この記事の要点

  • 家庭裁判所の審判は、審判書を受け取った日にすぐ確定するわけではありません。即時抗告ができる審判は、確定しなければ効力を生じないとされています(家事事件手続法74条2項ただし書)
  • 即時抗告は「2週間の不変期間」内にしなければならず、その期間は、即時抗告をする人が審判の告知を受ける者であるときは、その人が告知を受けた日から進行します(同法86条1項・2項)。告知を受けた日が相続人ごとに違えば、期間が終わる日も人ごとにずれます
  • 遺産分割の審判で不動産を取得した相続人が単独で相続登記を申請するときは、審判書に家庭裁判所の確定証明書を添えて使います

なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

審判は「確定」して初めて効力が生じる

結論から書くと、「審判書が届いた日=効力が生じた日」ではありません。

家事事件手続法74条2項は、審判は告知することによって効力を生ずるとしたうえで、ただし書で「即時抗告をすることができる審判は、確定しなければその効力を生じない」と定めています。さらに同条4項は「審判は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする」と定め、同条5項は、期間内に即時抗告が提起されると確定が遮断されるとしています。

即時抗告ができるのは、法律に「特別の定めがある場合に限り」です(同法85条1項)。遺産分割については、同法198条1項1号が「遺産の分割の審判及びその申立てを却下する審判」に対して相続人が即時抗告をすることができると定めています。つまり遺産分割の審判は、確定して初めて効力が生じるタイプにあたります。

なお、即時抗告をすべきかどうか、どのような理由が通るのかといった見通しの判断は、弁護士の取り扱う領域です。抗告を検討する段階では弁護士にご相談ください。

2週間をどう数えるか──起算日・初日不算入・末日が休みの日

即時抗告は「二週間の不変期間内」にしなければなりません(家事事件手続法86条1項)。不変期間とは、裁判所が伸ばしたり縮めたりすることのできない期間のことです(民事訴訟法96条1項ただし書。家事事件手続法34条5項で準用)。相続放棄の3か月(熟慮期間)は家庭裁判所に申し立てて伸ばせる場合がありますが(相続放棄の「3か月」に間に合わないときは?──家庭裁判所への期間伸長の申立て)、即時抗告の2週間はそれとは性質が異なる期間として定められています。

数え方は次のとおりです。

  • 起算日:即時抗告の期間は、即時抗告をする者が審判の告知を受ける者であるときは、その者が審判の告知を受けた日から進行します(同法86条2項。同項は、即時抗告をする人が審判の告知を受ける者でない場合について、申立人が審判の告知を受けた日──その日が2つ以上あるときは、そのうち最も遅い日──から進行すると定めています)
  • 初日は数えない:家事事件の手続の期間には民事訴訟法95条が準用され(家事事件手続法34条5項)、同条1項が期間の計算は民法の規定に従うとしています。日・週・月・年で定めた期間の初日は算入しないのが原則ですので(民法140条本文)、告知を受けた日そのものは数えず、翌日から数え始めることになります
  • 末日が休みの日のとき:民事訴訟法95条3項は、期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日、12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間はその翌日に満了すると定めています

ここで注意したいのが、告知を受けた日は相続人ごとに違いうるということです。郵便の届く日がずれれば、2週間の満了日も人ごとにずれます。そして審判は即時抗告の期間が満了する前には確定しない(同法74条4項)のですから、自分のところに審判書が届いた日だけを見ていても、いつ確定するかは分かりません。

期限管理としては、「審判書を受け取った日」をその日のうちに記録し、自分の分の満了日を出したうえで、確定の時期は家庭裁判所に確認する、という二段構えが安全です。

確定したことをどう示すか──確定証明書

審判が確定すると、審判をした家庭裁判所に申請して確定証明書を発行してもらうことができます。審判書だけでは「確定したかどうか」が書面から分からないため、確定した事実を証明するための書面です。当事者は、家庭裁判所の許可を得ることなく、裁判所書記官に対して家事審判事件に関する事項の証明書の交付を請求できます(家事事件手続法47条1項・6項)。

遺産分割の審判で不動産を取得することになった相続人は、審判書に確定証明書を添えて、単独で相続登記を申請することができます(相続登記で兄弟の一人だけ協力しない場合の対処法──段階的な解決の進め方)。相続による権利の移転の登記は登記権利者が単独で申請できるとされており(不動産登記法63条2項)、その添付情報は、相続を証する市町村長・登記官その他の公務員が職務上作成した情報と、その他の登記原因を証する情報です(不動産登記令7条1項5号ロ・別表22の項)。審判書と確定証明書は、このうち「その他の登記原因を証する情報」にあたるものとして提出します。別表22の項は、公務員が職務上作成した情報と「その他の登記原因を証する情報」とを「及び」で結んで両方を挙げていますので、相続があったことを証する戸籍等も、これとは別に必要になります。

段取りは次の順番になります。

  1. 審判書が届く
  2. 即時抗告の期間が満了する(誰も即時抗告をしなければ、審判は確定します。即時抗告ができる人が複数いるときは告知の日が人ごとにずれますので、確定の時期は家庭裁判所に確認してください)
  3. 家庭裁判所に確定証明書を申請し、交付を受ける
  4. 審判書・確定証明書に、相続があったことを証する戸籍等をそろえて相続登記を申請する

相続登記の申請義務には期限がありますので(原則として3年以内。不動産登記法76条の2。起算日の考え方は相続登記の「3年」はいつから数える?──起算日がずれるケースを整理で解説しています)、審判の確定を待つ期間も含めて全体の日程を組んでおくことをおすすめします。

まとめ

家庭裁判所の審判は、審判書が届いた日ではなく、即時抗告の期間が満了して初めて確定します(期間内に即時抗告がされれば、確定は遮断されます)。即時抗告の期間は2週間の不変期間で、告知を受けた日から進行し、初日は数えません。相続人が複数いれば告知の日はずれますので、確定の時期は家庭裁判所に確認するのが確実です。そして確定したことは、確定証明書によって登記の場面で示すことになります。

審判が確定する時期の確かめ方や、審判書と確定証明書をそろえたあとの相続登記の進め方でお困りのときは、お近くの司法書士にご相談ください。即時抗告をするかどうか、どのような理由で争うかという判断そのものについては、弁護士にご相談ください。


参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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