問題:
贈与に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 贈与は、贈与者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずるものであるから、他人の財産を目的とする贈与は、その効力を生じない。
イ. 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができ、このことは、その履行の終わった部分についても同様である。
ウ. 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定される。
エ. 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負い、また、贈与の節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定が準用される。
オ. 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者の死亡によってその効力を失うが、受贈者の死亡によってはその効力を失わない。
答え:
正しいものは、ウ・エの2つである。
解説:
ア 誤り。民法549条は、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と定めている。同条は、贈与の目的を「ある財産」と定めており、贈与者自身の財産に限定していない。平成29年法律第44号による改正前の同条は、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し」と定めていたが、同改正により「ある財産」に改められた。したがって、他人の財産を目的とすることのみを理由として、贈与がその効力を生じないことにはならない。
イ 誤り。民法550条は、「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」と定めている。書面によらない贈与であっても、履行の終わった部分については、同条ただし書により、解除をすることができない。なお、平成29年法律第44号による改正前の同条は、書面によらない贈与は各当事者が「撤回することができる」と定めていたが、同改正により「解除をすることができる」に改められた。
ウ 正しい。民法551条1項は、「贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。」と定めている。なお、平成29年法律第44号による改正前の同項は、「贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。」と定めていた。
エ 正しい。民法551条2項は、「負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。」と定め、同法553条は、「負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。」と定めている。なお、同法554条は、「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。」と定めている。
オ 誤り。民法552条は、「定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。」と定めている。定期贈与は、贈与者の死亡だけでなく、受贈者の死亡によってもその効力を失う。
ポイント:贈与は、当事者の一方が「ある財産」を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生じ、その目的の文言は、平成29年法律第44号による改正で「自己の財産」から「ある財産」に改められた(民法549条)。書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができるが、履行の終わった部分については解除をすることができない(同法550条)。贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定され(同法551条1項)、負担付贈与の贈与者は、負担の限度で売主と同じく担保の責任を負い(同条2項)、負担付贈与には性質に反しない限り双務契約に関する規定が準用される(同法553条)。定期贈与は贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失い(同法552条)、死因贈与には性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用される(同法554条)。「目的は『ある財産』、解除は各当事者から・履行済みの部分は不可、定期贈与はどちらが死亡しても終わる」と押さえる。
問題:
民事保全法53条の規定による処分禁止の仮処分の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 所有権について民事保全法53条1項の規定による処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の移転の仮登記を申請する場合には、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。
イ. 所有権について民事保全法53条1項の規定による処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者の申請に基づいて当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは、登記官は、職権で、当該処分禁止の登記も抹消しなければならない。
ウ. 不動産に関する所有権以外の権利の設定についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記とともに保全仮登記をする方法により行い、保全仮登記に基づいて本登記をした場合には、当該本登記の順位は、当該保全仮登記の順位による。
エ. 地上権の設定についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行として保全仮登記がされた後、当該保全仮登記に係る仮処分の債権者が本登記を申請する場合には、当該債権者は、当該保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れる土地の所有権を目的とする抵当権の設定の登記の抹消を単独で申請することができる。
