この記事の要点

  • 代表取締役ではない取締役(いわゆる平取締役)が亡くなったときも、会社は死亡による退任の登記を、変更が生じてから2週間以内に申請する必要がある(会社法915条1項)
  • 添付するのは死亡の事実を証する書面。法務局の記載例では、ご遺族などから会社にあてた「死亡届」か、法定相続情報一覧図の写しが挙げられている
  • 登録免許税は資本金1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円。後任の就任の登記とあわせて申請すれば1件分で済む
  • 辞任や任期満了と違い、死亡の場合は「後任が就任するまで前の取締役が権利義務を持ち続ける」仕組み(会社法346条1項)が働かない。取締役の人数が足りなくなれば、その時点で欠員になる
  • 欠員になったら、株主総会で後任を選ぶのが基本。すぐに選べないときの裁判所への申立ては別記事で整理している

代表取締役ではない取締役が亡くなったときも、会社は2週間以内に「死亡による退任」の登記を申請しなければなりません。あわせて確認したいのが、亡くなったことで取締役の人数が、法律や定款で決めた最低人数(員数=いんずう)を下回っていないかという点です。下回った場合、辞任のときのように「後任が決まるまで前の取締役が役目を続ける」仕組みは働かないため、会社が自分で欠員を埋める必要があります。

代表取締役が亡くなった場合は、これに加えて「会社を代表する人を誰にするか」という課題が生じます。その段取りは代表取締役が亡くなったときの登記──会社が最初にすべき手続きの順番で整理していますので、この記事では代表取締役ではない取締役が亡くなった場面に絞って解説します。

取締役の地位は、亡くなった時点で終わる

会社と取締役の関係は、委任(仕事を任せる契約)に関する規定に従うとされています(会社法330条)。そして民法は、委任が終わる理由の一つとして「受任者の死亡」を挙げています(民法653条1号)。そのため取締役は、亡くなった時点で退任となります。取締役という地位が、ご家族に引き継がれることはありません。

取締役の氏名は登記簿に載る事項です(会社法911条3項13号)。登記簿に載っている事項に変更が生じた以上、会社は変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。「代表者ではないから登記は要らない」ということにはならない点に注意してください。

「代表取締役ではない」かどうかは登記簿で確認を

取締役会を置いていない会社では、代表取締役を特に定めていなければ、取締役が各自会社を代表するとされています(会社法349条1項・2項)。この場合、社内で「平取締役」と呼ばれていた方でも、登記簿上は代表取締役として載っていることがあります。まず履歴事項全部証明書で、亡くなった方が「取締役」の欄だけに載っているのか、「代表取締役」の欄にも載っているのかを確認するのが出発点です。代表取締役の欄にも載っている場合は、上で紹介した代表取締役の記事もあわせてご確認ください。

死亡による退任登記──期限・添付書類・登録免許税

期限:変更が生じてから2週間以内

会社法は、登記事項に変更が生じたときは「二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない」と定めています(会社法915条1項)。取締役の死亡もこの「変更」にあたります。

期限を過ぎても登記はでき、むしろ登記しなければならない状態が続きます。登記を怠ったときは、取締役などが100万円以下の過料(かりょう=行政上の制裁金)に処せられることがあると定められています(会社法976条1号)。期限を過ぎたことに気づいたら、そのままにせず、できるだけ早く申請してください。

添付書類:死亡の事実を証する書面

取締役の退任による変更の登記の申請書には、退任を証する書面を添付しなければならないとされています(商業登記法54条4項)。辞任であれば本人の辞任届がこれにあたりますが、死亡の場合は本人の意思表示がないため、死亡の事実を証する書面を用意します。

法務局が公開している役員変更登記の記載例(「辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合」)では、死亡の場合の添付書類として「死亡届又は法定相続情報一覧図の写し」が挙げられています。ここでいう死亡届は、市区町村役場に出す死亡届ではありません。記載例では、ご遺族(例では長男)が会社にあてて、取締役が何年何月何日に亡くなったことを届け出る書面として示されています。

登録免許税:1万円または3万円

登録免許税(とうろくめんきょぜい=登記をするときに納める税金)は、取締役に関する事項の変更の登記として、申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。

