この記事の要点
- 会社の登記簿(履歴事項全部証明書)は、会社の基本情報(商号・本店・目的など)→株式と資本金→役員→登記記録、というおおまかな順に欄が並んでいます
- 下線は「変更・抹消されて、いまは効力がない記録」の印です。下線のない記載が現在の内容で、下線があること自体は問題を意味しません
- 履歴事項全部証明書に載る過去の記録は、原則として、請求した日の3年前の年の1月1日以降に抹消されたものまでです(商業登記規則30条1項2号。1つ前の商号・本店はそれより前でも載ります)
- 役員欄の右側には「就任(重任)した日」と「登記した日」の2つの日付が並びます
- 代表取締役の住所が市区町村までしか書かれていないのは、2024年10月1日に始まった住所非表示の措置によるものと考えられます
取引先の確認、融資の申込み、入札参加の書類などで「履歴事項全部証明書」を求められ、初めて手にしたという方に向けて、この記事ではどの欄に何が書いてあるかと、下線や日付の読み方に絞って説明します。結論から言うと、下線のない記載だけを拾えば登記上の「いまの会社の姿」が、下線のある記載まで見れば「最近どこが変わったか」がわかります。
なお、この記事は会社の登記簿の読み方です。土地・建物の登記簿(表題部・甲区・乙区)の読み方は、登記簿(登記事項証明書)の見方──表題部・甲区・乙区は何が書いてある?をご覧ください。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
履歴事項全部証明書とは
会社の登記簿は、法務局に備えられた「株式会社登記簿」などの商業登記簿のことです(商業登記法6条)。登記簿に記録されている内容を法務局が証明した書面を「登記事項証明書」といい、手数料を納めれば誰でも交付を請求できます(商業登記法10条1項)。
履歴事項全部証明書は、登記事項証明書の種類のひとつである「履歴事項証明書」を、登記記録の全体について取ったものです。現在の内容に加えて、一定の期間内に抹消された(効力を失った)記録も載るのが特徴です(商業登記規則30条1項2号)。
証明書の最後には、「これは登記簿に記録されている閉鎖されていない事項の全部であることを証明した書面である。」という趣旨の認証文と、作成の日付、法務局名、登記官の記載があります(商業登記規則30条3項、法務省公表の記載例)。
証明書の全体像──架空の会社で見てみる
法務省が公表している記載例を参考に、架空の会社「株式会社サンプル商事」の履歴事項全部証明書のイメージを作りました。名称・住所・人名・番号はすべて架空で、実際の証明書とは体裁が異なり、一部の欄を省いています。2026年10月1日に請求した想定です。下線の付いた記載が、抹消された記録です。
| 欄の名前 | 記載されている内容(架空) | 右側の日付 |
|---|---|---|
| 会社法人等番号 | 0000-00-000000 | |
| 商号 | 株式会社サンプル物産 | |
| 株式会社サンプル商事 | 令和6年4月1日変更 令和6年4月8日登記 |
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| 本店 | 〇〇県〇〇市中央一丁目1番1号 | |
| 〇〇県〇〇市中央三丁目3番3号 | 令和5年10月2日移転 令和5年10月10日登記 |
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| 公告をする方法 | 官報に掲載してする。 | |
| 会社成立の年月日 | 平成28年4月1日 | |
| 目的 | 1. 〇〇の企画及び販売 2. 前号に附帯する一切の業務 |
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| 発行可能株式総数 | 4000株 | |
| 発行済株式の総数並びに種類及び数 | 発行済株式の総数 1000株 | |
| 発行済株式の総数 1200株 | 令和7年6月20日変更 令和7年6月27日登記 |
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| 資本金の額 | 金1000万円 | |
| 金1200万円 | 令和7年6月20日変更 令和7年6月27日登記 |
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| 株式の譲渡制限に関する規定 | 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。 | |
