この記事の要点
- 会社の印鑑証明書は、法務局が発行する「印鑑カード」がないと取れません(窓口・郵送・証明書発行請求機ではカードを使い、オンライン請求で窓口受取を選んだ場合も受取時に提示します。オンライン請求で送付を選ぶ場合は、カードの提示に代えて印鑑カード番号を送信します)
- 印鑑カードを紛失したら、本店所在地を管轄する法務局へ「印鑑カードの廃止届」と「新しい印鑑カードの交付申請」を出します。カードそのものの再発行という手続きはありません
- 代表者印(会社の実印)を変える・なくしたときは「改印届」。代表者個人の実印と、市区町村が発行した作成後3か月以内の印鑑証明書が必要です
- 印鑑証明書の手数料は、書面請求で1通500円、オンライン請求なら送付450円・窓口受取420円です(令和7年4月1日改定)
- 窓口では、印鑑カードがあれば委任状なしで代理人でも印鑑証明書を請求できるしくみのため、紛失に気づいたら早めに廃止の届出をしておくのが安全です
会社の印鑑証明書を取るときに欠かせないのが、法務局(登記所)が発行する印鑑カードです。結論からいうと、印鑑カードを紛失したときは「廃止届」と「新しいカードの交付申請」をセットで、本店所在地を管轄する法務局に出すのが基本の流れです。代表者印そのものを変える・なくした場合は、これとは別に改印届が必要になります。
この記事では、印鑑カードの交付申請、紛失したときの廃止届と再交付、改印届、そして印鑑証明書の請求方法(窓口・郵送・オンライン・証明書発行請求機)を順に整理します。そもそも登記所への印鑑の届出(印鑑届)が今も必要かどうかは、会社の実印(代表者印)と印鑑届は今も必要?──オンライン申請時代の取り扱いを整理で扱っていますので、ここでは「印鑑を届け出ている会社」を前提に話を進めます。
印鑑カードとは──印鑑証明書を取るための「鍵」
印鑑カードは、登記所に印鑑を届け出た人(会社であれば通常は代表取締役)が請求すると交付される、磁気帯付きのカードです(商業登記規則9条の4第1項・9条の5第1項)。カードには印鑑カード番号が記録されています。
会社の印鑑証明書を請求するときは、印鑑カードを提示しなければならないとされています(商業登記規則22条2項)。逆にいえば、届け出た印鑑(代表者印)が手元にあっても、印鑑カードがなければ窓口などで印鑑証明書は取れません(オンライン請求で送付を選ぶ場合は、カードの提示は不要ですが、印鑑カード番号の送信が必要です。後述の「④ オンライン」を参照)。
法務局の「印鑑証明書交付申請書(会社法人用)」には、「代理人の場合でも委任状は必要ありません」「必ず印鑑カードを添えて申請してください」と書かれています。つまり窓口では、印鑑カードと、申請書に書く代表者の生年月日などがそろっていれば、代表者本人でなくても印鑑証明書を請求できるしくみです。印鑑カードの管理が大切だといわれるのは、このためです。
印鑑カードの交付申請──取り方と必要なもの
印鑑カードは、法務局に「印鑑カード交付申請書」を出して交付を受けます。様式は法務局のホームページ(「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」のページ)からダウンロードできます。
申請書に書く主な内容は次のとおりです。
- 会社の商号・本店、会社法人等番号
- 印鑑提出者(代表取締役など)の資格・氏名・生年月日
- 申請人(窓口に来る人)が本人か代理人か、その住所・氏名・連絡先
- 押印欄に、登記所に届け出た印鑑(代表者印)を押す
代理人(たとえば社員の方)に申請してもらう場合は、申請書の下にある委任状欄に必要事項を書き、ここにも登記所に届け出た印鑑を押します。この委任状は様式に組み込まれた定型のもので、記入例も法務局のページに掲載されています。
申請先は、届け出た印鑑を管理している法務局、つまり会社の本店所在地を管轄する法務局が基本です。同じ法務局・地方法務局の管内であれば、本店管轄以外の登記所(支局・出張所)でも受け付ける取扱いがあります(詳しくは深掘りの「本店管轄以外の登記所の窓口」を参照)。どの登記所で扱っているかは、出向く前に各法務局の「取扱事務一覧表」で確認するのが確実です。郵送で交付を受けたいときは、送付にかかる費用(郵便切手など)を納めることになっています(商業登記規則9条の4第4項・第5項)。印鑑カードの交付そのものについては、登記手数料令に手数料の定めが見当たらず、申請書の様式にも収入印紙を貼る欄がないため、手数料はかからない扱いと考えられます。
なお、会社の設立や代表取締役の就任にあわせて印鑑を届け出る場合は、届出と同時に印鑑カードの交付申請もしておくと、登記が終わってすぐに印鑑証明書を取れて二度手間になりません。
印鑑カードを紛失したとき──「廃止届」+「新しいカードの交付申請」
法務局の「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」では、印鑑や印鑑カードをなくしたときの対応が、なくしたものに応じて次のように整理されています。
