この記事の要点

  • 戸籍の死亡の記載は【死亡日】【死亡時分】【死亡地】【届出日】【届出人】の順に並ぶ。相続の開始の時点を示すのは【死亡日】【死亡時分】で、【届出日】ではない
  • 亡くなった日時がはっきりしない場合、戸籍の死亡日時に「推定」「頃」といった言葉が添えられていることがある
  • 亡くなった順番が分からないときは同時に死亡したものと推定され(民法32条の2)、その人どうしは相続し合わない一方、代襲相続は起こりうる

結論から言うと、戸籍の死亡の記載のうち、相続人の範囲を左右するのは【死亡日】と【死亡時分】です。家族が同じ日に相次いで亡くなった場合には、何時何分に亡くなったかによって、だれが相続人になるかが変わることがあります。

死亡の記載はどう並んでいるか

現在の戸籍(コンピュータで記録された戸籍)の証明書では、死亡したことは、亡くなった人の身分事項欄に、項目名を付けて記載されます。戸籍の証明書の書き方を定めた戸籍法施行規則の付録第25号には、次のような記載例が載っています。

死 亡 【死亡日】令和4年1月9日
    【死亡時分】午後8時30分
    【死亡地】東京都千代田区
    【届出日】令和4年1月11日
    【届出人】親族 甲野義太郎
  • 【死亡日】【死亡時分】……亡くなった年月日と時刻です。死亡届には「死亡の年月日時分及び場所」を書くこととされており(戸籍法86条2項1号)、それが戸籍に記載されます
  • 【死亡地】……亡くなった場所です。記載例では「東京都千代田区」のように市区町村までが記載されています
  • 【届出日】……死亡届が出された日です。死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなったときは3か月以内)に出すこととされているため(同法86条1項)、死亡日より後の日付になるのが通常です
  • 【届出人】……届け出た人の資格(親族・同居者など)と氏名です。届出をすべき人とその順序は同法87条に定められています

なお、付録第25号には、本籍地以外の市区町村(亡くなった場所の市区町村など)で届出が受理された場合の記載例もあり、そこでは【通知を受けた日】【受理者】という項目が加わっています。

読むときにまず押さえたいのは、相続は死亡によって開始する(民法882条)という点です。基準になるのは【死亡日】【死亡時分】であって、【届出日】ではありません。届出日を相続の開始日と取り違えないよう注意が必要です。

「推定」「頃」と書かれているとき

亡くなった日時が正確に分からないこともあります。死亡届に添える死亡診断書・死体検案書(亡くなったことを確認した医師の書類)について、厚生労働省の記入マニュアルは、死体検案によって死亡時刻をできるだけ推定して記入し、その余白に「(推定)」と書くこと、一時点で明確に推定できない場合も分かる範囲でそのまま記入することを示しており、その記入例として、年と月だけを書いて余白に「頃」と添えた例を載せています。

戸籍の死亡日時にも、このような「推定」「頃」といった言葉が入っていることがあります。法務局も、成年後見の登記(登記されている本人や後見人などが亡くなったときの登記)の案内の中で、死亡診断書や戸籍の死亡日時が「頃」や「推定」など日をまたぐ可能性のある記載になっている場合には、戸籍の記載に基づいて登記するため、戸籍(除籍)の謄抄本等の原本の添付が必要になる、と説明しています(東京法務局)。

こうした記載が相続人の範囲に関わってくるのは、ほかの家族の死亡日時と近く、戸籍の記載だけでは亡くなった順番が決まらない場合です。

同じ日に亡くなったときは「時分」を見る

たとえば、父Aと、その子Bが同じ日に亡くなったとします。Aの妻はすでに亡くなっており、Aの子はBだけ、Bには妻Dと子Cがいるものとします。

  • Bが後に亡くなった場合……Aが亡くなった時点ではBが生きているので、Aの相続人はBです。その後Bが亡くなり、Bが受け継いだ分はBの相続人であるDとCに引き継がれます(相続が重なる「数次相続」)。Aの財産は、Bを経由してDとCに渡ることになります
  • Bが先に亡くなった場合……Aが亡くなった時点でBはいないので、Bの子CがBに代わってAの相続人になります(代襲相続)。Bの妻Dは、Aの相続人にはなりません

同じ日の出来事でも、【死亡時分】の前後で、Dが父Aの財産を受け継ぐかどうかが分かれるわけです。

順番が分からないときは「同時に死亡した」と推定される

事故や災害などで、どちらが先に亡くなったのか分からないこともあります。民法32条の2は「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する」と定めています。条文は「数人の者が死亡した場合」とするだけで、同じ事故で亡くなった場合に限ってはいません。

同時に死亡したと推定される人どうしの間では、相続は起こらないと一般に解されています。相続人は、被相続人が亡くなった時点で生存している必要があるところ、同時に亡くなった人は、相手が亡くなった時点で生存していたとはいえないためです。

一方で、代襲相続は起こりえます。民法887条2項は、被相続人の子が「相続の開始以前に死亡したとき」に、その子(被相続人の孫)が代わって相続人になると定めており、「以前」という言葉は同時の場合も含むからです。この「以前」は、同時死亡の推定の規定(民法32条の2)を設けた1962年(昭和37年)の民法改正で、それまでの「相続の開始前」から改められたもので、その経緯は「以前・以後」と「前・後」の違いで紹介しています。兄弟姉妹が相続人になる場面でも、この規定が準用されます(民法889条2項)。先ほどの例でAとBが同時に死亡したと推定されると、BはAの相続人にならず、CがBを代襲して相続人になります。結果は「Bが先に亡くなった場合」と同じで、DはAの相続人になりません。代襲相続のしくみは代襲相続の解説で詳しく紹介しています。

ただし、これはあくまで「推定」です。「推定する」という言葉は、反対の証拠があれば覆る扱いを意味します(「みなす」と「推定する」の違い)。どのような事情で覆るかは個別の事情によるため、この記事では立ち入りません。また、戸籍の記載そのものに誤りがある場合には、家庭裁判所の許可を得て戸籍の訂正を申請する手続きが設けられています(戸籍法113条)。

なお、この記事は執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。

まとめ

戸籍の死亡の記載は、【死亡日】【死亡時分】【死亡地】【届出日】【届出人】の順に並び、相続の開始の時点を示すのは【死亡日】【死亡時分】です。死亡日時に「推定」「頃」の記載がある場合や、家族が近い時期に亡くなっている場合は、亡くなった順番によって相続人の範囲が変わることがあり、順番が分からないときは同時に死亡したものと推定されます(民法32条の2)。戸籍の死亡の記載の読み取りや、相続人の確定に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい