「久しぶりに会社の登記簿(登記事項証明書)を取ってみたら、『解散』と書かれていた」――そんな相談は、決して珍しいものではありません。会社をたたんだ覚えはないのに、いつのまにか解散したことになっている。これは多くの場合、登記を長く放置していたために、国の手続きで解散したものと扱われてしまったケースです。

ただ、ここであきらめる必要はありません。一定の期間内であれば、「会社の継続」という手続きで、解散させられた会社を元に戻して事業を続けることができます。

この記事では、なぜ会社が勝手に解散扱いになるのか、そして元に戻すにはどうすればよいのかを、できるだけやさしく整理します。

なぜ「勝手に」解散したことになるのか

会社(株式会社)には、役員が変わったり任期が満了したりするたびに登記をする義務があります。ところが、何年も役員変更などの登記をしないまま放置している会社が世の中にはたくさんあります。

そこで法律は、最後に登記をしてから12年が経過した株式会社を「もう活動していないのではないか」と扱い、次のような流れで整理する仕組みを設けています(これを通称「みなし解散」といいます)。

  1. 法務大臣が官報(国が出す公告紙)で「事業を廃止していないなら届け出てください」と公告する
  2. あわせて、その会社あてに登記所から通知(お知らせのハガキ)が届く
  3. 公告から2か月以内に「まだ事業をやっています」という届出も、何らかの登記もしなければ、解散したものとみなされる

つまり、悪いことをしたから解散させられたわけではなく、**「登記を放置していた結果」**として、自動的に解散の登記が入ってしまうのです。郵便物の宛先が古いままだと通知のハガキにも気づけず、後から登記簿を見て初めて知る、ということも起こります。

※一般社団法人・一般財団法人にも似た仕組みがあり、こちらは「5年」が基準になっています。

解散させられても、すぐに会社が消えるわけではない

「解散」と聞くと会社が消滅したように感じますが、解散はゴールではなく清算に向けた手続きの入口です。解散すると会社は「清算(せいさん/後片付け)をするための会社」に変わり、それまでの取締役に代わって**清算人(せいさんにん)**が手続きを進める立場になります。

そして、後片付け(清算)が完全に終わって初めて、会社は法律上消滅します。逆にいえば、清算が終わる前で、かつ一定の期間内であれば、会社を元の状態に戻せる余地が残っているのです。

元に戻す手続き=「会社の継続」

解散した会社を再び事業をする会社に戻すことを、法律では**「会社の継続」**と呼びます。

ここで大切なのが期間の制限です。みなし解散によって解散したものとみなされた会社の場合、解散したとみなされた時から3年以内であれば、会社を継続することができます。この3年を過ぎてしまうと、もう継続はできません。

ポイント ・通常の解散とは違い、みなし解散の場合は「3年以内」という期限が特別に定められています。 ・自分の会社がいつ解散扱いになったのかは、登記事項証明書の解散の日付で確認できます。

継続するときの大まかな流れ

会社を継続させるには、おおむね次のような手順を踏みます。

  1. 株主総会で「会社を継続する」決議をする 会社の継続は重い決定なので、出席株主の議決権の多数だけでは足りず、**より厳しい賛成(特別決議)**が必要とされています。
  2. これからの役員(取締役など)を選び直す 解散によって取締役はいったん退いた状態になっているため、事業を再開するには取締役などを改めて選びます。
  3. 法務局に登記を申請する 「継続したこと」と「新しい役員」を登記します。放置していた間に変わっていた役員の情報があれば、それも整理して登記することになります。

実務では、長く放置していた会社ほど「誰が株主か」「過去の議事録が残っているか」といった足元の確認に手間がかかります。書類のそろえ方や決議の進め方には注意すべき点が多いので、手続きを始める前にお近くの司法書士に相談しながら進めると安心です。

費用の目安

登記の際には、登録免許税という税金がかかります。会社の継続の登記そのものは3万円、これに役員変更などの登記が加わると、その分(資本金の額などに応じて)が別途必要になります。このほか、必要な書類を集める実費や、専門家に依頼する場合の報酬がかかります。

3年を過ぎてしまったら

残念ながら、みなし解散から3年を過ぎると会社を継続することはできません。同じ事業を続けたい場合は、新しく会社を設立し直すことになります。取引先との契約や許認可、屋号やブランドを引き継げるかなど、検討すべきことが一気に増えるため、早めの確認が肝心です。

いちばんの対策は「放置しない」こと

会社を解散扱いにされないための最も確実な方法は、登記を放置しないことに尽きます。

  • 役員に変更がなくても、取締役の任期が満了すれば、同じ人を選び直して「重任(ちょうにん)」の登記が必要です。任期は会社によって異なり、最長でも原則10年です。
  • 本店を移したり、会社あての郵便を受け取れる状態を保ったりして、登記所からの通知に気づける状態にしておくことも大切です。
  • 「しばらく事業を休む」場合でも、休眠(きゅうみん)の届出と登記の管理は別の話です。休む間も登記の管理は続けておく必要があります。

「最後の登記から何年も経っているかもしれない」と思い当たる方は、一度、自社の登記事項証明書を取って確認してみてください。もし解散の記載があっても、期間内であれば打つ手は残っています。判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】みなし解散・会社継続をめぐる登記実務の留意点

ご注意 以下は執筆時点(2026年6月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。

ここからは、本文より少し踏み込んで、みなし解散と会社継続が登記の現場でどのように扱われるかを整理します。

みなし解散の根拠と時系列

みなし解散は、会社法472条に根拠があります。最後の登記から12年を経過した株式会社について、法務大臣が官報で「事業を廃止していないなら2か月以内に届け出るべき旨」を公告し、あわせて登記所がその会社あてに通知を発します。この2か月の期間内に「事業を廃止していない旨の届出」も、役員変更などの何らかの登記もされなければ、その期間の満了時に解散したものとみなされる、という仕組みです。

12年という年数には意味があります。株式会社の取締役の任期は、定款で伸ばしても最長で原則10年です(会社法332条2項。なお、株式の譲渡制限がない「公開会社」では原則2年)。そのため、通常どおり活動している会社であれば、12年もあれば少なくとも一度は役員変更(重任)などの登記をしているはず――という設計上の前提があるわけです。逆にいえば、任期管理を怠って重任登記を飛ばしている会社が、みなし解散の対象になりやすいということでもあります。

なお、一般社団法人・一般財団法人については、休眠の基準が「5年」とされており(一般社団・財団法人法に基づくみなし解散)、株式会社より短い点に注意が必要です。

この休眠会社等の整理作業は、近年はおおむね毎年秋に行われています。たとえば直近では、令和7年(2025年)10月10日に法務大臣による官報公告と登記所からの通知が行われ、同年12月10日までに届出または登記をしなければみなし解散の登記がされる、という形で実施されました。「自分の会社は何年も登記をしていない」という心当たりがある場合、こうした時期の前後はとくに注意が必要です。

会社継続の決議要件と「3年」の位置づけ

会社の継続は会社法473条に定めがあります。継続の決議は株主総会の特別決議で行います(会社法309条2項11号。継続は同条項が特別決議事項として掲げる範囲に含まれます)。特別決議は、原則として「議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成」が必要です。

ここで実務上いちばん重要なのが、本文でも触れた時間制限の正確な位置づけです。会社法473条は、解散事由のうちみなし解散(解散したものとみなされた場合)については「解散したものとみなされた後3年以内」に限って継続できると、かっこ書きで明確に区切っています。通常の株主総会決議による解散などとは扱いが違い、みなし解散にだけ3年の縛りがかかる、という構造です。

「清算株式会社」になっていることの意味

みなし解散の登記が入ると、会社は清算株式会社という状態になります。事業をするための会社ではなく、財産を整理して幕引きをするための会社に切り替わるイメージです。

このとき、清算の手続きを担う清算人には、原則として従前の取締役がそのまま就くとされています(会社法478条1項。定款の定めや株主総会で選んだ人がいればその人が優先します)。ただし、みなし解散の登記は職権で入る一方で、清算人が誰であるかの登記は会社の側で申請する必要がある点に注意が必要です。

そのため、会社継続の場面では、

  1. (清算人の登記が未了なら)清算人の登記
  2. 会社継続の登記(株主総会の特別決議が前提)
  3. これからの事業を担う取締役・代表取締役の選任にともなう登記

が組み合わさって動くことになります。継続を決議しただけでは事業を再開する役員がそろわないため、取締役等の改めての選任と代表取締役の選定まで一体で考えるのが実務です。

添付書類と「放置期間中の役員変更」の整理

会社継続の登記では、継続を決議した株主総会の議事録、決議に応じた株主リスト(商業登記規則61条3項に基づく、議決権上位株主などを記載した書面)、新たに就任する役員の就任承諾書などが基本的な添付書類になります。

実務で手間がかかるのは、放置していた期間中に本来発生していたはずの役員変更の整理です。たとえば「途中で任期満了による退任や重任が起きていた」「役員が亡くなっていた」といった事実があれば、原則としてその経過を順番に登記で反映していく必要があります。長く放置した会社ほど、過去の議事録や株主構成をたどる作業が重くなります。

登録免許税の考え方

登録免許税は、会社継続の登記そのものが3万円(登録免許税法別表第一)です。これに、同時に申請する役員変更の登記の分(区分が異なるため別建てで計算し、資本金の額によって1万円または3万円)などが加わります。

複数の区分の登記を1件の申請でまとめてする場合、区分ごとに税額を計算して合算するのが登録免許税の基本ルールです(登録免許税法18条)。「継続だから一律いくら」ではなく、何の登記を組み合わせるかで総額が変わる点を押さえておくとよいでしょう。

よくあるつまずき

  • 3年を過ぎていた — みなし解散から3年を過ぎると継続はできません。登記事項証明書で「解散の日」をまず確認することが出発点になります。
  • 株主の所在が分からない/議事録が残っていない — 継続には株主総会の特別決議が必要なため、株主が確定できない、連絡が取れないといった事情があると手続きが止まります。株主間の対立や所在不明の問題は、登記の前提として弁護士に相談すべき領域に踏み込むことがあります。
  • 会社の実印(印鑑)の扱い — みなし解散にともない印鑑の取扱いが変わる場合があり、継続後に改めて印鑑の届出が必要になることがあります。
  • そもそも通知に気づけない — 登記所からの通知は登記上の本店あてに送られます。本店の表示が実態と合っていない、郵便を受け取れる状態にないと、知らないうちに解散させられる典型パターンになります。

なお、解散・継続にともなう法人税の取扱いや欠損金などの税務面は税理士の領域です。具体的な手続きの段取りや書類のそろえ方に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。