問題:
保証人の保護に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならないが、この義務は、保証人が法人である場合には生じない。
イ. 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、個人である保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2箇月以内に、その旨を通知しなければならず、この期間内に通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
ウ. 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約は、保証人になろうとする者が個人である場合(民法465条の9各号に掲げる者である場合を除く。)には、その契約の締結に先立ち、その締結の日前3箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
エ. 主たる債務者が株式会社である場合において、その取締役が保証人になろうとするときは、当該株式会社が事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約であっても、その締結に先立って公正証書で保証債務を履行する意思を表示することを要しない。
オ. 主たる債務者が、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証の委託を個人にする場合において、財産及び収支の状況に関して事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、債権者が、主たる債務者が事実と異なる情報を提供したことを知らず、かつ、知ることができなかったときであっても、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
答え:
正しいものは、イ・エの2つである。
解説:
ア 誤り。民法458条の2は、「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。」と定めている。同条には、保証人が法人である場合を除外する規定はない。したがって、委託を受けた保証人であれば、法人であっても、同条による情報の提供を請求することができる。これに対し、同法458条の3第3項、465条の6第3項、465条の10第3項は、それぞれの規定を保証人(保証をする者・保証人になろうとする者)が法人である場合には適用しないと定めている。
イ 正しい。民法458条の3第1項は、「主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。」と定めている。なお、同条3項は、「前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。」と定めている。同条1項は、同法458条の2と異なり、保証人が主たる債務者の委託を受けたことを要件としていない。
ウ 誤り。民法465条の6第1項は、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」と定めている。公正証書は、契約の締結の日前3箇月以内ではなく、1箇月以内に作成されたものでなければならない。なお、同条3項は、同条1項及び2項の規定は保証人になろうとする者が法人である場合には適用しないと定め、同法465条の8第1項は、これらの保証契約又は根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について、同法465条の6第1項及び2項並びに465条の7の規定を準用している。
エ 正しい。民法465条の9は、「前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。」と定め、1号に「主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」を掲げている。主たる債務者である株式会社の取締役が保証人になろうとする場合には、同法465条の6の公正証書による保証意思の表示は要しない。なお、同法465条の9は、2号に主たる債務者の総株主の議決権の過半数を有する者等を、3号に「主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」を掲げている。
オ 誤り。民法465条の10第1項は、主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、財産及び収支の状況(1号)、主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況(2号)、主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容(3号)に関する情報を提供しなければならないと定めている。そして、同条2項は、「主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。」と定めている。同項により保証人が保証契約を取り消すことができるのは、債権者が、主たる債務者が情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを知り又は知ることができたときに限られる。なお、同条3項は、同条1項及び2項の規定は保証をする者が法人である場合には適用しないと定めている。
ポイント:委託を受けた保証人は、法人であっても、債権者に対し主たる債務の不履行の有無・残額等の情報の提供を請求することができる(民法458条の2)。主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は、その喪失を知った時から2箇月以内に保証人に通知しなければならず、通知を怠ると、喪失の時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない(同法458条の3第1項・2項。保証人が法人の場合は適用なし=同条3項)。事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約等は、締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証意思が表示されていなければ効力を生じない(同法465条の6第1項。法人には適用なし=同条3項)が、主たる債務者である法人の取締役等、議決権の過半数を有する者等、個人である主たる債務者の共同事業者や事業に現に従事している配偶者には、この規定は適用されない(同法465条の9)。事業のために負担する債務の保証の委託をする主たる債務者は、財産及び収支の状況等の情報を提供しなければならず、情報の不提供又は不実の提供により保証人が誤認して意思表示をした場合には、債権者がそのことを知り又は知ることができたときに限り、保証人は同条2項により保証契約を取り消すことができる(同法465条の10第1項・2項)。「委託を受けた保証人への情報提供は法人も対象、期限の利益喪失の通知は2箇月、公正証書は1箇月以内、契約締結時の情報提供義務違反による取消しは債権者の悪意又は有過失が必要」と押さえる。