オ. 仮処分の債権者が処分禁止の登記に後れる登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならず、この通知を、これを発する時のその権利者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発したときは、その通知は、遅くとも、これを発した日から2週間を経過した時に到達したものとみなされる。
答え:
誤っているものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記法111条1項は、「所有権について民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(同条第二項に規定する保全仮登記(以下「保全仮登記」という。)とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。」と定めている。同項の所有権の登記からは仮登記が除かれているから、仮処分の債権者が所有権の移転の仮登記を申請する場合には、同項により処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することはできない。
イ 正しい。不動産登記法111条3項は、「登記官は、第一項(前項において準用する場合を含む。)の申請に基づいて当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときは、職権で、当該処分禁止の登記も抹消しなければならない。」と定めている。なお、同条2項は、同条1項の規定を、所有権以外の権利について処分禁止の登記がされた後、仮処分の債権者が仮処分の債務者を登記義務者とする当該権利の移転又は消滅に関し登記(仮登記を除く。)を申請する場合について準用している。
ウ 正しい。民事保全法53条2項は、「不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。」と定めている。そして、不動産登記法112条は、「保全仮登記に基づいて本登記をした場合は、当該本登記の順位は、当該保全仮登記の順位による。」と定めている。なお、同法114条は、「登記官は、保全仮登記に基づく本登記をするときは、職権で、当該保全仮登記とともにした処分禁止の登記を抹消しなければならない。」と定めている。
エ 誤り。不動産登記法113条は、「不動産の使用又は収益をする権利について保全仮登記がされた後、当該保全仮登記に係る仮処分の債権者が本登記を申請する場合においては、当該債権者は、所有権以外の不動産の使用若しくは収益をする権利又は当該権利を目的とする権利に関する登記であって当該保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れるものの抹消を単独で申請することができる。」と定めている。同条により単独で抹消を申請することができるのは、所有権以外の不動産の使用若しくは収益をする権利又は当該権利を目的とする権利に関する登記に限られる。土地の所有権を目的とする抵当権の設定の登記は、これに当たらないから、同条により単独で抹消を申請することはできない。民事保全法58条4項も、抹消することができる登記を「不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条第一項の処分禁止の登記に後れるもの」と定めている。
オ 誤り。民事保全法59条1項は、「仮処分の債権者が前条第二項又は第四項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から一週間を経過した時に到達したものとみなす。」と定めている。到達したものとみなされるのは、発した日から2週間ではなく、1週間を経過した時である。
ポイント:不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は処分禁止の登記をする方法により行い、所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権の保全では、処分禁止の登記とともに保全仮登記をする方法による(民事保全法53条1項・2項)。所有権についての処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。)の後、仮処分の債権者が債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請するときは、処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができ(不動産登記法111条1項。所有権以外の権利の移転又は消滅に関する登記にも準用=同条2項)、その抹消をするときは登記官が職権で処分禁止の登記も抹消する(同条3項)。保全仮登記に基づく本登記の順位は保全仮登記の順位により(同法112条)、本登記をするときは登記官が職権で処分禁止の登記を抹消する(同法114条)。使用収益をする権利の保全仮登記に基づく本登記の場合に単独で抹消できるのは、所有権以外の使用収益をする権利又はこれを目的とする権利に関する後れる登記に限られる(同法113条、民事保全法58条4項)。後れる登記を抹消するには、あらかじめ登記の権利者に通知しなければならず、登記簿上の住所等に宛てて発した通知は、遅くとも発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなされる(民事保全法59条)。「単独抹消は本登記(仮登記は不可)とセット、処分禁止の登記の抹消は職権、使用収益権の保全仮登記で消せるのは使用収益権系の登記だけ、通知のみなし到達は1週間」と押さえる。
問題:
会計監査人に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 会計監査人は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされる。
イ. 会計監査人が欠けた場合には、任期の満了により退任した会計監査人は、新たに選任された会計監査人が就任するまで、なお会計監査人としての権利義務を有する。
ウ. 監査役設置会社(監査役会設置会社を除く。)において、監査役が2人以上ある場合には、監査役は、会計監査人が職務上の義務に違反したときは、監査役の過半数をもって、その会計監査人を解任することができる。
エ. 監査役設置会社(監査役会設置会社を除く。)において、監査役が2人以上ある場合には、株主総会に提出する会計監査人の選任に関する議案の内容は、監査役の過半数をもって決定する。
