この記事の要点
- 祖父名義の不動産について、相続登記をしないうちに父も亡くなった場合でも、途中の相続(祖父から父への相続)で取得した人が1人に決まっていれば、父名義の登記を省いて、1件の申請で最終の相続人名義にできます(いわゆる中間省略)。
- 途中の相続で2人以上が取得している場合は、1件にはできず、「祖父から相続人たちへ」「父の持分を父の相続人へ」の2件に分けて申請します。
- 1件で申請するときは、原因欄に「祖父が亡くなった日と父の氏名」「父が亡くなった日」の2つの相続を併記します。
- 2026年10月5日以降の申請は、「国籍等」の欄などが加わった新しい様式を使います。
- 1件にできるかどうかは家族関係と書類しだいで決まります。当てはめに迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。
この記事は、祖父(または祖母)名義のままの不動産について、ご自身で相続登記の申請書を作ろうとしている方に向けて、数次相続(すうじそうぞく)のときの申請書の組み立て方に絞って説明します。数次相続とはどういう状態で、放置すると何が厄介になるのかは、数次相続の落とし穴で解説しています。また、申請書の各欄(登記の目的・課税価格・不動産の表示など)の基本的な書き方は、相続登記申請書の書き方で説明していますので、ここでは繰り返しません。
なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の制度と、法務局が公開している様式・記載例に基づく一般的な解説です。
結論:1件にできるかは「途中の相続で取得した人が1人かどうか」で決まる
相続登記は、本来、相続が起きた順番に1件ずつ申請するのが原則です。祖父が亡くなり、その後に父が亡くなったのであれば、「祖父から父へ」の登記をしてから、「父から子へ」の登記をする、という順番になります。
ただし、途中の相続(中間の相続)で権利を取得した人が1人だけのときは、途中の登記を省いて、祖父名義から最終の相続人名義へ直接、1件で登記を申請することが認められています。法務局が公開している数次相続の記載例の解説と、東京ブロック管内の法務局のQ&Aが、この取扱いを示しています。売買の場面で問題になる「中間省略登記」とは別の、相続登記に特有の取扱いです。
反対に、法務局の数次相続の記載例の解説は、「最終の相続以外の相続について、共同相続人数名が権利を取得している場合には、一件の申請では登記することができません」としています。ポイントは次の2つです。
- 途中の相続で取得した人は、1人でなければならない
- 最後の相続で取得する人は、1人でも複数(共有)でもよい
申請書を書く前に、3つのことを確認する
1件にできるかどうかを見極めるため、申請書を書き始める前に、次の順で確認します。
- 登記記録の名義:登記事項証明書の権利部(甲区)で、所有者がいま誰の名義になっているかを確認します。祖父の名義のままか、すでに誰かの名義になっているかで、使う様式が変わります。
- 相続の順番と日付:誰が、いつ亡くなったかを戸籍で確認し、時系列に並べます。数次相続では、途中で亡くなった方についても出生から死亡までの戸籍が必要になります。どこまで集めるかは、数次相続で戸籍はどこまで増える?で整理しています。
- 途中の相続で誰が取得したか:祖父の相続で、不動産を取得したのが父1人なのか、父と叔父などの共有なのかを確認します。
この記事では、次の家族を例にします(氏名・日付はすべて架空です)。
- 祖父 甲野太郎:令和2年3月10日に死亡。土地・建物は祖父の名義のまま
- 祖父の相続人:父 甲野一郎、叔父 甲野二郎(祖母は祖父より前に死亡)
- 父 甲野一郎:祖父の相続の登記も遺産分割もしないまま、令和7年6月5日に死亡
- 父の相続人:母 甲野花子、長男 甲野健一
途中の相続が「1人」といえる典型的な場面
東京ブロック管内の法務局が公開しているQ&Aは、最初の相続が単独相続である場合(遺産分割、相続放棄または他の相続人に相続分のないことによる単独相続を含む)に限り、登記原因とその日付を連記して、登記名義人から最終の相続人名義へ直接相続登記を申請できる、と案内しています。例の家族に当てはめると、次のような場面です。
| 祖父の相続で起きたこと | 途中の相続 | 申請の件数 |
|---|---|---|
| 祖父の相続人が、もともと父1人だけだった | 父の単独相続 | 1件にできる |
| 叔父と、父の立場を引き継いだ母・長男とで遺産分割協議をし、「亡くなった父が取得する」と決めた | 父の単独相続 | 1件にできる |
| 叔父が祖父の相続を放棄した | 父の単独相続 | 1件にできる |
| 叔父が、生前に十分な贈与を受けていたなどで相続分がない | 父の単独相続 | 1件にできる |
| 遺産分割をしておらず、父と叔父が法定相続分で共有している | 父と叔父の共同相続 | 2件に分ける |
| 遺産分割で「叔父が取得する」と決めた | 叔父の単独相続 | 祖父から叔父への通常の相続登記(父の相続は登記に出てこない) |
父が亡くなった後に祖父の遺産について遺産分割協議をするときは、父の立場を引き継いだ父の相続人(例では母と長男)が、叔父と一緒に協議に加わります。遺産分割協議書の作り方そのものは、あわせて読みたい欄の記事をご覧ください。
1件で申請する場合(中間省略)の書き方
例の家族で、祖父の遺産について「亡くなった父が取得する」と協議がまとまり、さらに父の遺産について母と長男が協議して、長男が土地・建物を相続することになった場合です。2026年10月5日以降に申請する場合の様式に合わせると、主な欄は次のようになります。
登 記 申 請 書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和2年3月10日甲野一郎相続
令和7年6月5日相続
相 続 人 (被相続人 甲 野 太 郎)
○○県○○市○○町二丁目3番4号
甲 野 健 一 印
氏名ふりがな こうの けんいち
生年月日 昭和○年○月○日
国籍等 日本
メールアドレス [email protected]
連絡先の電話番号 000-0000-0000
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報 国籍等を証する情報
(以下の、登記識別情報のチェック欄・申請日と申請先・課税価格・登録免許税・不動産の表示は、通常の相続登記と同じ考え方で書きます。)
原因欄:2つの相続を併記する
数次相続で1件にまとめるときの一番の特徴が、この原因欄です。
- 1行目:祖父(登記記録上の名義人)が亡くなった日と、途中の相続で取得した人(父)の氏名を書き、「令和2年3月10日甲野一郎相続」とします。
- 2行目:父が亡くなった日を書き、「令和7年6月5日相続」とします。
どちらの日付も、遺産分割協議がまとまった日ではなく、戸籍に記載された亡くなった日です。父の名義の登記はされませんが、父が途中で取得したことは、この1行目で登記記録に残ることになります。
被相続人の欄と相続人の欄
- 括弧書きの被相続人:登記記録上の名義人である祖父の氏名を書きます。父の氏名ではありません。
- 相続人:最後に取得した人(例では長男)の住所・氏名を、住民票の写しのとおりに書きます。最後の相続で母と長男が共有で取得するなら、2人とも書き、それぞれの持分も書きます。
添付情報(登記原因証明情報)に入れるもの
欄に書く文言は通常の相続登記と同じですが、中身は、2つの相続それぞれについてそろえる必要があります。
| 確認すること | 主な書類 |
|---|---|
| 祖父の相続で、相続人が誰だったか | 祖父の出生から死亡までの戸籍・除籍の証明書、相続人の戸籍の証明書 |
| 祖父の相続で、父1人が取得したこと | 叔父と母・長男による祖父の遺産の遺産分割協議書と印鑑証明書/叔父の相続放棄申述受理証明書/叔父の相続分がないことの証明書と印鑑証明書 など(場面に応じたもの) |
| 父の相続で、相続人が誰だったか | 父の出生から死亡までの戸籍・除籍の証明書、相続人の戸籍の証明書 |
| 父の相続で、長男が取得したこと | 母と長男による父の遺産の遺産分割協議書と印鑑証明書 など |
戸籍の束が厚くなるので、相続関係説明図を添えて原本を返してもらう方法も検討するとよいでしょう。祖父の相続と父の相続の遺産分割協議を1通の協議書にまとめる書き方もありますが、どの相続についての協議なのかがはっきり読み取れるように書くことが大切です。
「途中の相続人の相続人が自分1人だけ」のときは要注意
たとえば、父が亡くなって相続人が母と自分の2人、遺産分割をしないうちに母も亡くなり、母の相続人は自分1人だけ、という場面があります。このとき、自分1人で「父の遺産は自分が直接すべて相続した」とする書面を作って相続登記を申請しても、登記官が「登記原因証明情報の提供がない」として申請を却下したことを適法とした裁判例があります(東京高裁平成26年9月30日判決・平成26年(行コ)第116号)。この場合は、父の相続について、いったん母と自分の共有の形で登記を経由することになると考えられます。
