この記事の要点
- 離縁すると、養子(その配偶者や子・孫を含む)と養親側との親族関係は終わる(民法729条)。離縁した後に養親が亡くなっても、元養子は相続人にならない。一方、離縁より前に養親が亡くなっていれば、その相続では相続人になっている
- 離縁は養親と養子の双方の身分事項欄に記載される(戸籍法施行規則35条3号)。戸籍では「離縁の日付」と「養親の死亡の日付」の前後を読み比べる
- 養子の子が代襲相続人になるのは、原則として、縁組の後に生まれ、かつ離縁がされていない場合(縁組の前に生まれた子は代襲相続人にならない。民法887条2項ただし書)
結論から言うと、離縁した元養子が養親の相続人になるかどうかは、離縁と養親の死亡のどちらが先に起きたかで決まります。
民法729条は「養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。」と定めています。養子縁組によって縁組の日から生じた親子関係(民法727条・809条)が、離縁によって終わるということです。相続人になるのは「被相続人の子」です(民法887条1項)から、離縁した後に養親が亡くなった場合、元養子は養親の子ではなくなっており、相続人になりません。
反対に、離縁より前に養親が亡くなっていた場合は、相続は死亡によって開始する(民法882条)ため、その時点で養子は子として相続人になっています。養親の死亡後に養子の側から離縁をすること(いわゆる死後離縁)もでき、その場合は家庭裁判所の許可が必要です(民法811条6項)。ただ、民法729条は親族関係が離縁によって「終了する」と定めるもので、縁組の時にさかのぼって効力を失わせる規定ではないため、死後離縁をしても、すでに開始した養親の相続で相続人であった立場が失われるわけではないと解されます(この点を直接定めた条文はなく、民法882条と729条から導かれる読み方です)。
なお、ここでの説明は普通養子縁組を前提としています。特別養子縁組の離縁は、養親による虐待や悪意の遺棄など養子の利益を著しく害する事由があり、かつ実父母が相当の監護をすることができる場合に、養子・実父母・検察官の請求により家庭裁判所が認めるときに限られます(民法817条の10)。
戸籍ではどこに離縁が記載されるか
離縁に関する事項は、養親と養子の双方の身分事項欄に記載されます(戸籍法施行規則35条3号)。身分事項欄の役割は戸籍の「身分事項欄」の読み方で扱いました。被相続人である養親の身分事項欄に「養子縁組」の記載があれば、続けて「離縁」の記載がないかを確かめ、あればその日付が養親の死亡の日付より前か後かを見比べるのが読み方の基本です。離縁の記載があるというだけで相続人ではないと判断すると、死後離縁のように死亡の後に離縁した場合を取り違えてしまいます。
また、縁組によって氏を改め養親の戸籍に入っていた養子は、離縁によって縁組前の氏に戻り(民法816条1項本文)、原則として縁組前の戸籍に戻るか、新しい戸籍が作られます(戸籍法19条1項)。そのため養親の戸籍には、離縁によって戸籍から除かれた人として残ります。ただし、夫婦の双方の養子になった人が一方とだけ離縁した場合は縁組前の氏に戻らず(民法816条1項ただし書)、もう一方との縁組は続いているので、その親との関係では子のままです。
養子の子は代襲相続できるか
養子が養親より先に亡くなっていた場合に、養子の子が代わりに相続する(代襲相続)かどうかは、次の2点で分かれます。
第一は、その子が生まれたのが縁組の前か後かです。代襲相続人は被相続人の直系卑属(子・孫など直系の子孫)でなければならず(民法887条2項ただし書)、養子と養親側との親族関係は縁組の日から生じます(民法727条)。そのため、縁組の前に生まれていた養子の子は、縁組によって養親の直系卑属になるわけではなく、原則として代襲相続人になりません。縁組の後に生まれた子は直系卑属にあたり、代襲相続人になります。この区別は代襲相続でも取り上げています。
第二は、離縁がされていないかです。民法729条は「養子の直系卑属」と養親側との親族関係も離縁によって終了するとしています。養親が亡くなるより前に離縁がされていれば、縁組の後に生まれた子であっても養親の直系卑属ではなくなるため、代襲相続人にはなりません。
戸籍で確かめる場面に置き換えると、養子の子の出生の日付と養子縁組の日付の前後、そして養子の身分事項欄に離縁の記載がないかの2点を見ることになります。
執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
離縁によって、養子やその子孫と養親側との親族関係は終わります。離縁の後に養親が亡くなれば元養子は相続人になりませんが、離縁より前に養親が亡くなっていればその相続では相続人です。養子の子が代襲相続人になるかは、縁組の前後どちらに生まれたかと、離縁の有無で分かれます。戸籍の日付の読み比べや相続人の範囲に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。離縁をめぐって親族の間で争いがある場合は、弁護士へのご相談が必要です。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第727条・第729条・第809条・第811条・第816条・第817条の10・第882条・第887条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 戸籍法 第19条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第35条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094
- 国税庁 質疑応答事例「養子縁組前に出生した養子の子の代襲相続権の有無」: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/06/04.htm