オ. 公認会計士が一時会計監査人の職務を行うべき者として選任された場合において、その就任による変更の登記の申請書には、その選任に関する書面及び就任を承諾したことを証する書面のほか、その者が公認会計士であることを証する書面を添付しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。会社法338条1項は、「会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」と定め、同条2項は、「会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。」と定めている。なお、同条3項は、会計監査人設置会社が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了すると定めている。
イ 誤り。会社法346条1項は、「役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。」と定めている。同法329条1項は、「役員」を「取締役、会計参与及び監査役」をいうものとしており、会計監査人は役員に含まれないから、同法346条1項は会計監査人には適用されない。会計監査人については、同条4項が、「会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。」と定めている。
ウ 誤り。会社法340条1項は、監査役は、会計監査人が同項各号のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができると定め、1号に「職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。」を掲げている。そして、同条2項は、「前項の規定による解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければならない。」と定めている。監査役が2人以上ある場合の解任は、監査役の過半数ではなく、監査役の全員の同意によって行わなければならない。なお、同条3項は、同条1項の規定により会計監査人を解任したときは、監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、監査役の互選によって定めた監査役)は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければならないと定めている。
エ 正しい。会社法344条1項は、「監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。」と定め、同条2項は、「監査役が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。」と定めている。なお、同条3項は、監査役会設置会社においては、同条1項の「監査役」を「監査役会」と読み替えている。
オ 正しい。商業登記法55条1項は、「会社法第三百四十六条第四項の一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。」と定め、1号に「その選任に関する書面」を、2号に「就任を承諾したことを証する書面」を、3号に「その者が法人であるときは、前条第二項第二号に掲げる書面。ただし、同号ただし書に規定する場合を除く。」を、4号に「その者が法人でないときは、その者が公認会計士であることを証する書面」を掲げている。なお、会社法911条3項20号は、同法346条4項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称を登記事項としている。
ポイント:会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり、その定時株主総会で別段の決議がなければ再任されたものとみなされ(会社法338条1項・2項)、会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止したときは、その定款変更の効力発生時に任期が満了する(同条3項)。会計監査人は「役員」(同法329条1項)に含まれないから、権利義務の規定(同法346条1項)は適用されず、欠員が生じて遅滞なく選任されないときは、監査役(監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない(同条4項・6項〜8項)。監査役設置会社(監査役会設置会社を除く。)において、監査役による解任は、職務上の義務違反等の事由があるときに限られ、監査役が2人以上あれば全員の同意を要する(同法340条1項・2項)のに対し、株主総会に提出する選任・解任・不再任の議案の内容は、監査役が2人以上あれば過半数をもって決定する(同法344条1項・2項)。一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記には、選任に関する書面、就任承諾書面のほか、法人でなければ公認会計士であることを証する書面を添付する(商業登記法55条1項)。「解任は全員の同意、議案の決定は過半数、権利義務の規定は会計監査人に及ばず監査役が一時会計監査人を選ぶ」と押さえる。
問題:
民事訴訟法に規定する再審に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 確定した終局判決に再審の事由がある場合であっても、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、再審の訴えをもって不服を申し立てることができない。
イ. 証人の虚偽の陳述が判決の証拠となったことを理由とする再審の訴えは、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、提起することができる。
ウ. 控訴審において事件につき本案判決をしたときであっても、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができる。
エ. 再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならず、この期間の定めは、不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触することを理由とする再審の訴えについても適用される。
オ. 裁判所は、再審の事由がない場合には、判決で、再審の請求を棄却しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イの2つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法338条1項は、「次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。」と定めている。
イ 正しい。民事訴訟法338条1項7号は、「証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。」を掲げ、同条2項は、「前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」と定めている。
ウ 誤り。民事訴訟法338条3項は、「控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。」と定めている。なお、同法340条1項は、「再審の訴えは、不服の申立てに係る判決をした裁判所の管轄に専属する。」と定め、同条2項は、「審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する。」と定めている。
エ 誤り。民事訴訟法342条1項は、「再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内に提起しなければならない。」と定め、同条2項は、「判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から五年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。」と定めている。そして、同条3項は、「前二項の規定は、第三百三十八条第一項第三号に掲げる事由のうち代理権を欠いたこと及び同項第十号に掲げる事由を理由とする再審の訴えには、適用しない。」と定めている。同法338条1項10号は、「不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。」であるから、これを理由とする再審の訴えには、30日の不変期間の定めは適用されない。
オ 誤り。民事訴訟法345条2項は、「裁判所は、再審の事由がない場合には、決定で、再審の請求を棄却しなければならない。」と定めている。再審の請求の棄却は、判決ではなく決定でする。なお、同条1項は、再審の訴えが不適法である場合には、決定で、これを却下しなければならないと定め、同法346条1項は、「裁判所は、再審の事由がある場合には、再審開始の決定をしなければならない。」と定め、同条2項は、その決定をする場合には相手方を審尋しなければならないと定め、同法347条は、同法345条1項及び2項並びに346条1項の決定に対しては、即時抗告をすることができると定めている。
ポイント:再審の訴えは、確定した終局判決に民事訴訟法338条1項各号の事由がある場合に提起することができるが、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又は知りながら主張しなかったときは提起することができない(同項)。4号から7号までの事由(証人等の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと〔7号〕など)は、有罪の判決若しくは過料の裁判の確定等を要件とし(同条2項)、控訴審で本案判決をしたときは第一審判決に対する再審の訴えは提起できない(同条3項)。再審の訴えは不服の申立てに係る判決をした裁判所の専属管轄に属する(同法340条1項)。再審期間は再審の事由を知った日から30日の不変期間と判決確定日等から5年であるが、代理権の欠缺(3号のうち代理権を欠いたこと)と確定判決との抵触(10号)を理由とする場合には適用されない(同法342条)。不適法な再審の訴えの却下、再審の請求の棄却、再審開始はいずれも決定でし、再審開始の決定には相手方の審尋を要し、これらの決定には即時抗告をすることができる(同法345条1項・2項、346条、347条)。「控訴・上告で主張した事由や知りながら主張しなかった事由は再審に使えない、期間制限がないのは代理権欠缺と確定判決との抵触、却下・請求棄却・再審開始は決定」と押さえる。
問題:
供託規則に規定する供託の申請手続に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 登記された法人が供託しようとするときは、代表者の資格を証する登記事項証明書を供託書に添付しなければならない。
イ. 供託書に記載した供託金額については、訂正、加入又は削除をしてはならない。
ウ. 供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができ、この場合においては、その旨を供託書に記載しなければならない。
エ. 法人でない社団であって代表者の定めのあるものが供託しようとするときは、当該社団の定款及び代表者の資格を証する書面を提示すれば足り、これらを供託書に添付することを要しない。
オ. 賃料その他の継続的給付に係る金銭の供託をするために供託書を提出する者は、供託カードの交付の申出をすることができるが、供託カードの交付を受けた者であっても、最後に供託カードを提示して記載事項を簡略にした供託書による供託をした日から2年を経過したときは、その簡略な記載による供託をすることができない。
答え:
正しいものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。供託規則14条1項は、「登記された法人が供託しようとするときは、代表者の資格を証する登記事項証明書を提示しなければならない。この場合においては、その記載された代表者の資格につき登記官の確認を受けた供託書を提出して、代表者の資格を証する登記事項証明書の提示に代えることができる。」と定めている。登記された法人の代表者の資格を証する登記事項証明書は、提示しなければならないものであり、供託書に添付しなければならないものではない。これに対し、同条2項は、「前項の法人以外の法人が供託しようとするときは、代表者の資格を証する書面を供託書に添付しなければならない。」と定めている。なお、令和4年9月1日からは、供託規則の一部を改正する省令(令和4年法務省令第28号)による改正と登記情報連携の仕組みの構築により、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律11条の規定に基づき、登記された法人の代表者の資格を証する登記事項証明書(同規則14条4項の支配人その他登記のある代理人の権限を証する登記事項証明書等を含む。)の添付又は提示を省略することができるものとされている(法務省ウェブサイト「登記事項証明書の添付省略の取扱い等の開始について(令和4年9月1日施行分)」。供託申請の際にその法人の登記が申請され、登記が完了していない場合などを除く。)。もっとも、同規則14条1項が定めているのは提示であって添付ではないから、本肢が誤りであることに変わりはない。
イ 正しい。供託規則6条6項は、「供託書、供託通知書、代供託請求書、附属供託請求書、供託有価証券払渡請求書又は供託有価証券利札請求書に記載した供託金額、有価証券の枚数及び総額面又は請求利札の枚数については、訂正、加入又は削除をしてはならない。」と定めている。なお、同条4項は、同条1項の書面につき文字の訂正、加入又は削除をするときは、二線を引いてその近接箇所に正書し、その字数を欄外に記載して押印し、訂正又は削除をした文字はなお読むことができるようにしておかなければならないと定めている。
ウ 正しい。供託規則16条1項は、「供託者が被供託者(民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百六十六条の二第一項又は第四百六十六条の三の規定による供託をした場合にあつては、譲渡人を含む。以下この条、次条第四項、第十八条第三項及び第二十条第二項において同じ。)に供託の通知をしなければならない場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができる。この場合においては、その旨を供託書に記載しなければならない。」と定めている。なお、同条2項は、この請求をするときは、供託者は、被供託者の数に応じて、送付に要する費用に相当する郵便切手等を付した封筒を供託書に添付しなければならないと定めている。
エ 誤り。供託規則14条3項は、「法人でない社団又は財団であつて、代表者又は管理人の定めのあるものが供託しようとするときは、当該社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証する書面を供託書に添付しなければならない。」と定めている。法人でない社団の定款及び代表者の資格を証する書面は、提示では足りず、供託書に添付しなければならない。なお、同条4項は、代理人によって供託しようとする場合には、代理人の権限を証する書面を提示しなければならないと定めている。
オ 正しい。供託規則13条の4第1項本文は、「賃料、給料その他の継続的給付に係る金銭の供託をするために供託書を提出する者は、供託カードの交付の申出をすることができる。」と定めている。同条4項は、供託カードの交付を受けた者が、当該供託カードを提示して、当該継続的給付について供託をしようとするときは、同規則13条2項の規定にかかわらず、供託書には、供託カード番号、供託者の氏名又は名称等の同項各号に掲げる事項を記載すれば足りると定め、同条5項は、「前項の規定は、次の各号に掲げる場合には、適用しない。」と定め、1号に「最後に同項の規定による供託をした日から二年を経過したとき。」を、2号に「第十三条第二項第一号又は第二号に掲げる事項に変更があつたとき。」を掲げている。
ポイント:供託書に記載した供託金額等は訂正、加入又は削除をすることができない(供託規則6条6項)。代表者等の資格を証する書面の扱いは、登記された法人なら登記事項証明書の提示(登記官の確認を受けた供託書の提出で代えることができる。)、それ以外の法人なら代表者の資格を証する書面の添付、法人でない社団又は財団なら定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証する書面の添付であり、代理人の権限を証する書面は提示である(同規則14条1項〜4項)。もっとも、令和4年9月1日からは、登記された法人の代表者の資格を証する登記事項証明書等は、登記情報連携により添付又は提示を省略することができる(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律11条、令和4年法務省令第28号)。供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には、供託官に供託通知書の発送を請求することができ、その旨を供託書に記載し、郵便切手等を付した封筒を添付する(同規則16条1項・2項)。継続的給付に係る金銭の供託では供託カードの交付の申出ができ、カードを提示すれば供託書の記載を簡略にできるが、最後にその方法で供託をした日から2年を経過したとき、又は供託者若しくは代理人の氏名及び住所等に変更があったときは、その簡略化は適用されない(同規則13条の4第1項・4項・5項)。「登記された法人と代理人は提示、登記のない法人と法人でない社団は添付、供託金額は訂正不可、供託カードの簡略記載は2年で切れる」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・贈与) | 贈与の成立と目的(「ある財産」)、書面によらない贈与の解除、贈与者の引渡義務の推定、負担付贈与の担保責任と双務契約の規定の準用、定期贈与の失効、死因贈与 | 民法549条、550条、551条1項・2項、552条、553条、554条 |
| 第2問 | 不動産登記法(処分禁止の仮処分の登記) | 処分禁止の登記と保全仮登記、処分禁止の登記に後れる登記の単独抹消(仮登記の除外)、処分禁止の登記の職権抹消、保全仮登記に基づく本登記の順位、使用収益権の保全仮登記と抹消できる登記の範囲、抹消の通知とみなし到達 | 不動産登記法111条1項〜3項、112条、113条、114条、民事保全法53条1項・2項、58条4項、59条1項・2項 |
| 第3問 | 会社法・商業登記法(会計監査人) | 任期と再任の擬制、権利義務の規定の不適用と一時会計監査人、監査役による解任と全員の同意、選任議案の内容の決定、一時会計監査人の就任登記の添付書面 | 会社法329条1項、338条1項〜3項、340条1項〜3項、344条1項〜3項、346条1項・4項・6項〜8項、911条3項20号、商業登記法55条1項 |
| 第4問 | 民事訴訟法(再審) | 再審の補充性、4号〜7号の事由と有罪判決等の要件、控訴審の本案判決と第一審判決、専属管轄、再審期間とその適用除外、再審の訴えの却下・請求棄却・再審開始の決定と即時抗告 | 民事訴訟法338条1項〜3項、340条1項・2項、342条1項〜3項、345条1項・2項、346条1項・2項、347条 |
| 第5問 | 供託法(供託の申請手続) | 供託書の記載の訂正の禁止、代表者等の資格を証する書面の提示と添付、代理人の権限を証する書面、供託通知書の発送の請求、供託カード | 供託規則6条4項・6項、13条の4第1項・4項・5項、14条1項〜4項、16条1項・2項 |