問題:
賃貸借に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 賃借物の修繕が必要である場合において、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
イ. 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、民法196条2項の規定に従い、その償還をしなければならないが、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
ウ. 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃借人は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
エ. 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができないが、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
オ. 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができ、賃借人も、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができる。
答え:
正しいものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
ア 正しい。民法607条の2は、「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。」と定め、1号に「賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。」を、2号に「急迫の事情があるとき。」を掲げている。なお、修繕義務を負うのは原則として賃貸人であり、同法606条1項は、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」と定めている。
イ 正しい。民法608条2項は、「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と定めている。同法196条2項本文は、有益費については、「その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と定めている。これに対し、必要費については、同法608条1項が、「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。」と定めている。
ウ 誤り。民法611条1項は、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」と定めている。この場合の賃料は、賃借人の請求を待たずに、使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額されるのであり、賃借人が減額を請求することができると定められているのではない。なお、同条2項は、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができると定めている。
エ 正しい。民法613条3項は、「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。」と定めている。なお、同条1項前段は、賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負うと定め、同項後段は、「この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。」と定めている。
オ 誤り。民法622条の2第2項は、「賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。」と定めている。敷金を債務の弁済に充てることができるのは賃貸人であり、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。なお、同条1項は、賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき(1号)、又は賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき(2号)は、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならないと定めている。
ポイント:賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うが、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となったときは、この限りでない(民法606条1項)。賃借人は、賃貸人に修繕が必要である旨を通知し又は賃貸人がその旨を知ったのに賃貸人が相当の期間内に修繕をしないとき、及び急迫の事情があるときは、自ら修繕をすることができる(同法607条の2)。賃貸人の負担に属する必要費は直ちに、有益費は賃貸借の終了の時に同法196条2項に従って償還を請求することができ、有益費については裁判所が賃貸人の請求により相当の期限を許与することができる(同法608条)。賃借物の一部が賃借人の責めに帰することができない事由により使用収益できなくなったときは、賃料はその割合に応じて当然に減額され(同法611条1項)、賃借物の一部が使用収益できなくなった場合において残存部分のみでは目的を達することができないときは、賃借人は解除をすることができる(同条2項。同項は賃借人の帰責事由の有無を要件としていない。)。適法な転貸があった場合の合意解除は転借人に対抗することができないが、解除の当時に賃貸人が債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない(同法613条3項)。敷金は、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたとき又は賃借権が適法に譲渡されたときに、債務の額を控除した残額を返還し、賃貸人は敷金を未払の債務に充当することができるが、賃借人から充当を請求することはできない(同法622条の2)。「一部滅失の賃料は『請求』ではなく『当然に減額』、敷金の充当は賃貸人からだけ」と押さえる。
問題:
不動産登記法に規定する登記事項証明書の交付等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 地図、建物所在図又は地図に準ずる図面の閲覧は、その不動産について利害関係を有する者に限り、請求することができる。
イ. 登記事項証明書の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。
ウ. 登記事項証明書の交付の請求をする場合の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならず、現金をもって納付することができる場合はない。
エ. 登記を申請した者が、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求するには、その閲覧について正当な理由があることを要する。
オ. 登記簿の附属書類(政令で定める図面を除く。)の閲覧は、正当な理由があるときに請求することができるが、閲覧を請求することができるのは、その附属書類の全部又は一部のうち、その正当な理由があると認められる部分に限られる。
答え:
誤っているものは、ア・ウ・エの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記法120条2項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図等(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。」と定めている。同条1項は、「地図等」を「地図、建物所在図又は地図に準ずる図面」と定義している。地図等の閲覧は、利害関係の有無を問わず、何人も請求することができる。なお、同条1項は、何人も、手数料を納付して、地図等の全部又は一部の写しの交付を請求することができると定めている。
イ 正しい。不動産登記法119条5項は、「第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。」と定めている。同条1項は、「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。」と定めている。
ウ 誤り。不動産登記法119条4項は、「第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。」と定めている。手数料の納付は収入印紙によるのが原則であるが、同項ただし書により、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、現金をもってすることができる。
エ 誤り。不動産登記法121条4項は、「前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。」と定めている。同項は、正当な理由があるときに閲覧を認める同条3項の規定にかかわらず閲覧を請求することができるとしているから、登記を申請した者は、正当な理由があることを要せずに、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。
オ 正しい。不動産登記法121条3項は、「何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除き、電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。」と定めている。同条1項の図面とは、登記簿の附属書類のうち政令で定める図面であり、同条1項は、何人も、手数料を納付して、その図面の全部又は一部の写しの交付を請求することができると定め、同条2項は、何人も、手数料を納付して、その図面の閲覧を請求することができると定めている。
ポイント:登記事項証明書(登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面)及び登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面は、何人も、手数料を納付して交付を請求することができる(不動産登記法119条1項・2項)。手数料の納付は収入印紙によるのが原則であるが、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは現金によることができ(同条4項)、登記事項証明書の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、管轄登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる(同条5項)。登記記録に記録されている自然人の住所が明らかにされることにより人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、登記官は、登記事項証明書等に住所に代わる事項を記載しなければならない(同条6項)。地図等の写しの交付及び閲覧(同法120条1項・2項)並びに登記簿の附属書類のうち政令で定める図面の写しの交付及び閲覧(同法121条1項・2項)も、何人も請求することができる。これに対し、それ以外の登記簿の附属書類の閲覧は、正当な理由があるときに、その正当な理由があると認められる部分に限って請求することができ(同条3項)、登記を申請した者は、自己を申請人とする登記記録に係る附属書類について、正当な理由を要せずに閲覧を請求することができる(同条4項)。「証明書・地図・政令で定める図面は何人も、その他の附属書類の閲覧は正当な理由がある部分だけ、申請人本人は自分の登記の分なら理由不要」と押さえる。
問題:
会社法に規定する株式会社による自己の株式の取得に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、取得する株式の数、株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額並びに株式を取得することができる期間を定めなければならず、その期間は、1年を超えることができない。
イ. 株式会社が特定の株主から当該株式会社の株式を取得する旨を定める株主総会の決議は、普通決議によってすることができる。
ウ. 株式会社が特定の株主から当該株式会社の株式を取得する場合には、当該特定の株主は、その取得に関する事項を定める株主総会において議決権を行使することができず、このことは、当該特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合であっても同様である。
エ. 公開会社でない株式会社が、株主の相続人からその相続により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、当該相続人が株主総会において当該株式について議決権を行使していたときであっても、株式会社は、他の株主に対し、特定の株主に自己をも加えたものを株主総会の議案とすることを請求することができる旨を通知することを要しない。
オ. 取締役会設置会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合には、取得する株式の数等の事項を、取締役会の決議によって定めることができる。
答え:
正しいものは、ア・オの2つである。
解説:
ア 正しい。会社法156条1項は、「株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。」と定め、1号に「取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)」を、2号に「株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額」を、3号に「株式を取得することができる期間」を掲げている。なお、同法157条1項は、株式会社は、同法156条1項の規定による決定に従い株式を取得しようとするときは、その都度、取得する株式の数等の事項を定めなければならないと定め、同法157条2項は、「取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。」と定めている。
イ 誤り。会社法160条1項は、「株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。」と定めている。そして、同法309条2項は、同項各号に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならないと定め、2号に「第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)」を掲げている。特定の株主から取得する旨を定める株主総会の決議は、特別決議によらなければならない。
ウ 誤り。会社法160条4項は、「第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。」と定めている。特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合には、同項ただし書により、特定の株主も議決権を行使することができる。
エ 誤り。会社法162条は、「第百六十条第二項及び第三項の規定は、株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。」と定め、1号に「株式会社が公開会社である場合」を、2号に「当該相続人その他の一般承継人が株主総会又は種類株主総会において当該株式について議決権を行使した場合」を掲げている。同法160条2項は、株式会社は、特定の株主から取得する旨の決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主に対し、同条3項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならないと定め、同条3項は、当該株主は、特定の株主に自己をも加えたものを株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができると定めている。相続人が株主総会において当該株式について議決権を行使していたときは、同法162条ただし書2号により、同法160条2項及び3項が適用されるから、株式会社は、他の株主に対し、同条3項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
オ 正しい。会社法163条は、「株式会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)」とする。この場合においては、第百五十七条から第百六十条までの規定は、適用しない。」と定めている。取締役会設置会社がその子会社の有する当該株式会社の株式を取得する場合には、同法156条1項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる。
ポイント:株主との合意による有償取得は、あらかじめ株主総会の決議によって、取得する株式の数、交付する金銭等の内容及び総額並びに1年を超えない取得期間を定めて行い(会社法156条1項)、その授権に従って取得するたびに取得価格等を定め、取締役会設置会社ではその決定は取締役会の決議による(同法157条1項・2項)。特定の株主から取得する旨は株主総会の特別決議で定め(同法160条1項・309条2項2号)、他の株主には自己をも売主に加えるよう請求することができる旨を通知しなければならず(同法160条2項・3項)、特定の株主は、他の株主の全部が議決権を行使することができない場合を除き、その株主総会で議決権を行使することができない(同条4項)。市場価格のある株式を市場価格として法務省令で定める方法により算定される額を超えない額で取得する場合(同法161条)、株主の相続人その他の一般承継人から取得する場合(同法162条。ただし、公開会社である場合又は一般承継人が議決権を行使した場合を除く。)、及び定款で定めた場合(同法164条1項)には、他の株主への通知と請求の規定は適用されない。子会社からの取得は取締役会設置会社では取締役会の決議で足り(同法163条)、市場取引等による取得には同法157条から160条までが適用されず、取締役会設置会社は定款で取締役会の決議によって定めることができる旨を定めることができる(同法165条)。「特定の株主からの取得は特別決議・売主追加の通知・本人は原則議決権なし、相続人からの取得は非公開会社で議決権を行使していなければ通知不要」と押さえる。
問題:
民事訴訟法に規定する管轄及び移送に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができ、この合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければその効力を生じないが、その合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされる。
イ. 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は管轄権を有するが、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、この限りでない。
ウ. 地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、自ら審理及び裁判をすることができるが、訴訟が当事者の合意により定められたその簡易裁判所の専属管轄に属する場合には、自ら審理及び裁判をすることができない。
エ. 簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合であっても、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。
オ. 移送の申立てを却下した決定に対しては、不服を申し立てることができない。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法11条1項は、「当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。」と定め、同条2項は、「前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。」と定め、同条3項は、「第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」と定めている。
イ 正しい。民事訴訟法12条は、「被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。」と定めている。そして、同法13条1項は、「第四条第一項、第五条、第六条第二項、第六条の二、第七条及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない。」と定めている。「前二条」は同法11条(管轄の合意)及び12条(応訴管轄)であるから、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、応訴管轄は生じない。なお、同条2項は、特許権等に関する訴えについて、同法7条又は11条・12条の規定によれば同法6条1項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には、同法13条1項の規定にかかわらず、その裁判所は管轄権を有すると定めている。
ウ 誤り。民事訴訟法16条2項は、「地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。ただし、訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合は、この限りでない。」と定めている。同項ただし書の専属管轄からは、当事者が同法11条の規定により合意で定めたものが除かれているから、訴訟が当事者の合意により定められたその簡易裁判所の専属管轄に属する場合であっても、地方裁判所は、相当と認めるときは、自ら審理及び裁判をすることができる。
エ 誤り。民事訴訟法19条2項は、「簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。」と定めている。その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合には、同項ただし書により、簡易裁判所は、移送をしなければならないものではない。
オ 誤り。民事訴訟法21条は、「移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と定めている。移送の申立てを却下した決定に対しても、即時抗告をすることができる。
