問題:
意思表示に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 表意者がその真意ではないことを知ってした意思表示は、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知ることができたときは無効となるが、その無効は、善意の第三者に対抗することができない。
イ. 甲乙間の虚偽表示による売買の目的である不動産を、買主乙から丙が譲り受け、さらに丙から丁が譲り受けた場合において、丙が虚偽表示について悪意であるときは、丁が善意であっても、甲は、丁に対し、甲乙間の売買の無効を対抗することができる。
ウ. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、相手方が表意者に錯誤があることを知っていたときであっても、表意者は、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。
エ. 相手方に対する意思表示について第三者が強迫を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、表意者は、その意思表示を取り消すことができる。
オ. 詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができないが、この第三者は、詐欺の事実を知らなかったことについて過失があるときであっても、保護される。
答え:
正しいものは、アの1つである。
解説:
ア 正しい。民法93条1項は、「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。」と定め、同条2項は、「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。心裡留保による意思表示は原則として有効であり、相手方が悪意又は有過失のときに限って無効となる。そして、その無効について第三者の保護を定める同条2項は、第三者の要件として「善意」のみを掲げている。
イ 誤り。民法94条1項は、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と定め、同条2項は、「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。最判昭和45年7月24日(民集24巻7号1116頁)の裁判要旨は、「民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。」としている。したがって、甲は、善意の転得者丁に対し、甲乙間の売買の無効を対抗することができない。なお、同判決の裁判要旨は、あわせて、不動産の所有者甲が、乙にその所有権を移転する意思がないのに、乙名義を使用して他からの所有権移転登記を受けたときは、その登記について乙の承諾がない場合においても、同条2項を類推適用して、甲は、乙が不動産の所有権を取得しなかったことをもって善意の第三者に対抗することができないとしている。
ウ 誤り。民法95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。」と定め、除かれる場合として、「相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。」(1号)及び「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。」(2号)を掲げている。相手方が表意者の錯誤を知っていたときは同項1号に当たるから、表意者に重大な過失があっても、錯誤を理由として意思表示を取り消すことができる。なお、同条1項は、錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときに意思表示を取り消すことができるとしたうえで、錯誤の類型として、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(1号)と、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(2号)とを掲げ、同条2項は、2号の錯誤による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができるとしている。錯誤による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(同条4項)。
エ 誤り。民法96条1項は、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」と定め、同条2項は、「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」と定めている。相手方の悪意又は有過失を取消しの要件とする同条2項は、第三者が「詐欺」を行った場合についての規定であり、第三者が強迫を行った場合には適用されない。第三者の強迫による意思表示は、同条1項により、相手方がその事実を知っていたかどうかにかかわらず取り消すことができる。
オ 誤り。民法96条3項は、「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」と定めている。詐欺による取消しから保護される第三者は、善意であるだけでなく、過失がないことも要する。第三者の保護要件を条文ごとに整理すると、心裡留保による無効(民法93条2項)と虚偽表示による無効(同法94条2項)は「善意」、錯誤による取消し(同法95条4項)と詐欺による取消し(同法96条3項)は「善意でかつ過失がない」であり、強迫による取消しについては第三者を保護する規定が置かれていない(同条3項は「詐欺による意思表示の取消し」に限っている)。
問題:
法定地上権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 土地に抵当権を設定した当時、その土地上の建物が未だ完成しておらず、更地としての評価に基づいて抵当権が設定された場合であっても、抵当権者が建物の築造をあらかじめ承認していたときは、抵当権の実行により土地と建物の所有者を異にするに至ったときに、その建物のために法定地上権が成立する。
