問題:
委任に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 受任者は、委任者の許諾を得たときでなければ、復受任者を選任することができず、やむを得ない事由があるときであっても、同様である。
イ. 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
ウ. 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができ、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
エ. 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したときは、委任者は、やむを得ない事由があったときであっても、受任者の損害を賠償しなければならない。
オ. 報酬を受けるべき受任者は、自己の責めに帰すべき事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときであっても、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
答え:
正しいものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。民法644条の2第1項は、「受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」と定めている。受任者は、委任者の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復受任者を選任することができる。なお、同条2項は、「代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。」と定めている。
イ 正しい。民法648条の2第1項は、「委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。」と定めている。これに対し、同法648条2項本文は、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」と定めている。なお、同法648条の2第2項は、同法634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)の規定を、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用している。
ウ 正しい。民法650条2項は、「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。」と定めている。なお、同条1項は、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができると定めている。
エ 誤り。民法651条1項は、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定め、同条2項は、「前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」と定め、1号に「相手方に不利な時期に委任を解除したとき。」を、2号に「委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。」を掲げている。やむを得ない事由があったときは、委任者は、受任者の損害を賠償することを要しない。
オ 正しい。民法648条3項は、「受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。」と定め、1号に「委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。」を、2号に「委任が履行の中途で終了したとき。」を掲げている。同項1号が要件としているのは、委任者の責めに帰することができない事由によって履行をすることができなくなったことであり、受任者に責めに帰すべき事由がないことは要件とされていない。そのため、受任者は、自己の責めに帰すべき事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときであっても、それが委任者の責めに帰することができない事由によるものである限り、同号により、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。法制審議会民法(債権関係)部会の部会資料81-3「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の原案(その3)補充説明」(20頁)も、「委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務を処理することができなくなったとき」とは、当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合及び受任者の責めに帰すべき事由によって履行不能となった場合を指すと説明している。もっとも、これは既にした履行の割合に応じた報酬を請求することができるかどうかの問題である。受任者の責めに帰すべき事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときは、委任者は、受任者に対し、同法415条1項により、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ポイント:受任者は、委任者の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるときに、復受任者を選任することができる(民法644条の2第1項)。報酬は委任事務を履行した後でなければ請求することができないのが原則であるが(同法648条2項本文)、成果に対して報酬を支払うことを約した場合でその成果が引渡しを要するときは、成果の引渡しと同時に支払わなければならない(同法648条の2第1項)。委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき及び委任が履行の中途で終了したときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができ(同法648条3項)、1号は受任者の責めに帰すべき事由による場合を除いていない(その場合の損害賠償は同法415条1項の問題となる)。受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に自己に代わって弁済をすることを請求することができ、その債務が弁済期にないときは相当の担保を供させることができる(同法650条2項)。委任は各当事者がいつでも解除することができるが、相手方に不利な時期の解除と、受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任の委任者による解除は、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければならない(同法651条)。「割合に応じた報酬の1号は『委任者の』責めに帰することができない事由、解除による損害賠償はやむを得ない事由があれば不要」と押さえる。
問題:
敷地権付き区分建物の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 敷地権付き区分建物についての所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたものは、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。
イ. 敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記をすることができないが、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたものであれば、区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない場合であっても、敷地権の移転の登記をすることができる。
ウ. 敷地権付き区分建物には、当該建物のみを目的とする抵当権に係る権利に関する登記をすることができないが、当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものについては、この限りでない。
エ. 区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該区分建物について所有権の保存の登記を申請することができるが、当該区分建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
