問題:

請負に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 仕事の目的物の引渡しを要しない請負においては、請負人は、仕事を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

イ. 請負が仕事の完成前に解除された場合には、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときであっても、請負人は、報酬を請求することができない。

ウ. 注文者の与えた指図によって生じた仕事の目的物の種類又は品質に関する不適合については、請負人がその指図が不適当であることを知りながら告げなかったときであっても、注文者は、その不適合を理由として、報酬の減額の請求をすることができない。

エ. 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないが、請負人が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

オ. 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人は、仕事を完成した後であっても、契約の解除をすることができる。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

ア 正しい。民法633条は、「報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。」と定めている。同法624条1項は、「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。」と定めているから、仕事の目的物の引渡しを要しない請負においては、請負人は、仕事を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

イ 誤り。民法634条は、「次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。」と定め、1号に「注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。」を、2号に「請負が仕事の完成前に解除されたとき。」を掲げている。請負が仕事の完成前に解除された場合であっても、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分は仕事の完成とみなされ、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。

ウ 誤り。民法636条は、「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。」と定めている。請負人がその指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、同条ただし書により、注文者は、その不適合を理由として報酬の減額の請求をすることができる。

エ 正しい。民法637条1項は、「前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」と定め、同条2項は、「前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。」と定めている。なお、売買については、同法566条が、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主はその不適合を理由とする履行の追完の請求等をすることができず、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときはこの限りでないと、同じ構造の定めを置いている。

オ 誤り。民法642条1項は、「注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。」と定めている。仕事を完成した後は、請負人は、同項ただし書により、契約の解除をすることができない。なお、同条2項は、同条1項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができると定めている。また、注文者の側からの解除については、同法641条が、「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」と定めている。

ポイント:請負の報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則であり、物の引渡しを要しないときは、仕事を終わった後でなければ請求することができない(民法633条・624条1項)。注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき及び請負が仕事の完成前に解除されたときは、既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受ける限り、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる(同法634条)。注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由とする担保責任の追及はできないが、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない(同法636条)。注文者は不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しなければ担保責任を追及することができないが、引渡し(引渡しを要しない場合は仕事の終了)の時に請負人が悪意又は重過失であったときは、この期間制限は適用されない(同法637条)。注文者は仕事の完成前であればいつでも損害を賠償して解除することができ(同法641条)、注文者が破産手続開始の決定を受けたときは請負人又は破産管財人が解除することができるが、請負人は仕事の完成後は解除することができない(同法642条1項)。「634条は解除の場合も可分な部分の利益に応じて報酬、642条の請負人の解除は仕事の完成前に限る」と押さえる。


問題:

不動産登記法に規定する登記官の処分に対する審査請求に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 登記官の処分に不服がある者は、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができ、審査請求は、登記官を経由してしなければならない。

イ. 登記官の処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、正当な理由がない限り、することができない。

ウ. 登記官は、処分についての審査請求を理由があると認めるときは、相当の処分をしなければならず、これに当たらない場合には、審査請求の日から3日以内に、意見を付して事件を当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。

エ. 登記官を監督する法務局又は地方法務局の長は、処分についての審査請求を理由があると認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人に通知しなければならないが、登記上の利害関係人に通知することは要しない。

オ. 登記官の処分についての審査請求においては、審査庁は、審査請求人の申立てがあった場合であっても、行政不服審査法の規定による執行停止をすることはできない。

答え:

正しいものは、ア・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記法156条1項は、「登記官の処分に不服がある者又は登記官の不作為に係る処分を申請した者は、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる。」と定め、同条2項は、「審査請求は、登記官を経由してしなければならない。」と定めている。

イ 誤り。行政不服審査法18条1項は、「処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」と定めているが、不動産登記法158条は、行政不服審査法18条を含む同条所定の規定は、「第百五十六条第一項の審査請求については、適用しない。」と定めている。登記官の処分についての審査請求には、行政不服審査法18条の審査請求期間の定めは適用されない。

ウ 正しい。不動産登記法157条1項は、「登記官は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、相当の処分をしなければならない。」と定め、同条2項前段は、「登記官は、前項に規定する場合を除き、審査請求の日から三日以内に、意見を付して事件を前条第一項の法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。」と定めている。なお、同項後段は、当該法務局又は地方法務局の長は、当該意見を行政不服審査法11条2項に規定する審理員に送付するものとすると定めている。

エ 誤り。不動産登記法157条3項は、「前条第一項の法務局又は地方法務局の長は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか登記上の利害関係人に通知しなければならない。」と定めている。審査請求人のほか、登記上の利害関係人にも通知しなければならない。なお、同条4項は、「前条第一項の法務局又は地方法務局の長は、前項の処分を命ずる前に登記官に仮登記を命ずることができる。」と定めている。

オ 正しい。行政不服審査法25条1項は、「審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」と定め、同条2項以下は、審査庁が、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(執行停止)をとることができる場合等を定めている。もっとも、不動産登記法158条は、行政不服審査法25条2項から7項までの規定は、不動産登記法156条1項の審査請求については、適用しないと定めている。適用除外とされているのは同条2項から7項までであり、審査請求が処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げないとする同条1項は除外されていない。そのため、登記官の処分についての審査請求がされても処分の効力等は妨げられず、行政不服審査法の規定による執行停止をすることもできない。

ポイント:登記官の処分に不服がある者又は登記官の不作為に係る処分を申請した者は、当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に、登記官を経由して審査請求をすることができる(不動産登記法156条)。登記官は、審査請求を理由があると認めるときは相当の処分をし、それ以外の場合は審査請求の日から3日以内に意見を付して事件を法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない(同法157条1項・2項)。法務局又は地方法務局の長は、審査請求を理由があると認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか登記上の利害関係人に通知しなければならず、処分を命ずる前に登記官に仮登記を命ずることができる(同条3項・4項)。この審査請求には、行政不服審査法18条(審査請求期間)、25条2項から7項まで(執行停止)等の規定は適用されない(不動産登記法158条)。供託官の処分に対する審査請求も、供託官を経由して監督法務局又は地方法務局の長にすること、行政不服審査法18条及び25条2項から7項まで等が適用されないことは同様であるが(供託法1条ノ4・1条ノ5・1条ノ9)、供託官が意見を付して送付する期間は「審査請求アリタル日ヨリ五日内」とされている(同法1条ノ6第2項)。「審査請求期間の制限なし・執行停止なし、登記官の意見送付は3日以内、通知先は登記上の利害関係人まで」と押さえる。


問題:

商業登記法に規定する商号の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては、本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

イ. 商人(会社を除く。)の商号の譲渡による変更の登記は、譲受人の申請によってするが、その申請書には、譲渡人の承諾書を添付すれば足り、商号の譲渡が営業とともにされたこと又は営業を廃止する場合にされたことを証する書面を添付することを要しない。

ウ. 営業を譲り受けた商人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記は、譲受人の申請によってし、その申請書には、譲渡人の承諾書を添付しなければならない。

エ. 登記した商号を廃止した者が当該商号の廃止の登記をしないときは、当該商号の登記に係る営業所の所在場所において同一の商号を使用しようとする者は、登記所に対し、当該商号の登記の抹消を申請することができ、その申請書には、当該所在場所において同一の商号を使用しようとする者であることを証する書面を添付しなければならない。

オ. 会社の商号の登記は、商号登記簿にする。

答え:

誤っているものは、イ・オの2つである。

解説:

ア 正しい。商業登記法27条は、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。」と定めている。同条により登記が制限されるのは、商号が同一であり、かつ、営業所(会社にあっては本店)の所在場所が同一である場合である。

イ 誤り。商業登記法30条1項は、「商号の譲渡による変更の登記は、譲受人の申請によつてする。」と定め、同条2項は、「前項の登記の申請書には、譲渡人の承諾書及び商法第十五条第一項の規定に該当することを証する書面を添付しなければならない。」と定めている。商法15条1項は、「商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。」と定めているから、申請書には、譲渡人の承諾書のほか、同項の規定に該当すること、すなわち商号の譲渡が営業とともにされたこと又は営業を廃止する場合にされたことを証する書面を添付しなければならない。なお、同条2項は、「前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と定めている。

ウ 正しい。商業登記法31条1項は、「商法第十七条第二項前段及び会社法第二十二条第二項前段の登記は、譲受人の申請によつてする。」と定め、同条2項は、「前項の登記の申請書には、譲渡人の承諾書を添付しなければならない。」と定めている。商法17条1項は、「営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。」と定め、同条2項前段は、「前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。」と定めている。なお、会社法22条2項前段は、事業を譲り受けた会社について、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合について、同様の定めを置いている。

エ 正しい。商業登記法33条1項は、同項各号に掲げる場合において、当該商号の登記をした者が当該各号に定める登記をしないときは、当該商号の登記に係る営業所(会社にあっては、本店)の所在場所において同一の商号を使用しようとする者は、登記所に対し、当該商号の登記の抹消を申請することができると定め、1号に「登記した商号を廃止したとき」(当該商号の廃止の登記)を掲げている。また、同条2項は、「前項の規定によつて商号の登記の抹消を申請する者は、申請書に当該商号の登記に係る営業所の所在場所において同一の商号を使用しようとする者であることを証する書面を添付しなければならない。」と定めている。なお、同条1項は、2号に「商号の登記をした者が正当な事由なく二年間当該商号を使用しないとき」(当該商号の廃止の登記)を、3号に「登記した商号を変更したとき」(当該商号の変更の登記)を、4号に「商号の登記に係る営業所を移転したとき」(当該営業所の移転の登記)を掲げている。

オ 誤り。商業登記法34条1項は、「会社の商号の登記は、会社の登記簿にする。」と定めている。同法6条は、登記所に備える商業登記簿として、1号に「商号登記簿」を掲げるほか、5号に「株式会社登記簿」を掲げる等、会社の種類ごとの登記簿を掲げている。会社の商号の登記は、商号登記簿ではなく、会社の登記簿にする。なお、同法34条2項は、「第二十八条、第二十九条並びに第三十条第一項及び第二項の規定は、会社については、適用しない。」と定めている。

ポイント:商号の登記は、他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、営業所(会社にあっては本店)の所在場所が同一であるときは、することができない(商業登記法27条)。商人の商号の譲渡による変更の登記は譲受人が申請し、申請書には譲渡人の承諾書と、営業とともにする譲渡又は営業を廃止する場合の譲渡であること(商法15条1項)を証する書面を添付する(商業登記法30条1項・2項)。営業又は事業の譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記(商法17条2項前段・会社法22条2項前段)も譲受人が申請し、譲渡人の承諾書を添付する(商業登記法31条)。商号の廃止・変更、正当な事由のない2年間の不使用、営業所の移転があったのに商号の登記をした者が登記をしないときは、同一の所在場所で同一の商号を使用しようとする者が、そのことを証する書面を添付して商号の登記の抹消を申請することができる(同法33条1項・2項)。会社の商号の登記は会社の登記簿にし、28条(営業所ごとの登記等)、29条、30条1項・2項は会社には適用されない(同法34条)。「申請するのは譲受人、承諾書は譲渡人、会社の商号は会社の登記簿」と押さえる。


問題:

民事執行法に規定する執行文に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 少額訴訟における確定判決により、これに表示された当事者のためにする強制執行は、執行文の付された債務名義の正本ではなく、その債務名義の正本に基づいて実施する。

イ. 執行証書についての執行文は、申立てにより、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の裁判所書記官が付与する。

ウ. 請求が確定期限の到来に係る場合には、執行文は、債権者がその期限の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

エ. 公証人がした執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、その公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。

オ. 債務名義が不動産の明渡しの請求権を表示したものであって、債務者を特定しないで執行文を付与することができる場合に当たるときは、債権者は、その執行文の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。

答え:

誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民事執行法25条本文は、「強制執行は、執行文の付された債務名義の正本(中略)に基づいて実施する。」と定め、同条ただし書は、「少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その債務名義の正本に基づいて実施する。」と定めている。少額訴訟における確定判決により、これに表示された当事者のためにする強制執行は、執行文の付与を要せず、その債務名義の正本に基づいて実施する。

イ 誤り。民事執行法26条1項は、「執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本(執行証書が電磁的記録をもつて作成されている場合にあつては、当該電磁的記録)を保存する公証人が付与する。」と定めている。執行証書についての執行文は、その原本を保存する公証人が付与する。なお、執行証書について執行文付与の訴えを提起する場合には、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)が管轄する(同法33条2項5号)。

ウ 誤り。民事執行法27条1項は、「請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り、付与することができる。」と定めているが、確定期限の到来については、同法30条1項が、「請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。」と定めている。確定期限の到来は、強制執行を開始するための要件として定められており、執行文の付与を受けるために、債権者がその期限の到来したことを証する文書を提出することを要するものではない。

エ 正しい。民事執行法32条1項は、「執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。」と定めている。なお、同条3項は、同条1項の規定による申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができると定め、同条4項は、その裁判に対しては、不服を申し立てることができないと定めている。

オ 誤り。民事執行法33条1項は、「第二十七条第一項又は第二項に規定する文書又は電磁的記録の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。」と定めている。同法27条3項は、債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令が執行されている場合等で、当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情があるときに、債務者を特定しないで執行文を付与することができると定めている。同項の規定により付与される執行文は、執行文付与の訴えの対象から除かれている。

ポイント:強制執行は執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施するのが原則であるが、少額訴訟における確定判決、仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決又は支払督促により、これに表示された当事者に対し又はその者のためにする強制執行は、執行文を要しない(民事執行法25条)。執行文は、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する(同法26条1項)。債権者の証明すべき事実の到来に係る場合はその事実の到来を証する文書等を提出したときに限り執行文を付与することができるが(同法27条1項)、確定期限の到来は強制執行の開始の要件である(同法30条1項)。執行文の付与の申立てに関する処分に対する異議は、裁判所書記官の処分についてはその所属する裁判所に、公証人の処分についてはその役場の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる(同法32条1項)。同法27条1項・2項の文書等を提出することができないときは執行文付与の訴えを提起することができるが、債務者を特定しないで付与される執行文(同条3項)は除かれる(同法33条1項)。「条件成就は執行文の段階、確定期限は執行開始の段階」と押さえる。


問題:

供託金の利息、供託された有価証券の利息等及び反対給付に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 供託金には、法務省令の定めるところにより利息を付さなければならず、供託金利息は、1年について0.0012パーセントとされている。

イ. 供託金利息は、供託金受入れの月及び払渡しの月についても付されるが、供託金に1万円未満の端数があるときは、その端数金額に対しては付されない。

ウ. 供託金利息は、元金と同時に払い渡すのが原則であるが、保証として金銭を供託した場合には、毎年、供託した月に応当する月の末日後に、同日までの供託金利息を払い渡すことができる。

エ. 保証金に代えて有価証券を供託した場合であっても、供託者は、その有価証券の利息又は配当金の払渡しを請求することはできない。

オ. 供託物を受け取るべき者が反対給付をすべき場合には、その者は、裁判、公正証書その他の公正の書面によってその給付があったことを証明しなければ供託物を受け取ることができず、供託者の書面によってこれを証明することはできない。

答え:

正しいものは、ア・ウの2つである。

解説:

ア 正しい。供託法3条は、「供託金ニハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ付スルコトヲ要ス」と定め、供託規則33条1項は、「供託金利息は、一年について〇・〇〇一二パーセントとする。」と定めている。

イ 誤り。供託規則33条2項は、「供託金利息は、供託金受入れの月及び払渡しの月については付さない。供託金の全額が一万円未満であるとき、又は供託金に一万円未満の端数があるときは、その全額又はその端数金額に対しても同様とする。」と定めている。供託金受入れの月及び払渡しの月については、供託金利息は付されない。

ウ 正しい。供託規則34条1項は、「供託金利息は、元金と同時に払い渡すものとする。ただし、元金の受取人と供託金利息の受取人とが異なる等元金と同時に払い渡すことができないときは、元金を払い渡した後に払い渡すものとする。」と定め、同条2項は、「保証として金銭を供託した場合には、前項の規定にかかわらず、毎年、供託した月に応当する月の末日後に、同日までの供託金利息を払い渡すことができる。」と定めている。

エ 誤り。供託法4条は、「供託所ハ供託物ヲ受取ルヘキ者ノ請求ニ因リ供託ノ目的タル有価証券ノ償還金、利息又ハ配当金ヲ受取リ供託物ニ代ヘ又ハ其従トシテ之ヲ保管ス但保証金ニ代ヘテ有価証券ヲ供託シタル場合ニ於テハ供託者ハ其利息又ハ配当金ノ払渡ヲ請求スルコトヲ得」と定めている。保証金に代えて有価証券を供託した場合には、同条ただし書により、供託者は、その利息又は配当金の払渡しを請求することができる。

オ 誤り。供託法10条は、「供託物ヲ受取ルヘキ者カ反対給付ヲ為スヘキ場合ニ於テハ供託者ノ書面又ハ裁判、公正証書其他ノ公正ノ書面ニ依リ其給付アリタルコトヲ証明スルニ非サレハ供託物ヲ受取ルコトヲ得ス」と定めている。反対給付があったことは、裁判、公正証書その他の公正の書面のほか、供託者の書面によっても証明することができる。なお、同法8条1項は、「供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ法務大臣ノ定ムル所ニ依リ其権利ヲ証明スルコトヲ要ス」と定めている。

ポイント:供託金には法務省令の定めるところにより利息を付さなければならず(供託法3条)、その利率は年0.0012パーセントであり(供託規則33条1項)、供託金受入れの月及び払渡しの月並びに1万円未満の全額又は端数金額には付さない(同条2項)。供託金利息は元金と同時に払い渡すのが原則であるが、元金と同時に払い渡すことができないときは元金の払渡し後に払い渡し、保証として金銭を供託した場合には毎年、供託した月に応当する月の末日後に同日までの利息を払い渡すことができる(同規則34条)。供託された有価証券の償還金、利息又は配当金は、供託物を受け取るべき者の請求により供託所が受け取って保管するが、保証金に代えて有価証券を供託した場合には、供託者がその利息又は配当金の払渡しを請求することができる(供託法4条)。供託物を受け取るべき者が反対給付をすべき場合には、供託者の書面又は裁判、公正証書その他の公正の書面によってその給付があったことを証明しなければ供託物を受け取ることができない(同法10条)。「受入れ・払渡しの月と1万円未満には利息なし、保証の供託は利息を毎年、反対給付の証明は供託者の書面でもよい」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権・請負) 報酬の支払時期、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬、注文者の材料・指図による不適合と担保責任の制限、不適合の通知期間、注文者による解除と注文者の破産による解除 民法566条、624条1項、633条、634条、636条、637条1項・2項、641条、642条1項・2項
第2問 不動産登記法(審査請求) 審査請求の相手方と経由、審査請求期間の不適用、登記官による相当の処分と意見の送付、法務局又は地方法務局の長による処分命令・通知・仮登記命令、執行停止の不適用 不動産登記法156条1項・2項、157条1項〜4項、158条、行政不服審査法18条1項、25条、供託法1条ノ4、1条ノ5、1条ノ6第2項、1条ノ9
第3問 商業登記法(商号の登記) 同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止、商号の譲渡による変更の登記と添付書面、営業譲渡の際の免責の登記、商号の登記の抹消、会社の商号の登記 商業登記法6条、27条、30条1項・2項、31条、33条1項・2項、34条1項・2項、商法15条、17条1項・2項、会社法22条2項
第4問 民事執行法(執行文) 執行文を要しない債務名義、執行文の付与機関、条件成就執行文と確定期限の到来、執行文の付与等に関する異議、執行文付与の訴えの対象 民事執行法25条、26条1項、27条1項・3項、30条1項、32条1項・3項・4項、33条1項・2項5号
第5問 供託法(供託金利息・反対給付) 供託金利息の利率と付さない期間・金額、供託金利息の払渡時期、供託有価証券の利息等の払渡請求、反対給付の証明 供託法3条、4条、8条1項、10条、供託規則33条1項・2項、34条1項・2項