公益信託とは──2026年4月スタートの新制度で、財産を社会貢献に活かす

この記事の要点 公益信託とは、自分の財産を奨学金・助成・文化振興などの「公益目的」のために使ってもらう信託の仕組みです 2026年(令和8年)4月1日に新しい「公益信託に関する法律」が施行され、約100年ぶりに制度が全面的に生まれ変わりました 行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)の認可制になり、公益法人やNPO法人なども受託者(財産を託される側)になれることが明確になりました 信託財産は金銭だけでなく、不動産や美術品なども託せるようになりました 財団法人を作るほどの規模ではないけれど社会貢献に財産を役立てたい、という方の新しい選択肢です 公益信託とは、ひとことで言えば「自分の財産を、特定の誰かのためではなく、社会のために使ってもらう信託」です。たとえば「亡くなった後、遺産の一部を地元の学生の奨学金に役立ててほしい」「長年集めた美術品を文化振興のために活かしてほしい」──そんな希望を形にするための制度で、2026年(令和8年)4月1日から新しい法律のもとで運用が始まっています。 ...

2026年9月1日 · ひぐらしさとし

遺言書保管制度の「通知」を使いこなす──関係遺言書保管通知と指定者通知のちがい

この記事の要点 法務局に預けた遺言書についての通知は2種類。「関係遺言書保管通知」と「指定者通知(遺言者が指定した方への通知)」で、届くきっかけがまったく違う 関係遺言書保管通知は、相続人などの誰か1人が閲覧や証明書の取得をしたときに、ほかの関係者へ届く。特別な申込みは不要 指定者通知は、遺言者が生前にあらかじめ指定した人へ届く。執筆時点(2026年8月)で3名まで指定でき、遺言者が希望した場合にだけ実施される どちらの通知にも、遺言書の「中身」は書かれていない。届いたら遺言書保管所で閲覧か遺言書情報証明書の請求をする 誰も動かなければ関係遺言書保管通知は届かない。だからこそ、保管申請のときに指定者通知を申し込んでおく意味がある 法務局に遺言書を預けたあと、その遺言書の存在は家族にどうやって伝わるのでしょうか。答えは「2種類の通知」です。ひとつは相続人などの誰かが動いたときに届くもの、もうひとつは遺言者が生前に指名した人へ届くもの。この2つは、届くきっかけも、事前の手続の要否もまったく違います。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

財産目録の作り方──パソコン作成OKになったルールと記載例

この記事の要点 自筆証書遺言に添付する財産目録は、2019年1月13日以降、パソコン作成や通帳のコピー添付が可能になった ただし目録の各ページ(両面に記載があれば両面とも)に遺言者本人の署名と押印が必要 財産目録に書き間違いがあった場合の訂正方法にも、本文と同じ厳格なルールがある 不動産・預貯金・株式の記載例と、記載時に気をつけたいポイントを紹介 「遺言書は手書きじゃないといけないから、財産が多いと大変」——そう思っている方は少なくありません。しかし、遺言に添付する財産目録については、2019年(平成31年)1月13日から自書(手書き)が不要になりました。パソコンで一覧表を作ったり、不動産の登記事項証明書や預金通帳のコピーをそのまま添付したりできるようになっています。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

エンディングノートと遺言はどう違う?──法的効力の線引き

この記事の要点 エンディングノートには法的な効力がなく、遺言だけが民法で定められた方式に従うことで法的効力を持つ 遺言でなければ実現できないこと(相続分の指定・遺贈など)をエンディングノートに書いても、法律上の効果は生まれない 財産の分け方を法的に確定させたいなら遺言、情報や気持ちを書き残したいならエンディングノートが向いている どちらを使うか迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください 結論から言うと、エンディングノートには法的な効力がありません。法的な効力を持つのは、民法で定められた方式に従って作成された遺言だけです。どちらも「将来に備えて書いておくもの」という点では似ていますが、法律上の扱いはまったく別のものです。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

『全財産を妻に』の遺言と二次相続──次の相続で誰が相続人になるか

この記事の要点 「全財産を妻に」という遺言は有効ですが、その財産は妻が亡くなったときの相続(二次相続)で、今度は妻の相続人へ引き継がれます 夫婦に子がいない場合、二次相続の相続人は妻の親、または妻の兄弟姉妹・甥姪になり、もともと夫の側にあった不動産がその系統へ移っていくことがあります 相続人の顔ぶれが変われば、遺産分割協議の相手も変わります。名義を放置すると数次相続になり、協議の相手はさらに増えます 相続登記は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項) 二次相続まで見据えた選択肢には、予備的遺言、配偶者以外への配分、遺言の書き直しなどがあります。どれを選ぶかは家庭の事情によるため、お近くの司法書士にご相談ください 「財産は全部、妻に渡したい」。遺言のご相談で最もよく聞かれる希望のひとつです。 ...

