問題:
住所、物及び法律行為に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 日本に住所を有しない者については、その者が日本人である場合に限り、日本における居所をその者の住所とみなす。
イ. ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。
ウ. 土地及びその定着物は不動産とし、不動産以外の物はすべて動産とするほか、無記名債権は、動産とみなす。
エ. 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属し、法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
オ. 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合には、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるか否かにかかわらず、その慣習に従う。
答え:
誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、住所・居所・仮住所(民法22条〜24条)、物の定義と不動産・動産の区別(同法85条・86条)、果実の帰属(同法89条)及び任意規定と異なる慣習(同法92条)を問うものであり、誤っているのはア・ウ・オの3つである。
ア 誤り。民法23条2項は、「日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。」と定めている。日本に住所を有しない者の居所を住所とみなすのは、その者が日本人である場合に限られないから、本肢は誤りである。なお、同法22条は、「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と定め、同法23条1項は、「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。」と定めている。
イ 正しい。民法24条は、「ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
ウ 誤り。民法85条は、「この法律において「物」とは、有体物をいう。」と定め、同法86条1項は、「土地及びその定着物は、不動産とする。」と、同条2項は、「不動産以外の物は、すべて動産とする。」と定めている。現行の同法86条はこの2つの項のみで構成されており、無記名債権を動産とみなす規定は置かれていない。無記名債権は、債権であって有体物ではないから同法85条の「物」に当たらず、同法86条2項の動産にも当たらないので、本肢は誤りである。なお、令和2年4月1日より前の同法86条3項は「無記名債権は、動産とみなす。」と定めていたが、この規定は民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)により削除され、同日以後の同条にはこの規定はない(同改正法附則4条は、同日前に生じた改正前の同項に規定する無記名債権(その原因である法律行為が同日前にされたものを含む。)については、なお従前の例によると定めている。)。現行法では、民法520条の20が、「第二款(記名式所持人払証券)の規定は、無記名証券について準用する。」と定めている。
エ 正しい。民法89条1項は、「天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。」と定め、同条2項は、「法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 誤り。民法92条は、「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。」と定めている。慣習に従うのは、当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときであるから、それを問わないとする本肢は誤りである。なお、同法91条は、「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。」と定め、同法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定めている。
ポイント:住所は各人の生活の本拠であり(民法22条)、住所が知れない場合と、日本に住所を有しない場合(日本人か外国人かを問わない。)には居所を住所とみなし(同法23条)、ある行為について選定した仮住所はその行為に関して住所とみなす(同法24条)。「物」は有体物をいい(同法85条)、土地及びその定着物が不動産、それ以外の物はすべて動産であって(同法86条)、現行法には無記名債権を動産とみなす規定はない。天然果実は元物から分離する時に収取権者に帰属し、法定果実は収取権の存続期間に応じて日割計算で取得する(同法89条)。任意規定と異なる慣習に従うのは、当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときである(同法92条)。「みなす」の対象と、慣習に従うための要件を条文の文言で確かめる。
問題:
先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、共益の費用、雇用関係、子の監護の費用、葬式の費用、日用品の供給の順序に従う。
イ. 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、共益の費用の先取特権を除き、一般の先取特権が特別の先取特権に優先する。
ウ. 不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事が完了した後直ちに、その費用の額を登記しなければならない。
エ. 不動産の保存の先取特権は、保存行為が完了した後直ちに登記をしたときは、抵当権に先立って行使することができる。
オ. 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができるが、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
