この記事の要点

  • 会社の登記は「設立したら終わり」ではなく、役員の任期満了・増資・本店移転・事業承継・社長の死亡・解散など、経営の節目ごとに必要になる
  • 登記の内容に変更が生じたら、原則として2週間以内に変更登記をする(会社法915条1項)。怠ると代表者個人が100万円以下の過料の対象になりうる(会社法976条1号)
  • 株式会社は、最後の登記から12年たつと「休眠会社」として解散したものとみなされることがある(会社法472条)
  • この記事は節目ごとの一覧(目次)です。各手続きの中身は、リンク先の個別記事で確認してください

会社の登記は、会社の一生のあいだに何度も必要になります。設立のときに1回だけ行うものではなく、役員の任期が切れたとき、資本金や本店を変えたとき、社長が交代したとき、そして会社をたたむときまで、節目ごとに「その時点の会社の姿」を登記簿に反映させる仕組みです。

この記事では、会社の一生を時間の流れに沿って6つの段階に分け、どの節目で・どの登記が・いつまでに要るかを一覧にしました。制度の詳しい説明は各記事に任せ、ここでは「自分の会社は今どの節目にいて、次に何が来るのか」を見渡すことを目的にしています。

なお、本記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

まず全体像──節目ごとの登記と期限の一覧

節目 主に必要になる登記 期限の目安
① 会社をつくる 設立の登記 株式会社は、設立時取締役の調査が終わった日などから2週間以内(会社法911条1項)。原則として、登記を申請した日が会社の成立日になる
② 役員の任期が切れる・役員が替わる 役員変更の登記(同じ人が続ける「重任」も含む) 変更が生じた日から2週間以内
③ 事業の形が変わる(増資・減資・本店移転・商号や目的の変更など) それぞれの変更の登記 原則として効力発生日から2週間以内
④ 後継者に引き継ぐ 代表取締役などの変更の登記 変更が生じた日から2週間以内
⑤ 社長に万一のことがあった 代表取締役の退任(死亡)と後任就任の登記 退任の登記は死亡の時点から、後任の登記は就任の日から、それぞれ2週間以内
⑥ 会社をたたむ 解散・清算人の登記 → 清算結了の登記 それぞれ2週間以内(間に2か月以上の債権者向け公告)

「2週間」という期限が何度も出てくるのは、会社法915条1項が、登記した事項に変更が生じたときは2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければならない、と定めているためです。以下、段階ごとに見ていきます。

① 会社をつくる──設立の登記

会社は、設立の登記をすることで初めて成立します(株式会社は会社法49条、合同会社は会社法579条)。原則として、登記を申請した日が、会社の「誕生日」=成立日として登記簿に記録されます。

なお、2026年2月2日からは、申請した日の翌日が土日・祝日など役所の休みの日にあたる場合、申請のときにあわせて求めれば、その休みの日を登記の日(=成立日)とすることもできるようになりました(商業登記規則35条の4)。

設立の時点で、次の節目である「役員の任期」も決まります。定款で役員の任期を何年にしたかを、設立時に控えておくと後が楽になります。

② 役員の任期が切れる・役員が替わる──役員変更の登記

株式会社でもっとも頻繁にやってくる節目が、役員の任期満了です。

  • 取締役の任期は原則2年。株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(非公開会社)は、定款で最長10年まで伸ばせます(会社法332条1項・2項)
  • 監査役の任期は原則4年。非公開会社は定款で最長10年まで伸ばせます(会社法336条1項・2項)

任期は「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と数えます。そのため、毎年の定時株主総会は「今年は役員の任期が切れる年か」を確認する節目になります。

見落としやすいのは、任期が切れた後も同じ人が役員を続ける場合です。この場合も「重任(じゅうにん)」の登記が必要で、期限は変更が生じた日から2週間以内です(会社法915条1項)。

任期満了以外にも、次のような場面で役員変更の登記が必要になります。

なお、合同会社には株式会社のような役員の任期はありません。

③ 事業の形が変わる──増資・減資・本店移転・商号や目的の変更

事業が育ったり、方針が変わったりすると、登記されている会社の基本情報も変わります。いずれも原則として、変更の効力が生じた日から2週間以内に変更の登記が必要です(会社法915条1項)。

こんなとき 必要になる登記 詳しくは
新しく株式を発行して資本金を増やす 募集株式の発行(増資)の登記。払込期間を定めた場合は、その期間の末日から2週間以内 増資(募集株式の発行)の登記
資本金を減らす 資本金の額の減少(減資)の登記。登記の前に、1か月以上の期間を設けた債権者保護の手続きが要る 資本金を減らす『減資』登記
本店(本社)を移す 本店移転の登記。法務局の管轄をまたぐかどうかで手続きと費用が変わる 本店移転登記の登録免許税は3万円?6万円?
会社名を変える 商号変更の登記 会社名を変えたいとき──商号変更の登記の流れ
新しい事業を始める 目的変更の登記(定款の事業目的を追加・変更) 新規事業を始めるとき、定款の事業目的を追加しなくて大丈夫?
支店を出す 支店設置の登記(本店所在地の法務局へ) 支店を出すとき、登記はどこまで必要?

商号・目的・本店所在地などが変わると、登記以外にも役所や取引先への届出が必要になることがあります。建設業などの許認可の変更届は行政書士の領域、税務関係の届出は税理士にご確認ください。

④ 後継者に引き継ぐ──事業承継と登記

事業承継で法務上の中心になるのは、「株式を後継者にどう移すか」と「代表取締役を交代する登記」の2つです。

このうち、株主が誰かは登記簿に載る事項ではないため、株式を後継者に移したこと自体を登記する手続きはありません。登記が必要になるのは、代表取締役や取締役が替わったとき(変更が生じた日から2週間以内)と、承継対策として定款を変更し、種類株式を導入したときなどです。

事業承継税制の利用や株価の評価、贈与・相続にかかる税負担は税理士の領域です。登記の段取りとは別に、早めに税理士へご相談ください。

⑤ 社長に万一のことがあった──死亡後の登記

代表取締役が亡くなった場合も、代表取締役の退任(死亡)と後任の就任について登記が必要です。退任(死亡)の登記の2週間の期限は死亡の事実が生じた時点から進むとされているため、後任選びと登記の準備を並行して進めることが大切です。

社長が株式も持っていた場合、その株式は相続の対象になります。相続人が複数いると株式が分散し、会社の意思決定が止まるおそれがあります。

株式の相続をめぐって相続人どうしで争いになった場合や、株主間の対立が生じた場合は、弁護士にご相談ください。

⑥ 会社をたたむ──解散から清算結了まで

会社を終わらせるときの登記は、大きく2段階です。

  1. 解散の登記・清算人の登記:解散の日から2週間以内(会社法926条・928条1項。株主総会で清算人を選任したときの清算人の登記は、その選任から2週間以内=928条3項)
  2. 清算結了の登記:清算が終わり、決算報告が承認された日から2週間以内(会社法929条1号)

この2つのあいだに、債権者に向けた官報公告(2か月以上の期間を設ける。会社法499条1項)などの清算の手続きが入るため、全体では最短でも2か月を超えます。

何もしなくても「解散」になることがある──12年の放置

経営者が会社をたたむつもりがなくても、株式会社が最後の登記から12年たつと、休眠会社として解散したものとみなされることがあります(会社法472条)。役員の任期を10年に伸ばしている会社で、重任の登記を1回忘れるだけで12年に届きうる点に注意が必要です。

みなし解散の後でも、解散したものとみなされた時から3年以内であれば、株主総会の決議によって会社を継続できます(会社法473条)。

まとめ

会社の登記は、設立・役員の任期・事業の変化・事業承継・社長の万一・解散という節目ごとに必要になります。変更が生じたら原則2週間以内に登記をする(会社法915条1項)、怠ると代表者個人が100万円以下の過料の対象になりうる(会社法976条1号)、株式会社は12年放置するとみなし解散の対象になりうる(会社法472条)──この3点を押さえ、毎年の定時株主総会を「登記が要る変化がなかったか」を点検する機会にしておくと安心です。

自分の会社が今どの節目にいて、次にどの登記が来るのかが分からないときは、登記簿(登記事項証明書)と定款を用意して、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 登記にはどれくらいの費用がかかりますか?