問題:
不動産登記法23条に規定する事前通知等に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 申請人が登記識別情報を提供することができないため登記官が登記義務者に対して事前通知をした場合において、登記義務者が申請の内容が真実である旨の申出をすべき期間は、登記義務者が日本国内に住所を有するときは通知を発送した日から2週間であり、外国に住所を有するときは通知を発送した日から4週間である。
イ. 登記官は、事前通知をした場合において、申出をすべき期間内であっても、申請の内容が真実であると認めるときは、登記義務者からの申出がなくとも、当該申請に係る登記をすることができる。
ウ. 所有権に関する登記の申請について事前通知をする場合において、登記義務者の住所について変更の登記がされているときであっても、当該登記の申請の日が、登記義務者の住所についてされた最後の変更の登記の申請に係る受付の日から3月を経過しているときは、登記官は、登記義務者の登記記録上の前の住所に宛てて当該申請があった旨を通知することを要しない。
エ. 所有権に関する登記の申請について事前通知をする場合において、登記義務者が法人であり、その住所について変更の登記がされているときは、登記官は、事前通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所に宛てて、当該申請があった旨を通知しなければならない。
オ. 資格者代理人が、氏名を知らず、かつ、面識のない申請人について、本人確認情報を提供するために確認をする場合において、運転免許証の提示を受ける方法によるときは、運転免許証のほかに、官公庁から発行された書類であって申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるものの提示を受けなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法23条1項前段は、登記官は、申請人が同法22条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならないと定めている。そして、不動産登記規則70条8項は、「法第二十三条第一項の法務省令で定める期間は、通知を発送した日から二週間とする。ただし、法第二十二条に規定する登記義務者が外国に住所を有する場合には、四週間とする。」と定めている。
イ 誤り。不動産登記法23条1項後段は、「この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。」と定めている。申出をすべき期間内は、登記義務者からの申出がない限り、登記官は登記をすることができない。なお、同条3項は、同条1項及び2項の規定は、登記官が同法25条(10号を除く。)の規定により申請を却下すべき場合には適用しないと定めている。
ウ 正しい。不動産登記法23条2項は、「登記官は、前項の登記の申請が所有権に関するものである場合において、同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、同項の申請に基づいて登記をする前に、法務省令で定める方法により、同項の規定による通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知しなければならない。」と定めている。そして、不動産登記規則71条2項は、同法23条2項の法務省令で定める場合として、2号に「法第二十三条第二項の登記の申請の日が、同項の登記義務者の住所についてされた最後の変更の登記の申請に係る受付の日(当該最後の変更の登記が職権による登記である場合にあっては、当該最後の変更の登記の日)から三月を経過している場合」を掲げている。なお、同項1号は、住所についての変更の登記(更正の登記を含む。)の登記原因が、行政区画若しくはその名称又は字若しくはその名称についての変更又は錯誤若しくは遺漏である場合を掲げている。
エ 誤り。不動産登記規則71条2項は、不動産登記法23条2項の法務省令で定める場合として、3号に「法第二十三条第二項の登記義務者が法人である場合」を掲げている。登記義務者が法人である場合には、前の住所に宛てた通知は要しない。なお、同規則71条2項4号は、同規則72条1項に規定する本人確認情報の提供があった場合において、当該本人確認情報の内容により申請人が登記義務者であることが確実であると認められる場合を掲げている。
オ 誤り。不動産登記法23条4項1号は、当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるときは、同条1項の規定(事前通知)は適用しないと定めている。そして、不動産登記規則72条1項3号は、資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は当該申請人と面識がないときは、本人確認情報は、申請人から提示を受けた同条2項各号に掲げる書類の内容及び当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由を明らかにするものでなければならないと定め、同条2項1号は、その確認の方法として、運転免許証、個人番号カード、旅券等、在留カード、特別永住者証明書又は運転経歴証明書のうち「いずれか一以上の提示を求める方法」を掲げている。運転免許証の提示を受ける方法によるときは、運転免許証1つの提示で足りる。これに対し、同項2号は、国民健康保険、健康保険等の資格確認書(書面によって作成されたものに限る。)、介護保険の被保険者証等であって当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうち「いずれか二以上の提示を求める方法」を掲げている。なお、同項ただし書は、同項1号及び2号に掲げる書類等は、資格者代理人が提示を受ける日において有効なものに限ると定めている。また、不動産登記法23条4項2号は、当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人から当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるときも、同条1項の規定は適用しないと定めている。