本問は、一般の先取特権の種類と順位(民法306条・329条1項)、一般の先取特権と特別の先取特権との競合(同法329条2項)、不動産の保存・工事・売買の先取特権の登記(同法337条〜340条)及び一般の先取特権の効力と対抗力(同法335条・336条)を問うものであり、正しいのはア・エ・オの3つである。
ア 正しい。民法306条は、「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。」と定め、1号で「共益の費用」、2号で「雇用関係」、3号で「子の監護の費用」、4号で「葬式の費用」、5号で「日用品の供給」を掲げている。そして、同法329条1項は、「一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法306条3号の「子の監護の費用」は、令和6年法律第33号による改正で加えられ、令和8年4月1日から施行されているものであり、それより前の同条は、共益の費用、雇用関係、葬式の費用、日用品の供給の4号であった。子の監護の費用の先取特権が存在する範囲は、同法308条の2が定めている。また、子の監護の費用の先取特権に関する経過措置として、令和6年法律第33号附則3条1項は、同法による改正後の民法306条3号及び308条の2の規定は、308条の2に規定する定期金債権のうち令和8年4月1日以後に生じた各期の定期金について適用すると定めている。
イ 誤り。民法329条2項は、「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。」と定めている。一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権が一般の先取特権に優先するから、本肢は誤りである。
ウ 誤り。民法338条1項は、「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。」と定めている。登記は、工事を始める前に費用の予算額についてしなければならないから、本肢は誤りである。なお、同法340条は、「不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。」と定めている。
エ 正しい。民法337条は、「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。」と定め、同法339条は、「前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法331条1項は、「同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。」と定めており、同法325条は、1号で「不動産の保存」、2号で「不動産の工事」、3号で「不動産の売買」を掲げている。
オ 正しい。民法336条は、「一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。なお、同法335条1項は、「一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。」と定めている。
ポイント:一般の先取特権は、共益の費用・雇用関係・子の監護の費用・葬式の費用・日用品の供給の5つで、互いに競合するときはこの順序に従う(民法306条・329条1項)。一般の先取特権と特別の先取特権とが競合するときは特別の先取特権が優先するが、共益の費用の先取特権はその利益を受けたすべての債権者に優先する(同条2項)。不動産の先取特権の登記は、保存が保存行為の完了後直ちに(同法337条)、工事が工事を始める前に費用の予算額を(同法338条1項)、売買が売買契約と同時に代価又はその利息の弁済がされていない旨を(同法340条)するもので、保存と工事の先取特権は、登記をすれば抵当権に先立って行使することができる(同法339条)。一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても特別担保を有しない債権者に対抗できるが、登記をした第三者には対抗できず(同法336条)、まず不動産以外の財産から弁済を受ける(同法335条1項)。令和8年4月1日から一般の先取特権に「子の監護の費用」が加わり、3号に入ったことで葬式の費用と日用品の供給が4号・5号に繰り下がった点に注意する。
問題:
財産分離に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から3箇月以内に限り、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができ、この期間の満了後は、相続財産が相続人の固有財産と混合していないときであっても、その請求をすることができない。
イ. 家庭裁判所が相続債権者の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、5日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を官報に掲載して公告しなければならず、その期間は、2箇月を下ることができない。
ウ. 財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
エ. 財産分離の請求をした相続債権者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかったときは、相続人の固有財産について、相続人の債権者と同順位でその権利を行使することができる。
オ. 相続人の債権者は、相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
答え:
誤っているものは、ア・エの2つである。
解説:
本問は、相続債権者又は受遺者の請求による財産分離(民法941条)、財産分離の効力(同法942条)、不動産についての財産分離の対抗要件(同法945条)、相続人の固有財産からの弁済(同法948条)及び相続人の債権者の請求による財産分離(同法950条)を問うものであり、誤っているのはア・エの2つである。