法務局の記載例には、取締役の辞任(または死亡)と後任の就任の登記は「合わせて1件として申請することができます」と注記されています。後任がすぐに決まる場合は、退任と就任をまとめて申請すれば、登録免許税も1件分で済みます。

項目 内容
期限 変更が生じてから2週間以内(会社法915条1項)
主な添付書類 死亡の事実を証する書面(死亡届または法定相続情報一覧図の写し。法務局の記載例による)
登録免許税 1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)
後任も同時に申請する場合 後任の選任・就任に必要な書類が加わる。退任と就任は合わせて1件で申請できる

取締役の人数が足りなくなるかを確認する

退任の登記と並んで大切なのが、亡くなったことで取締役が最低人数を下回っていないかの確認です。

最低人数の決まり方

  • 取締役会を置いている会社:取締役は3人以上でなければなりません(会社法331条5項)。「3人以上」は3人ちょうどを含みます(数の読み方は「以上・以下」と「超える・未満」の違いを参照)。
  • 取締役会を置いていない会社:法律上は取締役1人以上で足ります(会社法326条1項)。ただし、定款で「取締役は2名以上」などと最低人数を定めていれば、その人数が基準になります。

たとえば取締役会を置いている会社で、取締役4人のうち1人が亡くなっても、定款で4人以上などと定めていなければ、残りは3人なので人数は足ります。この場合は死亡による退任の登記をすれば足ります。一方、取締役3人のうち1人が亡くなると、残りは2人となり、法律が求める人数を下回ります。

死亡は「権利義務取締役」の対象外

取締役が辞任したり任期が満了したりして人数が足りなくなった場合には、会社法346条1項に次の定めがあります。

役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。(会社法346条1項)

後任が決まるまで、退任した人が取締役としての権利と義務を持ち続ける──いわゆる権利義務取締役の仕組みです。ただし、条文が対象として挙げているのは「任期の満了又は辞任により退任した役員」に限られます。死亡はこのどちらにもあたりませんので、この仕組みは働きません(辞任・解任の場合の扱いは取締役の辞任・解任の登記で整理しています)。

つまり、取締役が亡くなって人数が足りなくなると、その時点で欠員の状態になります。会社としては、死亡による退任の登記を後任が決まるまで待つのではなく、2週間の期限内に申請したうえで、欠員を埋める手続きを別に進めることになります。

欠員になったら、後任を選ぶ手続きへ

取締役は株主総会の決議で選任します(会社法329条1項)。欠員になったら、株主総会を開いて後任を選ぶのが本来の道筋です。後任が決まれば、その就任の登記も2週間以内に申請します。

なお会社法は、取締役が法律や定款で定めた人数を欠くことになったのに、その選任の手続きを怠ったことも、過料の対象として挙げています(会社法976条22号)。「人数が足りないまま、しばらく様子を見る」という対応は避けてください。

株主総会をすぐには開けない事情がある場合には、裁判所に一時取締役(一時役員の職務を行うべき者)の選任を申し立てる方法が会社法に用意されています(会社法346条2項)。申立ての流れや、司法書士と弁護士の役割分担、取締役会を置く会社で人数が欠けたときに残った取締役だけで物事を決めてよいかという論点は、代表取締役が亡くなったときの登記で整理していますので、そちらをご確認ください。

日頃から確認しておきたいこと

取締役の人数が、法律や定款で決めた最低人数ぎりぎりで運営されている会社では、1人が亡くなっただけで欠員が生じます。株主総会で取締役を選ぶ際には、欠員に備えて補欠の取締役をあらかじめ選んでおくこともできるとされています(会社法329条3項)。定款で決めた最低人数と現在の取締役の人数を、一度見比べておくと安心です。

まとめ

  • 代表取締役ではない取締役が亡くなった場合も、死亡による退任の登記が必要です。期限は変更が生じてから2週間以内です(会社法915条1項)。
  • 添付書類は死亡の事実を証する書面で、法務局の記載例では、ご遺族などから会社にあてた死亡届か、法定相続情報一覧図の写しが挙げられています。
  • 登録免許税は1件につき1万円(資本金1億円超の会社は3万円)。後任の就任とあわせて申請すれば1件分で済みます。
  • 死亡は権利義務取締役(会社法346条1項)の対象外です。人数が足りなくなればその時点で欠員になるため、株主総会で後任を選ぶ手続きを早めに進める必要があります。
  • 取締役会の有無、定款の定め、残った取締役の人数によって、取るべき手続きは変わります。実際に進めるにあたっては、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 死亡による退任の登記には、どれくらい費用がかかりますか? 登録免許税は、資本金の額が1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。後任の就任の登記とあわせて1件で申請すれば、税額も1件分です。司法書士に依頼する場合は、別に報酬がかかります。

