この記事の要点
- 法務局に預けた遺言書の原本は遺言者の死亡の日から50年、遺言書の画像などを記録したデータは150年が経過した後に、廃棄・消去できると定められている
- その間、相続人などは遺言書情報証明書の交付や閲覧を請求でき、保管されているかどうかは遺言書保管事実証明書で確かめられる
- 保管期間が長いからといって、相続登記の申請義務(3年以内)などの期限が延びるわけではない
法務局(遺言書保管所)に預けた自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったあとも長く残ります。法律と政令は、原本については遺言者の死亡の日から50年、画像などを記録したデータについては150年が経過した後は、廃棄・消去できると定めています。
以下は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。預けられる遺言書の種類や費用、検認が不要になることなど制度の基本は自筆の遺言書を法務局に預けられる——遺言書保管制度とはをご覧ください。
原本は50年、データは150年
法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「遺言書保管法」)6条5項は、遺言者の死亡の日から「相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間」が経過した後は、遺言書保管官が遺言書を廃棄することができる、と定めています。これを受けて、法務局における遺言書の保管等に関する政令5条2項が、その期間を50年としています。政令5条の見出しは「遺言書の保管期間等」です。
法務局は原本とは別に、遺言書の画像情報や、保管を開始した年月日、保管されている遺言書保管所の名称と保管番号などを「遺言書保管ファイル」というデータに記録して管理しています(遺言書保管法7条2項)。このデータにも同じ仕組みが準用され(同条3項)、期間は150年とされています(政令5条2項)。データのほうは「廃棄」ではなく「消去」という言葉に読み替えられています。
なお、2026年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により、電子データなどで作成して法務局に保管する新しい方式の遺言(保管証書遺言)が設けられ、あわせて遺言書保管法も改められます。改正後の法律にも、遺言者の死亡の日から政令で定める期間が経過した後に廃棄・消去できるという仕組みは置かれていますが(改正後の9条2項・11条3項)、条番号は変わります。この部分の施行日は「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、執筆時点では決まっていません。この記事の条番号は、執筆時点の現行法によるものです。
生死がわからないときの数え方
遺言者の生死が明らかでない場合は、死亡の日の代わりに、遺言者の出生の日から起算して120年を経過した日を起点にします(遺言書保管法6条5項、政令5条1項)。そこから原本は50年、データは150年という数え方です。
期間中に相続人などができること
遺言者が亡くなったあと、相続人や、遺言書に記載された受遺者(遺言で財産を受け取る人)・遺言執行者など(あわせて「関係相続人等」)は、次の請求ができます(遺言書保管法9条・10条)。
- 遺言書情報証明書の交付:遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面です。遺言者が死亡している場合に限られ、遺言書を保管している保管所以外の保管所にも請求できます
- 遺言書の閲覧:遺言書を保管している保管所に請求します
- 遺言書保管事実証明書の交付:誰でも請求できますが、証明されるのは、請求した人が関係相続人等にあたる遺言書が保管されているかどうか(保管されている場合は、その遺言書の作成の年月日と、保管している保管所の名称・保管番号も)、という点です
遺言書情報証明書の交付や閲覧があると、ほかの相続人などに保管の事実が通知される仕組みもあります(9条5項)。通知については遺言書保管制度の「通知」を使いこなすで整理しています。
保管期間とほかの期限は別に進む
50年・150年は、法務局が遺言書を廃棄・消去できるようになるまでの期間の定めであって、相続人が手続きをするための猶予ではありません。たとえば相続登記には申請義務があり、相続で不動産を取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。相続人に対する遺贈で取得した場合も同じです。
期限の管理では、「遺言書が預けられていないか」の確認を相続手続きの早い段階に置いておくと、その後の登記などの段取りが組みやすくなります。
まとめ
法務局に預けた遺言書は、原本が死亡の日から50年、データが150年を経過した後に廃棄・消去できると定められており、生死不明の場合は出生から120年を経過した日が起点になります。その間、相続人などは証明書の交付や閲覧を請求できます。ただし保管期間が長くても、相続登記の3年などの期限は別に進みます。手続きの順番や期限の数え方で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律 第4条・第6条・第7条・第9条・第10条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000073
- 同法 令和8年法律第45号による改正後の条文(第9条・第11条ほか・未施行)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000073_20290623_508AC0000000045
- 法務局における遺言書の保管等に関する政令 第5条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/501CO0000000178
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(法律本文PDF・第5条および附則第1条): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省 自筆証書遺言書保管制度「01 遺言書保管制度とは?」: https://www.moj.go.jp/MINJI/01.html
- 不動産登記法 第76条の2(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123