| なくしたもの | 出す書類 |
|---|---|
| 印鑑カードだけ | 印鑑カードの廃止届 + 印鑑カードの交付申請(新しいカード) |
| 代表者印だけ | 新しい印鑑を用意できれば改印届。用意できなければ印鑑の廃止届(印鑑カードの交付を受けている場合は、印鑑カードの廃止届も同時に) |
| 代表者印と印鑑カードの両方 | 新しい印鑑を用意できれば改印届と廃止届を同時に。用意できなければ廃止届のみ |
いずれも、本店所在地を管轄している登記所に提出する必要があるとされています(同じ法務局・地方法務局の管内であれば、本店管轄以外の登記所で受け付ける取扱いもあります。深掘りの「本店管轄以外の登記所の窓口」を参照)。
印鑑カードだけをなくした場合
いちばん多いのがこのケースでしょう。手続きは次の2つをセットで行います。
- 「印鑑・印鑑カード廃止届書」で、なくした印鑑カードを廃止する(「印鑑カードの廃止届出」の欄にチェックし、カード廃止の理由で「亡失(なくなった)」を選ぶ)
- 「印鑑カード交付申請書」で、新しい印鑑カードの交付を受ける
廃止届書には、登記所に届け出た印鑑(代表者印)を押します(商業登記規則9条の5第3項)。カードが手元にあれば提示することで押印を省けますが(同項)、紛失した場合は提示できないので、代表者印を持参して押印することになります。法務局の「よくあるご質問」でも、印鑑カードだけをなくした場合は、登記所に提出した印鑑を押した「印鑑カード廃止届書」と「印鑑カード交付申請書」を、本店所在地を管轄している登記所に提出するとされています。
新しく交付されるのは新しいカードで、なくしたカードがそのまま再発行されるわけではありません。廃止届を出すと、なくしたほうのカードはそれ以降使えなくなります。
紛失に気づいたら早めに届け出たい理由
前述のとおり、窓口での印鑑証明書の請求は、印鑑カードを添えれば委任状なしで代理人でもできます。申請書には代表者の生年月日を書く欄があり、証明書発行請求機でもカードを差し込んで生年月日を入力するしくみです。このため、カードを拾った人や盗んだ人が代表者の生年月日を知っていれば、会社の印鑑証明書を取得されてしまうおそれがあります。
会社の印鑑証明書は、融資や不動産取引、重要な契約などで本人確認の決め手として使われる書類です。紛失・盗難に気づいたら、まずは廃止届を出してそのカードを使えない状態にしておくのが安全です。
代表者印も一緒になくした場合
印鑑カードと代表者印の両方をなくしたときは、新しい印鑑を用意して改印届を出し、あわせて印鑑カードの廃止届と新しいカードの交付申請を行います(次の章を参照)。
改印届──代表者印を変える・なくしたとき
代表者印を作り直すとき(摩耗・破損、商号変更にあわせた作り直し、紛失など)は、「印鑑(改印)届書」を出します。
改印届で押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 新しい印鑑の大きさ:辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるものでなければなりません(商業登記規則9条3項)
- 代表者個人の実印を押す:届出人の欄に、代表者が市区町村に登録している印鑑(個人の実印)を押します
- 個人の印鑑証明書を添付:市区町村長が作成した、作成後3か月以内の代表者個人の印鑑証明書を付けます(商業登記規則9条5項1号)。法務局の「印鑑(改印)届書」の注記では、登記の申請と同時に印鑑を届け出る場合に限り、登記申請書に添付した印鑑証明書を援用(流用)できるとされ、そのためのチェック欄が様式に設けられています
- 代理人に頼む場合:届書の委任状欄に必要事項を書き、代表者本人が市区町村に登録した実印を押します(代理人自身の押印は不要です)
ここでいう「印鑑証明書」は、法務局が出す会社の印鑑証明書ではなく、市区町村が出す代表者個人の印鑑証明書です。混同しやすいので注意してください。
代表者印をなくしただけで印鑑カードは手元にある場合、法務局の「よくあるご質問」では、必要な手続きとして改印届だけが挙げられており、印鑑カードの廃止届は求められていません。また、青森地方法務局の災害時向けの案内では、改印届を出せば、お手持ちの印鑑カードは引き続き使用できると明記されています。手元のカードをそのまま使えるかどうかは、念のため提出先の法務局で確認しておくと確実です。
代表取締役が交代して新しい代表者が印鑑を届け出る場合は、届出と同時に申し出れば、前任者の印鑑カードを引き継いで使うこともできます(商業登記規則9条の4第3項)。改印届書の「印鑑カードを引き継ぐ」欄にチェックし、カード番号と前任者の氏名を書きます。交代時の登記の必要書類は代表取締役の交代の登記──就任・退任のパターン別 必要書類で整理しています。
