この記事の要点
- 株式会社の代表取締役の住所は、会社の登記簿に載る事項です。引っ越したら、住所が変わった日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ住所変更の登記を申請します(会社法915条1項)
- 登録免許税(登記にかかる国の税金)は、資本金1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です
- 法務局の記載例では、会社自身が申請するなら添付書類は不要で、住民票の添付も要らないとされています(代理人に頼む場合は委任状が必要)
- 住所を登記簿に表示しない措置(住所非表示措置)を受けている会社でも、新しい住所を非表示にしたいなら、住所変更の登記と同時に改めて申出が必要です
- 代表取締役が個人で持っている土地・建物の住所変更登記(期限2年)とは別の手続きで、どちらか一方で済むことはありません
代表取締役が自宅を引っ越したときは、会社の登記簿(商業登記簿)に載っている代表取締役の住所も書き換える必要があります。手続き自体は比較的シンプルですが、期限が「2週間」と短いこと、そして代表取締役の住所を登記簿で見えなくする制度(代表取締役の住所非表示措置)を使っている会社では一手間増えることが、見落としやすいポイントです。
代表取締役の住所は「会社の登記事項」です
株式会社の登記簿には、取締役の氏名とあわせて、代表取締役の氏名と住所が記録されます(会社法911条3項14号)。取締役は氏名だけが登記される(同項13号)のに対し、代表取締役は住所まで登記される点が違いです。
そのため、代表取締役が引っ越すと「登記簿に載っている事項に変更が生じた」ことになり、会社として変更の登記をしなければなりません。
※指名委員会等設置会社では代表取締役ではなく代表執行役の氏名・住所が登記されます(会社法911条3項14号・23号)。この記事では、一般的な株式会社の代表取締役を前提に説明します。
期限は「住所が変わった日から2週間以内」
会社法915条1項は、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定めています。代表取締役の住所変更もこれにあたります。
法務局が公開している記載例では、登記の原因の日付を「令和○年○月○日住所移転」と書き、住所移転の年月日と住民票に記載された住所をそのまま正確に記入するよう注意書きがあります。期限は、この住所移転の日から数えることになります。
登記を怠ったときについて、会社法976条1号は、取締役などが「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」は100万円以下の過料(刑罰ではない金銭的な制裁)に処すると定めています。引っ越しの手続きに追われて会社の登記を後回しにしがちですが、期限のある手続きとしてスケジュールに組み込んでおくことが大切です。
申請に必要なもの
法務局の「株式会社役員変更登記申請書(住所移転)」の記載例をもとに整理すると、次のとおりです。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 変更登記申請書 | 登記の事由は「代表取締役の住所変更」。登記すべき事項として、資格(代表取締役)・新しい住所・氏名・原因年月日(住所移転の日)を書く |
| 登録免許税 | 収入印紙などで納める(次の章で説明) |
| 委任状 | 代理人に申請を頼む場合のみ必要 |
ポイントは次の3つです。
- 住民票の添付は不要:記載例に「申請書に住民票を添付する必要はありません」と明記されています(ただし、後で説明する住所非表示措置の申出をする場合は別です)
- 押印は登記所に届け出ている印鑑で:会社自身が申請する場合、申請書には代表取締役が登記所に提出した印鑑(いわゆる会社実印)を押します
- 申請書の「代表者の住所」は新住所で:法務局の申請書様式のページでは、代表者の住所を変更する登記の場合、申請書に書く代表者の住所は変更後の住所を記載する必要があると案内されています
申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。
登録免許税は1万円か3万円
代表取締役の住所変更の登記は、登録免許税法別表第一第24号(一)カ「取締役、代表取締役……に関する事項の変更」の登記にあたり、税額は次のとおりです。
| 会社の資本金 | 登録免許税(申請1件につき) |
|---|---|
| 1億円以下 | 1万円 |
| 1億円超 | 3万円 |
法務局の記載例でも「資本金の額が1億円を超える場合は3万円、1億円以下の場合は1万円」と案内されています。
住所を非表示にしている会社は「改めて申出」が必要
2024年10月から、一定の要件のもとで、登記事項証明書などに代表取締役の住所を市区町村までしか表示しない「代表取締役等住所非表示措置」を受けられるようになりました。制度の全体像は代表取締役の住所を登記簿で非公開にする制度の記事で解説していますので、ここでは住所変更の登記との関係に絞って説明します。