ア 誤り。民法941条1項は、「相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。」と定めている。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、3箇月の期間の満了後も財産分離を請求することができるから、本肢は誤りである。
イ 正しい。民法941条2項は、「家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。」と定め、同条3項は、「前項の規定による公告は、官報に掲載してする。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同法942条は、「財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。」と定めている。
ウ 正しい。民法945条は、「財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。なお、同法946条は、「第三百四条の規定は、財産分離の場合について準用する。」と定めている。
エ 誤り。民法948条は、「財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行使することができる。この場合においては、相続人の債権者は、その者に先立って弁済を受けることができる。」と定めている。相続人の固有財産については、相続人の債権者が財産分離の請求をした者に先立って弁済を受けることができるのであって、同順位ではないから、本肢は誤りである。なお、同法949条は、「相続人は、その固有財産をもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。」と定めている。
オ 正しい。民法950条1項は、「相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。なお、同条2項は、同法304条、925条、927条から934条まで、943条から945条まで及び948条の規定を同条1項の場合について準用し、ただし、同法927条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならないと定めている。
ポイント:相続債権者又は受遺者による財産分離の請求は、相続開始の時から3箇月以内にするが、相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後もすることができる(民法941条1項)。財産分離が命じられたときは、請求をした者が5日以内に、2箇月を下らない期間を定めて配当加入の申出をすべき旨を官報に掲載して公告する(同条2項・3項)。財産分離の請求をした者と配当加入の申出をした者は、相続財産について相続人の債権者に先立って弁済を受け(同法942条)、相続財産で全部の弁済を受けられなかった場合に限り相続人の固有財産に権利を行使できるが、そこでは相続人の債権者が先に弁済を受ける(同法948条)。不動産についての財産分離は、登記をしなければ第三者に対抗できない(同法945条)。相続人の債権者も、相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、財産分離を請求することができる(同法950条1項)。「相続財産では相続債権者が先、固有財産では相続人の債権者が先」と整理する。
問題:
建物の滅失の登記等に関する次の記述のうち、不動産登記法、不動産登記令、不動産登記規則及び不動産登記事務取扱手続準則(以下「準則」という。)の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合には、表題部の主たる建物の表示欄に、主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録するものとされている。
イ. 建物の滅失の登記をする場合において、当該建物の登記記録に附属建物があるときは、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄にも、滅失の登記原因及びその日付を記録しなければならない。
ウ. 滅失した建物が他の不動産と共に所有権以外の権利の目的であった場合(その旨が登記記録に記録されている場合に限る。)において、当該他の不動産が他の登記所の管轄区域内にあるときは、建物の滅失の登記をした登記官は、遅滞なく、その旨を当該他の登記所に通知しなければならない。
エ. 登記官は、敷地権付き区分建物の滅失の登記をする場合であっても、敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区にされている敷地権である旨の登記を抹消することを要しない。
オ. 所有権の登記がある建物の滅失の登記を当該建物の所有権の登記名義人が申請するときは、申請情報と併せて当該所有権の登記名義人の登記識別情報を提供しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の変更の登記の記録方法(準則102条)、附属建物がある建物の滅失の登記の記録方法(準則101条)、建物の滅失の登記をした場合の他の登記所への通知(不動産登記規則144条2項・110条)、敷地権付き区分建物の滅失の登記と敷地権である旨の登記の抹消(同規則145条1項・124条1項)及び登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記(不動産登記法22条、不動産登記令8条1項)を問うものであり、誤っているのはイ・エ・オの3つである。
ア 正しい。準則102条は、「附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合には、表題部の主たる建物の表示欄の原因及びその日付欄に滅失の登記原因及びその日付を記録し、当該表示欄に主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録し、当該原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録するものとする。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。なお、同条後段は、この場合には、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録して、当該附属建物についての従前の登記事項を抹消するものとすると定めている。