2026年8月7日 · ひぐらしさとし

予備的遺言とは──「先に相手が亡くなったら」に備える条項

この記事の要点 予備的遺言(補充遺言)とは、「もし○○が私より先に亡くなっていたときは、△△に相続させる」というように、次の受け取り手をあらかじめ書いておく条項のこと 遺贈は、受け取る人が遺言者より先に亡くなると効力を生じない(民法994条1項)。その財産は原則として相続人に帰属する(民法995条) 「相続させる」と書いた場合も、その相続人が先に亡くなったときは、原則としてその子(代襲者)が代わりに受け取ることにはならない(最高裁平成23年2月22日第三小法廷判決) 予備的な条項がないと、その部分だけ遺言の効力がなくなり、結局その財産について遺産分割の話し合いが必要になる 予備的遺言は遺言書の作り直しではなく、最初から一文を足しておくだけで備えられる。作成を考えるときはお近くの司法書士にご相談ください 遺言で財産を渡すと決めた相手が、自分より先に亡くなることがあります。このとき、その部分の遺言は原則として効力を生じません。そして日本の民法には、「その人が先に亡くなっていたら、遺言者が次に望んだであろう人へ自動的に」という補充のルールは用意されていません。だからこそ、遺言のなかにあらかじめ「そのときは誰に渡すか」を書いておく必要があります。これが予備的遺言(補充遺言と呼ばれることもあります)です。 ...

2026年8月6日 · ひぐらしさとし

遺言の書き直し・撤回のルール──新しい遺言と古い遺言、どちらが有効?

この記事の要点 遺言はいつでも書き直せる。ただし撤回は法律で定められた遺言の方式に従って行う必要がある(民法1022条) 新しい遺言の内容が古い遺言と食い違う部分は、新しい遺言が優先し古い遺言のその部分は撤回されたとみなされる。食い違わない部分は両方とも有効(民法1023条) 遺言書を故意に破棄すれば撤回とみなされるが(民法1024条)、公正証書遺言や保管制度を使った自筆証書遺言は、遺言者が原本を直接破棄できない点に注意が必要 2026年6月に遺言制度を見直す改正法が公布されたが(令和8年法律第45号)、施行日はまだ未確定。撤回の基本ルール(1022条・1023条)に変更はなく、いま書き直すなら現行のルールがそのまま当てはまる 書き直し方や効力に迷ったら、お近くの司法書士へ相談を 一度書いた遺言でも、気が変わったり家族の状況が変わったりすれば、何度でも書き直すことができます。ただし「新しく遺言を書けば、前の遺言は自動的に全部なかったことになる」というのは正確ではありません。実際には、新しい遺言の内容と食い違う(抵触する)部分だけが撤回されたとみなされ、食い違わない部分はそのまま残ります。この記事では、遺言を書き直すときの基本ルール(民法1022条〜1024条)を、撤回の方式・新旧遺言の抵触・遺言書の破棄という3つの場面に分けて整理します。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

遺言書に書けること・書いても効力がないこと──付言事項の使い方

この記事の要点 遺言書の内容は、法律上の効力が認められる「法定遺言事項」と、効力のない「付言事項」に分かれる 遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)などの法律のルールは、付言事項でお願いしても変えられない 付言事項に何を書けるか迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください 遺言書には、法律上の効力が認められる内容と、認められない内容があります。結論から言うと、財産の配分方法などを定める部分(法定遺言事項)には法的な効力がありますが、「付言事項(ふげんじこう)」と呼ばれる、家族へのメッセージや理由を書く部分には法的な効力はありません。書いたからといって相続人を法的に拘束するものではなく、あくまで気持ちを伝えるための文章です。 ...

2026年8月3日 · ひぐらしさとし

孫に財産を渡す方法──贈与・遺贈・養子縁組の違いと注意点

この記事の要点 孫は、親(祖父母から見た子)が先に亡くなっている場合の代襲相続を除き、そもそも法定相続人ではない 孫に財産を渡す方法は主に「生前贈与」「遺言による遺贈」「養子縁組(相続人化)」の3つで、渡すタイミングや確実性、家族関係への影響がそれぞれ異なる とくに養子縁組は他の相続人の取り分にも影響する重い制度で、税務上も孫養子には固有の取り扱いがある 制度の違いはこの記事で押さえつつ、具体的な税額や「どれが得か」の判断は税理士に、手続きの進め方はお近くの司法書士にご相談ください 「かわいい孫に、生きているうちから何か残してやりたい」「子だけでなく孫にも財産を分けたい」。相続の相談では、こうした声をよく耳にします。ただ、孫は多くの場合、法律上の相続人ではありません。子が健在であれば、祖父母の相続が発生しても、孫は自動的には財産を受け取れないのです。 ...

2026年7月19日 · ひぐらしさとし

自分が亡くなった後の事務、誰に頼む?──死後事務委任契約とは

この記事の要点 死後事務委任契約は、葬儀・医療費精算・遺品整理など「自分が亡くなった後の事務」を、生前の契約で第三者に頼んでおく仕組み 遺産の分け方(遺産分割)を決めるものではなく、遺言とは役割が異なる おひとり様や、頼れる親族が近くにいない方の「亡くなった直後の空白期間」への備えとして活用されている 自分が亡くなった直後、葬儀の手配や病院・施設への支払い、遺品の整理などは誰がやってくれるのだろう――おひとり様や、頼れる親族が遠方にしかいない方から、そうした不安の声を聞くことがあります。これらの事務を生前のうちに第三者へ委任しておく仕組みが「死後事務委任契約」です。この記事では、死後事務委任契約とは何か、遺言や任意後見契約とはどう違うのかを整理します。 ...

2026年7月8日 · ひぐらしさとし