この記事の要点
- 合同会社(LLC)の設立にかかる登録免許税は「資本金の0.7%・最低6万円」。株式会社(最低15万円)より安く、定款の認証も不要なので初期費用を抑えやすい。
- 出資者(社員)がそのまま経営に加わる会社で、決算公告の義務もない。一方で「株式会社」という信用や、株式による資金調達には向かない。
- 設立の登記は本店所在地を管轄する法務局へ。登記が完了して初めて会社が成立する(会社法579条)。
- 迷ったら、株式会社と合同会社どちらが合うかも含めて、お近くの司法書士にご相談ください。
会社をつくると聞くと「株式会社」を思い浮かべる方が多いですが、近年は**合同会社(ごうどうがいしゃ、LLC)**を選ぶ起業家も増えています。合同会社は、株式会社にくらべて設立費用が安く、手続きもシンプルなのが特徴です。
まず結論からいうと、合同会社の設立で法務局に納める登録免許税は「資本金の額の0.7%、それが6万円に満たないときは6万円」です(登録免許税法 別表第一・24号(一)ハ)。株式会社の最低15万円とくらべて負担が軽く、しかも合同会社は公証役場での定款認証(にんしょう)が不要なので、その分の費用(株式会社では3万円〜5万円)もかかりません。
この記事では、合同会社とはどんな会社か、株式会社と何が違うのか、設立の登記にかかる費用・必要書類・流れを、これから起業する方向けに整理します。
合同会社とはどんな会社か
合同会社は、2006年(平成18年)の会社法施行で新しく設けられた会社の形です。アメリカの「LLC」をモデルにしているため、LLC と呼ばれることもあります。
いちばんの特徴は、お金を出す人(出資者)と経営する人が同じである点です。合同会社では出資者のことを「社員(しゃいん)」と呼びます。ここでいう社員は、いわゆる従業員のことではなく、会社のオーナー兼経営者を指す会社法上の用語です。原則として社員全員が会社の業務を執行し、会社を代表します。
株式会社が「出資する株主」と「経営する取締役」を分けているのに対し、合同会社はこの2つが一体になっているため、意思決定が早く、内部のルール(利益の分け方など)も定款で柔軟に決められます。
一方で、社員は会社の債務について有限責任しか負いません。つまり、会社が倒産しても、社員は出資した金額を限度に責任を負うだけで、個人の財産まで追及されることは原則ありません。この「経営の自由さ」と「有限責任」の組み合わせが、合同会社の人気の理由です。
株式会社との違い──費用と使い勝手
合同会社と株式会社の主な違いを、設立から運営まで通してみると次のようになります。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立の登録免許税 | 資本金の0.7%・最低6万円 | 資本金の0.7%・最低15万円 |
| 定款の認証 | 不要 | 必要(3万〜5万円) |
| 出資者と経営者 | 同じ(社員) | 分かれる(株主と取締役) |
| 役員の任期 | なし | あり(原則2年・非公開会社は定款で最長10年。改選のたびに登記が必要) |
| 決算公告の義務 | なし | あり |
| 資金調達 | 出資・借入が中心 | 株式の発行で広く集めやすい |
こうして並べると、初期費用と維持コストの軽さでは合同会社に分があります。株式会社は役員に任期があるため、任期が満了するたびに「役員変更の登記」(重任=じゅうにんの登記)が必要で、うっかり忘れると過料の対象にもなります。合同会社にはこの手間がありません。
反対に、対外的な信用や資金調達では株式会社が有利とされます。取引先や金融機関によっては「株式会社であること」を重視する場合もありますし、将来的に出資を広く募りたい、上場を目指したいといった構想があるなら株式会社が向きます。
なお、合同会社として始めた後で、事業が大きくなってから株式会社へ変更する(組織変更)ことも可能です。「まずは合同会社で小さく始める」という選択も現実的です。
設立登記にかかる費用の目安
合同会社を設立するときにかかる主な費用は次のとおりです(資本金が少額で、電子定款を使う場合のもっとも軽いケース)。
- 登録免許税:6万円(資本金が約857万円を超えると0.7%の方が高くなります)
- 定款の収入印紙:紙の定款なら4万円。電子定款なら0円(印紙税がかからないため)
- 定款の認証費用:0円(合同会社は認証が不要)
つまり、電子定款を使えば、法務局・公証役場に納める実費は登録免許税の6万円が中心になります。株式会社(登録免許税15万円+認証3万〜5万円)とくらべると、初期の実費をかなり抑えられます。