オ. 敷地権付き区分建物について表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請する場合においても、他の所有権の保存の登記と同様に、登記原因及びその日付を登記することを要しない。
答え:
誤っているものは、ア・イ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記法73条1項は、「敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に掲げる登記は、この限りでない。」と定め、2号に「敷地権付き区分建物についての所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの」を掲げている。本肢の仮登記は、同項ただし書2号に当たるから、敷地権についてされた登記としての効力を有しない。なお、同法46条は、登記官は、表示に関する登記のうち、区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、当該敷地権の目的である土地の登記記録について、職権で、当該登記記録中の所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならないと定めている。
イ 誤り。不動産登記法73条2項は、「第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。」と定めている。「分離処分禁止の場合」とは、同条1項4号の括弧書きにより、「区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない場合」をいう。当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたものであっても、分離処分禁止の場合には、同条2項ただし書の例外に当たらず、敷地権の移転の登記をすることができない。
ウ 正しい。不動産登記法73条3項は、「敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。」と定めている。当該建物のみを目的とする抵当権に係る権利に関する登記であって、当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、同項ただし書により、敷地権付き区分建物にもすることができる。
エ 正しい。不動産登記法74条1項は、所有権の保存の登記を申請することができる者として、1号に「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」を、2号に「所有権を有することが確定判決によって確認された者」を、3号に収用によって所有権を取得した者を掲げ、同条2項は、「区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」と定めている。
オ 誤り。不動産登記法76条1項は、「所有権の保存の登記においては、第五十九条第三号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない。」と定めている。同法59条は、権利に関する登記の登記事項として、3号に「登記原因及びその日付」を掲げているから、敷地権付き区分建物について同法74条2項の規定により所有権の保存の登記をする場合には、同法76条1項ただし書により、登記原因及びその日付も登記される。
ポイント:敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記は、登記官が職権でした敷地権である旨の登記(不動産登記法46条)のある土地の敷地権についてされた登記としての効力を有するが、敷地権の登記をした後に登記された所有権に係る仮登記で、その登記原因が敷地権が生ずる前に生じたものなどは、この限りでない(同法73条1項)。敷地権である旨の登記をした土地への敷地権の移転の登記等と、敷地権付き区分建物への建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記等は、原則としてすることができず、例外は、敷地権が生じた後に登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)と、仮登記又は質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記で敷地権が生ずる前に登記原因が生じたものである(同条2項・3項)。区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者も所有権の保存の登記を申請することができ、敷地権付き区分建物であるときは敷地権の登記名義人の承諾を要し(同法74条2項)、この場合は登記原因及びその日付も登記される(同法76条1項ただし書・59条3号)。「73条2項・3項の例外は、『後に生じた原因』なら分離処分禁止の場合を除いて可、『前に生じた原因』なら仮登記・質権・抵当権に限って可」と押さえる。
問題:
株主総会の招集に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 取締役会設置会社においては、株主が裁判所の許可を得て株主総会を招集するときを除き、株主総会の日時及び場所、株主総会の目的である事項等の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
イ. 公開会社でない取締役会設置会社において、株主総会に出席しない株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができることとしないときは、取締役は、株主総会の日の1週間前までに株主に対して招集の通知を発すれば足り、定款でこれを下回る期間を定めることもできる。
ウ. 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとした場合であっても、株主の全員の同意があるときは、株主総会は、招集の手続を経ることなく開催することができる。
エ. 公開会社において、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6箇月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができ、その請求があった日から8週間以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる(定款に別段の定めはないものとする。)。
オ. 公開会社でない取締役会設置会社において、一定の事項を株主総会の目的とすることを取締役に請求することができるのは、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6箇月前から引き続き有する株主に限られる(定款に別段の定めはないものとする。)。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。会社法298条1項は、取締役は、株主総会を招集する場合には、「株主総会の日時及び場所」(1号)、「株主総会の目的である事項があるときは、当該事項」(2号)等の事項を定めなければならないと定め、同条4項は、「取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。」と定めている。同法297条4項は、株主が裁判所の許可を得て株主総会を招集する場合の規定である。
イ 誤り。会社法299条1項は、「株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。」と定めている。同法298条1項3号は書面による議決権の行使を、4号は電磁的方法による議決権の行使を定める事項である。公開会社でない株式会社がこれらの事項を定めないときは、株主総会の日の1週間前までに通知を発すれば足りるが、定款で1週間を下回る期間を定めることができるのは、取締役会設置会社以外の株式会社に限られる。なお、同法299条2項は、同法298条1項3号又は4号に掲げる事項を定めた場合(1号)と、株式会社が取締役会設置会社である場合(2号)には、招集の通知は書面でしなければならないと定め、同法299条3項は、取締役は、書面による通知の発出に代えて、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができると定めている。
ウ 誤り。会社法300条は、「前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。」と定めている。同法298条1項3号は、「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」であるから、書面によって議決権を行使することができることとした場合には、株主の全員の同意があっても、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することはできない。
エ 正しい。会社法297条1項は、「総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。」と定め、同条4項は、同条1項の規定による請求をした株主は、「第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合」(1号)又は「第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合」(2号)には、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができると定めている。なお、同条2項は、「公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。」と定めている。
オ 誤り。会社法303条2項は、取締役会設置会社においては、「総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。」と定めているが、同条3項は、「公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。」と定めている。公開会社でない取締役会設置会社では、6箇月前から引き続き有するという要件は課されない。なお、同条2項後段は、この請求は、株主総会の日の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならないと定めている。
ポイント:取締役会設置会社では、株主が裁判所の許可を得て招集する場合を除き、株主総会の日時及び場所等の決定は取締役会の決議による(会社法298条1項・4項)。招集の通知は株主総会の日の2週間前までに発するのが原則であり、公開会社でない株式会社で書面又は電磁的方法による議決権の行使を定めないときは1週間前までで足り、定款でさらに短縮することができるのは取締役会設置会社以外の株式会社に限られる(同法299条1項)。株主の全員の同意による招集手続の省略は、書面又は電磁的方法による議決権の行使を定めた場合にはすることができない(同法300条)。株主による招集の請求は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6箇月前から引き続き有する株主(公開会社でない株式会社では保有期間の要件なし)がすることができ、請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合等には、裁判所の許可を得て自ら招集することができる(同法297条1項・2項・4項)。取締役会設置会社における議題の提案は、総株主の議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を6箇月前から引き続き有する株主に限られるが、公開会社でない取締役会設置会社では保有期間の要件はない(同法303条2項・3項)。「『6箇月』の保有期間は公開会社だけ、定款による『1週間』のさらなる短縮は取締役会設置会社以外の株式会社だけ」と押さえる。
問題:
民事訴訟法に規定する共同訴訟及び訴訟引受けに関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 数人に対する訴えにおいて、訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくにとどまるときは、一の請求について管轄権を有する裁判所に他の請求を併せて訴えを提起することができる旨の併合請求における管轄の規定は、適用されない。
イ. 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。
ウ. 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告が弁論及び裁判を分離しないですることを求める申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。
エ. 同時審判の申出がある共同訴訟において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。
オ. 訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てがなくても、職権で、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。
答え:
誤っているものは、イ・オの2つである。
解説:
ア 正しい。民事訴訟法7条は、「一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。」と定めている。同法38条は、前段で「訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。」と定め、後段で「訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。」と定めている。同条後段に当たるにとどまる場合は、同法7条ただし書により、同条本文の適用がない。
イ 誤り。民事訴訟法40条1項は、「訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。」と定め、同条2項は、「前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。」と定めている。全員の利益においてのみその効力を生ずるのは共同訴訟人の一人の訴訟行為であり、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。なお、同条3項は、同条1項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずると定めている。これに対し、同法39条は、「共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。」と定めている。
ウ 正しい。民事訴訟法41条1項は、「共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。」と定めている。
エ 正しい。民事訴訟法41条3項は、「第一項の場合において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。」と定めている。
オ 誤り。民事訴訟法50条1項は、「訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。」と定めている。訴訟を引き受けさせる決定は、当事者の申立てによってするものとされている。なお、同条2項は、「裁判所は、前項の決定をする場合には、当事者及び第三者を審尋しなければならない。」と定め、同条3項は、同法41条1項及び3項並びに48条及び49条の規定を、訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用している。
ポイント:数人からの又は数人に対する訴えについて併合請求における管轄(民事訴訟法7条本文)が認められるのは、訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき(同法38条前段)に限られ、同種の権利又は義務で同種の原因に基づくにとどまるとき(同条後段)は認められない(同法7条ただし書)。共同訴訟人の一人の訴訟行為、一人に対する相手方の訴訟行為及び一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさないのが原則であるが(同法39条)、合一にのみ確定すべき場合には、共同訴訟人の一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じ、一人に対する相手方の訴訟行為は全員に対して効力を生じ、一人についての中断又は中止は全員について効力を生ずる(同法40条1項〜3項)。同時審判の申出は控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならず、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は併合してしなければならない(同法41条2項・3項)。義務承継人に訴訟を引き受けさせる決定は、当事者の申立てによってし、当事者及び第三者を審尋しなければならない(同法50条1項・2項)。「一人『の』訴訟行為は全員の利益においてのみ、一人『に対する』相手方の訴訟行為は全員に対して」と区別して押さえる。
問題:
司法書士法に規定する司法書士の登録に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 司法書士名簿の登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に登録申請書を提出しなければならない。
