く「課税明細書」にも、その年度の価格が書かれています(欄の見方は固定資産税の課税明細書の見方を参照してください)。法務局が公表している相続登記の案内の中には、登録免許税の計算に使う価格は課税明細書で確認でき、課税明細書を紛失した場合などに市区町村の証明書で確認する、という流れで説明しているものがあります。また、課税明細書(の写し)か評価証明書のどちらかを申請書に添えるよう案内している法務局もあります。
一方で、手元の課税明細書では足りず、市区町村での証明書や法務局への問い合わせが必要になる場面もあります。
- 課税明細書の年度が合っていない:申請する日の年度のものでなければ使えません。前の章のとおり、4月1日をまたぐと必要な年度が変わります。
- 課税明細書が見当たらない:市区町村の証明書で価格を確認することになります。
- 価格が付いていない土地がある:私道(公衆用道路)などで台帳に価格がない場合は、法務局が認定した価格を使うため、管轄の法務局に問い合わせるよう案内されています。
- 年度の途中で地目が変わった土地など:市区町村での証明書の取り方を含めて確認が必要になる、と案内している法務局があります。
- 課税明細書に載っていない不動産がある:課税明細書は、その市区町村が固定資産税を課す土地・家屋について交付されるものです(地方税法364条3項)。税金がかからない不動産や、ほかの市区町村にある不動産は、手元の課税明細書に載っていないことがあります。
どの書類を添付すればよいかは、登記を申請する不動産の所在地を管轄する法務局に、申請前に確認してください。課税明細書で足りるかどうかを先に確かめておけば、証明書を取りに行く手間や手数料を省けることがありますし、逆に、明細書を添えて申請したあとで別の書類を求められる、という行き違いも防げます。
まとめ
固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村(東京23区は都税事務所)で請求します。所有者が亡くなっている場合は、相続人であることを示す戸籍などをそろえて請求する扱いの自治体があり、必要書類や手数料は自治体ごとに異なります。相続登記で使うのは申請する日の年度の価格なので、4月1日をまたぐかどうかにも気をつけてください。手元の課税明細書で足りるかどうかは、申請する法務局に先に確認しておくと安心です。証明書の取り寄せや相続登記の進め方で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 固定資産評価証明書の手数料はいくらですか? 手数料は発行する自治体(市区町村。東京23区は東京都)が条例で決めているため、自治体ごとに異なります。不動産1件ごとにかかる、2件目以降は金額が変わるなど、数え方も自治体によって違います。請求する自治体の案内で確認してください。なお、手元の課税明細書で足りる場合は、証明書を取らずに済むこともありますので、申請する法務局に先に確認するのがおすすめです。
Q. 取った証明書に期限はありますか?放っておくとどうなりますか? 相続登記で使う場面では、申請する日の年度の価格が載っていることが必要です。1月から3月に申請する場合と、4月以降に申請する場合とで使う年度が変わるため、3月に取った証明書のまま4月以降に申請すると、取り直しになります。また、相続で不動産を取得した人は、相続の開始と取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2第1項・164条1項)。書類集めは早めに始めておくと安心です。
Q. 自分で取れますか?どこに相談すればいいですか? 請求できる立場の人であれば、自分で窓口や郵送で請求できます。まずは不動産がある市区町村(東京23区は都税事務所)の固定資産税の担当窓口の案内を確認してください。証明書に書かれた価格の中身についての疑問は市区町村の担当窓口へ、どの書類を登記に添えればよいかは申請する法務局へ確認するのが基本です。相続登記の手続き全体や費用について相談したいときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】評価証明書は登記の何を裏付ける資料か──基準日と「価格のない不動産」
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
法令上の「添付情報」ではなく、課税標準の裏付け資料
相続登記の申請情報には、登録免許税額とあわせて課税標準の金額を記載します(不動産登記規則189条1項)。一方、登記の申請と一緒に提供しなければならない添付情報を定めた不動産登記令7条とその別表には、固定資産評価証明書や課税明細書は挙げられていません。これらは、相続があったことや相続人を証明する書類ではなく、申請書に記載した課税標準の金額の根拠を示す資料という位置づけです。
法務局の案内も、この位置づけに沿っています。東京ブロック管内の法務局・地方法務局による相続登記ガイドブック(登録免許税編)は、課税明細書または評価証明書を「課税価格の積算資料として」申請書に添付するよう求めています。法務省民事局の登記手続ハンドブック(相続登記①遺産分割協議編・令和8年4月版)でも、評価額の確認方法は「課税価格」の説明の中で扱われ、添付書面の一覧には含まれていません。
法令上の添付情報としては列挙されていないこともあり、どの書類をどの形で添えるかは、各法務局がそれぞれ案内しています。たとえば東京法務局町田出張所は、市が発行する評価証明書、名寄帳の写し、課税明細書のいずれか一つのコピーを申請書に添付するよう案内しています。本文で「申請する法務局に確認する」としているのは、このためです。
課税標準を最終的に決めるのは登記官
申請書に記載した課税標準の金額や税額が、登記官の調査したところと異なるときは、登記官は認定した金額を申請人に通知し(登録免許税法26条1項、不動産登記規則190条1項)、申請人は、登記を受けることをやめる場合を除き、差額を納付することになります(登録免許税法26条2項)。また、市町村長は、土地や家屋の価格を決定・修正したときは、その価格などを管轄の登記所に通知することとされています(地方税法422条の3)。
評価証明書や課税明細書を添えたからといって、申請書に書いた金額がそのまま受け入れられるとは限りません。たとえば年度の違う資料の数字を使い、その結果として納めた税額が足りなくなっていると、申請後に差額の納付を求められることがあり得ます。
