この記事の要点

  • 限定承認をした人は、限定承認をした後5日以内に、亡くなった方の債権者などに向けて官報で公告しなければならず、請求を申し出てもらう期間は2か月を下ることができません(民法927条1項・4項)
  • 相続人が複数いる場合は、家庭裁判所が相続人の中から選ぶ「相続財産の清算人」が手続きを進め、この期限は「選任があった後10日以内」に読み替えられます(民法936条)
  • 申出期間が終わるまでは支払いを拒むことができ、終わったあとは債権者に債権額の割合に応じて支払い、遺言でもらう人(受遺者)への支払いはその後です(民法928条・929条・931条)

限定承認は「申述して終わり」ではない

結論からいうと、限定承認は家庭裁判所に申述したところがゴールではなく、その先に数日単位の短い期限で始まる清算手続きが控えています。限定承認の仕組みや、相続人全員で3か月以内に申述するという要件そのものは限定承認の解説記事で整理していますので、ここでは「その後に来る期限」に絞ります。

なお、本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

最初の期限は「5日以内」、共同相続なら「10日以内」

限定承認をした人(条文上は「限定承認者」)は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者(亡くなった方にお金を貸していた人など)と受遺者に対し、限定承認をしたことと、一定の期間内に請求を申し出るべきことを公告しなければなりません(民法927条1項)。公告は官報に掲載して行います(同条4項)。

公告には、期間内に申し出ないと支払いの対象から外される(除斥される)旨を書き添えます。ただし、すでに分かっている債権者・受遺者を外すことはできず、そうした相手には個別に申出の催告をしなければなりません(同条2項・3項)。

相続人が複数いる場合は、家庭裁判所が相続人の中から相続財産の清算人を選び、その人が相続人に代わって財産の管理と債務の支払いに必要な一切の行為をします(民法936条1項・2項)。このときの期限は「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と読み替えられます(同条3項)。

日数は、民法の原則どおり初日を数えず(民法140条)、末日の終わりで満了します(民法141条)。末日が休日のときに翌日へずれるのは「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」とされているため(民法142条)、休日をあてにせず前倒しで動くのが安全です。また、「限定承認をした後」の起点となる日は条文に日付の形では書かれていません。家庭裁判所から受理の知らせが届いてから公告の準備を始めるのでは間に合わないおそれがあるため、申述の段階で公告の文案と段取りを用意しておくのが期限管理の基本です。

申出期間は「2か月以上」、その間は支払いを待てる

公告で定める申出期間は、2か月を下ることができません(民法927条1項後段)。この期間が満了する前は、限定承認者は相続債権者・受遺者からの支払いの求めを拒むことができます(民法928条)。一部の債権者にだけ先に支払うと、ほかの債権者に支払えなくなるおそれがあるためです。

期間が終わったら、支払いには順番がある

申出期間が満了したら、相続財産の中から、次の順番で支払います。

  1. 申し出た債権者と、分かっている債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて支払う。ただし、ほかより先に支払いを受けられる権利(優先権)を持つ債権者の権利を害することはできません(民法929条)。支払期限がまだ来ていない債権も、この割合に従って支払います。条件付きの債権や存続期間が分からない債権は、家庭裁判所が選んだ鑑定人の評価に従います(民法930条)
  2. 受遺者への支払いは、債権者への支払いが終わった後です(民法931条)

支払いのために財産を売る必要があるときは、原則として競売にかけます(民法932条本文)。自宅などを手元に残す方法(同条ただし書)は限定承認の解説記事で触れています。期間内に申し出ず、限定承認者にも知られていなかった債権者・受遺者は、残った財産についてしか権利を行使できません(民法935条本文。相続財産に特別担保を持つ人は除かれます)。

期限を落とすと、自分の責任になりうる

公告や催告を怠ったり、申出期間中に一部の債権者だけに支払ったりして、ほかの債権者に支払えなくなったときは、限定承認者はその損害を賠償する責任を負います。上の順番(929条〜931条)に反して支払った場合も同じです(民法934条1項)。また、限定承認をした後でも、相続財産を隠したり、勝手に使ったり、わざと財産目録に載せなかったりすると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。相続人が複数で限定承認をしている場合については別に定めがあり、相続債権者は、相続財産から支払いを受けられなかった額について、その事情のある相続人に対し、その人の相続分に応じて請求できるとされています(民法937条)。

税金の面では、限定承認には「みなし譲渡所得課税」という独特の扱いがあり(所得税法59条1項1号)、亡くなった方の確定申告(準確定申告)が必要になることがあります。この申告にも期限があります(準確定申告の期限の記事)。税額や申告の要否は税理士にご相談ください。

まとめ

  • 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に官報で公告し、分かっている債権者には個別に催告する(民法927条)
  • 相続人が複数なら相続財産の清算人が手続きを担い、期限は選任後10日以内(民法936条)
  • 申出期間は2か月以上。満了までは支払いを拒め、満了後は債権者へ割合に応じて、受遺者はその後(民法928条〜931条)
  • 公告・催告の失念や順番違いの支払いは、損害賠償責任につながりうる(民法934条)

限定承認は、申述の前から「受理の後に何をいつまでにするか」を期限表に落としておく必要がある手続きです。検討を始めた段階で、お近くの司法書士にご相談ください。債権者との交渉や争いになった場合は、弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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