イ. 土地及びその地上建物の所有者が、建物の取得原因である譲受けについて所有権の移転の登記を経由しないまま、土地に抵当権を設定した場合であっても、法定地上権の成立は妨げられない。
ウ. 土地を目的とする一番抵当権の設定当時、土地と地上建物の所有者が異なっていた場合であっても、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定されたときは、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときであっても、法定地上権が成立する。
エ. 土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する。
オ. 所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、その建物が取り壊され、その土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であれば、新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けていないときであっても、新建物のために法定地上権が成立する。
答え:
誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。民法388条前段は、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」と定めている。最判昭和36年2月10日(民集15巻2号219頁)の裁判要旨は、「土地に対する抵当権設定の当時、当該建物は未だ完成しておらず、しかも原判決認定の事情(原判決理由参照)に照らし更地としての評価に基き抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえ抵当権者において右建物の築造をあらかじめ承認した事実があつても、民法第三八八条の適用を認むべきではない。」としている。更地としての評価に基づいて抵当権が設定されたことが明らかな場合には、抵当権者が建物の築造を承認していたことは、法定地上権の成立を導く事情とはされていない。なお、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める(同条後段)。
イ 正しい。最判昭和48年9月18日(民集27巻8号1066頁)の裁判要旨は、「土地およびその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合であつても、法定地上権の成立を妨げない。」としている。同判決の参照法条には、民法388条とともに同法177条が掲げられている。建物について所有権の移転の登記を経由していないことは、抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者に属していたという要件の充足を妨げるものとはされていない。
ウ 誤り。最判平成2年1月22日(民集44巻1号314頁)の裁判要旨は、「土地を目的とする一番抵当権設定当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかつた場合には、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定されたとしても、抵当権の実行により一番抵当権が消滅するときは、法定地上権は成立しない。」としている。抵当権の実行により消滅する一番抵当権の設定当時に同一所有者要件が充足されていない以上、後順位抵当権の設定当時に土地と建物が同一人の所有に帰していても、法定地上権は成立しない。
エ 正しい。最判平成19年7月6日(民集61巻5号1940頁)の裁判要旨は、「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する。」としている。ウの最判平成2年1月22日は、抵当権の実行により一番抵当権が消滅する場面についての判断であるのに対し、本肢は、先順位の甲抵当権が実行の前に設定契約の解除により既に消滅していた場面であり、この違いによって結論が分かれている。
オ 誤り。最判平成9年2月14日(民集51巻2号375頁)の裁判要旨は、「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。」としている。新建物の所有者が土地の所有者と同一であるというだけでは足りず、土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情がなければ、法定地上権は成立しない。
問題:
相続人に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 被相続人Aの子Bが相続の放棄をした場合において、Bに子Cがあるときは、Cは、Bを代襲してAの相続人となる。
イ. 被相続人Aに子及び直系尊属がなく、Aの兄Bが相続の開始以前に死亡し、Bの子Cも相続の開始以前に死亡していた場合において、Cに子Dがあるときは、Dは、Aの相続人となる。
ウ. 相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄し、又は隠匿した場合であっても、その行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、その相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者に当たらない。
エ. 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならず、この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
オ. 被相続人Aとその子Bが死亡した場合において、A及びBのいずれが他方の死亡後になお生存していたかが明らかでないときは、Bの子Cは、Bを代襲してAの相続人となる。
答え:
正しいものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。民法887条2項本文は、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。」と定めている。代襲原因は、相続開始以前の死亡、相続欠格(同法891条)及び廃除の三つであり、相続の放棄は掲げられていない。相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる(同法939条)から、その子が放棄をした者を代襲して相続人となることはない。
イ 誤り。民法889条1項は、887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、被相続人の直系尊属(1号)、被相続人の兄弟姉妹(2号)の順序で相続人となるとし、同条2項は、「第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。」と定めている。兄弟姉妹が相続人となる場合に準用されるのは887条2項(代襲相続)のみであり、代襲者についての再代襲を定める同条3項は準用されていない。したがって、兄弟姉妹の子Cは代襲相続人となり得るが、Cも相続の開始以前に死亡していた場合に、その子Dが再代襲して相続人となることはない。これに対し、被相続人の子の系統では、同条3項により、代襲者が相続の開始以前に死亡し、又は欠格・廃除によって代襲相続権を失った場合にも同条2項が準用され、再代襲が生ずる。
ウ 正しい。民法891条は、相続人となることができない者として、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」(5号)を掲げている。最判平成9年1月28日(民集51巻1号184頁)の裁判要旨は、「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者に当たらない。」としている。なお、相続欠格は、同条各号に該当すれば「相続人となることができない」とされており、廃除(同法892条)のように家庭裁判所への請求を要するものとはされていない。また、令和8年法律第45号(民法等の一部を改正する法律)により、同条5号は、遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者に加えて、改正後の同法976条の2第1項又は979条の2第1項各号に規定する方法(遺言の状況を録音及び録画を同時に行う方法)により記録された電磁的記録を不正に作り、破棄し、又は隠匿した者を掲げる形に改められるが、この改正規定は、公布の日(令和8年6月24日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるものであり(同法附則1条2号)、本試験の法令基準日である令和8年4月1日の時点では施行されていない。
エ 正しい。民法893条は、「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と定めている。生前の廃除について定める同法892条は、廃除の対象を「遺留分を有する推定相続人」に限っており、兄弟姉妹は遺留分を有しない(同法1042条1項は遺留分を有する者を「兄弟姉妹以外の相続人」としている)から、兄弟姉妹である推定相続人は廃除の対象とならない。893条には「遺留分を有する」との文言はないが、遺言による廃除も、892条の廃除と同じく遺留分を有する推定相続人を対象とするものと解されている。また、被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができ(同法894条1項)、893条の規定は廃除の取消しについて準用されている(同法894条2項)。
オ 正しい。民法32条の2は、「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」と定めている。A及びBは同時に死亡したものと推定されるところ、同法887条2項は、代襲原因の一つを、被相続人の子が「相続の開始以前に」死亡したときと定めており、相続の開始と同時に死亡した場合もこれに含まれるから、Bの子Cは、Bを代襲してAの相続人となる。なお、同項ただし書は、「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」と定めている。養子と養親及びその血族との間の親族関係は、養子縁組の日から生ずる(同法727条)から、養子縁組前に生まれた養子の子は、縁組によっては養親の直系卑属とならず、原則として、養子を代襲して養親の相続人となることはない(養親の実子の子でもある場合のように、別の親族関係によって養親の直系卑属に当たるときは、同項ただし書には当たらないと解される)。
問題:
合筆の登記の制限に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 承役地についてする地役権の登記がある甲土地を、所有権の登記以外の権利に関する登記がない乙土地に合筆する合筆の登記は、他に合筆の登記の制限に当たる事由がなければすることができ、この場合には、登記官は、乙土地の登記記録の乙区に甲土地の登記記録から当該地役権の登記を移記し、移記された地役権の登記に当該地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならない。
イ. 所有権の登記名義人をいずれもAとする甲土地及び乙土地について、甲土地にはBを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされ、その後、別個の申請により、同一の債権を担保するため乙土地にBを抵当権者とする抵当権を追加して設定した旨の登記がされているときは、甲土地と乙土地の合筆の登記をすることはできない。
ウ. 甲土地及び乙土地の登記記録に、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の担保権の登記がある場合において、甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をするときは、登記官は、乙土地の登記記録に、当該担保権の登記が合筆後の土地の全部に関する旨を主登記によって記録しなければならない。
エ. 信託の登記がある土地の合筆の登記は、合筆する土地の信託の登記について不動産登記法97条1項各号に掲げる登記事項が同一であっても、することができない。
オ. 地番区域でない字を異にする土地の合筆の登記は、地目及び地番区域が同一であれば、することができる。
答え:
正しいものは、ア・イの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法41条6号は、「所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(権利に関する登記であって、合筆後の土地の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある土地を除く。)の合筆の登記」はすることができないと定め、これを受けた不動産登記規則105条は、合筆後の土地の登記記録に登記することができる権利に関する登記として、「承役地についてする地役権の登記」(1号)、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の担保権の登記(2号)、不動産登記法97条1項各号に掲げる登記事項が同一の信託の登記(3号)、登録番号が同一の鉱害賠償登録に関する登記(4号)を掲げている。承役地についてする地役権の登記は、同一性の要件なしに掲げられているから、一方の土地にのみ承役地の地役権の登記がある場合でも合筆の登記をすることができる。そして、同規則107条3項は、甲土地を乙土地に合筆する場合において、甲土地の登記記録に承役地についてする地役権の登記があるときは、登記官は、乙土地の登記記録の乙区に甲土地の登記記録から当該地役権の登記を移記し、当該移記された地役権の登記に当該地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならないと定めている。乙土地の側に承役地の地役権の登記がある場合については、同条2項が、当該地役権の登記に地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならないとしている。
イ 正しい。担保権の登記がある土地の合筆の登記が許されるのは、不動産登記規則105条2号により、「担保権の登記であって、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一のもの」がある場合に限られる。同一の債権を担保する抵当権であっても、甲土地への設定の登記とその後の乙土地への追加設定の登記とは別個の申請によるものであり、申請の受付の年月日及び受付番号が同一とならないから、同号に当たらない。したがって、不動産登記法41条6号により、合筆の登記をすることはできない。担保する債権や抵当権者が同じであるかどうかではなく、登記の目的・受付年月日・受付番号・登記原因及びその日付という登記上の事項が同一であるかどうかで判断される。
ウ 誤り。不動産登記規則107条6項は、「登記官は、第一項の場合において、甲土地及び乙土地の登記記録に登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一の担保権の登記があるときは、乙土地の登記記録に当該登記が合筆後の土地の全部に関する旨を付記登記によって記録しなければならない。」と定めている。記録は主登記ではなく付記登記によってする。
エ 誤り。不動産登記規則105条3号は、合筆後の土地の登記記録に登記することができる権利に関する登記として、「信託の登記であって、法第九十七条第一項各号に掲げる登記事項が同一のもの」を掲げている。したがって、不動産登記法97条1項各号に掲げる登記事項が同一の信託の登記がある土地は、不動産登記法41条6号括弧書により、合筆の登記の制限を受けない。この場合、合筆前の甲土地及び乙土地が所有権の登記がある土地であるときは、登記官は、乙土地の登記記録の甲区に当該信託の登記を記録しなければならない(不動産登記規則107条1項5号)。
オ 誤り。不動産登記法41条2号は、「地目又は地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記」はすることができないと定めている。そして、同法39条2項は、「地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)」と定めているから、41条2号の「地番区域」には地番区域でない字が含まれる。したがって、地番区域でない字を異にする土地の合筆の登記は、地目及び地番区域が同一であってもすることができない。なお、同法39条2項は、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。)を異にするに至ったときは、同条1項の申請(分筆又は合筆の登記の申請)がない場合であっても、登記官は、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならないと定めている。
問題:
区分建物の表題登記及び敷地権に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. A及びBがそれぞれ区分建物を所有することとなる一棟の建物が新築された場合において、Aが自己の所有する区分建物について表題登記を申請するときは、Bの所有する区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならず、Aは、Bに代わって、Bの所有する区分建物についての表題登記を申請することができる。
イ. 表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合には、当該表題登記がある建物の所有権の登記名義人は、新築に係る区分建物の所有者に代わって、当該新築に係る区分建物についての表題登記を申請することができる。
ウ. 表題登記がない区分建物を新築したCから当該区分建物を買い受けたDは、自己を表題部所有者とする当該区分建物についての表題登記を申請することができる。
エ. 区分建物の敷地利用権が登記されていない賃借権であっても、区分所有法22条1項本文の規定により専有部分と分離して処分することができないものであるときは、当該賃借権は、敷地権として区分建物の登記記録の表題部に記録される。
オ. 敷地利用権が数人で有する登記された所有権である場合であっても、規約に専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができる旨の別段の定めがあるときは、当該所有権は、敷地権として区分建物の登記記録の表題部に記録されない。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法48条1項は、「区分建物が属する一棟の建物が新築された場合又は表題登記がない建物に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となった場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該新築された一棟の建物又は当該区分建物が属することとなった一棟の建物に属する他の区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。」と定め、同条2項は、「前項の場合において、当該区分建物の所有者は、他の区分建物の所有者に代わって、当該他の区分建物についての表題登記を申請することができる。」と定めている。
イ 正しい。不動産登記法52条1項は、表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合における当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請は、当該新築に係る区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならないと定め、同条2項は、「前項の場合において、当該表題登記がある建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該新築に係る区分建物の所有者に代わって、当該新築に係る区分建物についての表題登記を申請することができる。」と定めている。逆方向の代位として、同法48条3項は、表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならないとし、同条4項は、当該区分建物の所有者は、当該表題登記がある建物の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの者の相続人その他の一般承継人に代わって、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記を申請することができるとしている。
ウ 誤り。不動産登記法47条1項は、「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と定めている。表題登記がない建物を新築した者から取得した者(いわゆる転得者)について定めた部分は「区分建物以外の」建物に限られているから、区分建物については、表題登記は原始取得者であるCが申請すべきものであり、転得者Dが自己を表題部所有者とする表題登記を申請することはできないと解される。区分建物については、原始取得者Cを表題部所有者とする表題登記がされた後、Dは、表題部所有者から所有権を取得した者として、自己を登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる(同法74条2項前段。当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。同項後段)。なお、区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる(同法47条2項)。
エ 誤り。不動産登記法44条1項9号は、敷地権を、区分建物について「区分所有法第二条第六項に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの」と定義している。敷地利用権が登記されていない場合は、専有部分と分離して処分することができないものであっても、敷地権には当たらないから、表題部に敷地権として記録されることはない。
オ 正しい。区分所有法22条1項は、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と定めている。規約に別段の定めがあり分離して処分することができる敷地利用権は、不動産登記法44条1項9号にいう「区分所有法第二十二条第一項本文…の規定により…分離して処分することができないもの」に当たらないから、敷地権ではない。なお、登記官は、表示に関する登記のうち、区分建物に関する敷地権について表題部に最初に登記をするときは、当該敷地権の目的である土地の登記記録について、職権で、当該登記記録中の所有権、地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない(同法46条)。
問題:
筆界特定に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 筆界特定がされた筆界について、民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。)が確定したときは、当該筆界特定は当該判決と抵触する範囲においてその効力を失い、筆界特定手続記録を保管する登記所の登記官は、当該判決が確定した旨及び当該訴訟に係る事件を特定するに足りる事項を当該筆界特定書に明らかにしなければならない。
イ. 民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起された後に、当該訴えに係る筆界について筆界特定がされたときは、裁判所は、当該訴えに係る訴訟において、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができる。