住所が変わると、非表示は自動では引き継がれない
商業登記規則31条の3第3項は、非表示措置が講じられている会社の登記で、非表示になっている代表取締役の住所と「同一のもの」を登記するときは、引き続き非表示措置を講ずると定めています。裏を返すと、引っ越して住所が変わる場合はこれにあたりません。
法務省の案内ページも、住所に変更がある登記を申請する場合は改めて非表示措置の申出が必要であり、申出をせずに住所変更の登記を申請すると、新しく登記される住所には非表示措置が講じられないと注意を促しています。
非表示措置を続けたい場合は、住所変更の登記の申請書に、非表示措置を希望する旨と、対象となる代表取締役の資格・氏名・住所、添付する書面を記載して、登記と同時に申し出ます(法務省は「代表取締役の住所移転の登記の申請と併せて申出をする場合」の記載例を公開しています)。
申出のときに添付する書面
すでに非表示措置を受けている会社が、住所変更の登記と同時に申出をする場合の添付書面は、商業登記規則31条の3第1項で次のように定められています。
| 会社の区分 | 添付する書面 |
|---|---|
| 上場会社以外(すでに非表示措置を受けている会社) | 代表取締役の氏名・住所と同一の氏名・住所が記載された、市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(同項2号)。法務省の案内では、住民票の写し・戸籍の附票の写し・印鑑証明書などが該当するとされています |
| 上場会社(すでに非表示措置を受けている会社) | 添付書面は不要(同項柱書) |
住所変更の登記そのものには住民票の添付は要りませんが、非表示措置の申出をするなら、上場会社以外の会社では住民票の写しなどが必要になる、という違いに注意してください。
これから非表示にしたい会社も、住所変更のタイミングで申出ができる
商業登記規則31条の3第1項は、非表示措置の申出ができる登記として「代表取締役……の住所変更による変更の登記」を挙げています。そのため、まだ非表示措置を受けていない会社も、代表取締役の住所変更の登記と同時に申出をすることができます。
この場合、上場会社以外の会社は、住民票の写しなどに加えて、本店が実在することを示す書面(会社宛ての書面が本店に配達証明郵便で送付されたことを証する書面など)や、会社の実質的支配者(会社を実質的に支配する個人)の本人特定事項を証する書面も必要になります(同項1号イ〜ハ)。書面の詳細や、非表示にすると融資や不動産取引で書類が増えるなどの影響が生じうる点は、制度の解説記事をご覧ください。
非表示にしていても登記の義務は残る
法務省の案内ページは、非表示措置が講じられていても会社法上の登記義務が免除されるわけではなく、代表取締役の住所に変更が生じた場合は登記の申請が必要だと明記しています。また、申請書には代表取締役の住所を記載する必要があるため、登記されている住所を忘れないよう注意を促しています。登記簿で住所が見えないからといって、住所変更の登記を省略することはできません。
不動産の住所変更登記とは別の手続きです
土地・建物の所有者が住所を変えたときの住所変更登記の義務化が始まっています。「住所変更の登記が義務になった」という話題は同じでも、今回の会社の登記とはまったく別の制度です。
| 会社の登記(代表取締役の住所変更) | 不動産の登記(所有者の住所変更) | |
|---|---|---|
| 登記する対象 | 会社の登記簿の代表取締役の住所 | 個人が所有する土地・建物の登記簿の所有者の住所 |
| 根拠 | 会社法915条1項 | 不動産登記法76条の5 |
| 申請する人 | 会社 | 所有権の登記名義人(所有者本人) |
| 期限 | 住所移転から2週間以内 | 住所変更から2年以内 |
| 怠った場合 | 100万円以下の過料(会社法976条1号) | 正当な理由なく怠ると5万円以下の過料(不動産登記法164条2項) |
代表取締役が個人名義で自宅などの不動産を持っている場合、会社の住所変更の登記をしても、不動産の登記簿の住所は変わりません。反対に、不動産の住所変更登記をしても、会社の登記簿は変わりません。それぞれ別の手続きが必要と考えてください。
まとめ
代表取締役が引っ越したら、住所移転の日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ代表取締役の住所変更の登記を申請します。登録免許税は資本金1億円以下なら1万円、超えるなら3万円で、法務局の記載例では会社自身が申請する場合の添付書類は不要とされています。
住所非表示措置を受けている会社は、新しい住所を非表示にしたいなら、住所変更の登記と同時に改めて申出をし、上場会社以外では住民票の写しなどを添付する必要があります。また、代表取締役個人の不動産の住所変更登記は別の手続きです。
非表示措置の申出を伴う場合や、他の役員変更と時期が重なる場合など、判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 代表取締役の住所変更の登記には、いくらかかりますか?
登録免許税は、資本金1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。非表示措置の申出をする場合は、添付する住民票の写しなどの取得費用もかかります。専門家に申請を依頼する場合は、別に報酬がかかります。
Q. 2週間の期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?
会社法976条1号により、登記を怠ったときは100万円以下の過料の対象となりえます。期限を過ぎたからといって登記をしなくてよくなるわけではありませんので、気づいた時点で速やかに申請してください。住所非表示措置を受けている会社でも、この登記義務は免除されません。
Q. 自分で申請できますか?どこに相談すればよいですか?
法務局のホームページで「株式会社役員変更登記申請書(住所移転)」の様式と記載例が公開されており、記載例では委任状は代理人に頼む場合のみ必要とされているので、会社自身で申請することもできます。非表示措置の申出を同時にする場合や、本店移転・役員の改選など他の登記と重なる場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】他の登記との同時申請と非表示措置の申出の組み立て
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
他の役員変更と同じ申請書で申請するときの登録免許税
代表取締役の住所変更の登記が当たる登録免許税法別表第一第24号(一)カは、「取締役、代表取締役……監査役……に関する事項の変更」の登記を一つの区分にまとめ、課税標準を「申請件数」、税率を「一件につき三万円(資本金の額が一億円以下の会社……については、一万円)」と定めています。そのため、取締役の就任・辞任など同じカに当たる役員の変更と、代表取締役の住所変更を一つの申請書で申請するときは、変更の数にかかわらず申請1件分の税額になる、という構造です。法務局の「株式会社役員変更登記申請書(取締役会設置会社において役員の全員が重任する場合)」の記載例でも、取締役・代表取締役・監査役の重任をまとめて記載したうえで、登録免許税は「金3万円(又は1万円)」とされています。
これに対し、別表第一の別の区分に当たる登記を同じ申請書で申請するときは、登録免許税法18条により、区分ごとに計算した税額の合計額になります。たとえば、同じ登記所の管轄区域内で本店を移転する登記は同号(一)ヲ(本店の数1か所につき3万円)に当たるため、代表取締役の住所変更(カ)と同じ申請書で申請すると、ヲとカの税額を合計した額になります。
なお、会社法915条1項の2週間の期限は、登記事項に変更が生じた時から数えます。他の登記とまとめて申請する場合も、それぞれの登記の期限は別々に進みます。まとめるために住所変更の登記を後回しにすると、住所変更の期限を過ぎてしまうおそれがあります。
非表示措置の申出を書き加える位置
法務省は「申出の記載例1(代表取締役の住所移転の登記の申請と併せて申出をする場合)」を公開しています。この記載例では、通常の住所変更の申請書(登記の事由「代表取締役の住所変更」・登記すべき事項・登録免許税)の「上記のとおり、登記の申請をします。」に続けて、次の3点を書き加える形になっています。
- 「下記の者につき、代表取締役等住所非表示措置を講ずるよう申し出ます。」という申出の文言
- 申出に当たって添付する書面の名称
- 非表示措置の対象となる者の資格・住所・氏名
オンラインで申請する場合は、「その他の申請書記載事項」に申出事項を記入するよう、法務省の案内ページで説明されています。また、記載例1の登録免許税欄は「金10,000円」で、住所変更の登記の分だけが記載されています。
対象者の住所は、添付する住民票の写しなどの証明書と「同一の氏名及び住所」である必要があります(商業登記規則31条の3第1項1号ロ・2号)。住所変更の記載例の注意書き(住民票記載の住所をそのまま正確に記入する)とあわせ、登記すべき事項・申出の対象者欄・証明書の3か所で住所の表記をそろえておくことが大切です。
記載例1が想定している会社と、添付書面の選び方
記載例1は、添付書面として「株式会社が受取人として記載された配達証明書及び郵便物受領証」「住民票の写し」「実質的支配者の本人特定事項についての申告受理及び認証証明書」の3点を挙げており、まだ非表示措置を受けていない上場会社以外の会社(商業登記規則31条の3第1項1号)の例になっています。すでに非表示措置を受けている上場会社以外の会社なら、住民票の写しなどの証明書だけで足ります(同項2号)。