なお、印鑑の提出や廃止の届出は、オンラインで登記を申請するときにあわせて行うことはできますが、届出だけを単独でオンラインで行うことはできないとされています(法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について」)。改印だけを行う場合は、書面で法務局に提出することになります。
会社の印鑑証明書の取り方──4つの方法
印鑑証明書を請求できるのは、印鑑を登記所に届け出た人です(商業登記法12条1項)。ただし前述のとおり、窓口では印鑑カードを持参すれば代理人でも請求できます。
また、法務省の案内(「登記事項証明書及び印鑑証明書の請求先について」)では、登記事項証明書と印鑑証明書は、対象の会社がどこの登記所の管轄であっても、すべての登記所に請求できるとされています。つまり、本店の管轄以外の法務局でも、会社の印鑑証明書を請求・取得できます。最寄りの法務局を使えるので、遠方の本店管轄まで出向く必要はありません。
| 方法 | 必要なもの | 手数料(1通) |
|---|---|---|
| ① 窓口で申請書を出す | 印鑑証明書交付申請書(代表者の生年月日を記入)、印鑑カード、収入印紙 | 500円 |
| ② 郵送で請求する | 上記の申請書、印鑑カードそのもの、収入印紙、返信用封筒・切手 | 500円 |
| ③ 証明書発行請求機を使う | 印鑑カード(機械に差し込み、生年月日を入力)、収入印紙 | 500円 |
| ④ オンラインで請求する | 電子証明書(マイナンバーカード等)、手数料の電子納付 | 送付450円/窓口受取420円 |
手数料は登記手数料令10条に定められており、令和7年4月1日から上記の金額に改定されています(法務省「登記手数料について」)。
① 窓口
法務局の窓口で「印鑑証明書交付申請書(会社法人用)」に記入し、手数料分の収入印紙を貼って、印鑑カードと一緒に出します。申請書には、商号・本店、印鑑提出者の資格・氏名・生年月日、印鑑カード番号、請求通数を書きます。法務局の業務取扱時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までですが、令和6年1月4日から、各種窓口の対応時間は原則として午前9時から午後5時までとされています(法務局「法務局の窓口対応時間について」)。
② 郵送
郵送で請求することもできますが、法務局の案内では、郵送で請求する場合も申請書と一緒に印鑑カードを同封するものとされています。つまり、印鑑カードそのものを郵送で法務局に送ることになります。カードが返送されてくるまでの間は手元にカードがない状態になるので、急ぎの取引があるときは注意が必要です。
③ 証明書発行請求機
法務局に置かれているタッチパネル式の証明書発行請求機を使う方法です。印鑑証明書を請求するときは、端末に印鑑カードを読み込ませ、代表者の生年月日を入力します。発行された整理番号票に書かれた手数料分の収入印紙を用意し、呼ばれたら整理番号票と引き換えに申請用紙を受け取り、印紙を貼って提出して証明書を受け取ります(大阪法務局の案内による。設置の有無や細かな流れは法務局ごとに異なります)。
④ オンライン
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を使って、自宅や会社のパソコンから請求することもできます。オンライン請求には電子証明書が必要で、本人が請求する場合は、商業登記電子証明書のほか、マイナンバーカードの電子証明書(公的個人認証サービス)なども使えます(法務省「オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)」)。手数料はインターネットバンキングや電子納付対応のATMで納めます。
受け取りは、郵送か、指定した法務局での窓口受取を選べます。窓口受取を選んだ場合は、受取時に印鑑カードを窓口で提示しなければなりません。送付を選んだ場合は、印鑑カードの提示は求められず、カードを送る必要はありません(商業登記規則107条4項)。ただし、請求の際に印鑑カード番号を入力して送信します(同条1項5号)。オンライン請求の受付時間は、平日の午前8時30分から午後11時まで、休日は午前8時30分から午後6時までです(年末年始を除く)。
会社の登記簿(登記事項証明書)もあわせて取りたい場合は、会社の登記簿の取り方──法務局・オンライン・登記情報提供サービス、会社法人等番号の調べ方もあわせてご覧ください。
まとめ
- 会社の印鑑証明書を取るには、法務局が発行する印鑑カードが必要です。窓口・郵送・証明書発行請求機では必ずカードを使い、オンライン請求で窓口受取を選んだ場合も受取時に提示します
- 印鑑カードを紛失したら、本店所在地を管轄する法務局に「印鑑カードの廃止届」と「新しいカードの交付申請」をセットで出します。廃止届には代表者印を押すので、代表者印を持参しましょう
- 代表者印を変える・なくしたときは改印届。代表者個人の実印と、作成後3か月以内の個人の印鑑証明書が必要です