Q. 登記を後回しにしたり、後任を決めずに放置したりするとどうなりますか? 登記は変更が生じてから2週間以内に申請する決まりで(会社法915条1項)、怠ると過料の対象になることがあります(会社法976条1号)。人数が足りなくなったのに後任を選ぶ手続きを怠ることも、過料の対象として挙げられています(同条22号)。期限を過ぎていても登記はできますので、気づいた時点で早めに手続きを進めてください。

Q. 自分たちで手続きできますか?どこに相談すればよいですか? 人数が足りていて、退任の登記だけで済む場合は、記載例を参考に会社で申請書を作って申請することも可能です。一方、人数が足りなくなった、株主総会をすぐに開けない、亡くなった方が登記簿上は代表取締役にもなっていた、といった事情がある場合は、手続きの順番の組み立てに判断が必要になります。登記の手続きは、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】死亡による退任登記の期間計算・申請書の組み立てと、辞任の場合との違い

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

「2週間」はいつから数え、いつ終わるか

会社法915条1項は、登記事項に「変更が生じたとき」から2週間以内に変更の登記をしなければならないと定めています。取締役の死亡による退任の場合、変更が生じるのは死亡の時点です。条文は、会社が死亡を知った時から数えるという書き方にはなっていません。ご遺族から会社への連絡が遅れれば、その分だけ申請までに使える日数は短くなります。

期間の数え方について、会社法915条1項自体には特別の定めが置かれていません。民法は、法令に特別の定めがある場合などを除き、期間の計算は民法の規定に従うとしています(民法138条)。そのうえで、日・週などで期間を定めたときは初日を算入しないこと(民法140条本文)、週で定めた期間は暦に従って計算し、週の初めから数えないときは、最後の週で起算日に応当する日の前日に満了すること(民法143条1項・2項)を定めています。

これに当てはめると、たとえばある月の1日に亡くなった場合、初日の1日は数えずに2日が起算日となり、2週間後の応当日である16日の前日、つまり15日が期間の末日になります。ご遺族からの連絡を受けた段階で、死亡日から数えて末日がいつになるかを最初に確かめておくと、後の段取りを組みやすくなります。

死亡の事実を証する書面──記載例が挙げる2つの書面の中身

法務局の記載例(1-10)が死亡の場合の添付書類として挙げるのは、「死亡届又は法定相続情報一覧図の写し」です。

  • 死亡届:記載例に示された書面は、会社にあてて「貴社の取締役○○○○は、令和○年○月○日死亡いたしました」と届け出る形で、届出の日付、届出人の住所、亡くなった方との続柄(例では長男)と氏名が記載されています。登記の原因となる死亡の年月日が書面上で明らかになっている点が要になります。
  • 法定相続情報一覧図の写し:一覧図には、被相続人の氏名・生年月日・最後の住所とともに死亡の年月日が記載されます(不動産登記規則247条1項1号)。写しは、登記官が戸籍の謄本などで内容を確認したうえで交付するものです(同条5項)。ご遺族が相続の手続きのためにすでに取得している場合は、それを使う選択肢があります。

どちらの書面でも、登記簿に載っている取締役と亡くなった方が同じ人であり、死亡の年月日が読み取れることが前提になります。

後任の就任とまとめて1件で申請する場合の書き方

法務局の記載例(1-10)は、取締役の退任と後任の就任をまとめた申請書の形を示しています。登記の事由は「取締役の変更」とし、登記すべき事項には、退任する取締役と就任する取締役を「役員に関する事項」として2つ並べます。

株式会社の記載例では、取締役について記載するのは「資格」「氏名」「原因年月日」で、住所は書きません。取締役について登記されるのは氏名であり(会社法911条3項13号)、氏名とあわせて住所が登記されるのは代表取締役です(同項14号)。