| 役員に関する事項 | 取締役 甲野太郎 | |
| 取締役 甲野太郎 | 令和6年6月26日重任 令和6年7月3日登記 |
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| 取締役 乙野次郎 | 令和7年3月31日辞任 令和7年4月7日登記 |
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| 取締役 丙野花子 | 令和7年4月15日就任 令和7年4月22日登記 |
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| 〇〇県〇〇市〇〇町一丁目1番1号 代表取締役 甲野太郎 |
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| 〇〇県〇〇市〇〇町一丁目1番1号 代表取締役 甲野太郎 |
令和6年6月26日重任 令和6年7月3日登記 |
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| 登記記録に関する事項 | 設立 | 平成28年4月1日登記 |
実際の証明書では、各ページの下に「下線のあるものは抹消事項であることを示す。」という注意書きが印字されています(法務省公表の記載例)。
欄ごとに何が書いてあるか
主な欄の意味と、読むときのポイントを表にまとめます。
| 欄の名前 | 何が書いてあるか | 読むときのポイント |
|---|---|---|
| 会社法人等番号 | 会社を識別するための番号(商業登記法7条) | 登記の申請書などで会社を特定するときに使われます |
| 商号 | 会社の名前 | 会社名を変えると、旧商号に下線が付き、新商号が下に続きます。なお、登記の申請書に記載する商号のフリガナは、証明書には表示されません(法務局の申請書記載例の注記) |
| 本店 | 本店の所在場所 | 本店を移すと、旧本店に下線が付き、新本店に「移転」の日付が付きます |
| 公告をする方法 | 会社が法律上の公告をするときの方法 | 官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかです。定款に定めがなければ官報になります(会社法939条1項・4項) |
| 会社成立の年月日 | 会社が成立した日 | 株式会社は設立の登記によって成立します(会社法49条)。原則として法務局が設立登記の申請を受け付けた日で、2026年2月2日からは休日を成立日として指定できる特例もあります(法務省の案内) |
| 目的 | 会社が営む事業 | 目的を変更すると、変更前の目的の全体に下線が付き、変更後の目的の全体が改めて記載されます(法務省公表の記載例) |
| 発行可能株式総数 | 会社が発行することができる株式の総数(会社法37条) | 定款で定めた「発行できる株式の上限」です。実際に発行している数ではありません |
| 発行済株式の総数並びに種類及び数 | 実際に発行している株式の数 | 増資などで株式を発行すると数が変わります |
| 資本金の額 | 資本金の額 | 増資・減資で変わります |
| 株式の譲渡制限に関する規定 | 株式を譲渡するときに会社の承認が必要とする定め | すべての株式にこの定めがある会社は、会社法上の「公開会社」ではありません(会社法2条5号)。上場しているかどうかとは関係ありません |
| 役員に関する事項 | 取締役・代表取締役・監査役など | 取締役は氏名だけ、代表取締役は住所と氏名が登記されます(会社法911条3項13号・14号) |
| 登記記録に関する事項 | この登記記録が作られた理由と日付 | 「設立」のほか、ほかの法務局の管轄から本店を移してきた場合などに、その旨が記録されます(商業登記規則別表第五) |
会社の機関の組み立てによっては、「取締役会設置会社に関する事項」「監査役設置会社に関する事項」などの欄が加わります(法務省公表の記載例)。
「下線」の意味──変更・抹消された記録の印
下線は、その記録が変更・抹消されて、いまは効力がないことを示す印です。登記簿の記録に「抹消する記号」が付けられると、証明書ではその記載の下に線を引いて表すと定められています(商業登記規則30条4項)。そして、変更の登記をするときは、変更前の記録にこの抹消する記号を付けることになっています(商業登記規則41条)。
