問題:
売買の目的物又は権利が契約の内容に適合しない場合における売主の責任に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 引き渡された目的物が品質に関して契約の内容に適合しないものである場合において、買主が目的物の修補による履行の追完を請求したときであっても、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、代替物の引渡しによる履行の追完をすることができる。
イ. 引き渡された目的物が数量に関して契約の内容に適合しないものである場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであっても、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
ウ. 売主が数量に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、代金の減額の請求をすることができない。
エ. 民事執行法の規定に基づく競売における買受人は、競売の目的物の品質に関する不適合を理由として、債務者に対し、代金の減額を請求することができる。
オ. 売主は、目的物の品質に関する担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。
解説:
ア 正しい。民法562条1項は、本文で「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」と定め、ただし書で「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」と定めている。買主が修補を請求した場合でも、買主に不相当な負担を課するものでなければ、売主は代替物の引渡しという別の方法で追完することができる。
イ 誤り。民法563条1項は、「前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。」と定めているが、同条3項は、「第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。」と定めている。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、催告をしても代金の減額を請求することはできない(履行の追完の請求についても同様である。同法562条2項)。
ウ 誤り。民法566条は、「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。」と定めている。同条の期間制限の対象は「種類又は品質に関して」契約の内容に適合しない目的物を引き渡した場合に限られており、数量に関する不適合は含まれない。移転した権利が契約の内容に適合しない場合(同法565条)も、同条の対象ではない。もっとも、数量に関する不適合を理由とする権利も無期限に行使できるわけではなく、消滅時効の一般原則(同法166条1項等)に服する。
エ 誤り。民法568条1項は、競売における買受人は、同法541条及び542条の規定並びに563条(565条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができると定めているが、同条4項は、「前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。」と定めている。品質に関する不適合を理由として、債務者に対し代金の減額を請求することはできない。
オ 正しい。民法572条は、「売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。」と定めている。
ポイント:引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないときは、買主は履行の追完を請求でき、売主は買主に不相当な負担を課さなければ別の方法で追完できる(民法562条1項)。追完の催告をしても追完がなければ代金の減額を請求できるが(同法563条1項)、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完の請求も代金の減額の請求もできない(同法562条2項・563条3項)。不適合を知った時から1年以内の通知を要するのは種類・品質の不適合だけで、売主が引渡しの時に悪意又は重過失なら通知がなくても権利を失わない(同法566条)。競売では、種類・品質の不適合について解除・代金の減額の請求はできない(同法568条4項)。担保の責任を負わない旨の特約も、知りながら告げなかった事実には及ばない(同法572条)。「1年の通知も、競売の対象外も、種類・品質だけ」と押さえる。
問題:
商業登記の更正及び抹消に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができるが、この場合には、更正の対象が氏、名又は住所であるときであっても、更正の申請書に錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。
イ. 登記官は、登記に錯誤又は遺漏があることを発見した場合において、その錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。
ウ. 申請に係る登記がその登記所において既に登記されていたにもかかわらず重ねてされた登記については、当事者は、その登記の抹消を申請することができる。
エ. 登記された事項につき無効の原因がある場合には、訴えをもってのみその無効を主張することができるときであっても、当事者は、そのことを理由として、その登記の抹消を申請することができる。
オ. 申請書に必要な書面を添付しないでされた登記については、当事者は、そのことを理由として、その登記の抹消を申請することができる。
答え:
誤っているものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。商業登記法132条1項は、「登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができる。」と定め、同条2項は、「更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。ただし、氏、名又は住所の更正については、この限りでない。」と定めている。氏、名又は住所の更正については、錯誤又は遺漏があることを証する書面の添付を要しない。
イ 正しい。商業登記法133条1項は、登記官は、登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、登記をした者にその旨を通知しなければならないが、その錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、この限りでないと定めている。そして、同条2項は、「前項ただし書の場合においては、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。」と定めている。
ウ 正しい。商業登記法134条1項は、登記が同項各号のいずれかに該当するときは、当事者は、その登記の抹消を申請することができると定め、その1号は「第二十四条第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由があること。」としている。同法24条3号は「申請に係る登記がその登記所において既に登記されているとき。」であるから、これに当たるのにされた登記については、当事者は、その登記の抹消を申請することができる。
エ 誤り。商業登記法134条1項2号は、「登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもつてのみその無効を主張することができる場合を除く。」と定めている。訴えをもってのみ無効を主張することができる場合には、無効の原因があることを理由として登記の抹消を申請することはできない。なお、同号の場合には、更正の申請書の添付書面に関する同法132条2項の規定が準用される(同法134条2項)。
オ 誤り。申請書に必要な書面を添付しないことは、商業登記法24条7号の却下事由である。しかし、同法134条1項1号が抹消の申請の事由として掲げるのは、同法24条1号から3号まで又は5号の事由に限られており、7号は含まれていない。申請書に必要な書面を添付しないでされたことを理由として、その登記の抹消を申請することはできない。
ポイント:登記に錯誤又は遺漏があるときは当事者が更正を申請でき、錯誤又は遺漏を証する書面を添付するが、氏、名又は住所の更正では不要である(商業登記法132条)。登記官の過誤によるときは、登記官が監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て更正し、それ以外のときは登記をした者に通知する(同法133条)。当事者が抹消を申請できるのは、同法24条1号から3号まで又は5号の事由があるときと、登記された事項に無効の原因があるとき(訴えをもってのみ無効を主張できる場合を除く)に限られる(同法134条1項)。却下事由であっても、添付書面の不足(同法24条7号)は同法134条1項1号の事由に含まれない。「抹消は24条の1・2・3・5号、訴えでしか争えない無効は除く」と押さえる。
問題:
司法書士会、日本司法書士会連合会及び公共嘱託登記司法書士協会に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 司法書士の登録の申請をする者は、その申請と同時に、申請を経由すべき司法書士会に入会する手続をとらなければならず、その者は、入会の手続をとった時に、当該司法書士会の会員となる。
イ. 司法書士会の会則のうち会費に関する規定を変更するには、法務大臣の認可を受けなければならない。
ウ. 司法書士法人は、その成立の時に、主たる事務所の所在地の司法書士会の会員となる。
エ. 日本司法書士会連合会に置かれる登録審査会は、法務大臣の請求により、心身の故障により司法書士の業務を行うことができないこと等を理由とする登録の拒否又は登録の取消しについて審議を行う。
オ. 公共嘱託登記司法書士協会は、官公署等の嘱託を受けて、不動産の権利に関する登記及び商業登記につき、司法書士法3条1項1号から5号までに掲げる事務を行うことをその業務とする。
答え:
正しいものは、ウの1つである。
解説:
ア 誤り。司法書士法57条1項は、同法9条1項の規定による登録の申請等をする者は、その申請と同時に、申請を経由すべき司法書士会に入会する手続をとらなければならないと定めているが、同条2項は、「前項の規定により入会の手続をとつた者は、当該登録又は変更の登録の時に、当該司法書士会の会員となる。」と定めている。会員となるのは入会の手続をとった時ではなく、登録の時である。
イ 誤り。司法書士法54条1項は、「司法書士会の会則を定め、又はこれを変更するには、法務大臣の認可を受けなければならない。ただし、前条第一号及び第七号から第十一号までに掲げる事項に係る会則の変更については、この限りでない。」と定めている。同法53条は、会則の記載事項として、1号に名称及び事務所の所在地、7号に司法書士の研修に関する規定、8号に会員の業務に関する紛議の調停に関する規定、9号に司法書士会及び会員に関する情報の公開に関する規定、10号に資産及び会計に関する規定、11号に会費に関する規定を掲げている。会費に関する規定は同条11号に掲げる事項であるから、その変更には法務大臣の認可を要しない。
ウ 正しい。司法書士法58条1項は、「司法書士法人は、その成立の時に、主たる事務所の所在地の司法書士会の会員となる。」と定めている。
エ 誤り。司法書士法67条2項は、「登録審査会は、日本司法書士会連合会の請求により、第十条第一項第二号若しくは第三号の規定による登録の拒否又は第十六条第一項の規定による登録の取消しについて審議を行うものとする。」と定めている。審議は、法務大臣ではなく日本司法書士会連合会の請求により行う。なお、同法10条1項2号は「心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき」、3号は「司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき」であり、同法16条1項は、引き続き2年以上業務を行わないとき又は心身の故障により業務を行うことができないときの登録の取消しを定めている。
オ 誤り。司法書士法69条1項は、「協会は、第六十八条第一項に規定する目的を達成するため、官公署等の嘱託を受けて、不動産の権利に関する登記につき第三条第一項第一号から第五号までに掲げる事務を行うことをその業務とする。」と定めている。協会の業務は不動産の権利に関する登記についての事務であり、商業登記は含まれない。
ポイント:登録の申請をする者は、申請と同時に経由すべき司法書士会に入会の手続をとり、会員となるのは登録の時である(司法書士法57条1項・2項)。司法書士法人は成立の時に主たる事務所の所在地の司法書士会の会員となる(同法58条1項)。司法書士会の会則の制定・変更には法務大臣の認可を要するが、名称・事務所の所在地と、研修・紛議の調停・情報の公開・資産及び会計・会費に関する規定(同法53条1号・7号〜11号)の変更は認可不要である(同法54条1項)。登録審査会は、日本司法書士会連合会の請求により、同法10条1項2号・3号による登録の拒否と16条1項による登録の取消しを審議する(同法67条2項)。公共嘱託登記司法書士協会の業務は、官公署等の嘱託を受けてする不動産の権利に関する登記についての同法3条1項1号〜5号の事務である(同法69条1項)。「会員になるのは登録の時、審査会を動かすのは連合会」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・売買の契約不適合責任) | 売主による異なる方法の追完、買主の責めに帰すべき事由による不適合と代金の減額の請求、1年の通知期間の対象(種類・品質に限る)、競売と種類・品質の不適合、担保責任を負わない旨の特約の限界 | 民法562条、563条1項・3項、565条、566条、568条1項・4項、572条 |
| 第2問 | 商業登記法(登記の更正及び抹消) | 更正の申請と錯誤・遺漏を証する書面(氏・名・住所の例外)、登記官の過誤による職権更正、既にされた登記の重複と抹消の申請、訴えをもってのみ無効を主張できる場合の除外、添付書面の不足は抹消の申請の事由に当たらないこと | 商業登記法24条3号・7号、132条、133条、134条 |
| 第3問 | 司法書士法(司法書士会・日本司法書士会連合会・公共嘱託登記司法書士協会) | 入会の手続と会員となる時期、会則の変更と法務大臣の認可の例外、司法書士法人の入会、登録審査会の審議の請求者、公共嘱託登記司法書士協会の業務の範囲 | 司法書士法10条1項、16条1項、53条、54条1項、57条1項・2項、58条1項、67条2項、69条1項 |