設立のしやすさから、「合同会社(ごうどうがいしゃ。LLCとも呼ばれます)」を選ぶ方が増えています。会社を続けていくと、新しい仲間が出資して加わったり、メンバーが抜けたり、代表者が交代したりと、「人」が入れ替わる場面が必ず出てきます。

合同会社では、こうした「人」の変更が登記(とうき=法務局に登録された会社情報の書き換え)と直結しています。しかも、株式会社の役員変更とは仕組みが少し違うため、戸惑う経営者の方も少なくありません。

この記事では、合同会社の「社員」が変わったときに必要な登記の基本を、なるべくやさしく整理します。

まず押さえたい「社員」の意味

合同会社で最初につまずきやすいのが、「社員」という言葉です。

日常会話では「社員=従業員(雇われて働く人)」を指しますが、会社法でいう合同会社の「社員」はまったく別の意味で、出資してその会社のオーナーになっている人を指します。株式会社でいえば「株主」に近い立場です。

さらに合同会社では、この社員が原則として会社の経営(業務執行)も自分で行います。つまり、株式会社のように「お金を出す人(株主)」と「経営する人(取締役)」が分かれておらず、出資者=経営者が一体になっているのが大きな特徴です。

  • 株式会社のイメージ:株主(出資する人)と取締役(経営する人)は別の役割
  • 合同会社のイメージ:社員が出資も経営も担う(原則)

このため、合同会社で「社員が変わる」ことは、株式会社でいう「株主が変わる」と「役員が変わる」が同時に起きるような出来事になります。ここが、株式会社の役員変更登記との一番の違いです。

社員が変わる3つの場面

社員が変わる場面は、大きく次の3つに分かれます。

  1. 新しい社員が加わる(加入)
  2. 社員が抜ける(退社)
  3. 代表社員・業務執行社員が交代する

順番に見ていきます。

① 新しい社員が加わるとき(加入)

新たに出資して社員が増える場合です。

合同会社では、「誰が社員か」が定款(ていかん=会社の基本ルールを定めた書類)に必ず書いてある事項です。そのため、社員が一人増えるということは、定款の内容を書き換えることを意味します。

定款を変更するには、原則として社員全員の同意が必要とされています(会社法637条)。そして、新しく加わる人は出資を実際に払い込みます(お金ではなくモノで出資する「現物出資」の場合は、その引き渡しを行います)。

これらが整ったら、変更があった日から2週間以内に法務局へ加入の登記を申請します。

② 社員が抜けるとき(退社)

社員が会社から抜けることを、会社法では「退社(たいしゃ)」と呼びます。これも日常語の「退社(会社を出て帰る/退職する)」とは違い、オーナーの立場から外れることを指します。

退社には、大きく2種類あります。

  • 自分の意思で抜ける「任意退社」(会社法606条)
  • 一定の事情があると当然に抜ける「法定退社」(会社法607条)

法定退社の事情には、社員の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判を受けたこと、除名などがあります。

社員が抜けると、その社員が出資していた分などを精算する「持分(もちぶん)の払戻し」という問題が生じることがあります。ここにはお金の動きに応じた税金の論点が関わってきますが、税額の計算や課税の有無は税理士の専門分野です。税金面は必ず税理士にご確認ください。

なお、社員同士の対立から特定の社員を強制的に退社させる「除名」は、もめごと(紛争)があることを前提とした手続きです。社員間の争いに発展しているケースは、弁護士が扱う領域になります。トラブルになっている場合は弁護士にご相談ください。

いずれの場合も、退社によって社員が変われば、その日から2週間以内に退社の登記が必要です。

③ 代表社員・業務執行社員が変わるとき

社員が複数いる合同会社では、「会社を代表する社員(代表社員)」や「実際に経営を担当する社員(業務執行社員)」を定めていることがあります。

これらの人が交代したとき(辞任・就任・死亡など)も、登記が必要です。とくに代表社員は、氏名だけでなく住所も登記されるため、代表社員が引っ越して住所が変わったときにも変更登記が必要になる点は、見落とされがちです。

共通して気をつけたいこと

どの変更でも共通するポイントを挙げておきます。

  • 期限は「変更があった日から2週間以内」(会社法915条1項)。うっかり放置すると、過料(かりょう=罰金に似た金銭的なペナルティ)の対象になることがあります。
  • 登録免許税(登記にかかる税金)は、社員・代表社員などの変更登記で申請1件につき1万円が基本です(資本金の額が1億円を超える会社は3万円)。
  • 許認可を受けて営業している業種(建設業・宅地建物取引業・古物商など)では、社員や代表者が変わると、登記とは別に許認可の役所への変更届が必要になる場合があります。あわせて確認しておくと安心です。

まとめ

合同会社の社員の変更は、「出資者であり経営者でもある人」が入れ替わる、会社にとって重要な節目です。そして、その多くが2週間以内の登記と結びついています。

  • 社員の加入・退社は、定款変更(原則として社員全員の同意)と連動する
  • 代表社員は住所も登記されるため、引っ越しでも変更登記が必要
  • 期限を過ぎると過料のリスクがある
  • 持分払戻しの税金は税理士、社員間の紛争は弁護士へ

書類の準備や登記申請の進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】社員の加入・退社と登記添付書類の実務

ご注意 以下は執筆時点(2026年6月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。

ここからは、商業登記実務の観点から、社員の変更にともなう登記の中身をもう少し具体的に見ていきます。

合同会社で「登記される人」「登記されない人」

本文で触れたとおり、合同会社の社員は出資者であり、原則として経営も担います。ただし、社員に関するすべての情報が登記簿に載るわけではありません。

合同会社の登記事項は会社法914条で定められており、社員に関係するのは次の2つです。

  • 業務を執行する社員(業務執行社員)の氏名または名称……住所は登記されません。
  • 代表社員の氏名または名称および住所……代表社員だけは住所まで登記されます。

つまり、**登記されるのは「業務執行社員」と「代表社員」**であって、出資だけして経営に関与しない社員(後述)は登記簿に現れません。

また、合同会社は社員全員が有限責任(出資額の範囲でしか責任を負わない)であるため、合資会社のように「有限責任社員である旨」や「出資の価額」は登記されません。この点は合資会社との違いです。

業務執行社員を「定款で絞っているか」で変わる

合同会社では、定款で特に定めなければ、社員全員が業務執行社員になります(会社法590条1項)。この場合、社員が入れ替われば、そのまま業務執行社員の登記に影響します。

一方、定款で「業務を執行する社員は○○とする」と一部の社員に絞っている場合、業務執行社員でない社員(出資だけの社員)の加入・退社は、登記事項には現れません。ただし、社員であること自体は定款に書かれているため、登記の有無にかかわらず、社員の変更には定款変更の手続きが必要です。

パターン別・登記の中身と添付書類

実際の登記では、変更のパターンごとに「登記すべき事項」と「添付書類」が変わります。代表的なものを整理します。

(1) 社員の加入

  • 登記すべき事項:加入した業務執行社員の氏名(代表社員になるなら住所も)、効力発生日。出資により資本金が増える場合は資本金の額。
  • 主な添付書類:
    • 定款変更を証する総社員の同意書(社員は定款記載事項のため、加入=定款変更。会社法637条)
    • 出資の払込み(現物出資なら給付)があったことを証する書面

合同会社では、出資の履行が加入の効力と結びついています。定款変更をしても、出資が未了であれば、その払込み・給付を完了した時に社員となります(会社法604条)。「同意書はあるが出資の証明がない」という形では登記が通りません。

(2) 社員の退社

  • 登記すべき事項:退社した業務執行社員の氏名、退社した旨、退社日。
  • 主な添付書類(退社の理由によって変わります):
    • 任意退社(会社法606条)……退社の通知が会社に到達したことなど、退社の事実を証する書面
    • 死亡……戸籍(除籍)など死亡の事実を証する書面
    • 後見開始の審判・破産手続開始の決定……審判書・決定書の謄本など

なお、退社にともなう「持分の払戻し」で資本金を減らす場合には、債権者保護の手続き(会社法の定める公告・催告など)が必要になることがあります。払戻しにかかる税金(課税されるかどうか・金額)は税理士の領域ですので、必ず税理士にご確認ください。

社員間の対立を背景とする「除名」(会社法859条)は、紛争を前提とした手続きであり、争いになっている場合は弁護士が扱う領域です。

(3) 代表社員の変更

業務執行社員が複数いる場合、その中から代表社員を定めることができます。定め方は、①定款で直接定める、②定款の定めに基づく社員の互選、の2通りです(会社法599条3項)。①の場合は定款変更にあたるため、総社員の同意が必要です。

  • 主な添付書類:
    • 定款で定める場合……定款変更を証する総社員の同意書
    • 互選で定める場合……互選の根拠となる定款の定め+互選書+代表社員の就任承諾書
    • 代表社員が法人の場合……その法人の職務を実際に行う人(職務執行者)の選任・就任を証する書面、本人確認に関する書面など

(4) 代表社員の住所変更

代表社員が引っ越したときは、住所変更の登記をします(登記すべき事項は新住所と変更日)。なお、株式会社の代表取締役などにある「住所を登記簿で非表示にする制度」は、合同会社の代表社員には設けられていません。代表社員の住所は登記事項として記録されます。

実務で間違えやすいポイント

最後に、つまずきやすい点を挙げておきます。

  1. 総社員の同意書の付け忘れ……社員の加入・退社・代表社員の定めは、いずれも定款の内容にかかわります。定款変更を証する書面(総社員の同意書など)が抜けていると補正になります。
  2. 加入なのに出資の証明がない……合同会社特有の落とし穴です。加入には出資の履行が必要で、その払込み・給付を証する書面が要ります。
  3. 「社員が1名」と「社員が0名」の混同……社員が1人だけになっても、合同会社は存続できます。解散事由になるのは社員が全員いなくなった(欠けた)ときです(会社法641条4号)。退社で人数が減るときに混同しないよう注意します。なお、唯一の社員が亡くなったような場合は、定款の定めや相続の扱いによって結論が変わることがあるため、個別の確認が必要です。
  4. 代表社員の住所の記載……代表社員は住所が登記事項です。住民票どおりの正確な表記が必要で、ここの不一致も補正の原因になります。
  5. 資本金が動くときの追加手続き……加入で資本金が増える、退社・払戻しで資本金が減る場合は、資本金の額の変更登記や、減少のときの債権者保護手続きが別途必要になることがあります。

合同会社の社員の変更は、「定款変更」「出資」「登記」「(場合により)税務」がからみ合います。手順や書類に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。