つまり、下線が付いているのは「変わる前の古い内容」です。下線があるというだけで、誤りや問題があったことにはなりません。読むときのルールは次の2つだけです。
- 下線のない記載が、現在の内容
- 同じ欄の中で、下線のある古い記載の下に、新しい記載と日付が続く
注意したいのは、同じ人の名前が下線付きと下線なしで2回出てくるケースです。架空例の「取締役 甲野太郎」がこれにあたり、右側に「重任」とあるとおり、辞めたのではなく、任期満了後に同じ人が引き続き選ばれたこと(重任)を表しています。法務省公表の記載例でも、同じ役員が下線付きと下線なしで並んで記載されています。
なお、商号と本店については、現在の内容を載せる「現在事項証明書」にも、変更される直前の記載(1つ前の商号・本店)が載ります(商業登記規則30条1項1号)。そのため、下線付きの記載は履歴事項全部証明書だけに出てくるわけではありません。
どこまで昔の記録が載るか
履歴事項証明書に載るのは、現在の内容に加えて、請求した日の3年前の日が属する年の1月1日(基準日)から請求日までの間に抹消された記録などです(商業登記規則30条1項2号)。
たとえば2026年10月1日に請求した場合、3年前の日は2023年10月1日なので、基準日は2023年1月1日です。2023年1月1日以降に抹消された記録は載りますが、それより前に抹消された記録は、原則として載りません。ただし、変更される直前の商号・本店(1つ前のもの)は、現在事項証明書の記載事項として履歴事項証明書にも載るため、基準日より前に変更されたものでも下線付きで残ります(商業登記規則30条1項1号・2号)。
この例外を除き、基準日より前に抹消された記録は、登記簿の中で閉鎖されます(商業登記規則44条)。こうした記録は、閉鎖した登記記録に記録されている事項を証明する「閉鎖事項証明書」で確認することになります(商業登記規則30条1項3号)。
役員欄の読み方──「就任日」と「登記日」は別
役員欄の右側には、上下2段で日付が並びます。
- 上段:役員に変更が生じた原因と、その日付(例:「令和7年4月15日就任」)
- 下段:その内容を登記した日(例:「令和7年4月22日登記」)
登記をするときは、登記事項とあわせて登記の年月日を記録することとされ(商業登記規則39条)、この登記の年月日には、原則として申請が受け付けられた日と同じ日が記録されます(令和8年1月21日法務省民商第9号民事局長通達)。一方、会社法は、登記した事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をするよう定めています(会社法915条1項)。上段は「変わった日」、下段は「登記した日(原則として申請が受け付けられた日)」と覚えておくと混乱しません。
上段に出てくる主な言葉は次のとおりです。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 就任 | 新しく役員になったこと |
| 重任 | 任期が満了したあと、間を置かずに同じ人が再び選ばれて就任したこと(法務省の案内では「登記上は『重任』といいます。」と説明されています) |
| 辞任 | 役員が自ら辞めたこと |
| 退任 | 任期が満了して役員でなくなったこと(法務省の登記記録例では、取締役でなくなったことに伴って代表取締役でなくなった場合も、代表取締役については「退任」と記録されています) |
このほか、役員が亡くなった場合(死亡)なども、その原因と日付が記録されます。同じ人が続けるときにも登記が必要になる理由は、役員変更の登記は「同じ人が続けるとき」も必要──任期満了と『重任』のはなしで解説しています。
また、架空例のように、代表取締役は取締役の欄とは別に、住所とあわせて記載されます。「取締役 甲野太郎」と「代表取締役 甲野太郎」が両方出てくるのは、この会社の取締役である甲野太郎さんが代表取締役も務めている、という意味です。
なお、上段と下段の日付が離れている場合でも、その事情は証明書だけでは分かりません。証明書からわかるのは、登記簿に記録されている事実までです。
本店移転・商号変更・目的変更・増資は履歴としてどう見えるか
主な変更が、履歴事項全部証明書でどう見えるかをまとめます。
| 変更の内容 | 証明書での見え方 | 右側の日付の言葉 |
|---|---|---|
| 商号変更 | 旧商号に下線、その下に新商号 | 「変更」「登記」 |
| 本店移転(同じ法務局の管轄内) | 旧本店に下線、その下に新本店 | 「移転」「登記」 |
| 目的変更 | 変更前の目的の全体に下線、その下に変更後の目的の全体 | 「変更」「登記」 |
| 増資(募集株式の発行) | 「発行済株式の総数」と「資本金の額」の旧数値に下線、その下に新数値 | 「変更」「登記」 |
商号・本店・目的の見え方は法務省公表の記載例に、増資で「発行済株式の総数」と「資本金の額」が「変更」として登記されることは法務局の申請書記載例に、それぞれ示されています。増資の「変更」の日付は、払込期日(または払込期間の末日)を記載するよう案内されています(同記載例の注記)。
別の法務局の管轄へ本店を移した場合は、見え方が変わります。新しい本店の所在地で登記をするときは、会社成立の年月日と、本店を移転した旨・その日付もあわせて登記され(商業登記法53条)、このうち本店を移転した旨とその日付は「登記記録に関する事項」の欄に記録されます(商業登記規則65条3項)。一方、旧本店の所在地の登記記録は閉鎖されます(商業登記規則80条)。そのため、移転の前にあった変更の履歴を確認したいときは、旧本店を管轄していた法務局の閉鎖された登記記録(閉鎖事項証明書)を見ることになります。
最近の制度で読み方が変わった点──代表取締役の住所が「市区町村まで」
2024年10月1日から、一定の要件のもとで、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人の住所の一部を、登記事項証明書などに表示しない措置がとれるようになりました(商業登記規則31条の3、令和6年法務省令第28号)。この措置がとられると、代表取締役の住所は市区町村まで(東京都は特別区まで、政令指定都市は区まで)しか記載されません(法務省の案内)。
読む側から見ると、代表取締役の住所が市区町村名で終わっていれば、この措置がとられていると考えられます。法務省は、この措置がとられると証明書で代表者の住所を証明できなくなるため、融資や不動産取引などで必要な書類が増えるといった影響がありうると案内しています。
この措置の申出は、設立や代表取締役の就任、住所の変更など、代表取締役等の住所が登記されることになる登記の申請と同時にする場合に限られ、対象となるのは、その申請で記録される住所に限られます(法務省の案内)。制度のしくみは、代表取締役の住所、登記簿で非公開にできます──プライバシーを守る新制度で解説しています。
このほか、DV(配偶者からの暴力)やストーカー行為などの被害を受けるおそれがある人について、住所を記載しない措置も設けられています(商業登記規則31条の2、2022年9月1日施行)。
まとめ
- 会社の登記簿は、商号・本店などの基本情報から、株式と資本金、役員、登記記録の順に並んでいます
- 下線は「変更・抹消されて、いまは効力がない記録」の印で、下線のない記載が現在の内容です
- 履歴事項全部証明書に載る過去の記録は、原則として、請求日の3年前の年の1月1日以降に抹消されたものまでです(1つ前の商号・本店は例外)
- 役員欄の上段は「変わった日」、下段は「登記した日」です
- 代表取締役の住所が市区町村までしかないのは、住所非表示の措置によるものと考えられます
証明書からわかるのは、登記簿に記録されている事実までです。自社の証明書を読んでみて、役員の顔ぶれや本店・目的などが実態と合っていないと感じたときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 履歴事項全部証明書を取るのに費用はいくらかかりますか?
1通あたり、法務局の窓口や郵送で請求する書面請求は600円、オンラインで請求して郵送で受け取る場合は520円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は490円です(法務省の手数料案内。オンライン請求の金額は2025年4月1日に改定されたものです)。1通が50枚を超えるときは、50枚までごとに100円が加算されます。内容を確認するだけなら、インターネットで登記情報を閲覧できる登記情報提供サービスもありますが、こちらは法務局が証明した書面ではない点に注意が必要です。
Q. 何年前の変更まで載っていますか? 前に取った証明書を使い回してもよいですか?
請求した日の3年前の年の1月1日以降に抹消された記録が載ります。2026年10月1日に請求すれば、2023年1月1日以降の分です。それより前の記録は、1つ前の商号・本店を除き、原則として閉鎖事項証明書で確認します。証明書は作成した時点の内容を証明したものなので、その後に登記が変わっていても反映されていません。提出先から「発行から一定期間内のもの」と指定されることがあるため、提出先の案内を確認してください。
Q. 自分で取って読めますか? わからないときはどこに相談すればよいですか?
登記事項証明書は、手数料を納めれば誰でも請求でき(商業登記法10条1項)、原則として本店の所在地を管轄する法務局以外の法務局でも請求できます(同条2項)。読み方は、この記事のとおり「下線のない記載が現在の内容」と「右側の2つの日付」を押さえれば、多くの欄は自分で読めます。自社の登記の内容が古いまま、あるいは変更の手続きが必要そうだと気づいたときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】登記記録の「区」「抹消」「閉鎖」から履歴をたどる
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文では、証明書の見た目から読み方を整理しました。ここでは、その見た目のもとになっている登記記録の側の仕組み(商業登記法・商業登記規則)から、会社の履歴をさかのぼって確認するときの考え方を整理します。
登記記録は「区」に分かれている
株式会社の登記記録は、商号区・目的区・株式・資本区・役員区・会社状態区・登記記録区などの「区」に分けて編成され、区ごとに記録する事項が決められています(商業登記規則1条、別表第五)。登記事項証明書は、この区と事項ごとに整理して記載することとされています(同規則30条5項)。読むときに役立つのは次の2点です。
- 一部の区だけの証明書にも、商号区と会社状態区は載る:現在事項・履歴事項・閉鎖事項の証明書を一部の区に限って請求したときでも、商号区と会社状態区は記載されます(同規則30条2項)。会社状態区には、取締役会設置会社である旨・監査役設置会社である旨といった機関設計に関する事項や、解散(登記記録区に記録するものを除く)などが記録されます(別表第五)。
- 登記記録区は、記録全体の「始まり」と「終わり」を示す:登記記録を起こした事由と年月日のほか、登記記録を閉鎖した事由と年月日、復活した事由と年月日も、ここに記録されます(別表第五、同規則43条・45条)。
2つの日付と、登記の効力
役員欄などの2つの日付のうち、上段は変更が生じた日、下段は登記の年月日です。変更が生じることと、それが登記されることの違いには、法的な意味があります。会社法の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ善意の第三者に対抗することができず、登記の後であっても、第三者が正当な事由によって登記があることを知らなかったときは同様とされています(会社法908条1項)。また、故意または過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗することができません(同条2項)。
つまり、上段の日付で変更が生じていても、その変更を登記するまでの間は、変更を知らない第三者に主張できない場面がありうる、という関係です。なお、株式会社の成立のように、登記によって効力が生じるものもあります(会社法49条)。個別の取引で誰に何を主張できるかは、事情によって判断が分かれます。
「抹消」と「閉鎖」は別の仕組み
本文で見た下線(抹消する記号)は、個々の登記事項の単位で効力がなくなったことを示す仕組みです。これとは別に、登記記録そのもの(その会社の記録全体)を閉鎖する仕組みがあります。本店を他の登記所の管轄区域内へ移転したときの旧所在地での移転の登記、組織変更や合併による解散の登記、清算結了の登記などは登記記録区にされ、その登記記録は閉鎖されます(商業登記規則80条)。解散の登記をした後10年を経過したときなどに、登記官が登記記録を閉鎖できる場合もあります(同規則81条1項)。
閉鎖事項証明書は、こうして閉鎖された登記記録に記録されている事項を証明するものです(同規則30条1項3号)。基準日より前に抹消されて閉鎖された登記事項も、閉鎖した登記記録とみなされます(同規則44条2項)。
さかのぼれる範囲には限りもあります。登記所に備える帳簿等の保存期間は、登記簿は永久、閉鎖した登記記録は閉鎖した日から20年間と定められています(同規則34条4項1号・2号)。
また、登記官の過誤による錯誤や遺漏を登記官が職権で更正した場合(商業登記法133条2項)、その更正によって抹消する記号が記録された登記事項などは、履歴事項証明書にも閉鎖事項証明書にも記載されません(商業登記規則30条1項)。
管轄外への本店移転──新しい登記記録に移るもの
会社が本店を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、2週間以内に、旧所在地では移転の登記を、新所在地では設立の登記と同じ事項(会社法911条3項各号の事項)を登記します(会社法916条1号)。新所在地では、会社成立の年月日と、本店を移転した旨およびその年月日もあわせて登記し(商業登記法53条)、役員の就任の年月日も登記します(商業登記規則65条2項)。
新しい登記記録に記録されるのは、こうした事項です。移転より前に抹消された記録は、閉鎖された旧所在地の登記記録の側にあるため、移転前の経過を確かめたいときは、旧本店の所在地の閉鎖事項証明書に当たることになります。法務省も、本店移転により閉鎖された登記記録について、閉鎖事項証明書をオンラインで請求するときの方法を案内しています(法務省「登記・供託オンライン申請システムにより登記事項証明書等を取得する際の留意事項について」)。
その手がかりになるのが会社法人等番号です。旧所在地と新所在地の登記は同時に申請するため(商業登記法51条2項)、新たに起こす登記記録には、閉鎖する登記記録と同じ会社法人等番号が記録されます(商業登記規則1条の2第2項)。一方で、同じ登記所に同じ番号の登記記録が複数ある場合などには、オンライン請求で会社法人等番号を入力すると最新の登記記録が特定されることがあるなど、閉鎖された登記記録を請求するときの入力方法に注意点があると、上記の法務省の案内に示されています(案内の具体例は、平成24年5月21日以降の本店移転や組織変更を前提としています)。
コンピュータ化(改製)より前の記録
紙の登記簿をコンピュータで扱う登記簿に改製するときは、登記用紙にされている登記で現に効力を有するものを登記記録に移記し、あわせて取締役・代表取締役・監査役などの就任の年月日と、商号・本店の直前の変更に係る登記事項も移記したうえで、登記用紙を閉鎖するとされています(平成元年法務省令第15号附則3項・5項、平成17年法務省令第19号附則3条2項・4項)。改製の際には、移記した旨とその年月日が登記記録に記録されます(平成元年法務省令第15号附則4項、平成17年法務省令第19号附則3条3項)。
したがって、上に挙げた就任の年月日と直前の商号・本店を除けば、改製の時点ですでに効力がなかった記録は新しい登記記録には移されておらず、それより前の経過は閉鎖された登記用紙の側の記録になります。閉鎖された登記用紙の内容を確認する必要があるときは、その方法を管轄の法務局に確認するのが確実です。
履歴をさかのぼるときの当たり先
| 確認したいこと | 当たる記録 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 現在の内容、役員の就任年月日、直前の商号・本店 | 現在事項証明書 | 商業登記規則30条1項1号 |
| 基準日(請求日の3年前の年の1月1日)以降の変更の経過 | 履歴事項証明書 | 同規則30条1項2号 |
| 基準日より前に抹消された事項(直前の商号・本店を除く) | 閉鎖事項証明書(閉鎖した登記事項) | 同規則44条、30条1項3号 |
| 管轄外への本店移転より前の経過 | 旧本店の所在地の閉鎖事項証明書 | 会社法916条、商業登記法53条、商業登記規則65条・80条 |
| コンピュータ化(改製)より前の経過 | 閉鎖された登記用紙 | 平成元年法務省令第15号附則、平成17年法務省令第19号附則 |
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 商業登記法 第6条・第7条・第10条・第51条・第53条・第133条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則 第1条・第1条の2・第30条・第31条の2・第31条の3・第34条・第39条・第41条・第43条〜第45条・第65条・第80条・第81条・別表第五、附則(平成元年法務省令第15号・平成17年法務省令第19号)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 会社法 第2条・第37条・第49条・第908条・第911条・第915条・第916条・第939条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 登記手数料令 第2条・第3条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000140
- 法務省「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」(令和8年1月21日付け法務省民商第9号民事局長通達): https://www.moj.go.jp/content/001455057.pdf
- 法務省「休日を会社等の設立の日とすることが可能になりました」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00234.html
- 法務省「商業・法人登記関係の主な通達等」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html
- 商業登記等事務取扱手続準則(平成17年3月2日付け法務省民商第500号民事局長通達、最終改正 令和8年3月26日): https://www.moj.go.jp/content/001406310.pdf
- 同準則 別紙「登記事項証明書記載例(1から3まで)」: https://www.moj.go.jp/content/001382299.pdf
- 「会社法の施行に伴う商業登記記録例について」(平成18年4月26日付け法務省民商第1110号依命通知): https://www.moj.go.jp/content/001384977.pdf
- 法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00091.html
- 法務省「登記・供託オンライン申請システムにより登記事項証明書等を取得する際の留意事項について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00053.html
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
- 法務省「登記手数料について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/index.html
- 法務省「会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji11.html
- 法務局 商業・法人登記の申請書様式 記載例「株式会社(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252657.pdf
- 法務局 商業・法人登記の申請書様式 記載例「募集株式の発行(非公開会社のうち非取締役会設置会社)」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252679.pdf