ウ. 筆界特定書には、筆界特定の結論のほか、理由の要旨を記録しなければならず、筆界調査委員の氏名も記録するものとされている。
エ. 筆界特定登記官は、筆界特定をしたときは、遅滞なく、筆界特定の申請人及び関係人のそれぞれに対し、筆界特定書の写しを交付する方法により当該筆界特定書の内容を通知しなければならない。
オ. 筆界特定がされた筆界特定手続記録の送付を受けた登記所の登記官は、対象土地の登記記録に、筆界特定がされた旨を記録しなければならない。
答え:
正しいものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記法148条は、「筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは、当該筆界特定は、当該判決と抵触する範囲において、その効力を失う。」と定めている。前半は正しい。しかし、不動産登記規則237条は、登記官は、その保管する筆界特定手続記録に係る筆界特定がされた筆界について、筆界確定訴訟の判決(訴えを不適法として却下したものを除く。)が確定したときは、当該筆界確定訴訟の判決が確定した旨及び当該筆界確定訴訟に係る事件を特定するに足りる事項を当該筆界特定に係る筆界特定書に「明らかにすることができる。」と定めており、義務とはしていない。
イ 正しい。不動産登記法147条前段は、筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起されたときは、裁判所は、当該訴えに係る訴訟において、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができると定め、同条後段は、「民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起された後、当該訴えに係る筆界について筆界特定がされたときも、同様とする。」と定めている。筆界特定と訴えの提起の先後を問わず、送付の嘱託をすることができる。
ウ 正しい。不動産登記法143条1項は、筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見が提出されたときは、その意見を踏まえ、登記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して、対象土地の筆界特定をし、「その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。」と定めている。不動産登記規則231条1項は、筆界特定書の記録事項として、手続番号(1号)、対象土地に係る不動産所在事項及び不動産番号(2号)、結論(3号)、理由の要旨(4号)、申請人の氏名又は名称及び住所(5号)、申請人の代理人があるときはその氏名又は名称(6号)、筆界調査委員の氏名(7号)、筆界特定登記官の所属する法務局又は地方法務局の表示(8号)を掲げている。また、筆界特定書においては、図面及び図面上の点の現地における位置を示す方法として法務省令で定めるものにより、筆界特定の内容を表示しなければならない(不動産登記法143条2項)。
エ 誤り。不動産登記法144条1項は、「筆界特定登記官は、筆界特定をしたときは、遅滞なく、筆界特定の申請人に対し、筆界特定書の写しを交付する方法(筆界特定書が電磁的記録をもって作成されているときは、法務省令で定める方法)により当該筆界特定書の内容を通知するとともに、法務省令で定めるところにより、筆界特定をした旨を公告し、かつ、関係人に通知しなければならない。」と定めている。筆界特定書の写しを交付する方法による内容の通知の相手方は筆界特定の申請人であり、関係人に対しては、筆界特定をした旨を通知する。関係人の所在が判明しないときの通知の方法については、同法133条2項が準用されている(同法144条2項)。
オ 正しい。不動産登記規則234条は、「筆界特定がされた筆界特定手続記録又は筆界特定書等の写しの送付を受けた登記所の登記官は、対象土地の登記記録に、筆界特定がされた旨を記録しなければならない。」と定めている。筆界特定登記官は、筆界特定の手続が終了したときは、遅滞なく、対象土地の所在地を管轄する登記所に筆界特定手続記録を送付しなければならない(同規則233条1項)。
問題:
土地家屋調査士(以下「調査士」という。)の民間紛争解決手続代理関係業務及び業務を行い得ない事件に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士が行う業務のうち、民間紛争解決手続についての代理の業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り行うことができるが、その代理の業務についての相談の業務には、この制限は課されていない。
イ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うには、法務大臣が指定する研修の課程を修了し、その申請に基づき日本土地家屋調査士会連合会が民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であって、調査士会の会員であることを要する。
ウ. 調査士は、筆界特定の手続について法務局に提出する書類の作成の業務のみを受任している事件の相手方からの依頼による他の事件については、受任している事件の依頼者の同意がなくても、土地家屋調査士法22条の2第2項3号の規定により筆界特定手続代理関係業務を行うことを禁止されることはない。
エ. 調査士法人の使用人である調査士は、当該調査士法人が相手方から筆界特定手続代理関係業務に関するものとして受任している事件については、自らこれに関与していないときであっても、筆界特定手続代理関係業務を行ってはならない。
オ. 調査士は、筆界特定手続代理関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものについては、受任している事件の依頼者が同意した場合には、筆界特定手続代理関係業務を行うことができる。
答え:
誤っているものは、イ・オの2つである。
解説:
