この記事の要点
- 別の専門家を紹介されても、紹介を受けるかどうか、誰に頼むかは相談者が決めてよい
- 頼む前に、なぜその専門家が必要なのか、紹介先が担当する範囲、費用の見積もりを確かめておくと、あとの行き違いを防ぎやすい
- 紹介料の有無も尋ねてかまわない。司法書士は、依頼者の紹介について対価を受け取ることも支払うことも、倫理上の決まりで禁じられている
相続の相談に行ったら、「この部分は税理士に」「ここから先は弁護士に」「土地の測量は土地家屋調査士に」と、別の専門家を紹介されることがあります。紹介してもらえるのはありがたい一方で、「断ったら悪いのでは」「言われるまま頼んでいいのか」と迷う方もいるかもしれません。結論から言うと、紹介を受けるかどうかは相談者が決めてよいことです。そのうえで、頼む前にいくつか確かめておくと、あとで「思っていたのと違った」となりにくくなります。
なぜ別の専門家を紹介されるのか
相続の手続きは、相続税の申告は税理士、相続人どうしで争いになっている場合の交渉や裁判の代理は原則として弁護士、土地の測量や分筆の登記は土地家屋調査士、というように、専門家ごとに担当できる仕事の範囲が法律で分かれています。相談先が、自分の担当範囲の外にある部分に気づいたとき、その部分を担える専門家を案内するのが紹介です。
どの専門家に相談するかという入り口の選び方は、相続の相談は弁護士?司法書士?で整理しています。この記事では、紹介を受けた「後」に、どう受け止めて何を確かめるかを扱います。
頼む前に確かめておきたいこと
以下、紹介をした側を「紹介元」、紹介された専門家を「紹介先」と呼びます。
1. なぜその専門家が必要なのか 紹介先に何をお願いすることになるのかを、紹介元に一言で説明してもらいましょう。自分の言葉で言い直せる程度に理解しておくと、紹介先での話もかみ合いやすくなります。
2. 紹介先が担当する範囲 紹介元と紹介先で、どこまでをどちらが担うのかを確かめます。必要な書類が重なることもあるので、どの書類をどちらに出すのかもあわせて聞いておくと、二度手間を防げます。
3. 費用の見積もり 紹介を受けて頼む場合でも、依頼の約束(委任契約)は一般に相談者と紹介先との間で結ぶものです。費用や支払いの時期は、紹介先から直接説明を受け、見積もりをもらって確かめましょう。紹介元の費用に含まれているのか、別にかかるのかも確認しておくと安心です。
4. 紹介料の有無 紹介の経緯が気になるときは、紹介料のやり取りがあるのかを尋ねてかまいません。司法書士の場合、日本司法書士会連合会が定める「司法書士行為規範」(司法書士が自らの行動を律するための倫理上の決まりで、法律そのものではありません)に、司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて対価を支払うことも、依頼者の紹介をしたことについて対価を受け取ることも、名目を問わず禁じるという定めがあります(第12条2項・3項)。この定めは司法書士についてのものなので、ほかの専門家の扱いが気になるときは、それぞれに直接尋ねてみてください。
断ってもよい、ほかを探してもよい
紹介は、選択肢の一つとして示されるものです。紹介先とは別の専門家を自分で探して比べることもできますし、すぐに頼まずいったん持ち帰って考えることもできます。別の専門家の意見を聞くときの考え方は、相談した専門家とは別の専門家にも意見を聞いてよい?にまとめています。
紹介を断ったからといって、元の相談の続きを遠慮する必要はありません。断るときは「その部分は自分で探します」「いまは見送ります」と伝え、紹介元で引き続き進められる部分と、別の専門家が必要な部分を分けて確かめておきましょう。ただし、紹介を断っても、紹介された部分の手続きそのものがなくなるわけではありません。相続税の申告のように期限のある手続きが含まれていないかは、断る前に確認しておくことが大切です。
相談した内容を引き継いでもらうとき
紹介元から紹介先へ、相談した内容や資料を伝えてもらうことがあります。どこまで伝えてもらうかも相談者が決めてよいことなので、「何を、どの資料まで渡すのか」を確かめてから同意しましょう。自分で資料を持って紹介先に相談に行く方法もあります。
本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
別の専門家を紹介されたときは、紹介を受けるかどうかを自分で決めてよいことを前提に、なぜその専門家が必要なのか、紹介先が担当する範囲、費用の見積もり、紹介料の有無を確かめてから頼むと安心です。断ることも、ほかを探して比べることもできますが、紹介された部分に期限のある手続きが含まれていないかは確認しておきましょう。迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 日本司法書士会連合会「司法書士行為規範」第12条(令和5年4月1日施行・PDF): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/09/e29210ae9981d021b289043d82d76e15.pdf
- 日本司法書士会連合会「会則・関係法規」: https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/intro/reguration/
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
- 土地家屋調査士法 第3条・第68条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000228