一方、母が亡くなる前に、母と自分との間で父の遺産の分割協議がすでに成立していた場合の取扱いについては、法務省の通知が示されています(平成28年3月2日付け法務省民二第154号通知)。どちらに当たるかで申請の件数が変わるため、迷ったときは申請前に専門家に確認することをおすすめします。
1件にできず、2件に分けて申請する場合の書き方
例の家族で、祖父の遺産について遺産分割をしておらず、父と叔父の法定相続分(各2分の1)による共有のまま登記する場合は、次の2件に分けて申請します。オンラインで申請する場合は、2件に順番をつけてまとめて送信する仕組み(連件)があります。書面で申請する場合の出し方は、申請前に管轄の法務局で確認してください。
1件目:祖父から、父と叔父へ
- 登記の目的:所有権移転
- 原因:令和2年3月10日相続(祖父が亡くなった日だけを書きます)
- 相続人:父(持分2分の1)と叔父(持分2分の1)
父はすでに亡くなっているため、父の相続人が父に代わって申請人になることができます(不動産登記法62条)。亡くなった父を名義人に含める場合の申請人の書き方は、申請前に管轄の法務局の案内などで確認してください。
2件目:父の持分を、父の相続人へ
- 登記の目的:「甲野一郎持分全部移転」のように、父の持分だけを移す形で書きます(法務局が公開している相続登記の申請書チェックリストでも、所有者の持分について移転の登記をする場合は「○○持分全部移転」と記載するとされています)
- 原因:令和7年6月5日相続(父が亡くなった日)
- 被相続人:父
- 相続人:父の持分を取得した人(例では長男。母と長男の共有なら2人とそれぞれの持分)
なお、法務局が公開している相続登記の記載例には、持分だけを相続する場合の見本は載っていません。
2件に分けるときの登録免許税
2件に分ける場合、1件目のうち、亡くなった父を名義人とするための登記については、土地であれば登録免許税が免除される措置があります(租税特別措置法84条の2の2第1項。2027年3月31日まで)。対象や申請書への書き方は、相続登記の登録免許税が『ゼロ』になる土地で解説しています。
申請書の組み立てで迷いやすいところ
- 最後の相続が共有でも1件にできる:1件にできるかどうかを左右するのは途中の相続だけです。最後に母と長男が共有で取得する場合でも、途中の相続が父1人なら1件で申請できます。
- 3世代以上にわたる場合:曾祖父・祖父・父と相続が重なっている場合も、途中の相続(最後の相続以外のすべての相続)がそれぞれ1人による取得であることが、1件にまとめるための前提になります。法務局の記載例は2つの相続が重なった場合のものなので、3つ以上の相続が重なる場合の原因欄の書き方は、申請前に管轄の法務局で確認してください。
- 不動産ごとに取得する人が違う場合:土地は長男、別の土地は母、というように取得する人が不動産ごとに違うときは、申請書を分ける必要があります。
- 相続人の間で話し合いがまとまらない場合:遺産分割協議が成立しないと、遺産分割協議によって「途中の相続で1人が取得した」という前提を整えることはできません。相続人どうしで争いがあり、交渉や調整が必要な場合は、弁護士にご相談ください。
まとめ
- 数次相続でも、途中の相続で取得した人が1人に決まっていれば、途中の登記を省いて1件で申請できます(中間省略)。最後の相続は共有でもかまいません。
- 途中の相続で2人以上が取得している場合は、「祖父から相続人たちへ」「父の持分を父の相続人へ」の2件に分けます。
- 1件で申請するときは、原因欄に「祖父が亡くなった日+父の氏名+相続」「父が亡くなった日+相続」を併記し、被相続人の欄には登記記録上の名義人である祖父を書きます。
- 添付書類は、2つの相続それぞれについて、相続人の範囲と、誰が取得したかがわかるものをそろえます。
- 2026年10月5日以降の申請では、国籍等の欄などが加わった新しい様式を使います。
1件にできるかどうかは、家族関係や遺産分割の内容、手元の書類によって変わります。ご自身のケースに当てはめて判断がつかないときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 数次相続の登記は、費用がどのくらいかかりますか?