注意したいのは、3点目の「申告受理及び認証証明書」(定款認証の際に申告した実質的支配者についての証明書)です。法務省の案内では、この書面を使えるのは、申出と併せて行う登記の申請が会社の設立の日の属する年度またはその翌年度に行われる場合に限るとされています。設立の日の属する年度の翌年度を過ぎた会社が記載例をそのまま写すと、添付書面が要件に合わないことになります。その場合、実質的支配者の本人特定事項を証する書面として、法務省の案内では次のものが挙げられています。
- 登記の申請を受任した司法書士または司法書士法人が、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づいて確認を行った実質的支配者の本人特定事項に関する記録の写し
- 実質的支配者の本人特定事項についての供述を記載し、公証人の認証を受けた書面(申出と併せて行う登記の申請の日の属する年度またはその前年度に認証を受けたものに限る)
また、会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、この書面の添付は不要で、申請書にその旨と申出先を記載します(同項1号ハただし書・法務省の案内)。
本店が実在することを示す書面も、配達証明郵便による方法のほか、登記の申請を受任した資格者代理人が本店の所在場所での実在を確認した結果を記載した書面によることができます(同項1号イ)。
申出をしないまま住所変更の登記をした場合
非表示措置の申出は単独ではできず、設立の登記、代表取締役の就任の登記、代表取締役の住所移転による変更の登記など、代表取締役の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限られます(商業登記規則31条の3第1項・法務省の案内)。そのため、住所変更の登記の際に申出をしなかったときは、新しい住所は表示されることとなり、後から申出だけを単独ですることはできません。
一方で法務省の案内は、代表取締役の重任の登記や、本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新本店所在地における登記であれば、すでに登記されている住所から変更がなくても申出ができるとしています。住所変更の際に申出をしなかった場合も、こうした登記を申請する機会であれば、その登記と同時に申出をすることができます。なお、非表示措置の対象となる住所は、申出と併せて申請される登記によって記録される住所に限られます(法務省の案内)。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。
- 会社法 第911条・第915条・第976条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 商業登記規則 第31条の3(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 登録免許税法 第18条・別表第一第24号(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 不動産登記法 第76条の5・第164条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
- 法務省「申出の記載例1(代表取締役の住所移転の登記の申請と併せて申出をする場合)」: https://www.moj.go.jp/content/001422328.pdf
- 法務局「商業・法人登記の申請書様式」(商業・法人登記申請の注意事項): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
- 法務局「株式会社役員変更登記申請書(住所移転)」記載例: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252646.pdf
- 法務局「株式会社役員変更登記申請書(取締役会設置会社において役員の全員が重任する場合)」記載例: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001298394.pdf