この記事の要点
- 気持ちの整理がつかないまま相続の相談に行ってもかまいません。つらさや「今日はあまり話せないかもしれない」ことは、最初に伝えてよいことです
- 一度に全部を話したり決めたりする必要はありません。ただし、相続放棄の3か月のように期限のある手続きがあるかどうかだけは、早めに確かめておきたいところです
- 家族に代わりに話してもらう方法もありますが、手続きを正式に依頼するときは、原則として相続人本人の意思確認が欠かせません
家族を亡くしてまだ日が浅いうちは、手続きの話を聞くだけで涙が出たり、説明が頭に入ってこなかったりすることがあります。「こんな状態で相談に行ってよいのだろうか」とためらう方もいるかもしれません。結論からいえば、気持ちが追いついていないまま相談に行くことは、少しもおかしなことではありません。
つらさは最初に伝えてよい
相談の冒頭で「まだ気持ちの整理がついていません」「途中で言葉に詰まるかもしれません」と一言伝えておくと、相談を受ける側も、説明の量や進める速さを調整しやすくなります。途中で少し休みたくなったら、そう伝えてかまいません。説明がつかみきれなかったときは、要点を書いて渡してもらえないか尋ねてみるのも一つの方法です。
なお、眠れない・食事がとれないといった心身の不調が続くときは、相続の手続きとは切り離して、医療機関や公的な相談窓口を頼ってください。
一度に全部話さなくていい
初回の相談で、家族のこと、財産のこと、これからの希望をすべて話しきる必要はありません。話せる範囲から始めて、続きは次回に回せないか、相談の場で尋ねてみてください。話したいことがまとまらないときの整理のしかたは、相続の相談、何から話せばいいか分からないときの整理のしかたで紹介しています。
ただし、待たずに確かめておきたいこともあります。代表的なのが相続放棄です。相続放棄をするかどうかは、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に決めなければならないとされています(民法915条1項)。亡くなった方に借金があるかもしれない場合は、特に注意が必要です。この期間は、家庭裁判所に申し立てて延ばしてもらえる場合もあります(同項ただし書。詳しくは相続放棄の「3か月」に間に合わないときは?)。気持ちが落ち着くのを待つ前に、「期限のある手続きがあるかどうか」だけは早めに確認しておくと安心です。※執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
家族に代わりに話してもらうときは
自分では話しにくいときは、事情をよく知る家族に同席してもらい、経緯の説明を任せる方法もあります。ただし、手続きを正式に依頼する段階では、原則として相続人である本人の意思確認が欠かせません。家族が説明を引き受けてくれても、本人が内容を理解し、自分の意思で依頼するという手順そのものは省けないと考えておいてください。本人が相談の場に行けない場合の考え方は、相続の相談、本人が体調不良や遠方で行けないときは家族だけでもいい?で整理しています。
また、つらさの理由に相続人どうしの対立が含まれていることもあります。相続人の間で争いになっている場合、その交渉や解決は弁護士の領域になるため、相談先を分けて考える必要があります。
まとめ
家族を亡くした直後に気持ちが追いつかないのは自然なことで、その状態のまま相談に行ってもかまいません。つらさは最初に伝える、話せる範囲から始めて続きは次回に回す、期限のある手続きがあるかどうかだけは早めに確かめる。この3つを心に留めておけば、無理をせずに最初の一歩を踏み出せます。気になることがあれば、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第915条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089