このほか、司法書士に登記を依頼する場合の報酬、会社の実印を作る費用、印鑑証明書などの取得費用が別途かかります。
設立の登記が済むまでの流れ
合同会社の設立は、おおまかに次の順序で進みます。
- 会社の基本事項を決める……商号(会社名)、本店の所在地、事業の目的、資本金の額、社員(出資者)と代表社員、事業年度などを決めます。
- 定款(ていかん)を作成する……会社のルールブックにあたる書類です。合同会社は公証役場での認証が不要なので、社員が作成して署名(または記名押印)すれば足ります。
- 出資金を払い込む……決めた資本金を、代表社員などの口座に払い込みます。
- 登記を申請する……本店の所在地を管轄する法務局へ、設立登記を申請します。
- 登記の完了……株式会社と同じく、合同会社も設立の登記をした日に会社が成立します(会社法579条)。申請日が会社の誕生日になります。
登記の申請には、通常、次のような書類を用意します。ケースによって異なるため、代表的なものとして挙げます。
- 登記申請書
- 定款
- 代表社員・本店所在地・資本金を決めたことを証する書面(社員が複数いる場合など)
- 代表社員の就任を承諾したことを証する書面(必要な場合)
- 払込みがあったことを証する書面
- 代表社員の印鑑証明書
- 印鑑届書(会社の実印を届け出る書類)
まとめ
合同会社は、登録免許税が最低6万円・定款認証も不要で、株式会社より手軽に始められる会社の形です。出資者がそのまま経営に加わるシンプルな仕組みで、役員の任期や決算公告といった維持の手間も軽くなります。
一方、対外的な信用や広い資金調達では株式会社が有利な面もあり、「どちらが自分の事業に合うか」は、事業の規模・取引先・将来像によって変わります。会社の形を選ぶところから設立登記まで、判断に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 合同会社の設立費用は、ぜんぶでいくらくらいですか? 法務局・公証役場に納める実費だけなら、電子定款を使えば登録免許税の6万円が中心です(資本金が約857万円以下の場合)。紙の定款だと収入印紙4万円が加わります。これに加えて、司法書士へ登記を依頼する場合の報酬、会社の実印作成費、印鑑証明書の取得費などがかかります。
Q. 合同会社の登記をしないまま営業してもいいですか? できません。合同会社は、設立の登記をして初めて会社として成立します(会社法579条)。登記が済むまでは「会社」として契約や口座開設をすることはできません。事業を始める前に、必ず設立登記を完了させる必要があります。
Q. 設立の登記は自分でもできますか? 制度上は、社員や代表社員が自分で申請することもできます。ただし、定款の記載や添付書類の整え方に決まりがあり、不備があると法務局から補正(訂正)を求められて時間がかかることもあります。株式会社と合同会社どちらが合うかの検討も含めて、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】合同会社の登記実務で押さえておきたい点
ご注意 以下は執筆時点(2026年7月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
商業登記実務の観点から、合同会社の設立で実務上つまずきやすい点を補足します。
代表社員の定め方と登記事項 合同会社では、社員が複数いる場合、原則として社員全員が業務を執行し、会社を代表します。ただし定款で「業務執行社員」や「代表社員」を定めることができます。登記記録に公示されるのは、業務を執行する社員の氏名(名称)と、代表社員の氏名(名称)・住所です(会社法914条が合同会社の設立の登記事項を定めています)。代表社員が法人であるときは、その法人が「職務執行者」を選び、職務執行者の氏名・住所も登記します。
払込みを証する書面の扱い 合同会社の設立登記でも、出資に係る払込みおよび給付があったことを証する書面の添付が求められます(商業登記法117条・会社法578条)。金銭出資か現物出資かによって、資本金の額の計上に関する証明書の要否など必要書類が変わるため、事前の確認が欠かせません。
「社員」という言葉の誤解に注意 合同会社の「社員」は出資者=オーナーを指し、従業員とはまったく別の概念です。求人や社内文書で用語が混同されると、後の意思決定や登記手続きで混乱のもとになります。定款や議事の記録では、会社法上の「社員」の意味で一貫して使うことが実務上のポイントです。