ポイント:管轄の合意は、第一審に限り、一定の法律関係に基づく訴えに関し、書面(その内容を記録した電磁的記録を含む。)でしなければ効力を生じない(民事訴訟法11条)。被告が管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは応訴管轄が生ずるが(同法12条)、法令に専属管轄の定めがある場合には、合意管轄及び応訴管轄の規定は適用されない(同法13条1項。特許権等に関する訴えについては同条2項の特則がある。)。管轄違いの場合は申立てにより又は職権で管轄裁判所に移送し(同法16条1項)、地方裁判所は管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟でも相当と認めるときは自ら審理及び裁判をすることができるが、その簡易裁判所の専属管轄に属する場合(当事者が合意で定めたものを除く。)は、この限りでない(同条2項)。第一審裁判所は、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があるときは移送をすることができ(同法17条)、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき等を除き、移送しなければならない(同法19条1項)。簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合を除き、地方裁判所に移送しなければならない(同条2項)。同法17条から19条までの規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が合意で定めたものを除く。)に属する場合には適用されない(同法20条1項)。移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる(同法21条)。「専属管轄の制限は『合意で定めたものを除く』、不動産訴訟の必要的移送は被告が本案の弁論をする前の申立てに限る、移送の裁判にはどちらも即時抗告」と押さえる。
問題:
司法書士法に規定する司法書士となる資格、欠格事由及び司法書士試験に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 裁判所書記官としてその職務に従事した期間が通算して10年以上になる者であって、法務大臣が司法書士法3条1項1号から5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたものは、司法書士となる資格を有する。
イ. 未成年者であっても、司法書士試験に合格した者は、司法書士となる資格を有する。
ウ. 破産手続開始の決定を受けた者は、復権を得た後であっても、復権の日から3年を経過しなければ、司法書士となる資格を有しない。
エ. 司法書士法47条の規定により業務の停止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者は、司法書士となる資格を有しない。
オ. 司法書士試験の筆記試験に合格した者に対しては、その申請により、次回の司法書士試験の筆記試験を免除する。
答え:
正しいものは、ア・オの2つである。
解説:
ア 正しい。司法書士法4条は、「次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する。」と定め、1号に「司法書士試験に合格した者」を、2号に「裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの」を掲げている。
イ 誤り。司法書士法5条は、「次に掲げる者は、司法書士となる資格を有しない。」と定め、2号に「未成年者」を掲げている。司法書士試験に合格した者であっても、未成年者は、司法書士となる資格を有しない。
ウ 誤り。司法書士法5条3号は、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を掲げている。欠格事由とされているのは復権を得ていないことであり、復権を得た者は、同号に該当しない。同号には、復権の日から一定の期間を経過しなければならない旨の定めはない。
エ 誤り。司法書士法5条5号は、「第四十七条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者」を掲げている。同法47条は、司法書士に対する懲戒処分として、「戒告」(1号)、「二年以内の業務の停止」(2号)及び「業務の禁止」(3号)を定めているが、同法5条5号の欠格事由とされているのは、業務の禁止の処分を受けた場合であり、業務の停止の処分を受けた場合は掲げられていない。
オ 正しい。司法書士法6条3項は、「筆記試験に合格した者に対しては、その申請により、次回の司法書士試験の筆記試験を免除する。」と定めている。なお、同条2項は、司法書士試験は筆記及び口述の方法により行うと定め、同項ただし書は、「口述試験は、筆記試験に合格した者について行う。」と定めている。
ポイント:司法書士となる資格を有するのは、司法書士試験に合格した者のほか、裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としての職務に通算10年以上従事した者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であって、法務大臣が同法3条1項1号から5号までの業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたものである(司法書士法4条)。欠格事由は、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者(1号)、未成年者(2号)、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(3号)、公務員であって懲戒免職の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者(4号)、同法47条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者(5号)、懲戒処分により公認会計士の登録を抹消され、又は土地家屋調査士、弁理士、税理士若しくは行政書士の業務を禁止される等し、これらの処分の日から3年を経過しない者(6号)である(同法5条)。司法書士試験は、法務大臣が毎年1回以上、筆記及び口述の方法により行い、口述試験は筆記試験に合格した者について行い、筆記試験に合格した者には、その申請により次回の筆記試験を免除する(同法6条1項〜3項)。「破産は復権を得れば足り期間の定めなし、懲戒で欠格となるのは業務の禁止だけ、筆記合格は申請により次回だけ免除」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・賃貸借) | 賃貸人の修繕義務と賃借人による修繕、必要費・有益費の償還、賃借物の一部滅失等による賃料の減額と解除、適法な転貸と合意解除、敷金の返還と充当 | 民法196条2項、606条1項、607条の2、608条1項・2項、611条1項・2項、613条1項・3項、622条の2第1項・2項 |
| 第2問 | 不動産登記法(登記事項証明書の交付等) | 地図等の写しの交付と閲覧、登記事項証明書の交付の請求先、手数料の納付方法、住所に代わる事項の記載、登記簿の附属書類の閲覧と正当な理由、申請人による閲覧 | 不動産登記法119条1項・2項・4項〜6項、120条1項・2項、121条1項〜4項 |
| 第3問 | 会社法(自己株式の取得) | 株主との合意による取得の授権決議と取得期間、取得価格等の決定、特定の株主からの取得の決議要件・通知・議決権、相続人等からの取得の特則、子会社からの取得、市場取引等による取得 | 会社法156条1項、157条1項・2項、160条1項〜4項、161条、162条、163条、164条1項、165条、309条2項2号 |
| 第4問 | 民事訴訟法(管轄・移送) | 管轄の合意の要件と電磁的記録、応訴管轄と専属管轄、地方裁判所の自庁処理と合意による専属管轄、不動産に関する訴訟の必要的移送、移送の裁判に対する即時抗告 | 民事訴訟法11条、12条、13条1項・2項、16条1項・2項、17条、19条1項・2項、20条1項、21条 |
| 第5問 | 司法書士法(資格・欠格事由・試験) | 司法書士となる資格(試験合格・法務大臣の認定)、欠格事由(未成年者・破産者・業務の禁止の処分等)、筆記試験の免除 | 司法書士法4条、5条、6条1項〜3項、47条 |