この記事の要点
- 亡くなった方の自宅に無償で住んでいた配偶者は、一定の期間、無償で住み続けられます(配偶者短期居住権・民法1037条1項)
- 遺産分割で自宅の行き先を決める場合は「分割で行き先が決まった日」と「相続開始から6か月を経過する日」のいずれか遅い日まで。それ以外の場合は、自宅を取得した人から終了の申入れがあった日から6か月を経過する日まで
- 6か月は、初日(亡くなった日や申入れの日)を数に入れず、6か月後の初日と同じ日付の日が終わるまで、と数えるのが原則です(民法140条・143条2項)
結論から言うと、「いつまで住めるか」は遺産分割(遺産の分け方の話し合いなど)で自宅の行き先を決める必要があるかどうかで変わります。なお、本記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。
そもそも誰が対象か
亡くなった方(被相続人)の持ち物だった建物に、亡くなった時点で無償で住んでいた配偶者が対象です(民法1037条1項)。この権利を「配偶者短期居住権」といい、自宅を相続や遺贈(遺言で財産を譲ること)で取得した人に対して、建物を無償で使える権利です。遺言や話し合いで取得する長期の配偶者居住権とは別の制度です。
ただし、配偶者が、被相続人が亡くなった時点でその建物の配偶者居住権を取得した場合や、相続欠格(民法891条)・廃除によって相続権を失った場合は、この権利はありません(同項ただし書)。
いつまで住めるか──2つの場合
① 遺産分割で自宅の行き先を決める場合(1号) 配偶者を含む相続人どうしで自宅を分ける必要があるときは、「遺産分割で自宅の行き先が決まった日」と「相続開始から6か月を経過する日」のいずれか遅い日までです。話し合いが早くまとまっても最低6か月は住め、長引けば決まる日まで続きます(途中で終わる場合については後で説明します)。
② それ以外の場合(2号) たとえば遺言で自宅の行き先が決まっていて、遺産分割で分ける必要がない場合などです。このときは、自宅を取得した人がいつでも終了の申入れをすることができ(同条3項)、申入れの日から6か月を経過する日までとなります。
どちらの場合も、自宅を取得した人は、建物を第三者に譲るなどして配偶者の使用を妨げてはならないとされています(同条2項)。
「6か月」の数え方
民法の期間の計算のルールでは、初日(亡くなった日や申入れの日)は数に入れません(民法140条。午前0時ちょうどに始まる場合を除く)。翌日から数えて、6か月後の月の「起算日に応当する日の前日」に満了します(民法143条2項)。
- 3月10日に亡くなった場合:3月11日から数え、9月11日の前日である9月10日が終わるまで
- 8月30日に亡くなった場合:8月31日から数えますが、6か月後の2月に31日はありません。応当する日がないときはその月の末日(2月28日、うるう年は29日)に満了します(同項ただし書)
期間の途中で終わることもある
次のような場合には、6か月を待たずに終わることがあります。
- 配偶者が配偶者居住権を取得したとき(民法1039条)
- 配偶者が亡くなったとき(民法1041条による597条3項の準用)
- 配偶者が決められた使い方(従前の用法・善良な管理者の注意)を守らなかったり、承諾なく第三者に使わせたりしたときに、自宅を取得した人が消滅の意思表示をしたとき(民法1038条)
権利がなくなると、配偶者居住権を取得して終わった場合を除き、建物を返すのが原則です(民法1040条1項本文)。ただし、配偶者が建物の共有持分を持っている場合は、短期居住権がなくなったことだけを理由に返還を求めることはできません(同項ただし書)。
まとめ
配偶者短期居住権の期限は、遺産分割で自宅を分けるなら「分割で決まる日」と「相続開始から6か月」の遅いほう、それ以外なら「申入れから6か月」です。6か月は初日を数えず、応当日の前日に満了します。亡くなった日と、申入れがあった場合はその日を書き留めておくと、期限を確認しやすくなります。
遺産分割協議書の作成や自宅の相続登記については、お近くの司法書士にご相談ください。住み続けることや明渡しをめぐって争いになった場合は、弁護士に相談してください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第140条・第141条・第143条・第597条・第1037条〜第1041条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」(配偶者短期居住権に関するQ&A): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00028.html