ア 正しい。土地家屋調査士法3条2項前段は、同条1項7号(土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続についての代理)及び8号(7号の事務についての相談)に規定する業務(民間紛争解決手続代理関係業務)は、同項各号のいずれにも該当する調査士に限り行うことができると定め、同項後段は、「この場合において、同項第七号に規定する業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、行うことができる。」と定めている。弁護士との共同受任の要件が課されているのは7号の代理の業務のみであり、8号の相談の業務には課されていない。
イ 誤り。土地家屋調査士法3条2項は、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士の要件として、「民間紛争解決手続代理関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること」(1号)、「前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること」(2号)、「土地家屋調査士会(以下「調査士会」という。)の会員であること」(3号)を掲げている。能力の認定をするのは法務大臣であり、日本土地家屋調査士会連合会ではない。なお、この認定を受けようとする調査士は、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない(同条5項)。
ウ 正しい。土地家屋調査士法22条の2第2項3号は、調査士が筆界特定手続代理関係業務を行ってはならない事件として、「筆界特定手続代理関係業務又は民間紛争解決手続代理関係業務に関するものとして受任している事件(第三条第一項第五号に規定する業務に関するものとして受任しているものを除く。第七号において同じ。)の相手方からの依頼による他の事件」を掲げている。3条1項5号は筆界特定の手続について法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録の作成の業務であり、この業務に関するものとして受任している事件は括弧書により除かれているから、その相手方からの依頼による他の事件は、同号に当たらない。なお、同号に当たる事件であっても、受任している事件の依頼者が同意した場合には、筆界特定手続代理関係業務を行うことができる(同項ただし書)。筆界特定手続代理関係業務とは、同法3条1項4号から6号(4号及び5号に関する部分に限る。)までに規定する業務をいう(同法22条の2第2項柱書)。
エ 正しい。土地家屋調査士法22条の2第2項6号は、「調査士法人の使用人である場合に、当該調査士法人が相手方から筆界特定手続代理関係業務又は民間紛争解決手続代理関係業務に関するものとして受任している事件」を掲げており、自ら関与していることを要件としていない。これに対し、同項7号(調査士法人の使用人である場合に、当該調査士法人が受任している事件の相手方からの依頼による他の事件)は「当該調査士が自ら関与しているものに限る」とし、同項4号・5号(調査士法人の社員又は使用人として業務に従事していた期間内に当該調査士法人が相手方の協議を受けた事件等)も「自らこれに関与したもの」としている。
オ 誤り。土地家屋調査士法22条の2第2項2号は、「筆界特定手続代理関係業務又は民間紛争解決手続代理関係業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの」を掲げている。同項ただし書により受任している事件の依頼者の同意があれば業務を行うことができるとされているのは、同項3号及び7号に掲げる事件に限られ、2号に掲げる事件はこれに含まれない。なお、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士が民間紛争解決手続代理関係業務を行ってはならない事件について定める同条3項のただし書は、同条2項3号及び7号に掲げる事件並びに同条3項2号に掲げる事件について、受任している事件の依頼者が同意した場合を除外している。
問題:
表示に関する登記の申請義務及び申請人に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 土地の地目について変更があった後に売買によりその土地の所有権の登記名義人となった者は、当該所有権の登記があった日から1月以内に、地目に関する変更の登記を申請しなければならない。
イ. 共用部分である旨の登記がある建物が滅失したときは、当該建物の所有者は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならず、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処せられる。
ウ. 土地の所有権の登記名義人Aが、地目について変更があった後その変更の登記を申請しないまま死亡した場合には、Aの相続人Bは、相続による所有権の移転の登記を申請する前であっても、当該地目に関する変更の登記を申請することができる。
エ. 表題登記がある甲建物を同一の所有者の所有する表題登記がある乙建物の附属建物とする建物の合併の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人が、合併をすることとした日から1月以内に申請しなければならない。
オ. 表題部所有者の住所について変更があったときは、表題部所有者は、その変更があった日から2年以内に、住所についての変更の登記を申請しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法37条1項は、「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定め、同条2項は、「地目又は地積について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。」と定めている。変更の後に所有権の登記名義人となった者の申請義務の期間は、地目の変更の日からではなく、その者に係る所有権の登記があった日から起算される。建物の表題部の変更の登記についても、同法51条2項が同様の構造を定めている。