ポイント:登記識別情報を提供することができないときは、登記官は登記義務者に事前通知をし、申出をすべき期間内は申出がない限り登記をすることができない(不動産登記法23条1項)。その期間は通知を発送した日から2週間、登記義務者が外国に住所を有する場合は4週間である(不動産登記規則70条8項)。所有権に関する登記の申請で、登記義務者の住所について変更の登記がされているときは前の住所にも通知をする(同法23条2項)が、住所の変更の登記原因が行政区画等の変更又は錯誤若しくは遺漏であるとき、最後の住所の変更の登記の申請の受付の日から3月を経過しているとき、登記義務者が法人であるとき、本人確認情報により登記義務者であることが確実と認められるときは要しない(同規則71条2項)。資格者代理人による本人確認情報の提供又は公証人の認証があり、登記官がその内容を相当と認めるときは事前通知をしない(同法23条4項)。面識のない申請人の確認は、運転免許証・個人番号カード等なら1つ以上、健康保険等の書類なら2つ以上の提示を求める方法などによる(同規則72条1項3号・2項)。「申出期間は国内2週間・外国4週間、前住所通知は3月経過と法人で不要、運転免許証は1つで足りる」と押さえる。
問題:
株式の併合に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。なお、株式会社は、種類株式発行会社ではなく、単元株式数を定款で定めていないものとする。
ア. 株式会社が株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の特別決議によって、併合の割合、効力発生日及び効力発生日における発行可能株式総数を定めなければならず、取締役は、当該株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
イ. 公開会社が株式の併合をする場合には、効力発生日における発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の4倍を超えることができないが、公開会社でない株式会社が株式の併合をする場合には、この制限はない。
ウ. 株式の併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する株式の全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
エ. 株式の併合をする株式会社は、効力発生日の2週間前までに、株主及びその登録株式質権者に対し、併合の割合、効力発生日等を通知し、又は公告しなければならない。
オ. 株式の併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生ずる場合において、株式買取請求をした株主は、効力発生日の前日までであれば、株式会社の承諾を得ることなく、その株式買取請求を撤回することができる。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。会社法180条2項は、「株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。」と定め、1号に「併合の割合」を、2号に「株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)」を、4号に「効力発生日における発行可能株式総数」を掲げている。同法309条2項は、同項各号に掲げる株主総会の決議は特別決議によらなければならないと定め、4号に「第百八十条第二項の株主総会」を掲げている。そして、同法180条4項は、「取締役は、第二項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。」と定めている。
イ 正しい。会社法180条3項は、「前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。」と定めている。なお、同法182条2項は、「株式の併合をした株式会社は、効力発生日に、第百八十条第二項第四号に掲げる事項についての定めに従い、当該事項に係る定款の変更をしたものとみなす。」と定めている。
ウ 誤り。会社法182条の4第1項は、「株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」と定めている。買取りを請求することができるのは、自己の有する株式の全部ではなく、そのうち1株に満たない端数となるものの全部である。なお、同条4項は、株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならないと定めている。
エ 誤り。会社法181条1項は、株式会社は、効力発生日の2週間前までに、株主及びその登録株式質権者に対し、同法180条2項各号に掲げる事項を通知しなければならないと定め、同法181条2項は、この通知は公告をもってこれに代えることができると定めている。しかし、同法182条の4第3項は、「株式会社が株式の併合をする場合における株主に対する通知についての第百八十一条第一項の規定の適用については、同項中「二週間」とあるのは、「二十日」とする。」と定めている。したがって、株式の併合をする株式会社は、株主に対しては、効力発生日の2週間前までではなく、20日前までに通知(又はこれに代わる公告)をしなければならない。本肢は、株主に対する通知も2週間前までとしている点で誤りである(同項の読み替えは株主に対する通知についてのものであり、登録株式質権者に対する通知はその対象とされていない)。なお、同法182条の2第1項は、株式の併合をする株式会社は、同項各号に掲げる日のいずれか早い日から効力発生日後6箇月を経過する日までの間、同法180条2項各号に掲げる事項等を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならないと定めている。
オ 誤り。会社法182条の4第6項は、「株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。」と定めている。株式会社の承諾を得なければ、株式買取請求を撤回することはできない。なお、同法182条の3は、「株式の併合が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、当該株式の併合をやめることを請求することができる。」と定めている。
ポイント:株式の併合は、その都度、株主総会の特別決議で併合の割合、効力発生日、効力発生日における発行可能株式総数等を定めて行い、取締役は株式の併合を必要とする理由を説明しなければならない(会社法180条2項・4項、309条2項4号)。効力発生日における発行可能株式総数は、公開会社では発行済株式の総数の4倍を超えることができず(同法180条3項)、効力発生日にその定めに従って定款変更をしたものとみなされる(同法182条2項)。株主及び登録株式質権者への通知又は公告は効力発生日の2週間前まで(同法181条)とされているが、株主に対する通知(又はこれに代わる公告)は20日前までとなる(同法182条の4第3項)。端数が生ずる場合、反対株主は、1株に満たない端数となるものの全部について、効力発生日の20日前の日から前日までの間に買取りを請求することができ、その撤回には会社の承諾を要する(同条1項・4項・6項)。法令又は定款に違反する株式の併合で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、差止めを請求することができ(同法182条の3)、事前の書面等の備置きも必要である(同法182条の2第1項)。「株主への通知は20日前、買い取ってもらえるのは端数となる部分だけ、撤回には会社の承諾」と押さえる。
問題:
文書提出命令に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 民事訴訟法220条4号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。
イ. 裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、必要があると認めるときに限り、その第三者を審尋すれば足りる。
ウ. 銀行の貸出稟議書は、特段の事情がない限り、民事訴訟法220条4号ニに規定する「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとするのが判例である。
エ. 裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が民事訴訟法220条4号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができるが、この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
オ. 第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する申立人の主張を真実と認めることができる。
答え:
正しいものは、ア・ウ・エの3つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法221条2項は、「前条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。」と定めている。なお、同条1項は、文書提出命令の申立ては、文書の表示(1号)、文書の趣旨(2号)、文書の所持者(3号)、証明すべき事実(4号)、文書の提出義務の原因(5号)を明らかにしてしなければならないと定めている。
イ 誤り。民事訴訟法223条2項は、「裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。」と定めている。第三者に対して文書の提出を命じようとする場合の審尋は、必要的である。なお、同条7項は、「文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と定めている。
ウ 正しい。最高裁平成11年11月12日決定(民集53巻8号1787頁)は、ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとしたうえで、銀行の貸出稟議書は、特段の事情がない限り、これに当たるとした(判旨の要約)。同決定の当時、この文書は民事訴訟法220条4号ハに規定されていたが、平成13年法律第96号による改正で現在の同号ニとなった。現行の同号ニは、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)」と定めている。
エ 正しい。民事訴訟法223条6項は、「裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。」と定めている。同項の対象は同法220条4号イからニまでであり、同号ホ(刑事事件に係る訴訟に関する書類等)は含まれていない。
オ 誤り。民事訴訟法225条1項は、「第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。」と定め、同条2項は、この決定に対しては即時抗告をすることができると定めている。文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができるのは、当事者が文書提出命令に従わないときであり(同法224条1項)、第三者が従わない場合の制裁は過料である。なお、同条2項は、当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも同条1項と同様とすると定め、同条3項は、これらの場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができると定めている。
ポイント:民事訴訟法220条4号を文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合に限られ(同法221条2項)、第三者に提出を命じようとするときはその第三者を審尋しなければならず(同法223条2項)、申立てについての決定には即時抗告ができる(同条7項)。銀行の貸出稟議書は、特段の事情がない限り、専ら文書の所持者の利用に供するための文書(同法220条4号ニ)に当たるとするのが判例である(最決平成11年11月12日)。同号イからニまでの該当性を判断するため、裁判所は文書の所持者に提示をさせることができ、何人もその開示を求めることができない(同法223条6項。同号ホは対象外)。当事者が文書提出命令に従わないとき等は、文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができ、一定の場合には証明すべき事実に関する主張も真実と認めることができる(同法224条)が、第三者が従わないときは20万円以下の過料である(同法225条1項)。「第三者への提出命令は審尋が必要、提示させた文書は誰も見られない、真実擬制は当事者だけ・第三者は過料」と押さえる。
問題:
司法書士法に規定する懲戒に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 司法書士が司法書士法又は同法に基づく命令に違反したときは、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は、当該司法書士に対し、戒告、2年以内の業務の停止又は業務の禁止の処分をすることができる。
イ. 司法書士法人が司法書士法又は同法に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士法人に対し、戒告、2年以内の業務の全部の停止又は解散の処分をすることができるが、業務の一部の停止の処分をすることはできない。
ウ. 何人も、司法書士に司法書士法又は同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができ、この通知があったときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。
エ. 法務大臣は、司法書士に対して戒告の処分をしようとするときは、弁明の機会の付与の手続によることができ、聴聞を行うことを要しない。
オ. 懲戒の事由があったときから7年を経過したときは、司法書士又は司法書士法人に対する懲戒の処分の手続を開始することができない。
答え:
正しいものは、ウ・オの2つである。
解説:
ア 誤り。司法書士法47条は、「司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。」と定め、1号に「戒告」を、2号に「二年以内の業務の停止」を、3号に「業務の禁止」を掲げている。司法書士に対する懲戒の処分をするのは、法務局又は地方法務局の長ではなく、法務大臣である。なお、懲戒権者は、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年法律第29号)により、法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改められた。
イ 誤り。司法書士法48条1項は、「司法書士法人がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士法人に対し、次に掲げる処分をすることができる。」と定め、1号に「戒告」を、2号に「二年以内の業務の全部又は一部の停止」を、3号に「解散」を掲げている。司法書士法人に対しては、業務の一部の停止の処分をすることもできる。なお、同条2項は、同条1項の規定による処分の手続に付された司法書士法人は、清算が結了した後においても、「この章の規定の適用については」(同条が置かれた懲戒の章の規定の適用については)、当該手続が結了するまで、なお存続するものとみなすと定めている。
ウ 正しい。司法書士法49条1項は、「何人も、司法書士又は司法書士法人にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。」と定め、同条2項は、「前項の規定による通知があつたときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。」と定めている。なお、同法51条は、法務大臣は、同法47条又は48条1項の規定により処分をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもって公告しなければならないと定めている。
エ 誤り。司法書士法49条3項は、「法務大臣は、第四十七条第一号若しくは第二号又は前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる処分をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。」と定めている。戒告の処分をしようとするときも、聴聞を行わなければならない。なお、同条4項は、同条3項に規定する処分又は同法47条3号若しくは48条1項3号の処分に係る行政手続法15条1項の通知は、聴聞の期日の1週間前までにしなければならないと定め、司法書士法49条5項は、聴聞の期日における審理は、当該司法書士又は当該司法書士法人から請求があったときは、公開により行わなければならないと定めている。
オ 正しい。司法書士法50条の2は、「懲戒の事由があつたときから七年を経過したときは、第四十七条又は第四十八条第一項の規定による処分の手続を開始することができない。」と定めている。なお、同法50条1項は、法務大臣は、司法書士に対して同法47条各号に掲げる処分をしようとする場合においては、行政手続法15条1項の通知を発送し、又は同条4項前段の措置をとった後直ちに日本司法書士会連合会にその旨を通告しなければならないと定め、司法書士法50条2項は、日本司法書士会連合会は、その通告を受けた場合においては、法務大臣から処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでは、当該司法書士について同法15条1項1号又は16条1項各号の規定による登録の取消しをすることができないと定めている。
ポイント:司法書士に対する懲戒は戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の3種類で、懲戒権者は法務大臣である(司法書士法47条)。司法書士法人に対する懲戒は戒告、2年以内の業務の全部又は一部の停止、解散であり、処分の手続に付された司法書士法人は、清算結了後も、懲戒の章の規定の適用については手続が結了するまで存続するものとみなされる(同法48条)。何人も法務大臣に違反の事実を通知して適当な措置を求めることができ、法務大臣は必要な調査をしなければならない(同法49条1項・2項)。戒告や業務の停止の処分をしようとするときも聴聞を行わなければならず、通知は聴聞の期日の1週間前までにし、請求があれば審理は公開で行う(同条3項〜5項)。司法書士に対して処分をしようとするときは日本司法書士会連合会に通告し、連合会は手続が結了するまでその司法書士の登録を取り消すことができない(同法50条)。懲戒の事由があったときから7年を経過すると処分の手続を開始することができず(同法50条の2)、処分をしたときは官報で公告する(同法51条)。「懲戒権者は法務大臣、法人は一部停止もあり、戒告でも聴聞、除斥期間は7年」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・保証) | 委託を受けた保証人への情報提供義務、期限の利益喪失時の通知義務、事業に係る債務の保証と公正証書による保証意思の表示、その適用除外、契約締結時の情報提供義務と取消し | 民法458条の2、458条の3、465条の6第1項・3項、465条の8第1項、465条の9、465条の10 |
| 第2問 | 不動産登記法(事前通知等) | 事前通知と申出期間、申出期間内の登記の禁止、前の住所への通知とその省略、資格者代理人による本人確認情報、公証人の認証 | 不動産登記法22条、23条1項〜4項、不動産登記規則70条8項、71条2項、72条1項・2項 |
| 第3問 | 会社法(株式の併合) | 株主総会の特別決議と理由の説明、発行可能株式総数の4倍規制、株主への通知期間、反対株主の株式買取請求とその撤回、差止請求、書面等の備置き | 会社法180条2項〜4項、181条、182条2項、182条の2第1項、182条の3、182条の4第1項・3項・4項・6項、309条2項4号 |
| 第4問 | 民事訴訟法(文書提出命令) | 一般的提出義務を原因とする申立ての補充性、第三者の審尋、専ら文書の所持者の利用に供するための文書(銀行の貸出稟議書)、所持者に提示をさせる手続と開示の禁止、不提出の効果と過料 | 民事訴訟法220条4号、221条、223条2項・6項・7項、224条、225条、最決平成11年11月12日 |
| 第5問 | 司法書士法(懲戒) | 懲戒の種類と懲戒権者、司法書士法人に対する懲戒、懲戒の請求と調査、聴聞、登録取消しの制限、除斥期間、公告 | 司法書士法47条、48条、49条、50条、50条の2、51条 |