イ 誤り。準則101条は、「建物の滅失の登記をする場合において、当該建物の登記記録に附属建物があるときでも、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄には、何らの記録を要しない。」と定めている。附属建物の表示欄の原因及びその日付欄には何らの記録を要しないから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。不動産登記規則144条1項は、「登記官は、建物の滅失の登記をするときは、当該建物の登記記録の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、当該登記記録を閉鎖しなければならない。」と定め、同条2項は、「第百十条の規定は、前項の登記について準用する。」と定めている。そして、同規則110条1項は、滅失した土地が他の不動産と共に所有権以外の権利の目的であったとき(その旨が登記記録に記録されている場合に限る。)は、登記官は、当該他の不動産の登記記録の乙区に、滅失した土地の不動産所在事項並びに滅失の原因及び当該土地が滅失したことを記録するなどしなければならないと定め、同条3項は、「登記官は、第一項の場合において、当該他の不動産が他の登記所の管轄区域内にあるときは、遅滞なく、その旨を当該他の登記所に通知しなければならない。」と定めている。これらの規定は、同規則144条2項により建物の滅失の登記について準用されるから、本肢は正しい。なお、同規則110条2項は、滅失した土地が他の不動産と共に担保権の目的であったときは、同条1項の規定による記録(滅失した土地の不動産所在事項の記録を除く。)は、共同担保目録にしなければならないと定めている。
エ 誤り。不動産登記規則145条1項は、「第百二十四条第一項から第五項まで及び第八項から第十項までの規定は、敷地権付き区分建物の滅失の登記をする場合について準用する。」と定めている。そして、同規則124条1項は、「登記官は、敷地権付き区分建物について、敷地権であった権利が敷地権でない権利となったことによる建物の表題部に関する変更の登記をしたときは、当該敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区に敷地権の変更の登記により敷地権を抹消する旨及びその年月日を記録し、同区の敷地権である旨の登記の抹消をしなければならない。」と定めている。敷地権付き区分建物の滅失の登記をする場合にも、この規定が準用され、登記官は敷地権である旨の登記の抹消をしなければならないから、本肢は誤りである。
オ 誤り。不動産登記法22条本文は、「登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。」と定めている。そして、同条の政令で定める登記として、不動産登記令8条1項は、1号で「所有権の登記がある土地の合筆の登記」、2号で「所有権の登記がある建物の合体による登記等」、3号で「所有権の登記がある建物の合併の登記」を掲げ、4号から9号までで権利に関する登記を掲げているが、建物の滅失の登記は同項各号のいずれにも掲げられていない。建物の滅失の登記は、権利に関する登記の共同申請でもなく、同項の政令で定める登記にも当たらないから、所有権の登記名義人の登記識別情報を提供することを要せず、本肢は誤りである。
ポイント:主たる建物のみが滅失したときは、表題部の登記事項に関する変更の登記として、主たる建物となるべき附属建物の種類・構造・床面積を主たる建物の表示欄に記録する(準則102条)。建物全体の滅失の登記をするときは登記記録を閉鎖し(不動産登記規則144条1項)、附属建物の表示欄の原因及びその日付欄には何らの記録を要しない(準則101条)。滅失した建物が他の不動産と共に所有権以外の権利の目的であったときの記録と他の登記所への通知は、土地の滅失の登記の規定(同規則110条)が準用され(同規則144条2項)、敷地権付き区分建物の滅失の登記では敷地権である旨の登記を抹消する(同規則145条1項・124条1項)。登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない表示に関する登記は、所有権の登記がある土地の合筆の登記、建物の合体による登記等、建物の合併の登記であり(不動産登記法22条、不動産登記令8条1項1号〜3号)、建物の滅失の登記は含まれない。「何を記録し、何を記録しないか」を準則の文言で押さえる。
問題:
建物の個数、家屋番号及び建物の不動産所在事項の記録に関する次の記述のうち、不動産登記事務取扱手続準則(以下「準則」という。)の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合において、その所有者が同一であるときは、その所有者の意思に反しない限り、一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとされている。
イ. 家屋番号が敷地の地番と同一である建物の敷地上に存する他の建物を登記する場合には、敷地の地番に2、3の支号を付した番号をもって定め、この場合には、最初に登記された建物の家屋番号を、敷地の地番に1の支号を付した番号に必ず変更しなければならない。
ウ. 建物の合併の登記をする場合には、合併前の建物の家屋番号のうち上位のものをもって合併後の家屋番号とするものとされており、上位の家屋番号によることが相当でないと認められる場合であっても、他の番号を用いることはできない。
エ. 建物の登記記録の表題部に不動産所在事項を記録する場合において、当該建物が他の都道府県にまたがって存在するときは、不動産所在事項に当該他の都道府県名を冠記するものとされている。
オ. 建物が永久的な施設としてのさん橋の上に存する場合には、その建物から最も近い土地の地番を用い、「何番地先」のように不動産所在事項を記録するものとされ、その家屋番号は、その建物に最も近い土地の地番と同一の番号をもって定めるものとされている。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