イ 正しい。不動産登記法57条は、「建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」と定めている。共用部分である旨の登記をするときは、登記官が職権で表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消するため(同法58条4項)、申請義務者は「所有者」とされている。同法164条1項は、同法57条の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとしている。
ウ 正しい。不動産登記法30条は、「表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。」と定めている。Bは、Aの相続人として、相続による所有権の移転の登記を経ることなく、地目に関する変更の登記を申請することができる。
エ 誤り。不動産登記法54条1項は、建物の合併の登記(同項3号)等について、「表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。」と申請人を限定しているにとどまり、申請の期間を定めていない。同法164条1項も、過料の対象となる申請義務を定める規定として同法54条を掲げていない。建物の合併の登記は、所有者の意思に基づいて申請するものであり、申請義務はない。これに対し、二以上の建物が合体して一個の建物となった場合の合体による登記等は、合体の日から1月以内に申請しなければならず(同法49条1項)、同法164条1項の過料の対象ともなる。
オ 誤り。表題部所有者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記は、表題部所有者以外の者は申請することができない(不動産登記法31条)とされているが、その申請を義務付ける規定はない。同法76条の5は、「所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。」と定めており(令和8年4月1日施行)、申請義務を負うのは所有権の登記名義人である。同条の申請義務を正当な理由なく怠った場合の過料は5万円以下とされている(同法164条2項)。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・意思表示) | 心裡留保による無効と善意の第三者、虚偽表示の第三者の意義と善意の転得者、表意者に重大な過失がある錯誤と相手方の悪意による例外、第三者の強迫と相手方の主観、詐欺による取消しと善意無過失の第三者(第三者保護要件の対比) | 民法93条1項・2項、94条1項・2項、95条1項〜4項、96条1項〜3項、最判昭45.7.24 |
| 第2問 | 民法(物権・法定地上権) | 更地への抵当権設定と抵当権者による建物築造の承認、建物の所有権移転登記未了と同一所有者要件、一番抵当権設定時に所有者が異なる場合(実行で一番抵当権が消滅する場合/先順位抵当権が解除で消滅していた場合)、共同抵当の目的である建物の取壊し・再築と特段の事情 | 民法177条、388条、最判昭36.2.10、最判昭48.9.18、最判平2.1.22、最判平19.7.6、最判平9.2.14 |
| 第3問 | 民法(相続・相続人) | 相続の放棄と代襲原因、兄弟姉妹の代襲と再代襲の否定、遺言書の破棄隠匿と相続欠格(不当な利益の目的)、遺言による廃除と遡及効(廃除の対象と兄弟姉妹)、同時死亡の推定と代襲相続、養子縁組前の養子の子 | 民法32条の2、727条、887条2項・3項、889条1項・2項、891条5号、892条、893条、894条、939条、1042条1項、最判平9.1.28 |
| 第4問 | 不動産登記法・不動産登記規則(土地の表示に関する登記・合筆) | 合筆の制限の例外となる権利に関する登記(承役地の地役権・同一の担保権・同一の信託)、追加設定の抵当権と受付番号、同一の担保権がある場合の付記登記、承役地の地役権の移記、地番区域でない字を異にする土地 | 不動産登記法39条2項、41条2号・6号、97条1項、不動産登記規則105条、107条1項5号・2項・3項・6項 |
| 第5問 | 不動産登記法(建物の表示に関する登記・区分建物) | 区分建物の表題登記の一括申請と代位申請、表題登記がある建物への接続新築の場合の代位申請、区分建物の転得者と表題登記・所有権の保存の登記、敷地権の定義(登記された敷地利用権・分離処分禁止)、敷地権である旨の登記 | 不動産登記法44条1項9号、46条、47条1項・2項、48条1項〜4項、52条1項・2項、74条2項、区分所有法22条1項 |
| 第6問 | 筆界特定 | 筆界確定訴訟の判決確定による失効と筆界特定書への付記(任意)、訴え提起後の筆界特定と記録送付の嘱託、筆界特定書の記載事項、筆界特定の通知・公告の相手方と方法、登記記録への筆界特定がされた旨の記録 | 不動産登記法133条2項、143条1項・2項、144条、147条、148条、不動産登記規則231条1項、233条1項、234条、237条 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(業務・業務を行い得ない事件) | 民間紛争解決手続代理関係業務の要件(研修・法務大臣の認定・会員)と弁護士共同受任の範囲、書類作成のみの受任事件と相手方からの他の事件、調査士法人の使用人と関与要件、信頼関係に基づく協議と依頼者の同意による除外の範囲 | 土地家屋調査士法3条1項4号〜8号・2項・5項、22条の2第2項・3項 |
| 第8問 | 不動産登記法(表示に関する登記の申請義務・申請人) | 変更後に所有権の登記名義人となった者の申請期間の起算点、共用部分である旨の登記がある建物の滅失と申請義務者・過料、一般承継人による表示に関する登記の申請、建物の合併の登記と申請義務の有無、表題部所有者の住所変更と所有権の登記名義人の住所等変更登記の申請義務 | 不動産登記法30条、31条、37条、49条1項、51条2項、54条1項、57条、58条4項、76条の5、164条1項・2項 |