この記事の要点

  • 先の順位の相続人が全員放棄すると、子→直系尊属(父母・祖父母など)→兄弟姉妹の順で、次の順位の人が相続人になります。放棄した人の子が代わりに相続人になることはありません
  • 次の順位の人の「3か月」は、亡くなった日からではなく、先の順位の人の放棄によって自分が相続人になったことを知った時から数えるのが基本と考えられます(民法915条1項)
  • 家庭裁判所からの受理の通知は、申述した人などに宛てたものです。次の順位の人に知らせるなら、先の順位の全員の受理を確かめたあとに、日付の残る形で伝えておくと、あとで確かめやすくなります

相続放棄が受理されると、放棄した人の手続きはひと区切りです。しかし、相続そのものは終わっていません。相続人が次の順位の人に移り、その人の期限がそこから動き出すことがあるからです。

なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

次に相続人になるのは誰か

配偶者は常に相続人になります(民法890条)。配偶者以外は、次の順位で相続人になります。

  1. 子(民法887条1項)
  2. 直系尊属(父母・祖父母など)。親等の近い人が先で、父母のどちらかがいれば祖父母は相続人になりません(民法889条1項1号)
  3. 兄弟姉妹。先に亡くなった兄弟姉妹がいれば、その子(おい・めい)が代わりに相続人になります(民法889条1項2号・2項)

次の順位に移るのは、先の順位で相続人となるべき人がいなくなったときです(民法889条1項)。たとえば子が3人いて1人だけが放棄した場合は、残る2人が相続人のままで、父母には移りません。

放棄した人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。また、子に代わってその子(孫)が相続人になる代襲相続の原因は、相続開始以前の死亡、欠格、廃除の三つで(民法887条2項)、放棄は含まれていません。そのため、子が放棄しても孫には移りません。

配偶者がいる場合、子の全員が放棄すると、配偶者と次の順位の人(父母など)が一緒に相続人になります(民法890条)。順位の全体像は相続放棄の基本をご覧ください。

次の順位の人の「3か月」はいつから

相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、承認か放棄かを決めます(民法915条1項)。最高裁判所は、この3か月を与えている前提として、相続人が「相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実」を知った場合を挙げています(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁)。

次の順位の人は、亡くなったことを知っていても、先の順位の人が全員放棄するまでは相続人ではありません。そのため、次の順位の人の3か月は、先の順位の人の放棄によって自分が相続人になったことを知った時から数えると考えられます(判例の言い回しを、次の順位の人に当てはめた読みです)。先の順位の人の放棄によって相続人になったことを知った場合は、先の順位の人が放棄したことを知った日から数える、と整理した研究論文もあります(餅川正雄「日本の相続法における単純承認と限定承認に関する研究」広島経済大学研究論集43巻1号〔2020年〕32頁・表1)。

家庭裁判所の案内でも、この点がうかがえます。

  • 先の順位の相続人がいる場合、その人の放棄が受理されていないと、後の順位の人は申述できません(東京家庭裁判所・岐阜家庭裁判所)
  • 亡くなった日、または先の順位の人の放棄が受理された日から3か月を超えて申述する場合は、相続の開始を知った日を裏付ける資料(申述人宛ての債権者からの通知書など)の写しを、資料がなければ知った経緯を書いた上申書を求める、と案内している家庭裁判所があります(岐阜家庭裁判所)

申述書には「相続の開始があったことを知った年月日」を書くことになっています(家事事件手続規則105条1項3号)。いつ知ったかを示せることが、次の順位の人にとっても大切になります。起算点の考え方は相続放棄の『3ヶ月』はいつから?、3か月で判断がつかないときの手続きは期間伸長の申立てで詳しく扱っています。

受理のあとに知らせる段取り

放棄が受理されたとき、裁判所書記官が通知する相手は「当事者及び利害関係参加人」です(家事事件手続規則106条2項)。次の順位の人は、誰かから知らされない限り、先の順位の人が放棄したことを知らないままのことがあります。

放棄した人が次の順位の人に知らせることを定めた条文は、民法の相続の放棄の規定(938条〜940条)にはありません。ただ、亡くなった方に借金がある場合、次の順位の人が債権者からの通知で初めて事情を知ることもあります。知らせるかどうか、どう伝えるかは家族の事情によりますが、知らせる場合は次の順で進めると整理しやすくなります。

  1. 先の順位の全員の受理を確かめる:同じ順位の人が複数いるときは、全員の放棄が受理されて初めて次の順位に移ります
  2. 次の順位の人を戸籍で確かめる:父母・祖父母の生死、兄弟姉妹、先に亡くなった兄弟姉妹の子(おい・めい)まで確認します
  3. 必要な情報をまとめて伝える:亡くなった方の氏名・死亡日・最後の住所(申述先は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。相続は亡くなった方の住所で開始し〔民法883条〕、相続放棄の申述は相続が開始した地の家庭裁判所が受け付けるためです〔家事事件手続法201条1項〕)、放棄した人と受理日、受理した家庭裁判所(受理通知書の写しがあれば伝えやすくなります)、わかっている財産と借金の状況。同じ被相続人について先に申し立てられた期間伸長や相続放棄の事件で提出済みの書類は、後の申述では不要とされています(裁判所「相続の放棄の申述」)
  4. 日付の残る形で伝える:手紙など、いつ伝えたかが後でわかる形にしておくと、次の順位の人が「知った日」を示すときの手がかりになります

なお、放棄の時に亡くなった方の財産を現に占有していた人は、相続人などに引き渡すまで、その財産を保存しなければなりません(民法940条1項)。引き渡す相手が次の順位の人になることもあります(詳しくは相続放棄しても管理義務が残ることがある)。

まとめ

相続放棄が受理されると、先の順位の全員がいなくなった時点で、相続人は次の順位の人に移ります。その人の3か月は、自分が相続人になったことを知った時から数えるのが基本と考えられます。先の順位の人の受理日から3か月を過ぎると、家庭裁判所によっては、いつ知ったかを示す資料を求められることがあります。受理のあとは、誰が次の順位にあたるかを戸籍で確かめ、受理通知書の写しなどで必要な情報を伝えておくと、その後の手続きが進めやすくなります。

相続放棄の申述書の作成は、司法書士に依頼できます。次の順位の人や債権者との間で話し合いや交渉が必要になった場合は、弁護士の領域です。まずはお近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、研究論文(二次資料)ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

  • 餅川正雄「日本の相続法における単純承認と限定承認に関する研究」広島経済大学研究論集43巻1号(2020年)25〜46頁(広島経済大学リポジトリ): https://hue.repo.nii.ac.jp/records/321

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