登記の種類ごとに登録免許税(国に納める税金)が決まっています。たとえば、役員変更は資本金1億円以下の会社で1万円(1億円超は3万円)、本店移転は管轄内なら3万円・管轄外なら6万円、会社を解散するときは解散の登記3万円と清算人の登記9,000円などです。司法書士に依頼する場合は、別に報酬がかかります。詳しい金額は各記事と、依頼先の見積もりでご確認ください。

Q. 期限の2週間を過ぎてしまったら、どうなりますか?

期限を過ぎても登記の申請自体はできますが、登記を怠ると、代表者個人が100万円以下の過料の対象になりえます(会社法976条1号)。過料は刑事罰ではありませんが、個人に科される金銭的な制裁です。さらに、株式会社で最後の登記から12年たつと、みなし解散の対象になりえます(会社法472条)。気づいた時点で、できるだけ早く手続きをするのが基本です。

Q. 自分で登記できますか? どこに相談すればいいですか?

会社の代表者が自分で登記を申請することは可能です。ただし、株主総会議事録などの添付書類をそろえる必要があり、任期の計算や定款変更が絡むと判断が難しくなります。登記の手続きはお近くの司法書士へ、税金の話は税理士へ、許認可の変更届は行政書士へ、株式をめぐる争いは弁護士へ、と相談先を分けるのが確実です。

【さらに深掘り】「2週間」はいつから数えるか──役員が退任した原因ごとの起算点と、すぐには登記できない退任

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では「変更が生じたときから2週間以内」(会社法915条1項)とまとめましたが、役員の変更では、いつ「変更が生じた」ことになるかが退任の原因によって異なります。また、退任したのに後任が決まるまで退任の登記ができない場面もあります。この2点を整理します。

1. 退任の原因ごとの「変更が生じた時」

株式会社と役員との関係は委任に関する規定に従う(会社法330条)ため、退任の時点は会社法と民法の委任の規定から決まります。

退任の原因 変更が生じる時点 根拠
任期満了 任期の最終年度に関する定時株主総会の終結の時 会社法332条1項(監査役は336条1項)
辞任 辞任の意思表示が会社に到達した時 会社法330条、民法97条1項
死亡 死亡の時 会社法330条、民法653条1号

任期満了による退任は「定時株主総会の日」ではなく「その総会が終わった時」に生じるため、同じ総会で後任や重任を決めたときは、退任と就任が同じ日付でそろうのが通常です。辞任の場合は、辞任届を書いた日ではなく、会社に届いた時が基準になります。

期間の数え方には民法の規定が適用され(民法138条)、日・週を単位とする期間は初日を算入しません(民法140条本文)。たとえば6月27日の午後に定時株主総会が終結して役員が重任した場合、翌28日を1日目として数え、7月11日の終了をもって2週間が満了します(民法141条)。

2. 退任しても、すぐには退任の登記ができない場合

任期満了または辞任によって退任した結果、法律または定款で定めた役員の員数を欠くことになる場合、退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を持ち続けます(会社法346条1項)。いわゆる「権利義務役員」です。

この場合について最高裁は、員数を欠くことになる任期満了・辞任による退任の変更登記は、新しい役員が就任するまで許されないと判断しています(最判昭和43年12月24日・民集22巻13号3334頁)。たとえば、取締役会を置く会社(取締役は3人以上必要。会社法331条5項)で取締役3人のうち1人が辞任し、後任を選んでいない場合、辞任届を出しても、その人の退任の登記だけを先にすることはできず、後任者の就任の登記とあわせて申請することになります。

一方で、次の点に注意が必要です。

  • 死亡と解任は対象外:会社法346条1項が権利義務の継続を定めているのは「任期の満了又は辞任」による退任だけです。死亡や解任による退任は、員数を欠く場合でもこの規定の対象にならず、その時点で役員でなくなります
  • 後任を選ばないこと自体が過料の対象になりうる:役員が法律または定款で定めた員数を欠くことになったのに、その選任の手続をすることを怠ったときも、100万円以下の過料の対象として定められています(会社法976条22号)。退任の登記ができない状態が続いても、それで責任を免れるわけではありません

3. 期限を過ぎた申請と過料の手続き

登記期間を過ぎて申請した場合の過料は、法務局が直接科すものではありません。登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、遅滞なくその事件を管轄地方裁判所に通知しなければならないとされています(商業登記規則118条)。過料事件は、原則として当事者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が扱い(非訟事件手続法119条)、過料を科すかどうか・金額をいくらにするかは、通知を受けた裁判所が判断します。

期限を過ぎていることに気づいた場合でも、登記を放置しておけば懈怠の状態が続くだけです。変更が生じた日付を議事録や辞任届の到達日などで確認したうえで、早めに申請することが基本になります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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