この記事の要点
- 別の専門家に意見を聞くこと(セカンドオピニオン)自体は、依頼する前でも後でもできる。ただし依頼前と依頼後では考え方が少し違う
- 依頼する前なら、複数のところで話を聞いて比べてから決めてよい。依頼した後は、疑問をまず依頼先に尋ねるのが基本
- 別の専門家に聞くときは、最初に受けた説明・見積・経緯を整理して持っていくと、意見を聞く時間を有効に使える
「一度相談した専門家がいるのに、別のところにも話を聞くのは失礼ではないか」——こう感じて、聞きたいことがあっても言い出せずにいる、ということもあるかもしれません。結論から言うと、別の専門家に意見を聞くこと自体は、相談者が自分で決めてよいことです。ただ、まだ依頼していない段階か、すでに依頼して手続きが動いている段階かで、意識しておきたい点が変わります。
依頼する前なら、比べて決めてよい
相談と依頼は別の段階です。相談で見通しと費用の説明を受け、納得してから委任契約(仕事をお願いする約束)を結ぶのが一般的な流れで、その途中で別のところの話を聞いて比べてもかまいません。相談と依頼の違いについては、相談したら必ず依頼しないといけない?で整理しています。
比べるときは、費用の総額だけでなく、どの手続きまでが含まれているか、どんな場合に追加の費用がかかるかもあわせて見ると、違いの理由が分かりやすくなります。見積書の見方は司法書士の見積書の読み方で取り上げています。
依頼した後は、まず依頼先に尋ねる
すでに依頼している場合、「説明がよく分からない」「この進め方で本当によいのか」といった疑問は、まず依頼先にそのまま尋ねるのが基本です。依頼先は事情や書類の中身をいちばんよく知っているので、疑問の多くはそこで解けます。尋ねるときは、何が分からないのかを一つずつ書き出しておくと、話がかみ合いやすくなります。
それでも別の意見を聞きたいと思ったときは、聞いてかまいません。依頼先が司法書士の場合でいえば、日本司法書士会連合会が定める「司法書士行為規範」(司法書士が自らの行動を律するための倫理上の決まりで、法律そのものではありません)に、司法書士は、受任している事件について依頼者が他の司法書士や司法書士法人に相談や依頼をしようとするとき、正当な理由なくこれを妨げてはならないという定めがあります(第32条)。一方で同じ規範には、司法書士は他の司法書士が受任している事件に不当に介入してはならないという定めもあります(第98条)。
また、民法では、委任契約は各当事者がいつでも解除できるとされています(民法651条1項)。ただし、相手にとって不利な時期に解除した場合などには損害の賠償が問題になることがあります(同条2項)。途中でやめた場合の報酬について、民法には、報酬を支払う約束がある委任が途中で終わったときは、受任者がすでにした仕事の割合に応じて報酬を請求できるという定めがありますが(648条3項2号。仕事の成果に対して報酬を支払う約束の場合は648条の2)、実際の費用の精算は、結んだ契約の内容によって変わります。依頼先を変えることまで考えるときは、まず契約書や委任状の内容を確かめ、精算の扱いを依頼先に確認しておきましょう。
別の専門家に聞くときの持ち物と伝え方
セカンドオピニオンは、限られた時間で「今の説明や進め方をどう受け止めればよいか」を確かめる場です。次のものを用意しておくと、話が早く進みます。
- 最初の専門家から受け取った書面(説明資料、見積書、委任契約書など)
- 手元にある元の資料(登記事項証明書や戸籍など、相談の前提になったもの)
- 経緯のメモ(いつ相談したか、何を説明されたか、どこまで進んでいるか)
- 聞きたいこと(何に迷っているのか、何を確かめたいのか)
伝えるときは、「最初の専門家にこう言われた」と「自分はこう理解した」を分けて話すのがおすすめです。説明そのものに問題があるのか、受け取り方に行き違いがあるのかを切り分けやすくなります。すでに依頼中であれば、そのことも最初に伝えておきましょう。
なお、相続人どうしで争いになっているなど紛争性のある案件では、弁護士への相談が必要になる場面があります。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
別の専門家に意見を聞くことは、依頼する前なら比べて決めるための材料集め、依頼した後なら疑問を確かめる手段として、相談者が自分で選べることです。依頼後は、まず依頼先に尋ね、それでも気になる点があれば、最初に受けた説明・見積・経緯を整理して別の専門家に伝えましょう。依頼先を変えるかどうかは、契約の内容を確かめたうえで落ち着いて判断することが大切です。迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 日本司法書士会連合会「司法書士行為規範」(令和5年4月1日施行。第32条・第98条。「司法書士の使命と倫理」ページ掲載): https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/09/e29210ae9981d021b289043d82d76e15.pdf
- 民法 第648条・第648条の2・第651条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089