基準は「申請の日」──亡くなった日でも、証明書を取った日でもない
登録免許税法は、不動産の登記の課税標準となる不動産の価額を、その登記の時における価額によるものとしたうえで(10条1項)、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎として政令で定める価額によることができるとしています(同法附則7条)。これを受けて、登録免許税法施行令附則3項が、申請の日が1月1日から3月31日までなら前年12月31日現在の台帳価格、4月1日から12月31日までならその年1月1日現在の台帳価格によると定めています。
つまり、相続登記で使う価格は、被相続人が亡くなった日を基準に選ぶのではなく、また証明書の発行日で決まるのでもなく、登記を申請する日を基準に選びます。相続が何年も前に開始していても、申請がその年の4月以降であれば、その年の1月1日現在の価格を使います。反対に、発行日が新しい証明書でも、記載された年度が申請の日に対応していなければ使えません。年度の境目の前後に申請する場合は、手元の証明書や課税明細書に記載された年度を、申請予定日と照らし合わせて確認しておくのが確実です。
台帳に価格のない不動産
同じ登録免許税法施行令附則3項は、台帳に価格が登録されていない不動産については、申請の日において類似する不動産で台帳に価格のあるものの価格を基礎として、登記機関が認定した価額によると定めています。本文で触れた私道(公衆用道路)や、1月2日以降に完成した建物のほか、年の途中で形が変わった土地も、その不動産自体の価格を示す証明書が出ない場面があります。たとえば東京23区の都税事務所は、1月2日以降に分筆・合筆された土地については、分筆・合筆前の土地の1月1日時点の証明を交付し、分筆・合筆後の土地の証明は翌年度以降でなければ発行できないと案内しています。
こうした不動産について、課税標準をどう扱い、どの資料を添えればよいかは、登記官の認定にかかわる事項です。証明書を請求する前に、管轄の法務局に確認しておくと手戻りを防げます。認定の具体的な方法には、ここでは立ち入りません。
登記官の「交付依頼書」による請求と、その見直し
地域によっては、登記官が発行する「固定資産評価証明書交付依頼書」を使って、登記に用いる評価証明書を請求する取扱いがあります。東京23区の都税事務所は、登記官の公印が押された交付依頼書と本人確認書類による申請には発行手数料がかからないとする一方、この場合は固定資産が所在する区の都税事務所でしか申請できないと案内しています。
これに対し、東京法務局町田出張所は、市と法務局の間の通知(地方税法382条・422条の3に基づくもの)が電子化されたことに伴い、交付依頼書による無料交付の取扱いを令和7年3月31日で廃止したと案内しています。この取扱いがあるかどうかは地域によって異なり、見直されることもあるため、利用できるかは管轄の法務局で確認してください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 地方税法 第5条・第20条の10・第342条・第364条・第380条・第382条・第382条の3・第422条の3・第734条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 地方税法施行令 第6条の21・第52条の15(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000245
- 地方自治法 第227条・第228条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067
- 登録免許税法 第10条・第26条・附則第7条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 登録免許税法施行令 附則第3項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000146
- 不動産登記法 第76条の2・第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記令 第7条・別表(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416CO0000000379
- 不動産登記規則 第189条・第190条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 民法 第939条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 東京都主税局「固定資産に関する証明等(23区内)【土地・家屋】相続人・受遺者」: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/certification/fixed_assets/sozokunin
- 東京都主税局「固定資産に関する証明等(23区内)よくある質問」: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/certification/fixed_assets/faq
- 東京ブロック管内法務局・地方法務局 相続登記促進プロジェクト「相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)登録免許税編」: https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001396089.pdf
- 法務省民事局「登記手続ハンドブック 登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(令和8年4月): https://www.moj.go.jp/content/001460375.pdf
- 東京法務局町田出張所「固定資産評価証明書(登記用)の無料交付の廃止に関するお知らせ」(令和6年12月2日): https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001429000.pdf