この記事の要点

  • 個人の住民税(市町村民税・道府県民税)は、毎年1月1日(賦課期日)に住所がある人に、前年の所得をもとに課税される(地方税法294条1項1号・2項、318条、39条、313条1項)
  • 1月1日に生きていた人がその年の途中で亡くなっても、その年度分の住民税はなくならず、相続人が納める義務を引き継ぐ(同法9条1項)。相続人が複数いれば相続分に応じて分けて負担する(同条2項)
  • 1月1日より前に亡くなった人は、その年の1月1日に住所がないため、その年度分の住民税は課されない仕組みになっている

結論から言うと、亡くなった方の住民税を払うのは相続人です。ただし、どの年度の分を払うことになるかは「1月1日に生きていたかどうか」で決まります。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

住民税は「1月1日に住所がある人」にかかる

個人の住民税は、市区町村に納める市町村民税(東京23区では特別区民税)と、都道府県に納める道府県民税(東京都では都民税)をあわせた呼び方です。地方税法は、市町村民税を課す相手を「市町村内に住所を有する個人」とし、その「住所を有する個人」とは住民基本台帳に記録されている人をいうと定めています(294条1項1号・2項)。そして、個人の住民税の賦課期日(だれに課税するかを決める基準日)は、その年度が始まる年の1月1日です(市町村民税=318条、道府県民税=39条)。

もう一つのポイントは、税額の計算のもとになるのが「前年の所得」だということです(所得割の課税標準=313条1項)。たとえば2026年度の住民税は、2026年1月1日に住所がある人に、2025年の所得をもとに課税されます。道府県民税の分は、市区町村が市町村民税とあわせて課税・徴収する仕組みになっているため(41条1項)、通知や納付の窓口はお住まいだった市区町村になります。

年の途中で亡くなった場合──その年度分は相続人へ

1月1日に生きていて、その年の途中で亡くなった場合、その年度分の住民税はすでに課税の対象になっています。地方税法9条1項は、相続があったときは、相続人が「被相続人に課されるべき」税金や「被相続人が納付し、若しくは納入すべき」税金を納めなければならないと定めています。亡くなった後に納税通知書が届いた分や、まだ納期が来ていない分も含めて、相続人が引き継ぐことになります。

相続人が二人以上いるときは、各相続人は、民法900条から902条までの相続分(法定相続分。遺言で相続分の指定があればその割合)で分けた額を納めます(9条2項)。条文が基準にしているのは民法の相続分であり、遺産分割協議の結果ではありません。ここでいう相続分の指定とは、遺言で遺産全体に対する各相続人の割合を決めることです。「自宅は長男に」のように特定の財産を誰に継がせるかを決めた遺言があるときに、どの割合で分けて納めることになるかは、お住まいだった市区町村の税務担当窓口にご確認ください。また、相続した財産がこの分けた額より多い相続人は、その多い分を限度に、ほかの相続人の分についても納める責任を負うとされています(同条3項)。なお、限定承認をした相続人は、相続で得た財産の範囲で納めれば足ります(同条1項ただし書)。

相続人が複数いると、通知書をだれに送るかが問題になります。このときは、相続人の中から書類を受け取る代表者を決めて市区町村に届け出る「相続人代表者指定届」の制度が使われます(9条の2)。固定資産税の場面で取り上げた制度と同じ規定で、住民税にもあてはまります。詳しくは亡くなった親の固定資産税は誰が払う?──『相続人代表者指定届』のしくみをご覧ください。

給与から天引き(特別徴収)されていた場合、亡くなって給与が支払われなくなると、勤務先は原則としてその翌月以降の分を差し引く義務を負いませんが、亡くなった時期によっては、最後に支払われる給与や退職手当からまとめて差し引かれることがあります(321条の5第2項)。勤務先で差し引かれなかった分は、納付書で納める方法(普通徴収)に切り替わり、相続人あてに通知されることになります(321条の7第1項)。

1月1日より前に亡くなった場合──その年度分は課されない

反対に、たとえば2025年12月に亡くなった方は、2026年1月1日の時点で住所がありません。住民税は1月1日に住所がある人にかかる税金なので、2026年度分(2025年の所得が基準)の住民税は課されない仕組みです。ただし、その前の2025年度分(2025年1月1日には生きていたため課税されている分)のうち納め終わっていない分は、前の節のとおり相続人が引き継ぎます。同じ理由で、2026年の途中に亡くなった方についても、2027年1月1日には住所がないため、亡くなった年の所得をもとにした2027年度分は課されません。

ここで混同しやすいのが所得税です。亡くなった年の所得について所得税の申告が必要な場合は、相続人が準確定申告を行います。住民税がかからないことと、所得税の申告が要らないことは別の話です。また、相続税がかかる場合は、相続人が引き継いだ住民税が相続税の計算でどう扱われるか(債務控除。相続税法13条1項1号・14条2項)も関係してきます。これらの税目の判断は、税理士にご確認ください。

相続放棄をした人は引き継がない

相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。9条1項で住民税を引き継ぐのは「相続人」なので、相続放棄をした人は亡くなった方の住民税を引き継ぎません。相続放棄の期限や手続きは、相続放棄の基本で整理しています。

まとめ

個人の住民税は、毎年1月1日に住所がある人に、前年の所得をもとに課税されます。1月1日に生きていた方が年の途中で亡くなった場合は、その年度分を相続人が相続分に応じて引き継ぎ、1月1日より前に亡くなった場合は、その年度分は課されません。通知書の受け取りには相続人代表者指定届の制度があります。具体的な税額や、準確定申告・相続税との関係は税理士に、届出の書式や納付の方法はお住まいだった市区町村の税務担当窓口にご確認ください。相続登記など相続全体の手続きの進め方については、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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