この記事の要点
- 戸籍の「再製」には、滅失したとき・滅失のおそれがあるときの再製(戸籍法11条)と、本人の申出による再製(同法11条の2)の2種類がある
- 申出による再製では、訂正された事項の記載のない戸籍が作られるため、再製後の戸籍を見ても、そこに何が記載され、どう訂正されたのかは読み取れない
- 相続人を確定するときは、戸籍事項欄の再製の記載(戸籍法施行規則34条6号)を確認し、その戸籍だけで完結しない前提で出生まで遡る
「再製」は戸籍を作り直す手続き──2つの種類がある
戸籍の「再製」とは、すでにある戸籍を作り直す手続きのことです。戸籍法は、次の2つの場面を定めています。
ひとつは、滅失したとき・滅失のおそれがあるときの再製です。戸籍法11条は「戸籍簿の全部又は一部が、滅失したとき、又は滅失のおそれがあるときは、法務大臣は、その再製又は補完について必要な処分を指示する」と定めています。滅失した場合は、その旨を告示しなければならないとされています。手続きの流れは戸籍法施行規則9条にあり、市町村長が管轄の法務局等に報告し、法務局等が必要な調査をしたうえで再製または補完の方法を示して法務大臣に具申する、という順序です。
もうひとつは、本人の申出による再製です。戸籍法11条の2第1項は、虚偽の届出等・錯誤による届出等、または市町村長の過誤によって記載がされ、その記載について戸籍訂正の規定(同法24条2項、113条、114条、116条)による訂正がされた戸籍について、その戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者を含みます)から「当該訂正に係る事項の記載のない戸籍の再製の申出」があったときは、法務大臣がその再製について必要な処分を指示する、と定めています。ただし、再製によって記載に錯誤または遺漏がある戸籍となるときは、この限りでないという例外(ただし書)が置かれています。同条2項は、市町村長が記載をするにあたって文字の訂正・追加・削除をした戸籍についても、同様の申出ができるとしています。
この申出は、その戸籍に記載されている本人(その戸籍から除かれた人を含みます)が市区町村に対して行うものです。申出があったときは、市町村長が法務局等に報告し、法務局等が法務大臣に具申します(戸籍法施行規則10条)。なお、これらの規定は、全員が除かれた戸籍(除籍)についても準用されます(戸籍法12条2項)。
改製・転籍との違いは「きっかけ」
戸籍が新しく作り直される場面には、ほかに「改製」と「転籍」があります。再製と混同しやすいので、きっかけで整理すると分かりやすくなります。
- 再製……戸籍の滅失・滅失のおそれ、または本人の申出(戸籍法11条・11条の2)
- 改製……法令による戸籍の様式の変更(改製原戸籍とは?で解説しています)
- 転籍……本籍を別の場所に移す届出(転籍があると戸籍の記載は引き継がれないで解説しています)
いずれも、作り直された後の戸籍の戸籍事項欄にその旨が記載されます。戸籍法施行規則34条は、戸籍事項欄に記載しなければならない事項として、新戸籍の編製に関する事項(1号)、転籍に関する事項(3号)、戸籍の再製又は改製に関する事項(6号)などを挙げています。手元の戸籍がどのようなきっかけで作られたものかは、まずこの欄で確認できます。
相続人確定では、戸籍事項欄の「再製」の記載を見る
相続人を確定する作業で再製が問題になるのは、再製後の戸籍だけでは分からないことがあるからです。
戸籍法11条の2による再製は、条文の文言どおり「当該訂正に係る事項の記載のない戸籍」を作る手続きです。したがって、再製後の戸籍には、訂正の対象となった記載も、訂正がされた経過も現れません。ここで注意したいのは、条文が申出の対象としているのが「当該訂正に係る事項」に限られている点です。つまり、虚偽の届出・錯誤による届出・市町村長の過誤による記載と、その訂正の跡が載らない戸籍を作る手続きであって、有効に成立した婚姻や出生の記載そのものを消すための手続きではありません。
一方、戸籍法11条による再製は、戸籍が滅失した、あるいは滅失のおそれがあるという場面で行われるものです。条文は、その再製または補完について法務大臣が「必要な処分を指示する」と定めるだけで、再製後の戸籍にどこまで記載されるのかは、条文自体には書かれていません。どこまで再製し、どこを補完するかは、この指示による処分にゆだねられています。したがって、再製後の戸籍の記載が滅失前の戸籍と必ず同じになる、ということまでは、少なくとも条文からは読み取れません。相続人を確定する場面では、同じであることを当然の前提にしない、という構えで見ておくのが安全です。
さらに、再製前の戸籍(再製原戸籍)がいつまで残るかも、再製の種類によって違います。戸籍法施行規則10条の2は、保存期間を次のように定めています。
- 戸籍法11条による再製の原戸籍……当該年度の翌年から1年
- 戸籍法11条の2第1項による再製の原戸籍……当該年度の翌年から150年
- 戸籍法11条の2第2項による再製の原戸籍……当該年度の翌年から1年
戸籍法11条による再製と、同法11条の2第2項による再製では、再製前の戸籍の保存期間が当該年度の翌年から1年と短く、時間が経てば、そもそも残っていないことになります。これに対して同法11条の2第1項による再製の原戸籍は150年の保存期間とされていますが、規則10条の2が定めているのは保存期間だけで、その戸籍の写しの交付を受けられるかどうかまでを定めた規定ではありません。いずれにしても、再製されたという事実が分かっても、その前の戸籍の内容を後から必ず確認できるとは限らない、ということになります。
そのため、相続手続きで戸籍を集めるときは、まず戸籍事項欄を見て、再製の記載があるかどうかを確かめます。記載があれば、その戸籍だけでは分からない事項があるという前提に立つことになります。なお、出生時の戸籍まで切れ目なくたどること自体は、相続人を確定するうえでの基本ですので、再製の記載がないからといって、遡る範囲が狭くてよいということにはなりません。
執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
戸籍の再製には、滅失したとき・滅失のおそれがあるときの再製(戸籍法11条)と、本人の申出による再製(同法11条の2)の2種類があり、いずれも戸籍を作り直す手続きです。申出による再製では、訂正に係る事項の記載は引き継がれません。また、滅失による再製では、再製後の記載が滅失前と同じになるとは条文上定められていません。手元の戸籍に再製の記載があり、どこまで遡れば足りるのか判断がつかない場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 戸籍法 第11条・第11条の2・第12条・第24条・第113条・第114条・第116条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 戸籍法施行規則 第9条・第10条・第10条の2・第34条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000010094