結論から言うと、2026年2月2日以降は、土日や祝日、年末年始であっても、会社の設立日(会社成立の年月日)として登記できるようになりました。これまでは法務局の休日と重なると、その日を設立日にすることができませんでした。主なポイントは次のとおりです。

  • 対象は「設立の登記」に限られる(会社の成立要件となる設立登記のみ)
  • 組織変更や持分会社の種類変更による設立の登記は対象外
  • 休日を設立日にしたい場合は、その**直前の開庁日(法務局が開いている日)**に申請する必要がある
  • 申請書には「指定登記日」(休日に登記することを求める旨とその日付)を明記する

法人を作ろうと考えたとき、「誕生日に会社を作りたい」「記念日に法人化したい」と考える経営者は少なくありません。これまでその希望日が土日祝日や年末年始と重なると、実現できませんでした。この記事では、新しくできた制度の仕組みと、利用するうえでの実務上の注意点を整理します。

そもそも「会社の設立日」とは何か

会社の設立日とは、法律上その会社が誕生した日のことで、登記簿上は「会社成立の年月日」として記録されます。この日付は、設立登記を法務局が実際に受け付けた(受理した)日がそのまま設立日になる、というのが基本的な仕組みです。

そのため、これまでは次のような制約がありました。

  • 法務局は土日祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)が休みのため、登記の受付自体が行われない
  • 結果として、これらの日を会社成立日にすることはできなかった
  • 事業を始めたい日、記念日、縁起の良いとされる日が休日と重なると、別の日で妥協するしかなかった

新制度でできるようになったこと

2026年2月2日に施行された商業登記規則等の一部改正により、一定の条件を満たせば、休日を会社の設立日として指定できるようになりました。制度の骨格は次のとおりです。

対象となる登記

会社の成立要件となる設立の登記に限られます。具体的には、株式会社や合同会社などを新しく作るときの設立登記が対象です。一方で、株式会社・持分会社の組織変更や、持分会社の種類変更にともなう設立の登記は対象外とされています。これらは既存の法人が形を変える手続きであり、会社を新しく生み出す日を選べるようにするという今回の制度の趣旨とは性質が異なるためと考えられます。

申請のタイミング

休日を設立日にしたい場合、その日に法務局へ出向いて申請するわけではありません。指定登記日の直前の開庁日(法務局が通常どおり開いている日)に、あらかじめ申請を済ませておく必要があります。たとえば土曜日を設立日にしたい場合は、その前の金曜日(開庁日)に申請することになります。

申請書への記載方法

指定登記日を利用する場合、通常の設立登記の申請書に加えて、次のような記載が必要です。

  • 書面で申請する場合は、申請書の余白に「指定登記日に登記することを求める旨」とその日付を記載
  • オンラインで申請する場合は、「その他の申請書記載事項」欄に同様の記載をする
  • あわせて、登記すべき事項の「会社成立の年月日」欄には、指定登記日の日付をそのまま記載する

書類の記載箇所や体裁に不備があると、希望どおりの処理がされない可能性があります。この点は、登記実務における確認事項として押さえておく必要があります。

なぜこの制度ができたのか

背景には、設立日にこだわる経営者・起業家のニーズがあります。暦の上で縁起が良いとされる日(大安・天赦日・一粒万倍日など)や、自分の誕生日、思い入れのある記念日を設立日にしたいという声は以前からありました。ところが、これらの日が土日祝日や年末年始と重なることは珍しくなく、その場合は指定できないというのがこれまでの運用でした。

なお、暦注(大安・天赦日など)はあくまで暦の上でそう言われているという慣習的なものであり、法律上の効力や効果を保証するものではありません。設立日をどの日にするかは、事業計画や資金調達のタイミングなど、実務上の要素とあわせて判断するのが基本です。決算期の設定や初年度の税務上の取り扱いに関わる論点は、税理士に確認することをおすすめします。

利用を検討する際に気をつけたいこと

新制度を使う際は、次の点を確認しておくと安心です。

  • 直前の開庁日に申請が必要なため、余裕を持ったスケジュールを組む必要がある(直前になって書類が揃わない、という事態は避けたい)
  • 対象は設立登記に限られ、組織変更等には使えない
  • 申請書の記載箇所・記載方法に独自のルールがあるため、通常の設立登記よりも書類作成に注意が必要
  • 定款認証や必要書類の準備自体は、この制度の有無にかかわらず変わらず必要になる

制度の詳細な運用や、個別の会社の状況に応じた申請書の書き方については、お近くの司法書士にご相談ください。

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ご注意 以下は執筆時点(2026年07月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。

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指定登記日制度を利用する場合は、設立登記が「会社が法律上誕生する瞬間」を扱う一回性の手続きであるという性質を踏まえておく必要があります。役員変更や本店移転などの変更登記であれば、仮に申請に不備があっても、補正や再申請によって別日程で対応し直すことができます。これに対し指定登記日を利用する設立登記は、特定の一日(指定登記日)を前提に手続き全体を組み立てる以上、通常の設立登記よりもスケジュール管理の厳密さが求められます。

添付書類の準備は前倒しが基本

指定登記日を利用する場合、申請自体は指定登記日の直前の開庁日に行う必要があります。つまり、定款・発起人の同意書・払込みを証する書面・就任承諾書といった添付書類一式は、その申請日までにすべて整っていなければなりません。

通常の設立登記であれば、書類の一部に不備があった場合、法務局からの補正指示を受けてから数日かけて対応する余地がありますが、指定登記日を利用する場合はその前提が変わります。補正のやり取りをしている間に指定登記日を過ぎてしまうと、希望していた日を会社成立の日にすることができなくなるおそれがあります。そのため、添付書類は余裕をもった前倒しのスケジュールで準備し、申請前に記載事項の整合性(発起人・出資額・機関設計と定款の対応関係など)を確認しておくことが実務上の留意点になります。

定款認証のタイミングとの兼ね合い

株式会社の設立では、定款は公証人による認証を経る必要があります。定款認証も法務局と同様に開庁日でなければ手続きができないため、指定登記日から逆算して「定款認証→払込み→登記申請」という一連の流れを開庁日ベースで組み立てる必要があります。特に指定登記日が連休や年末年始の直前に設定される場合、認証や払込みの手続きに使える開庁日そのものが限られることになるため、通常の設立登記よりも前広なスケジュール調整が求められます。

申請書の記載箇所を誤らないこと

指定登記日を利用する申請では、通常の設立登記の記載事項に加えて、指定登記日に関する記載を追加する形になります。書面申請であれば申請書の余白に、オンライン申請であれば申請書上の記載欄に、それぞれ指定登記日を求める旨とその日付を記載し、あわせて登記すべき事項の「会社成立の年月日」欄の日付も指定登記日に合わせる必要があります。記載箇所や書式は通常の設立登記とは異なる独自のルールであるため、申請書を組み立てる段階で記載箇所を取り違えないよう、慎重な確認が求められます。

補正が生じた場合のリスク

書類の不備等により補正が必要になった場合、通常の設立登記であれば法務局とのやり取りを経て手続きを続行できますが、指定登記日を利用する申請では、補正対応をしている間に指定登記日を過ぎてしまうと、指定した休日を会社成立日にすることができなくなる可能性があります。この場合、通常の受付日(開庁日)を会社成立日として扱わざるを得なくなることも想定されます。指定登記日にこだわりがある場合ほど、事前の書類確認を徹底し、補正の芽を申請前に摘んでおくことが重要になります。

以上のとおり、指定登記日制度は「休日を設立日にできる」という利便性がある一方で、通常の設立登記よりもスケジュールの精度と書類準備の正確性が求められる制度です。個別の会社の状況に応じた具体的な申請スケジュールについては、お近くの司法書士にご相談ください。