- 印鑑証明書の手数料は、書面請求500円、オンライン請求で送付450円・窓口受取420円です(令和7年4月1日改定)
- 窓口ではカードがあれば委任状なしで代理人でも印鑑証明書を請求できるしくみなので、紛失・盗難に気づいたら早めに廃止の届出をしておくのが安全です
手続きの組み合わせに迷う場合や、代表者の交代・本店移転などほかの登記と重なる場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 印鑑カードの再発行や印鑑証明書には、どのくらい費用がかかりますか?
印鑑カードの交付申請や廃止届には、登記手数料令に手数料の定めが見当たらず、費用はかからない扱いと考えられます。郵送で交付を受ける場合は送付費用(切手など)がかかります。印鑑証明書は1通あたり書面請求で500円、オンライン請求で送付450円・窓口受取420円です(令和7年4月1日改定)。改印する場合は、別途、代表者個人の印鑑証明書(市区町村発行)の取得費用がかかります。
Q. 印鑑カードをなくしたまま放っておくと、どんなリスクがありますか?
廃止届を出すことに法律上の期限はありませんが、窓口での印鑑証明書の請求は、印鑑カードがあれば委任状なしで代理人でもでき、申請書には代表者の生年月日を書くしくみです。カードを拾った人や盗んだ人に会社の印鑑証明書を取られてしまうおそれがあるため、気づいたら早めに廃止届を出しておくのが安全です。また、新しいカードがないと、いざ融資や契約で印鑑証明書が必要になったときに取得できず、手続きが遅れてしまいます。
Q. 廃止届や改印届は自分でできますか。どこに相談すればよいですか?
いずれも法務局の様式に記入して本店所在地を管轄する法務局に提出する手続きで(同じ法務局・地方法務局の管内なら、本店管轄以外の登記所で受け付ける取扱いもあります)、代表者本人が行うことができます。様式と記入例は法務局のホームページに掲載されており、社員などの代理人に頼む場合は様式の委任状欄を使います。代表者の交代や本店移転、商号変更などの登記と同時に進める場合は、書類の組み合わせで迷うこともあるので、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】印鑑カードの引継ぎ・返納と、印鑑の廃止届との関係
ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
印鑑カードは「印鑑の提出」に結びついている
商業登記規則9条の4第1項は、印鑑カードの交付を請求できる者を「印鑑の提出をした者」と定めています。また、登記官はカードを交付するとき、印鑑記録にカード番号と交付の年月日を記録します(同規則9条の5第2項)。印鑑カードは独立した証明書類ではなく、登記所に記録された特定の印鑑(印鑑記録)にひも付いたカードだということです。
ここから2つのことがいえます。1つは、オンライン申請で印鑑の提出を省略した会社は、印鑑カードの交付を受けられず、印鑑証明書も取れないことです(印鑑証明書を請求できるのも「その印鑑を登記所に提出した者」です。商業登記法12条1項)。印鑑届の要否そのものは会社の実印(代表者印)と印鑑届は今も必要?で扱っています。もう1つは、印鑑記録の側に変化(資格の喪失、印鑑の廃止)が起きると、カードの扱いもそれに連動して決まることです。
原則は「返納」、引継ぎはその例外
商業登記規則9条の5第5項は、印鑑カードの交付を受けた者が、①資格を喪失したとき、②印鑑の廃止の届出をするとき、③印鑑カードの廃止の届出をするときは、カードを返納しなければならないと定めています。ただし、同規則9条の4第3項に規定する場合は例外とされています(9条の5第5項ただし書)。
その9条の4第3項は、印鑑を提出した者が資格を喪失し、または印鑑を廃止した場合に、その者に替わって新たに印鑑を提出する者は、印鑑の提出と同時に申し出ることにより、前の者の印鑑カードを引き継いで使用できる、という規定です。法務局の「印鑑(改印)届書」には「印鑑カードは引き継がない/印鑑カードを引き継ぐ」の選択欄があり、引き継ぐ場合はカード番号と前任者の氏名を書く様式になっています。
条文が「印鑑の提出と同時に」申し出ると定めているため、代表者の交代にあわせて新しい代表者が印鑑を届け出る場面では、届書を出す段階で引継ぎ欄にチェックをするかどうかを決めておく必要があります。引き継がない場合、前任者のカードは返納の対象となり、新しい代表者は改めてカードの交付を請求することになります。代表者が交代しても同じカードを使い続けられるのは、この引継ぎの仕組みによるものです。
なお、本店を他の登記所の管轄区域内へ移転した場合は、印鑑記録は新しい登記所へ移送されるものの(同規則9条12項・13項)、印鑑カードは引き継がれず、移転の登記が終わった後に新所在地の登記所へ改めて交付を請求する必要があります(法務省「本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました」)。
