実家に同居してきた子の相続──住み続けたい相続人と他の相続人の調整

この記事の要点 親と実家に同居してきた子には、配偶者居住権にあたる法定の居住権制度はありません。配偶者居住権は、その名のとおり配偶者のための制度です ただし裁判例には、被相続人の許諾を得て同居していた相続人について、遺産分割が終わるまでの間は無償で使い続けられる関係が推認されると判断したものがあります 住み続けたい場合の調整は、遺産分割の話し合いの中で行うのが基本です(現物分割・代償分割・換価分割・共有) 代償金をどう用意するか、長年の同居や介護を寄与分(民法904条の2)としてどう位置づけるかが論点になりやすく、相続開始から10年の期間制限にも注意が必要です 相続人どうしで意見が対立している場合は弁護士へ。名義変更(相続登記)の手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください 結論から──「同居していた」だけで住み続けられる権利は生じません まず結論です。実家に何十年同居していても、その事実だけで「その家に住み続ける権利」が法律上あたえられるわけではありません。実家(建物と土地)は相続財産に含まれ、他の相続人と分け合う対象になります。 ...

2026年9月3日 · ひぐらしさとし

親の土地に家を建てるとき──「使用貸借」のままだと相続で何が起きるか

この記事の要点 親の土地を無償で借りて家を建てる関係は「使用貸借(しようたいしゃく)」といい、貸主(親)が亡くなっても、それだけで契約が当然に終わるわけではないとされています ただし「終わらない」は「ずっと続く」ではなく、使い道に従って使用・収益をするのに足りる期間が経過すれば、貸主の側から契約を解除できるとされています(民法598条1項) また、貸主が亡くなれば土地そのものは相続財産となり、きょうだいなど他の相続人との遺産分割の対象になり得ます 自分の家が建っている土地を、自分以外の相続人が取得する事態も制度上はあり得るため、早い段階で家族間の話し合いを始めておくことが大切です 「親の土地に家を建てさせてもらっている。地代も家賃も払っていない」——こうした関係は、法律上は「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼ばれる契約にあたります。契約書を交わしていなくても、口約束や暗黙の了解だけで成り立っている使用貸借は少なくありません。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし

死亡退職金と弔慰金のきほん──受取人と相続財産の関係(税額は税理士へ)

この記事の要点 死亡退職金は、会社に役員退職慰労金規程や慶弔規程があるかどうかで、受取人の定まり方が変わる 規程がなく、亡くなるたびに株主総会の決議だけで支給を決めている場合は、相続財産にあたるかどうかが問題になり得る 死亡退職金と弔慰金は性格の異なるお金であり、扱いも分けて考える必要がある 遺産分割協議書に載せるかどうかは、受取人の定まり方によって変わる。税額の計算・申告は税理士へ 「役員が亡くなり、死亡退職金を支給することになった。この退職金は、遺産分割の話し合いに入れるべきものなのか、それとも別扱いでよいのか」──会社側でも遺族側でも、判断に迷いやすい場面です。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

成年後見人と本人の利益がぶつかるとき──特別代理人の選任と後見監督人の役割

この記事の要点 成年後見人と本人の利益がぶつかる行為(利益相反行為)については、後見人は本人を代理できず、本人のために特別代理人を選任するよう家庭裁判所に請求します(民法860条・826条) ただし後見監督人がいるときは、監督人が本人を代表するため、特別代理人の選任は必要ありません(民法860条ただし書・851条4号) 保佐・補助にも同じ仕組みがあり、こちらは臨時保佐人・臨時補助人を選任します(民法876条の2第3項・876条の7第3項) 「母の成年後見人になった。その母の相続——父の遺産分割協議に、自分も相続人として参加する」。このような場面では、後見人であるご本人(子)が、母の代理人としての立場と、自分自身の相続人としての立場を同時に持つことになります。民法は、こうした場面で後見人が本人を代理することを認めず、別の代理人を立てる仕組みを用意しています。本記事は、執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

非上場株式を相続したら──取引相場のない株の名義書換と少数株主の現実

この記事の要点 非上場株式を相続しても会社の承認は不要だが、会社が定款で定めていれば「売渡請求」を受けることがある 株主としての権利を会社に主張するには、株主名簿の名義書換(めいぎかきかえ)が必要 配当も売却先もないまま少数株主になるケースは珍しくなく、対応は早めの整理が肝心 「親が中小企業の株を少し持っていた。相続財産の一覧に出てきたが、上場株のように証券会社に問い合わせれば済む話ではないらしい」──非上場株式(取引相場のない株式)の相続で、こうした戸惑いを抱える方は少なくありません。 ...

2026年8月18日 · ひぐらしさとし

上場株式・投資信託の相続手続き──証券口座の移管と「準共有」の注意点

この記事の要点 亡くなった方の証券口座にある上場株式・投資信託は、遺産分割が確定するまで相続人全員の準共有という状態になります。 証券会社での相続手続きは、原則として相続人名義の証券口座に株式や投資信託そのものを移す移管が基本で、証券会社が代わりに売却して現金で分けてくれるわけではありません。 移管を受けるには、相続人自身が同じ証券会社(または別の証券会社)に口座を新たに開設する必要がある場合が多くなります。 単元未満株・端株は通常の市場では売買できず、発行会社や特別口座の管理機関への買取請求など、別ルートでの現金化になります。 遺産分割協議書の作成や、預貯金口座の解約とあわせて進めると効率的です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。実際の必要書類や手続き方法は証券会社ごとに異なるため、詳細は各証券会社にご確認ください。 ...

2026年8月17日 · ひぐらしさとし

実家を兄弟の共有名義にしてはいけない理由──共有にする前に知っておきたい3つのリスク

この記事の要点 実家を「とりあえず」兄弟の共有名義にすると、①次の相続で共有者がねずみ算式に増える ②売却に共有者全員の同意が必要になる ③管理費・固定資産税の負担分担で揉めやすい、という3つのリスクを抱える 共有名義は一見「平等」に見えるが、名義を分けた時点で財産そのものは分かれておらず、権利関係が複雑なまま先送りされているだけの状態になる 共有名義にする前に、現物分割・代償分割・換価分割など他の分け方も検討したい。お近くの司法書士にご相談ください 親が亡くなり実家を相続するとき、「きょうだい3人で3分の1ずつ、共有名義にしておこう」という選択をする人は少なくありません。誰か一人だけが名義を持つより公平に見えますし、話し合いも「とりあえず全員の名前を登記簿に載せておく」だけで済むため、揉めずに済んだ気になりやすいからです。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

相続した実家が借地権だった──慌てないための手続きと地主への対応

この記事の要点 借地権(土地を借りて建物を建てる権利)は相続財産として当然に引き継がれ、地主の承諾は不要。承諾料(名義書換料)を支払う法律上の義務もない 土地の名義変更は不要だが、建物の相続登記は必要。相続で取得を知った日から3年以内の申請が義務(怠ると10万円以下の過料の対象) 地代の支払いはそのまま相続人が引き継ぐ。滞納すると契約解除のリスクがあるので、支払方法の確認を最優先に 借地契約書を探して、契約の種類(普通借地権か定期借地権か)と特約を確認する 売却や建て替えなど「次の一手」には地主の承諾が必要になる場面がある。もめたときの交渉・紛争対応は弁護士の分野 親が亡くなり、実家の登記簿(登記事項証明書)を取ってみたら、土地の所有者欄に知らない人の名前が載っていた——。実は、実家は「借地」の上に建っていた、というケースは珍しくありません。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書──1通に全員が押すか、1人1通ずつ出すか

この記事の要点 中身の合意は同じ。違いは「1通の紙に全員が署名押印する(協議書)」か、「相続人が1人1通ずつ同じ内容を証明する(協議証明書)」かという書面の作り方だけ 相続登記では、相続人全員分がそろえば、どちらの方式でも使えるのが実務の扱い 相続人が多い・遠方に散っている・郵送で持ち回ると何か月もかかる、というときは協議証明書が向いている ただし全員分そろわないと使えない点は両方式で同じ。1人でも欠ければ、その分け方どおりの登記も預貯金の解約もできない 相続の手続きを進めていると、「遺産分割協議書」という言葉と並んで、「遺産分割協議証明書」という書類が出てくることがあります。名前がよく似ていて、司法書士から「今回は協議証明書の形で作りましょう」と言われても、何がどう違うのか分かりにくいものです。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし