この記事の要点

  • 水難・火災その他の事変で亡くなった人がいる場合、取り調べをした官庁・公署が市町村長に死亡の報告をし、その報告に基づいて戸籍に死亡が記載される(戸籍法89条・15条)。一般に「認定死亡」と呼ばれる
  • 失踪宣告は、家庭裁判所が利害関係人の請求で行うもので、法律上「死亡したものとみなす」(民法30条・31条)。認定死亡は、官公署の報告に基づく戸籍の記載であり、しくみも効果も異なる
  • 相続人確定では、どちらも戸籍に記載された死亡の日(失踪宣告では死亡とみなされる時)が基準になる。特に失踪宣告は、宣告の日ではなく期間満了時・危難が去った時に死亡とみなされる点に注意する

報告によって戸籍に死亡が記載されるしくみ

結論から言うと、ご遺体が見つからない場合でも、戸籍に死亡が記載されることがあります。その根拠となるのが戸籍法89条です。

戸籍法89条本文は「水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない」と定めています(外国や法務省令で定める地域で亡くなった場合は、本籍地の市町村長に報告します=同条ただし書)。この報告には、死亡の年月日時分や場所など、死亡届と同じ事項を記載することとされています(同法91条・86条2項)。

通常の死亡は、親族などが死亡届に診断書や検案書(死亡を確認した医師の書類)を添えて届け出ます(戸籍法86条。くわしくは死亡届と死亡診断書のきほんをご覧ください)。これに対し89条の場面では、事故などを調べた官公署が、届出ではなく「報告」という形で市町村長に知らせます。戸籍法15条は、戸籍の記載が「届出、報告、申請……によつてこれをする」と定めており、報告も戸籍を記載するもとになります。この条文は「認定死亡」という言葉を使っていませんが、一般に、ご遺体が確認できなくても状況から死亡が確実とみられる場合に、この報告によって死亡が記載されることを「認定死亡」と呼んでいます。

この記載がどこまで確かなものとして扱われるかについて、最高裁判所は、戸籍法89条の報告に基づく戦死の記載が問題となった事案で、その記載が同条の報告に基づいて登載されたものと認められるときは「反証がない限り、戸籍簿に記載されている日に死亡したものと認むべきである」と判断しています(最高裁昭和28年4月23日第一小法廷判決・民集7巻4号396頁)。「反証がない限り」とあるとおり、生存していた・別の日に亡くなったという証拠があれば、この扱いは覆りうることになります。

失踪宣告との違い

似た場面で使われる制度に「失踪宣告」があります(行方不明の相続人がいる場合の全体像は相続人の一人が行方不明のときで解説しています)。

  • だれが行うか……認定死亡は、事変を取り調べた官公署の報告です。失踪宣告は、利害関係人の請求を受けて家庭裁判所が行います(民法30条)
  • どんな場合か……失踪宣告には、生死が7年間わからない場合(民法30条1項)と、戦地に臨んだ・沈没した船舶の中にいた・その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した人の生死が、危難が去った後1年間わからない場合(同条2項)の2種類があります
  • 効果……失踪宣告を受けた人は「死亡したものとみなす」とされます(民法31条)。「みなす」は、反対の事実を示しても覆らない扱いで、覆すには家庭裁判所による失踪宣告の取消しが必要です(民法32条1項)。これに対し認定死亡は、上記の判例のとおり、反証があれば覆りうる扱いです

相続人確定での扱い

相続人を確定する作業では、どちらの場合も「いつ亡くなったか」が重要になります。亡くなった時点で相続が始まり、その時点で生きている人が相続人になるからです。

認定死亡では、戸籍に記載された死亡の日時が基準になります。失踪宣告では、7年間の生死不明による場合はその期間が満了した時、危難による場合はその危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法31条)。宣告がされた日でも、戸籍に届け出た日でもない点に注意が必要です。この時点がずれると、ほかの親族が亡くなった時点との前後関係が変わり、だれが相続人になるか(代襲相続や、相続が重なる数次相続になるか)が変わることがあります。

戸籍を読むときは、死亡の記載がどの手続きに基づくもので、いつの死亡として記載されているのかを確認することが基本です。

なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

まとめ

ご遺体が見つからない場合でも、水難・火災などの事変を取り調べた官公署の報告によって、戸籍に死亡が記載されることがあります(認定死亡・戸籍法89条)。家庭裁判所が「死亡したものとみなす」失踪宣告とは、手続きも効果も異なり、相続人確定では、それぞれ死亡の時点がどこになるかを確認することが大切です。戸籍の記載の読み取りや相続人の確定に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい