この記事の要点
- 相続人が未成年者のとき、相続を承認するか放棄するかを決める「3か月」は、子ども本人ではなく法定代理人(通常は親権を行う親)が、子どものために相続の開始があったことを知った時から数えます(民法917条)
- 家庭裁判所への相続放棄の申述(しんじゅつ:家庭裁判所への申出)も、未成年者本人ではなく法定代理人が代理して行います
- 親と子どもがともに相続人で子どもだけが放棄する場合(親が先に申述している場合を除く)などは、その子どもについて特別代理人の選任が必要とされています
結論:数え始めの基準は「法定代理人が知った時」
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを決めなければなりません(民法915条1項)。この3か月を「熟慮期間(じゅくりょきかん)」といいます。
では、相続人が未成年の子どもだったらどうなるのでしょうか。民法917条は、相続人が未成年者であるときは、この3か月を「その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する」と定めています。
民法では年齢18歳をもって成年とされ(民法4条)、18歳未満の子どもは未成年者です。未成年者の法定代理人(法律上、本人に代わって手続きをする人)は、通常は親権を行う親です(民法818条・824条)。つまり、3か月の数え始めの基準になるのは、子ども本人ではなく法定代理人である親のほうです。
たとえば、離れて暮らす父が亡くなり、未成年の子どもが相続人になったとします。子どもの親権者が母であれば、子どもについての3か月は、母が子どものために相続の開始があったことを知った時から数えることになります。
熟慮期間の数え方の基本は相続放棄の「3ヶ月」はいつから?で整理しています。
手続きをするのも法定代理人
裁判所の手続案内では、相続人が未成年者である場合には、その法定代理人が代理して相続放棄の申述をするとされています。申述先は被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です(郵便料は裁判所ごとに異なります)。
親子がともに相続人のときは「特別代理人」に注意
親と子どもの利益がぶつかる行為(利益相反行為)については、親は子どものために特別代理人を選ぶよう家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条1項)。親が複数の子どもの親権を行っていて、子ども同士の利益がぶつかる場合も同様です(同条2項)。
相続放棄について、裁判所の手続案内では、次の場合にその未成年者について特別代理人の選任が必要とされています。
- 未成年者と法定代理人がともに相続人で、未成年者だけが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く)
- 複数の未成年者の法定代理人が、一部の未成年者だけを代理して申述するとき
特別代理人が必要な場合は、相続放棄の申述の前に、家庭裁判所への選任の申立てという段取りが一つ加わります。3か月の期限があることを前提に、早めに方針を決めておくことが大切です。遺産分割の場面も含めた特別代理人のしくみは未成年の子がいる相続と「特別代理人」で解説しています。
期限を管理するときのポイント
期限を書き出すときは、「誰の相続について」「誰が知った日を基準に」3か月を数えるのかを分けて記録しておくと、見落としを防げます。相続人に未成年の子どもがいる場合、基準になるのは子ども本人ではなく法定代理人が知った日です。なお、民法917条は、相続人が成年被後見人である場合も同じく、法定代理人が知った時から数えると定めています。
この記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
相続人が未成年の子どもの場合、相続放棄をするかどうかを決める3か月は、子ども本人ではなく、法定代理人である親が子どものために相続の開始があったことを知った時から数えます(民法917条)。申述も法定代理人が代理して行い、親子がともに相続人で子どもだけが放棄する場合(親が先に申述している場合を除く)などは、特別代理人の選任という段取りが加わります。期限の数え方や手続きの進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第4条・第818条・第824条・第826条・第915条・第917条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html