原因年月日について、株式会社の記載例は辞任の例を示したうえで、「役員の辞任(又は死亡)及び就任の登記は合わせて1件として申請することができます」と注記しています。特例有限会社の申請書様式(2-1)では、退任する取締役の原因年月日が「令和○年○月○日辞任(又は死亡)」と示されています。これらに沿って死亡の場合を書くと、次のようになります。

「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」○○○○
「原因年月日」令和○年○月○日死亡
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」○○○○
「原因年月日」令和○年○月○日就任

添付書類は、記載例(1-10)では、死亡届または法定相続情報一覧図の写しのほか、後任を選んだ株主総会の議事録、株主リスト、就任承諾書、印鑑証明書(取締役会を置いていない会社で新たに就任する取締役など)または本人確認証明書(取締役会設置会社で新たに就任する取締役など)、代理人に申請を委任した場合の委任状が挙げられています。就任承諾書を株主総会議事録の記載で代える場合の条件も、記載例の注に示されています。

1件にまとめられるのは、後任の選任と就任が退任の登記と同じ申請に間に合う場合です。死亡による退任の登記の期限は死亡の時点から進みますので、株主総会の開催が期限に間に合わないときは、退任の登記を先に申請し、後任の就任の登記は後日あらためて申請することになります。登録免許税は申請件数1件ごとにかかるため(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)、この場合は2件分になりますが、1件にまとめることを優先して退任の登記の期限を過ぎてしまうことは避けるべきです。

辞任で員数が欠けた場合との違い──退任の登記ができる時期

辞任や任期満了によって取締役の員数が欠けた場合について、最高裁判所は次のように判断しています(旧商法の下での判断です)。

株式会社の取締役または監査役の任期満了または辞任による退任により法律または定款に定める取締役または監査役の員数を欠くに至つた場合においては、右退任による変更登記は、あらたに選任された取締役または監査役の就職するまで許されない。(最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決・民集22巻13号3334頁、裁判要旨)

現在の会社法346条1項も、権利義務を持ち続ける対象を「任期の満了又は辞任により退任した役員」としています。会社法のもとで書かれた判例研究でも、この判決を引いたうえで、権利義務を持ち続ける取締役については、後任の取締役が就任するまで退任による変更登記は許されないと説明されています(清水正博「取締役留任義務者に対する解任の訴えの可否をめぐる問題」中央学院大学法学論叢29巻1号68頁)。つまり辞任・任期満了で員数が欠けた場合は、退任した取締役が後任の就任まで権利義務を持ち続けるため、退任の登記だけを先に申請することはできず、後任が就任した後に申請する形になります。

これに対して死亡は、この判決が対象とする「任期満了または辞任」にも、346条1項の「任期の満了又は辞任」にも当たりません。法律雑誌の論稿でも、役員の死亡などで欠員が生じた場合には、権利義務を持ち続ける退任役員がそもそも存在しないと説明されています(上江洲純子「商事非訟における実体法と手続法との交錯 第7回 仮役員等の選任申立事件」法律のひろば77巻2号78頁)。権利義務を持ち続ける人がいない以上、員数が欠けていても、死亡による退任の登記は会社法915条1項の原則どおり2週間以内に申請することになります。

辞任・任期満了で員数が欠けた場合 死亡で員数が欠けた場合
退任した人の立場 後任の就任まで取締役の権利義務を持つ(会社法346条1項) 権利義務は生じない
退任の登記 後任の就任まで単独では申請できない(最高裁昭和43年12月24日判決) 死亡から2週間以内に申請する(会社法915条1項)
欠員への対応 後任の選任が必要 後任の選任が必要

どちらの場合も、欠員を埋める手続きが必要なことに変わりはありません。株主総会をすぐに開けないときの一時取締役の申立てについては、代表取締役が亡くなったときの登記をご確認ください。


参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、判例研究・解説などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

  • 清水正博「取締役留任義務者に対する解任の訴えの可否をめぐる問題」中央学院大学法学論叢29巻1号(2015年8月)65〜76頁(中央学院大学学術リポジトリ): https://cgu.repo.nii.ac.jp/records/1174
  • 上江洲純子「商事非訟における実体法と手続法との交錯 第7回 仮役員等の選任申立事件」法律のひろば77巻2号(ぎょうせい、2024年4月)78〜84頁(出版社公開の見本PDF・78頁): https://shop.gyosei.jp/user_data/law_f/pdf/20240401_10.pdf

あわせて読みたい