主な費用は登録免許税で、課税価格(固定資産課税台帳の価格の合計)の1000分の4が基本です。2件に分ける場合は、1件目の土地の分について免税措置が使えることがあります。このほか、祖父・父それぞれの戸籍の証明書や印鑑証明書などの取得手数料がかかり、通常の相続登記より書類の数が増えます。司法書士に依頼する場合は別に報酬がかかり、金額は事務所ごとに異なります。
Q. 祖父名義のまま放っておくと、どうなりますか?
相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請することが義務になっています。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、まだ登記をしていないものは、2027年3月31日までが期限です。正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。放置する間にさらに相続人が亡くなると、関わる人が増えて、1件にまとめられる条件もそろえにくくなります。
Q. 数次相続の登記を自分で申請できますか?
法務局は、数次相続の場合の様式と記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」を公開しており、ご自身で申請することもできます。ただし、1件にできるかどうかの判断や、2つの相続にまたがる書類の整理は、通常の相続登記よりも難しくなります。判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】数次相続を1件にまとめられるかの分かれ目と、戸籍で確かめる順番
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
不動産登記実務の観点
1件にまとめる書き方の前提
数次相続を1件で申請するときの原因欄は、「令和2年3月10日甲野一郎相続」のように、途中で取得した人を1人の氏名で示す形になっています。途中の相続で複数の人が持分を取得した場合は、誰がどれだけ取得し、そのうち誰の持分が次の相続でどう移ったのかを、この1行の形では表せません。法務局の数次相続の記載例の解説が、最終の相続以外の相続で共同相続人数名が権利を取得している場合は一件の申請では登記できない、としているのは、この書き方の前提と結びついていると読めます。
「単独相続」かどうかは、遺産分割・放棄の効果を踏まえて判断する
東京ブロック管内の法務局のQ&Aは、途中の相続が単独相続である場合に「遺産分割、相続放棄又は他の相続人に相続分のないことによる単独相続」を含めています。この3つには、それぞれ民法上の根拠があります。
| 場面 | 民法の規定 | 途中の相続への効果 |
|---|---|---|
| 遺産分割 | 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる(909条本文) | 父の死亡後に祖父の遺産を分割しても、祖父の死亡時から父1人が取得したことになる |
| 相続放棄 | 放棄した者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなす(939条) | 叔父が放棄すると、祖父の相続人は初めから父だけだったことになる |
| 相続分がない | 遺贈・贈与の価額が相続分の価額以上のときは、その相続分を受けることができない(903条2項) | 叔父に相続分がなければ、取得したのは父1人となる |
つまり、祖父が亡くなった時点で相続人が複数いても、その後の遺産分割や放棄の結果として父1人が取得したことを書面で示せれば、1件にまとめる前提が整うことになります。反対に、遺産分割の結果、取得する割合が「父3分の2・叔父3分の1」のように共有で決まった場合は、途中の相続は単独相続になりません。
2件に分けるときの1件目の申請人
2件に分ける場合の1件目(祖父から父と叔父へ)では、名義人となる父がすでに亡くなっています。不動産登記法62条は、登記権利者などに相続があったときは、その相続人が当該登記を申請できると定めており、父の相続人が父に代わって申請に関わるのはこの規定によるものです。具体的な申請書の書き方は、管轄の法務局で確認するのが確実です。
途中の相続人の相続人が1人だけになった場合(いわゆる一人遺産分割)
本文で触れた「父の相続人が母と自分、遺産分割前に母も亡くなり、母の相続人は自分1人」という場面では、母が亡くなる前に父の遺産についての協議が成立していたかどうかが分かれ目になります。
- 母の生前に協議が成立していなかった場合:母の死亡後に自分1人で「父の遺産を自分が直接すべて相続した」とする書面を作って相続登記を申請したところ、登記官が登記原因証明情報の提供がないとして申請を却下し、その判断を適法とした裁判例があります(東京地裁平成26年3月13日判決・平成25年(行ウ)第372号、東京高裁平成26年9月30日判決・平成26年(行コ)第116号)。これらの裁判例を前提とすると、父の遺産は母と自分の共有を経由し、その後に母の持分を自分が相続する、という順で登記することになると考えられ、その場合は途中の相続が共同相続となるため1件にはまとめられません。
- 母の生前に協議が成立していた場合:協議書を作らないうちに母が亡くなったときについて、残された相続人が、その協議が成立していたことを証明する書面を登記原因証明情報として用いる取扱いを示したのが、平成28年3月2日付けの法務省の通知です。
後者は、あくまで生前に実際に協議が成立していたことが前提です。成立していなかった協議を後から成立したことにする書面を作ることはできません。どちらの場面に当たるかは、事実関係によって決まります。
相続人の確定(戸籍)の観点
まず「亡くなった順番」を戸籍で確定する
数次相続かどうかは、祖父と父のどちらが先に亡くなったかで決まります。父が祖父より先に亡くなっていれば、長男は父に代わって祖父を相続する代襲相続(民法887条2項)となり、母は祖父の相続人になりません。また、事故などで亡くなった順番がはっきりしないときは、同時に死亡したものと推定され(民法32条の2)、同時に亡くなった者どうしの間では相続が起きないため、数次相続ではなく代襲相続として相続人を組み立て直すことになります。申請書を書き始める前に、戸籍に記載された死亡の日(記載によっては時刻まで)を並べて確認することが出発点です。
途中の相続人(父)の戸籍も、出生から死亡まで
父の相続人は、父が亡くなった時点で確定します。父の戸籍を出生までさかのぼると、家族が把握していなかった前の婚姻の子や認知した子が見つかることがあります。そうした子も父の相続人として、父の立場を引き継いで祖父の遺産分割に加わる必要があり、ここを見落とすと、遺産分割協議そのものが成り立たなくなるおそれがあります。
叔父の側の相続も確認する
祖父の相続人である叔父が、祖父の死亡時に生存していたか、その後に亡くなっていないかも、戸籍で確認します。叔父が祖父より後に亡くなっていれば、叔父の相続人が叔父の立場を引き継いで協議に加わる、もう1つの数次相続が生じています。
戸籍の広域交付が使える範囲
本籍地以外の市区町村の窓口で戸籍を請求できる広域交付(戸籍法120条の2)は、戸籍に記載されている本人や、その配偶者・直系尊属・直系卑属が請求する場合(同法10条1項)が対象です。長男から見て祖父や父の戸籍はこの範囲に入りますが、叔父が筆頭者となっている戸籍は直系の関係にないため対象外で、本籍地の市区町村に対して請求する理由を明らかにして請求することになります(同法10条の2)。また、広域交付は郵送では請求できません(同法120条の2第2項で、郵送による送付請求を定める10条3項が適用されないため)。
法定相続情報一覧図は、亡くなった方ごとに作る
法定相続情報一覧図は、被相続人1人について、相続開始の時の同順位の相続人を記載するものです(不動産登記規則247条1項)。数次相続では、祖父についての一覧図と、父についての一覧図が別々になります。祖父についての一覧図の申出は、祖父の相続人である父の地位を相続により承継した人(例では母や長男)もすることができます(同項)。ただし、一覧図に記載されるのは相続人の範囲であり、遺産分割や相続放棄によって誰が取得したかは、別の書面で示す必要があります。
父が祖父の相続について態度を決めないまま亡くなった場合
父が祖父の相続について承認も放棄もしないうちに亡くなったときは、祖父の相続についての熟慮期間は、父の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から数えます(民法916条)。祖父と父が近い時期に亡くなった場合は、祖父の相続を放棄するかどうかの判断の余地が残っていることがあるため、戸籍で日付を確認したうえで、早めに検討することが大切です。
相続人の間で遺産の分け方について争いがあり、交渉や調整が必要な場合は、弁護士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。
- 民法 第32条の2・第887条・第903条・第909条・第916条・第939条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第62条・第76条の2・第164条、附則(令和3年法律第24号)第5条第6項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第247条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 戸籍法 第10条・第10条の2・第120条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 租税特別措置法 第84条の2の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」(令和8年10月5日以降申請用): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001470098.pdf
- 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)」(本人申請・令和8年10月5日以降申請用): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001470102.pdf
- 東京ブロック管内法務局・地方法務局 相続登記促進プロジェクト「相続登記ガイドブック 相続登記の手続について(詳細編)Q&A編」問28: https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001396090.pdf
- 佐賀地方法務局「不動産登記申請書提出前のチェックリスト 所有権移転(相続)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/saga/content/001353313.pdf
- 法務省民事局「法定相続情報証明制度について」: https://www.moj.go.jp/content/001265921.pdf
- 登記・供託オンライン申請システム「よくあるご質問」(連件・同順位設定): https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/faq/faq_120.html
- 裁判所 裁判例検索 東京高等裁判所平成26年9月30日判決(平成26年(行コ)第116号): https://www.courts.go.jp/hanrei/84784/detail5/index.html
- 裁判所 裁判例検索 東京地方裁判所平成26年3月13日判決(平成25年(行ウ)第372号): https://www.courts.go.jp/hanrei/84478/detail5/index.html
※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。
- 日本加除出版「『全訂第三版 相続における戸籍の見方と登記手続』改訂担当者による補足説明」(令和4年2月・平成28年3月2日法務省民二第154号通知の内容紹介): https://www.kajo.co.jp/data/hosokusetsumei_202202.pdf