本問は、建物の個数の基準(準則78条)、家屋番号の定め方(準則79条、不動産登記規則112条)及び建物の不動産所在事項の記録方法(準則88条)を問うものであり、正しいのはア・エ・オの3つである。
ア 正しい。準則78条2項は、「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には、その各部分は、各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする。ただし、所有者が同一であるときは、その所有者の意思に反しない限り、一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする。」と定めている。本肢は、同項ただし書のとおりである。
イ 誤り。準則79条は、「家屋番号は、規則第112条に定めるところによるほか、次に掲げるところにより定めるものとする。」と定め、7号で、「家屋番号が敷地の地番と同一である建物の敷地上に存する他の建物を登記する場合には、敷地の地番に2、3の支号を付した番号をもって定める。この場合には、最初に登記された建物の家屋番号を必ずしも変更することを要しない。」と定めている。最初に登記された建物の家屋番号は必ずしも変更することを要しないから、本肢は誤りである。なお、不動産登記規則112条1項は、「家屋番号は、地番区域ごとに建物の敷地の地番と同一の番号をもって定めるものとする。ただし、二個以上の建物が一筆の土地の上に存するとき、一個の建物が二筆以上の土地の上に存するとき、その他特別の事情があるときは、敷地の地番と同一の番号に支号を付す方法その他の方法により、これを定めるものとする。」と定めている。
ウ 誤り。準則79条9号は、「建物の合併の登記をする場合には、合併前の建物の家屋番号のうち上位のものをもって合併後の家屋番号とする。ただし、上位の家屋番号によることが相当でないと認められる場合には、他の番号を用いても差し支えない。」と定めている。上位の家屋番号によることが相当でないと認められる場合には他の番号を用いても差し支えないから、本肢は誤りである。
エ 正しい。準則88条1項は、「建物の登記記録の表題部に不動産所在事項を記録する場合において、当該建物が他の都道府県にまたがって存在するときは、不動産所在事項に当該他の都道府県名を冠記するものとする。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。なお、同条2項は、2筆以上の土地にまたがる建物の不動産所在事項を記録する場合には、床面積の多い部分又は主たる建物の所在する土地の地番を先に記録し、他の土地の地番は後に記録するものとすると定め、同条3項は、その地番を「6番地、4番地、8番地」のように記録するものとし、「6、4、8番地」のように略記してはならないが、連続する地番(支号のあるものを除く。)は「5番地ないし7番地」のように略記して差し支えないと定めている。
オ 正しい。準則88条4項は、「建物が永久的な施設としてのさん橋の上に存する場合又は固定した浮船を利用したものである場合については、その建物から最も近い土地の地番を用い、「何番地先」のように記録するものとする。」と定めている。また、準則79条5号は、「建物が永久的な施設としてのさん橋の上に存する場合又は固定した浮船を利用したものである場合には、その建物に最も近い土地の地番と同一の番号をもって定める。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:構造上区分された数個の部分は各別に1個の建物とするのが原則であるが、所有者が同一であれば、その意思に反しない限り、一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱う(準則78条2項)。家屋番号は敷地の地番と同一の番号で定めるのが原則であり(不動産登記規則112条1項)、既存の建物の敷地上に他の建物を登記するときは2、3の支号を付すが最初の建物の家屋番号は必ずしも変更しなくてよく(準則79条7号)、合併後の家屋番号は上位のものが原則で相当でなければ他の番号でもよい(同条9号)。さん橋の上の建物や固定した浮船を利用した建物は、最も近い土地の地番によって家屋番号を定め、不動産所在事項は「何番地先」と記録する(準則79条5号・88条4項)。他の都道府県にまたがる建物は他の都道府県名を冠記する(準則88条1項)。準則の「必ずしも…要しない」「差し支えない」という緩めの文言は、「必ず」「できない」と言い切る肢の誤りを見抜く手掛かりになる。
問題:
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)の懲戒及びこれに関連する規定に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。なお、日本土地家屋調査士会連合会を「調査士会連合会」、土地家屋調査士会を「調査士会」という。
ア. 何人も、調査士に土地家屋調査士法又は同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができ、この通知があったときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。
イ. 調査士に対する業務の禁止の処分に係る行政手続法15条1項の通知は、聴聞の期日の2週間前までにしなければならない。
ウ. 法務大臣は、調査士に対し懲戒の処分をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもって公告しなければならないが、戒告の処分をしたときは、この限りでない。
エ. 調査士が業務の禁止の処分を受けたときは、その者は、その処分の日から3年を経過しない間は調査士となる資格を有せず、調査士会連合会は、その登録を取り消さなければならない。
オ. 調査士会は、所属の会員が土地家屋調査士法又は同法に基づく命令に違反すると思料するときは、その旨を、調査士会連合会に報告しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
本問は、懲戒の手続(土地家屋調査士法44条)、懲戒処分の公告(同法46条)、業務の禁止の処分と欠格事由・登録の取消し(同法5条5号・15条1項4号)及び調査士会の法務大臣に対する報告義務(同法55条)を問うものであり、正しいのはア・エの2つである。
ア 正しい。土地家屋調査士法44条1項は、「何人も、調査士又は調査士法人にこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。」と定め、同条2項は、「前項の規定による通知があつたときは、法務大臣は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 誤り。土地家屋調査士法44条4項は、「前項に規定する処分又は第四十二条第三号若しくは前条第一項第三号の処分に係る行政手続法第十五条第一項の通知は、聴聞の期日の一週間前までにしなければならない。」と定めている。同法42条3号の処分は「業務の禁止」である。業務の禁止の処分に係る通知は、聴聞の期日の1週間前までにしなければならないのであって、2週間前までではないから、本肢は誤りである。なお、同法44条3項は、法務大臣は、同法42条1号(戒告)若しくは2号(2年以内の業務の停止)又は43条1項1号(戒告)若しくは2号(2年以内の業務の全部又は一部の停止)に掲げる処分をしようとするときは、行政手続法13条1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならないと定めている。
ウ 誤り。土地家屋調査士法46条は、「法務大臣は、第四十二条又は第四十三条第一項の規定により処分をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもつて公告しなければならない。」と定めている。同法42条は、調査士に対する処分として、1号で「戒告」、2号で「二年以内の業務の停止」、3号で「業務の禁止」を掲げている。同法46条は戒告の処分を公告の対象から除いていないから、本肢は誤りである。
エ 正しい。土地家屋調査士法5条は、「次に掲げる者は、調査士となる資格を有しない。」と定め、5号で「第四十二条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者」を掲げている。そして、同法15条1項は、「調査士が次の各号のいずれかに該当する場合には、調査士会連合会は、その登録を取り消さなければならない。」と定め、4号で「第五条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたとき。」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。
オ 誤り。土地家屋調査士法55条は、「調査士会は、所属の会員が、この法律又はこの法律に基づく命令に違反すると思料するときは、その旨を、法務大臣に報告しなければならない。」と定めている。報告先は法務大臣であり、調査士会連合会ではないから、本肢は誤りである。
ポイント:違反の事実があると思料するときは、何人も法務大臣に通知して適当な措置を求めることができ、法務大臣は必要な調査をしなければならない(土地家屋調査士法44条1項・2項)。戒告・業務の停止の処分をしようとするときも聴聞を行い(同条3項)、聴聞の通知は期日の1週間前までにする(同条4項)。懲戒処分をしたときは、戒告を含めて官報で公告する(同法46条)。業務の禁止の処分を受けた者は、その処分の日から3年を経過しない間は調査士となる資格を有せず(同法5条5号)、調査士会連合会は登録を取り消さなければならない(同法15条1項4号)。調査士会は、所属の会員の違反を思料するときは法務大臣に報告しなければならない(同法55条)。期間(1週間・3年)と、通知・報告の相手方(いずれも法務大臣)を条文で確かめる。
問題:
筆界特定の手続に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。なお、「意見聴取等の期日」とは、不動産登記法140条1項の期日をいう。
ア. 意見聴取等の期日の調書には、当該期日において行われた手続の要領(陳述の要旨を含む。)を記録するものとされているが、筆界特定登記官は、申請人、関係人又は参考人の陳述をビデオテープその他の適当と認める記録用の媒体に記録し、これをもって調書の記録に代えることができる。
イ. 筆界特定の申請人又は関係人が筆界特定の手続において作成された調書の閲覧の請求をするときは、手続番号等の所定の事項に係る情報を記載した書面を法務局又は地方法務局に提出する方法のほか、電子情報処理組織を使用して当該情報を送信する方法によってもすることができる。
ウ. 筆界調査委員は、意見聴取等の期日の後、対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を終了したときは、遅滞なく、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界特定についての意見を提出しなければならず、この意見の提出は、書面又は電磁的記録をもってするものとされている。
エ. 筆界特定の手続における測量に要する費用その他の法務省令で定める費用(手続費用)は、筆界特定の申請人及び関係人が等しい割合で負担するものとされている。
オ. 筆界特定の申請がされた後、申請人が代理人を選任したときは、当該申請人が会社法人等番号を有する法人であって当該代理人が支配人等である場合を除き、当該申請人は、当該代理人の権限を証する情報を法務局又は地方法務局に提供しなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
本問は、意見聴取等の期日の調書(不動産登記法140条4項、不動産登記規則226条)、調書等の閲覧の請求の方法(同法141条1項、同規則227条)、筆界調査委員の意見の提出(同法142条、同規則230条)、手続費用の負担(同法146条、同規則242条)及び筆界特定の申請後に選任された代理人の権限を証する情報(同規則243条3項)を問うものであり、誤っているのはイ・エの2つである。