イ. 日本司法書士会連合会は、登録の申請をした者が心身の故障により司法書士の業務を行うことができないことを理由にその登録を拒否しようとするときは、登録審査会の議決に基づいてしなければならず、また、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。
ウ. 登録の申請をした者は、その申請の日から3月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して審査請求をすることができる。
エ. 司法書士が引き続き2年以上業務を行わないときは、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消さなければならない。
オ. 司法書士は、他の法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を移転しようとするときは、現に所属する司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に、所属する司法書士会の変更の登録の申請をしなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウの3つである。
解説:
ア 正しい。司法書士法8条1項は、司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならないと定め、同条2項は、「司法書士名簿の登録は、日本司法書士会連合会が行う。」と定めている。そして、同法9条1項は、「前条第一項の登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に登録申請書を提出しなければならない。」と定めている。
イ 正しい。司法書士法10条1項は、日本司法書士会連合会は、登録の申請をした者が司法書士となる資格を有せず、又は同項各号のいずれかに該当すると認めたときは、その登録を拒否しなければならないと定め、2号に「心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき。」を掲げ、同項後段は、「この場合において、当該申請者が第二号又は第三号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、第六十七条に規定する登録審査会の議決に基づいてしなければならない。」と定めている。また、同条2項は、「日本司法書士会連合会は、当該申請者が前項第二号又は第三号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。」と定めている。
ウ 正しい。司法書士法12条1項は、「第十条第一項の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、法務大臣に対して審査請求をすることができる。」と定め、同条2項は、「第九条第一項の規定による登録の申請をした者は、その申請の日から三月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して審査請求をすることができる。」と定めている。
エ 誤り。司法書士法16条1項は、「司法書士が次の各号のいずれかに該当する場合には、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消すことができる。」と定め、1号に「引き続き二年以上業務を行わないとき。」を、2号に「心身の故障により業務を行うことができないとき。」を掲げている。引き続き2年以上業務を行わないときは、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消すことができるとされているにとどまり、取り消さなければならないとはされていない。これに対し、同法15条1項は、司法書士が「その業務を廃止したとき。」(1号)、「死亡したとき。」(2号)、「司法書士となる資格を有しないことが判明したとき。」(3号)、「第五条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたとき。」(4号)には、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消さなければならないと定めている。なお、同法16条4項は、同法10条1項後段の規定(登録審査会の議決)を、同法16条1項の規定による登録の取消しに準用している。
オ 誤り。司法書士法13条1項は、「司法書士は、他の法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を移転しようとするときは、その管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に、所属する司法書士会の変更の登録の申請をしなければならない。」と定め、同条2項は、「司法書士は、前項の変更の登録の申請をするときは、現に所属する司法書士会にその旨を届け出なければならない。」と定めている。変更の登録の申請は、移転先の管轄区域内に設立された司法書士会を経由してするものであり、現に所属する司法書士会には、その旨を届け出る。なお、同条3項は、同条1項の申請をした者が同法57条1項の規定による入会の手続をとっていないときは、日本司法書士会連合会は、変更の登録を拒否しなければならないと定めている。
ポイント:司法書士名簿の登録は日本司法書士会連合会が行い、登録を受けようとする者は、事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して登録申請書を提出する(司法書士法8条2項・9条1項)。心身の故障又は適格性の欠如(同法10条1項2号・3号)を理由とする登録の拒否は、登録審査会の議決に基づいてしなければならず、あらかじめ弁明の機会を与えなければならない(同条1項後段・2項)。登録を拒否された者及び申請の日から3月を経過しても何らの処分がされない者は、法務大臣に対して審査請求をすることができる(同法12条1項・2項)。業務の廃止、死亡、資格を有しないことの判明、5条各号(2号を除く。)への該当は登録を取り消さなければならない事由であり(同法15条1項)、引き続き2年以上業務を行わないこと及び心身の故障により業務を行うことができないことは登録を取り消すことができる事由である(同法16条1項)。他の法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を移転しようとするときは、移転先の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して変更の登録を申請し、現に所属する司法書士会には届け出る(同法13条1項・2項)。「15条は『取り消さなければならない』、16条は『取り消すことができる』、変更の登録は『移転先の会を経由・現在の会には届出』」と押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権・委任) | 復受任者の選任、成果等に対する報酬の支払時期、債務の代弁済請求と担保の供与、受任者の利益をも目的とする委任の解除と損害賠償、履行の割合に応じた報酬 | 民法415条1項、644条の2第1項・2項、648条2項・3項、648条の2第1項・2項、650条1項・2項、651条1項・2項 |
| 第2問 | 不動産登記法(区分建物) | 敷地権についてされた登記としての効力とその例外、敷地権である旨の登記をした土地への登記の制限と分離処分禁止の場合、建物のみを目的とする担保権に係る登記の制限、表題部所有者から所有権を取得した者による所有権の保存の登記と登記原因及びその日付 | 不動産登記法46条、59条3号、73条1項〜3項、74条1項・2項、76条1項 |
| 第3問 | 会社法(株主総会の招集) | 招集事項の決定機関、招集通知の発出期限と定款による短縮、招集手続の省略、株主による招集の請求と裁判所の許可による招集、議題提案権の保有期間要件 | 会社法297条1項・2項・4項、298条1項・4項、299条1項〜3項、300条、303条2項・3項 |
| 第4問 | 民事訴訟法(多数当事者訴訟) | 併合請求における管轄と共同訴訟の要件、通常共同訴訟人独立の原則と必要的共同訴訟、同時審判の申出の時期と控訴審での併合、義務承継人の訴訟引受け | 民事訴訟法7条、38条、39条、40条1項〜3項、41条1項〜3項、50条1項〜3項 |
| 第5問 | 司法書士法(登録) | 登録の申請の経由先、登録の拒否と登録審査会・弁明の機会、登録の拒否等に対する審査請求、登録の取消し(必要的・任意的)、所属する司法書士会の変更の登録 | 司法書士法8条、9条1項、10条1項・2項、12条1項・2項、13条1項〜3項、15条1項、16条1項・4項 |