この記事の要点
- 固定資産税を納める人が、その不動産のある市区町村に住所・居所・事務所・事業所をもたない場合、納税の手続きを代わりに処理する「納税管理人」を定めることが、地方税法355条1項で求められている
- 定め方は、条例で決められた地域内の人を選んで市区町村長に「申告」する方法と、地域外の人を選ぶことについて「申請」して承認を受ける方法の2通り。税金の徴収に支障がないと市区町村長の「認定」を受ければ、定めなくてよい(同条2項)
- 相続人の中から書類の受取人を決める「相続人代表者指定届」とは別の制度。国税(相続税など)の納税管理人も、固定資産税とは別の法律の別の制度
結論から言うと、相続で不動産を引き継いだ人が、その不動産のある市区町村の外に住んでいる場合には、固定資産税について「納税管理人」を定めるか、定めなくてよいという認定を受けるかを、その市区町村に確認しておく必要があります。海外に住んでいる場合だけの話ではない点に注意が必要です。
地方税法355条1項は、固定資産税の納税義務者が、納税義務を負う市町村内に住所・居所・事務所・事業所(条文では「住所等」)をもたない場合に、「納税に関する一切の事項を処理させるため」、納税管理人を定めなければならないと定めています。基準は「その市町村内に住所等があるかどうか」であり、国外に住んでいることに限られていません。条文上は、国内の別の市区町村に住んでいる人も対象に入る書き方になっています。
定め方は2通りです。一つは、その市町村の条例で定める地域内に住所等をもつ人の中から納税管理人を定めて、市町村長に申告する方法です。もう一つは、その地域外に住所等をもつ人のうち、手続きの処理に「便宜を有する」人を納税管理人とすることについて、市町村長に申請して承認を受ける方法です。納税管理人を変更するとき、変更しようとするときも同様とされています。納税管理人になる人について条文が定めているのは、条例で定める地域内に住所等をもつこと、地域外の人であれば処理に便宜を有するとして承認を受けることであり、ほかの相続人や親族に限られてはいません。
一方、同条2項は、納税義務者が、自分の固定資産税の徴収の確保に支障がないことについて市町村長に申請して認定を受けたときは、納税管理人を定めなくてよいとしています。条例で定める地域の範囲や、どのような場合にこの認定を受けられるかといった運用は、市区町村ごとに異なることがあります。ここを一般化して「遠方に住んでいても何もしなくてよい」「必ず納税管理人が必要」とは言えないため、不動産のある市区町村の税務担当課に確認するのが確実です。なお、納税管理人についての虚偽の申告や、偽りその他不正の手段で承認・認定を受けることには、30万円以下の罰金の定めがあります(同法356条)。
ここで混同しやすいのが、相続人代表者指定届です。こちらは地方税法9条の2に基づき、亡くなった方の税金に関する書類を受け取る代表者を、相続人の中から指定して届け出る制度です。納税管理人は、納税義務者がその市町村内に住所等をもたないときに、納税に関する事項を処理させるために定める人であり、根拠の条文も役割も異なります。代表者指定届を出していることで、納税管理人の手続きが済んだことにはなりません。
また、国税にも納税管理人の制度があります(国税通則法117条)。こちらは、日本国内に住所・居所をもたない人が、納税申告書の提出など国税に関する事項を処理する必要があるときに定め、税務署長に届け出るものです。基準が「国内かどうか」である点で、市町村内かどうかを見る固定資産税とは異なり、届出先も別です。固定資産税の納税管理人を定めたからといって、国税の手続きが済むわけではありません。
相続人が海外に住んでいる場合は、固定資産税のほかに、海外在住の相続人の相続手続き(サイン証明・在留証明など)も並行して進めることになります。
なお、東京23区内にある不動産の固定資産税は、区ではなく東京都が課税し、固定資産税に関する規定(納税管理人を定める355条を含みます)は、都を市とみなして準用されます(地方税法734条1項)。この場合、納税管理人の申告先は区役所ではなく、土地・家屋の所在地を所管する都税事務所です。東京都主税局の案内(2026年〔令和8年〕4月版)では、固定資産税については、納税義務者が23区内に住所等をもたない場合に納税管理人を定めるものとされています。
執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。納税管理人の申告書・申請書の様式や提出先、必要書類、認定の扱いは、不動産のある市区町村の税務担当課(東京23区内の不動産は都税事務所)でご確認ください。個々の税額や、ご自身の状況で何が必要かの判断はこの記事では扱っていません。
まとめ
相続した不動産のある市区町村に住所等をもたない人は、固定資産税について納税管理人を定める(申告または申請・承認)か、徴収に支障がないとして定めなくてよい認定を受けるかが問題になります(地方税法355条)。扱いは市区町村ごとに異なることがあるため、固定資産税のことは不動産のある市区町村の税務担当課へ、国税の納税管理人や相続税のことは税理士または税務署へ確認してください。不動産の名義を相続人に移す相続登記については、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。
- 地方税法 第9条の2・第355条・第356条・第734条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国税通則法 第117条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 東京都主税局「納税管理人申告のご案内」(令和8年4月): https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/noukannin
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税|申請様式(共通)」: https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/application/kakusyuyoshiki/shomei/z9