「印鑑の廃止」と「印鑑カードの廃止」は別の届出
法務局の様式「印鑑・印鑑カード廃止届書」は1枚ですが、「印鑑の廃止届出」「印鑑カードの廃止届出」「印鑑及び印鑑カードの廃止届出」の3つから選ぶ形になっています。根拠となる条文も異なります。
| 届出 | 根拠 | 効果 |
|---|---|---|
| 印鑑の廃止 | 商業登記規則9条7項 | 届け出た印鑑の記録が廃止され、その印鑑の証明書は出なくなる。カードは返納(9条の5第5項) |
| 印鑑カードの廃止 | 商業登記規則9条の5第3項 | 届け出た印鑑はそのまま残り、カードだけが使えなくなる。新しいカードの交付を受ければ、再び印鑑証明書を取れる |
印鑑カードを紛失しただけなら、使うのは後者の「印鑑カードの廃止」です。誤って「印鑑の廃止」を選ぶと、届け出た代表者印の記録まで廃止されてしまい、印鑑証明書を取るには改めて印鑑の提出から始めることになります。
押印のルールも条文で決まっています。いずれの廃止届も、届け出た印鑑を押すのが原則ですが、印鑑カードを提示するときは押印を要しないとされています(同規則9条7項後段・9条の5第3項後段)。様式の注記でも、カードを返納する場合は、届出印の押印も代理人の委任状も不要とされています。代表者印をなくしてカードだけが手元にある場合に、代表者印がなくても印鑑の廃止届を出せるのは、この仕組みによるものです。
代表者印も印鑑カードも手元にない場合について、様式の注記は、届出印を押せないときは市区町村に登録した代表者個人の実印を押し、作成後3か月以内の市区町村長の印鑑証明書を添付するとしています。また、法務局の「よくあるご質問」では、代表者印と印鑑カードの両方をなくして新しい印鑑で改印届を出す場合、「印鑑・印鑑カード廃止届書」には代表者個人の実印(市区町村に登録した印鑑)を押して作成後3か月以内の個人の印鑑証明書を添付し、「印鑑カード交付申請書」には新たに登記所に提出した印鑑を押すとされています。一方、前述の青森地方法務局の災害時向けの案内では、廃止届書と交付申請書の両方に新しい印鑑を押すとされており、案内の書き方に違いがあるため、どちらの印鑑を押すかは提出先の法務局で確認しておくのが確実です。
カードの磁気不良は「紛失」とは別の扱い
本文で「カードそのものの再発行という手続きはない」と説明したのは、紛失した場合の話です。カードの磁気的記録が毀損しているなど相当な理由があるときは、登記官がカードの回収その他の必要な措置をとることができるとされています(商業登記規則9条の5第6項)。法務局には「印鑑カード受領書(再交付)」という様式があり、毀損したカードを返納して、これに替わる新しいカードを受け取る形になっています。この様式の注記では、届出印の押印も、代理人の場合の委任状も不要とされています。カードが手元にあって磁気が壊れているだけなら、廃止届と交付申請の組み合わせとは別に、この取扱いが用意されています。
代理人による届出と委任状
印鑑の提出(改印を含む)、印鑑の廃止の届出、印鑑カードの交付請求、印鑑カードの廃止の届出は、いずれも代理人によってすることができ、その場合は権限を証する書面(委任状)を添付します(商業登記規則9条の6)。法務局の各様式には委任状欄が組み込まれており、委任状に押す印鑑は様式ごとに決まっています(交付申請書と廃止届書は登記所に届け出た印鑑、改印届書は代表者が市区町村に登録した印鑑)。一方、印鑑証明書の交付請求は9条の6の対象に含まれておらず、本文で触れたとおり、様式上も委任状は不要とされています。
本店管轄以外の登記所の窓口
印鑑カードの交付請求の宛先は、印鑑を管理している本店管轄の登記所が基本です。もっとも、法務省の「法務局及び地方法務局における商業・法人登記事務の集中化の実施後の商業・法人登記事務に関する取扱要領」では、同じ法務局・地方法務局の管轄区域内に本店がある会社については、商業・法人登記の審査事務を扱っていない登記所(アクセス登記所)や、管内のほかの商業登記所でも、印鑑カードの交付の請求・廃止の届出・返納などの事務を取り扱い、提出された書面は原則として管轄の登記所へ送付する(法務局の長の定めにより、受け付けた登記所で保管する取扱いも認められています)とされています(登記の申請と同時にするもの以外の印鑑〔改印した印鑑〕の提出と印鑑の廃止の届出も同様)。どの登記所がどの事務を扱っているかは各法務局の「取扱事務一覧表」に掲載されているため、出向く前に確認しておくと確実です。
オンラインでできること・できないこと
商業登記規則101条1項は、オンラインでできる手続きを列挙しています。印鑑の提出・廃止の届出は「登記の申請と同時にする場合に限る」とされ(同項2号)、印鑑カードの交付請求や印鑑カードの廃止の届出は列挙されていません。カードの交付・廃止は、書面(窓口または郵送)で行う手続きです。
一方、印鑑証明書の交付請求はオンラインででき(同項8号)、その際は窓口受取でも送付でも印鑑カード番号を送信します(同規則107条1項3号・5号)。送付を選んだ場合はカードの提示を要せず(同条4項)、窓口受取を選んだ場合は、受取時に法務大臣の定める事項を申告し、カードを提示します(同条6項による22条2項の読替え)。廃止したカードの番号は以後の請求には使えなくなると考えられるため、オンライン請求を利用している会社が新しいカードの交付を受けたときは、以後は新しいカード番号で請求することになります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 商業登記法 第12条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則 第9条・第9条の4〜第9条の6・第22条・第101条・第107条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 登記手数料令 第1条・第10条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/324CO0000000140
- 法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/shougyou.html
- 法務局「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-2.html
- 法務局「印鑑カード交付申請書」(様式): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328650.pdf
- 法務局「印鑑(改印)届書」(様式): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328727.pdf
- 法務局「印鑑・印鑑カード廃止届書」(様式): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328648.pdf
- 法務局「印鑑証明書交付申請書(会社法人用)」(様式): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001328652.pdf
- 法務局「印鑑カード受領書(再交付)」(様式): https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001356816.pdf
- 法務局「会社・法人代表者の印鑑証明書を取得したい方」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/shomeisho_000003.html
- 法務局「法務局の窓口対応時間について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00073.html
- 法務省「登記事項証明書及び印鑑証明書の請求先について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji42.html
- 法務省「会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji11.html
- 法務省「オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji71.html
- 法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00072.html
- 法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日): https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/index.html
- 法務省「本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html
- 法務省「法務局及び地方法務局における商業・法人登記事務の集中化の実施後の商業・法人登記事務に関する取扱要領」(令和4年3月18日改正): https://www.moj.go.jp/content/001468628.pdf
- 大阪法務局「証明書発行請求機について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/static/seikyuuki.pdf
- 青森地方法務局「大雨等に伴う災害などにより会社・法人の代表印や印鑑カードを紛失した場合について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/aomori/content/001362584.pdf