ア 正しい。不動産登記法140条4項は、「筆界特定登記官は、第一項の期日の経過を記載した調書を作成し、当該調書において当該期日における筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。」と定めている。そして、不動産登記規則226条1項は、同法140条4項の調書に記録する事項として、5号で「意見聴取等の期日において行われた手続の要領(陳述の要旨を含む。)」を掲げ、同条2項は、「筆界特定登記官は、前項の規定にかかわらず、申請人、関係人又は参考人の陳述をビデオテープその他の適当と認める記録用の媒体に記録し、これをもって調書の記録に代えることができる。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。なお、同規則222条は、同法140条1項の期日を「意見聴取等の期日」と定義している。
イ 誤り。不動産登記法141条1項前段は、筆界特定の申請人及び関係人は、同法133条1項本文の規定による公告があった時から同法144条1項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされるまでの間、筆界特定登記官に対し、当該筆界特定の手続において作成された調書及び提出された資料の閲覧を請求することができると定めている。そして、不動産登記規則227条1項は、申請人又は関係人が同法141条1項の規定により調書又は資料の閲覧の請求をするときは、手続番号等の同項各号に掲げる事項に係る情報を提供しなければならないと定め、同条6項は、「第一項の閲覧の請求は、同項の情報を記載した書面を法務局又は地方法務局に提出する方法によりしなければならない。」と定めている。閲覧の請求は書面を提出する方法によりしなければならず、電子情報処理組織を使用する方法によることはできないから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。不動産登記法142条は、「筆界調査委員は、第百四十条第一項の期日の後、対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を終了したときは、遅滞なく、筆界特定登記官に対し、対象土地の筆界特定についての意見を提出しなければならない。」と定め、不動産登記規則230条は、「法第百四十二条の規定による意見の提出は、書面又は電磁的記録をもってするものとする。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
エ 誤り。不動産登記法146条1項は、「筆界特定の手続における測量に要する費用その他の法務省令で定める費用(以下この条において「手続費用」という。)は、筆界特定の申請人の負担とする。」と定めている。手続費用は筆界特定の申請人の負担とされており、関係人の負担とはされていないから、本肢は誤りである。なお、同条2項は、筆界特定の申請人が二人ある場合において、その一人が対象土地の一方の土地の所有権登記名義人等であり、他の一人が他方の土地の所有権登記名義人等であるときは、各筆界特定の申請人は、等しい割合で手続費用を負担すると定めている。等しい割合で負担するのは、この場合の申請人どうしであって、申請人と関係人ではない。また、不動産登記規則242条は、同法146条1項の法務省令で定める費用は、「筆界特定登記官が相当と認める者に命じて行わせた測量、鑑定その他専門的な知見を要する行為について、その者に支給すべき報酬及び費用の額として筆界特定登記官が相当と認めたもの」とすると定めている。さらに、不動産登記法146条5項は、「筆界特定登記官は、筆界特定の申請人に手続費用の概算額を予納させなければならない。」と定めている。
オ 正しい。不動産登記規則243条3項は、「筆界特定の申請がされた後、申請人又は関係人が代理人を選任したときは、当該申請人又は関係人は、当該代理人の権限を証する情報を法務局又は地方法務局に提供しなければならない。ただし、当該申請人又は関係人が会社法人等番号を有する法人であって、当該代理人が支配人等である場合は、この限りでない。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。
ポイント:意見聴取等の期日の調書には陳述の要旨を明らかにし(不動産登記法140条4項)、陳述をビデオテープ等の記録用の媒体に記録して調書の記録に代えることができる(不動産登記規則226条2項)。調書や資料の閲覧は、申請人及び関係人が、公告の時から申請人への筆界特定の通知までの間に請求でき(同法141条1項)、その請求は書面を提出する方法によりしなければならない(同規則227条6項)。筆界調査委員は、事実の調査を終了したときに遅滞なく意見を提出し(同法142条)、その意見は書面又は電磁的記録で提出する(同規則230条)。手続費用は申請人の負担であり(同法146条1項)、専門家に命じて行わせた測量・鑑定等の報酬及び費用の額として筆界特定登記官が相当と認めたものである(同規則242条)。申請後に代理人を選任したときは、原則として代理人の権限を証する情報を提供する(同規則243条3項)。「誰が」「どの方法で」を、法と規則を往復して確かめる。
問題:
土地の地目に関する次の記述のうち、不動産登記規則及び不動産登記事務取扱手続準則(以下「準則」という。)の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 耕作地の区域内にある農具小屋等の敷地は、その建物が永久的設備と認められるものに限り、宅地とする。
イ. 競馬場内の土地については、事務所、観覧席及びきゅう舎等永久的設備と認められる建物の敷地及びその附属する土地を含め、その全部を一団として雑種地とする。
ウ. かんがい用水でない水の貯留池は「ため池」とし、耕地かんがい用の用水貯留池は「池沼」とする。
エ. 一般交通の用に供する道路は、道路法による道路であるかどうかを問わず、「公衆用道路」とする。
オ. 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場は、雑種地とする。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、地目の区分(不動産登記規則99条)、各地目の定義(準則68条)及び地目の認定(準則69条)を問うものであり、誤っているのはイ・ウ・オの3つである。
不動産登記規則99条は、「地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。」と定めている。準則68条は、各地目について定める土地を掲げ、柱書後段で、「この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする。」と定めている。
ア 正しい。準則69条は、「土地の地目は、次に掲げるところによって定めるものとする。」と定め、3号で、「耕作地の区域内にある農具小屋等の敷地は、その建物が永久的設備と認められるものに限り、宅地とする。」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。
イ 誤り。準則69条8号は、「競馬場内の土地については、事務所、観覧席及びきゅう舎等永久的設備と認められる建物の敷地及びその附属する土地は宅地とし、馬場は雑種地とし、その他の土地は現況に応じてその地目を定める。」と定めている。永久的設備と認められる建物の敷地及びその附属する土地は宅地とされ、全部を一団として雑種地とするのではないから、本肢は誤りである。なお、同条7号本文は、遊園地、運動場、ゴルフ場又は飛行場において、一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地の利用を主とし、建物はその附随的なものに過ぎないと認められるときは、その全部を一団として雑種地とすると定めている。
ウ 誤り。準則68条は、8号で「池沼」を「かんがい用水でない水の貯留池」と、17号で「ため池」を「耕地かんがい用の用水貯留池」と定めている。本肢は、両者を逆にしているから、誤りである。
エ 正しい。準則68条21号は、「公衆用道路」を「一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。)」と定めている。本肢は、この規定のとおりである。
オ 誤り。準則69条11号は、「工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場は、宅地とする。」と定めている。工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場は宅地とされ、雑種地ではないから、本肢は誤りである。なお、同条13号は、「高圧線の下の土地で他の目的に使用することができない区域は、雑種地とする。」と定めている。
ポイント:地目は、土地の主な用途により23の地目に区分して定め(不動産登記規則99条)、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異があっても土地全体としての状況を観察して定める(準則68条柱書)。かんがい用水でない水の貯留池は池沼、耕地かんがい用の用水貯留池はため池であり、公衆用道路は道路法による道路かどうかを問わない(同条8号・17号・21号)。耕作地内の農具小屋等の敷地は永久的設備なら宅地(準則69条3号)、競馬場は永久的設備の建物の敷地及び附属地が宅地で馬場が雑種地(同条8号)、工場・営業場に接続する物干場・さらし場は宅地(同条11号)、他の目的に使用できない高圧線下の区域は雑種地(同条13号)である。宅地か雑種地かは、永久的設備と認められる建物との結び付きの有無を手掛かりに整理する。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・住所、物及び法律行為) | 日本に住所を有しない者の居所、仮住所、物の定義と不動産・動産(現行法に無記名債権を動産とみなす規定がないこと)、天然果実・法定果実の帰属、任意規定と異なる慣習に従うための要件 | 民法22条〜24条、85条、86条、89条〜92条、520条の20 |
| 第2問 | 民法(物権・先取特権) | 一般の先取特権の種類と順位(子の監護の費用)、一般の先取特権と特別の先取特権との競合、不動産の工事の先取特権の登記の時期、登記をした不動産保存の先取特権と抵当権、一般の先取特権の対抗力 | 民法306条、308条の2、325条、329条、331条、335条〜340条 |
| 第3問 | 民法(相続・財産分離) | 相続債権者等による財産分離の請求期間、配当加入の申出の公告、不動産についての財産分離の対抗要件、相続人の固有財産からの弁済の順位、相続人の債権者による財産分離 | 民法941条、942条、945条、946条、948条〜950条 |
| 第4問 | 不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則・準則(建物の滅失の登記) | 主たる建物の滅失による表題部の変更の登記の記録方法、附属建物がある建物の滅失の登記の記録方法、滅失した建物が他の不動産と共に権利の目的であった場合の他の登記所への通知、敷地権付き区分建物の滅失と敷地権である旨の登記の抹消、建物の滅失の登記と登記識別情報 | 不動産登記法22条、不動産登記令8条1項、不動産登記規則110条、124条1項、144条、145条1項、準則101条、102条 |
| 第5問 | 準則(建物の個数・家屋番号・不動産所在事項) | 構造上区分された数個の部分と所有者が同一の場合の取扱い、既存建物の敷地上の他の建物の家屋番号、合併後の家屋番号、他の都道府県にまたがる建物の不動産所在事項、さん橋の上の建物の家屋番号と不動産所在事項 | 不動産登記規則112条1項、準則78条2項、79条5号・7号・9号、88条 |
| 第6問 | 土地家屋調査士法(懲戒等) | 何人による通知と法務大臣の調査、業務の禁止に係る聴聞の通知の期限、懲戒処分の官報公告、業務の禁止と欠格事由・登録の取消し、調査士会の法務大臣に対する報告義務 | 土地家屋調査士法5条5号、15条1項4号、42条、44条、46条、55条 |
| 第7問 | 不動産登記法・不動産登記規則(筆界特定の手続) | 意見聴取等の期日の調書と記録用の媒体、調書等の閲覧の請求の方法、筆界調査委員の意見の提出とその方式、手続費用の負担、申請後に選任した代理人の権限を証する情報 | 不動産登記法140条4項、141条1項、142条、146条、不動産登記規則222条、226条、227条、230条、242条、243条3項 |
| 第8問 | 不動産登記規則・準則(地目) | 農具小屋等の敷地、競馬場内の土地、池沼とため池、公衆用道路、工場等に接続する物干場・さらし場と高圧線下の土地 | 不動産登記規則99条、準則68条、69条 |