この記事の要点

  • 評価証明書の「価格」欄が空欄や0円の土地(公衆用道路として使われている私道など)でも、相続登記の登録免許税がかからないとは限りません。課税標準(税額を計算するもとになる金額)は、似た土地の台帳の価格をもとに、登記官が認定した価額になります(登録免許税法施行令附則3項)。
  • 近くの宅地(近傍宅地)の価格をどう使い、どう計算するかは、登記官の認定にかかわる事項です。法務局の案内は地域によって異なるため、割合や計算式を自分で当てはめず、管轄の法務局に確認してください。
  • 近傍宅地の価格を証明書に書くか、別の書面で出すかは、市区町村ごとに違います。確かめる先は「市区町村の窓口」と「管轄の法務局」の2か所です。
  • 認定された価額が100万円以下の土地は、2027年3月31日までの相続登記であれば免税の対象になりえます。また、墓地(墳墓地)に関する登記は、登録免許税法で非課税とされています。

相続登記の準備で評価証明書を取り寄せたら、価格の欄が空欄や「0円」になっている土地が混ざっていた──公衆用道路として使われている私道や、墓地などで起こりやすい場面です。

結論から言うと、価格が載っていないからといって、登録免許税がゼロになるわけではありません。台帳に価格のない土地の課税標準は、登記官が「認定」して決めます。申請する側がすることは、自分の判断で割合や計算式を選んで金額を決めることではなく、管轄の法務局で認定の方法と必要な資料を確かめ、それに沿って申請書に書く金額を計算することです。

この記事では、①価格のない土地の登録免許税をどう考えるか、②近傍宅地の価格が証明書に載っていないとき、どこで何を確かめればよいか、の2点に絞って説明します。千円未満の切り捨てなど計算の手順そのものは相続登記の登録免許税を自分で計算する、評価証明書の請求のしかたは固定資産評価証明書の取り方で解説していますので、あわせてご覧ください。

なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の法令と、法務局が公開している案内に基づく一般的な解説です。

なぜ証明書に価格が載っていないのか

相続登記の登録免許税は、原則として、市区町村の固定資産課税台帳に登録された価格(評価証明書や課税明細書の「価格」「評価額」の欄の金額)をもとに計算します(登録免許税法10条1項・附則7条、登録免許税法施行令附則3項)。

ところが、公衆用道路として使われている土地や墓地など、固定資産税がかかっていない土地では、台帳に価格が登録されておらず、証明書の価格欄が空欄や0円になっていることがあります。前橋地方法務局富岡支局のお知らせ(令和6年7月4日)に付けられた市の資料でも、固定資産税が非課税のため課税明細書などに評価額が表示されない土地があることが示されています。

家の前の道路部分を近所の人と共有している私道の持分は、こうした「価格のない土地」の代表例です。宅地や建物とは別の地番の土地なので、価格が載っていないことに気づかないまま、相続登記から漏れてしまうこともあります。

価格を決めるのは登記官の「認定」

登録免許税法施行令附則3項は、台帳に価格のない不動産について、登記の申請の日において、その不動産に類似する不動産で台帳に価格のあるものの価格を基礎として、登記機関が認定した価額によると定めています。ここでいう登記機関は、不動産の登記では登記官のことです(登録免許税法5条2号のかっこ書きの定義)。

押さえておきたいのは、次の2点です。

  • 計算のもとになるのは「似た土地の台帳の価格」で、その価格を基礎にどう金額を出すかは、登記官が認定する
  • 申請する人が、自分で割合や計算式を選んで課税標準を決めるものではない

法務局の公開資料も、この考え方に沿って案内しています。東京ブロック管内の法務局・地方法務局による相続登記ガイドブック(登録免許税編)は、固定資産課税台帳の価格がない場合(公衆用道路等)の課税標準は登記所が認定した価額になるとして、管轄の登記所の登記官に問い合わせるよう案内しています。前橋地方法務局の「登録免許税 計算のポイント」も、公衆用道路など評価額が記載されていない場合は管轄法務局に問い合わせるよう求めています。

どの時点の価格を基礎にするか(申請の日が1月〜3月か、4月〜12月か)は、価格のある土地と同じ区分で考えます。この点は計算記事の【さらに深掘り】の「価格のない土地が混ざるとき」で触れていますので、ここでは繰り返しません。

解説記事の割合や計算式をそのまま当てはめない

近傍宅地の価格に一定の割合を掛ける、といった計算方法を見かけることがあります。実際に、公衆用道路の認定に使う割合を法務局の内部の通知で定めていた例もあります(【さらに深掘り】で取り上げる裁決例の事案)。しかし、どの土地の価格を基礎にし、どのように金額を出すかは、登記官の認定にかかわる事項で、割合を定めた取扱いがあるかどうかも含めて、地域によって異なりえます。ほかの地域の例や解説記事の数字を自分の土地にそのまま当てはめず、管轄の法務局が示す方法に従ってください。

地域によって案内が違う──法務局の公開資料の例

実際に、法務局が公開している案内は地域によって異なります。

  • 前橋地方法務局富岡支局のお知らせ(令和6年7月4日)は、公衆用道路などの未評価土地(評価額の記載がない土地)について、別紙の単価一覧を確認のうえ、登記記録上の地積に単価を掛けて課税価格を出すよう案内しています。宅地などはこの一覧では計算できないため、登記申請のために登録免許税を計算する目的に限って、市が「未評価土地等 固定資産税近傍宅地等価格確認書」を当分の間発行する扱いとされています。
  • 横浜地方法務局麻生出張所のお知らせは、評価額のない土地について、近傍の土地の評価額により課税標準を認定する必要がある場合などは、窓口に相談票を出すよう案内しています。

富岡支局の単価一覧は、その地域の市が示したものであり、その地域についての案内です。同じ「価格のない土地」でも、地域によって確かめ方や必要な書面が違う、という点を押さえておけば十分です。

近傍宅地の価格が証明書に載らないとき──どこで何を確かめるか

1. 手元の証明書で「価格のない土地」を洗い出す

まず、評価証明書や課税明細書を見て、価格欄が空欄や0円になっている土地を確認します。その土地の所在・地番・地目・地積を控えておくと、問い合わせのときに話が早く進みます。

証明書によっては、備考欄などに近くの宅地の価格が書かれていることもあります(国税不服審判所が公表している裁決例〈平成23年8月2日裁決〉の事案では、評価額欄が0円の公衆用道路の土地評価証明書の備考欄に、近傍類似価格〈宅地〉の記載がありました)。ただし、その金額をどう使うかも含めて、登記官の認定によります。

2. 管轄の法務局で、認定に必要な資料を確かめる

次に、土地の所在地を管轄する法務局に問い合わせます。確かめておきたいのは、たとえば次の点です。

  • その土地の課税標準を認定するために、どんな書面(近傍の宅地の価格がわかる書面など)が必要か
  • 相談票など、申請の前に出しておく書類があるか
  • 申請書に、計算に使った書面の写しを添付する必要があるか(前橋地方法務局富岡支局は、登録免許税の算出に使った書面の写しの添付に協力を求めています)

3. 市区町村の窓口で、法務局に言われた書面を請求する

近傍宅地の価格を評価証明書に書いてもらえるか、別の書面で出しているか、そもそも出していないかは、市区町村ごとに違います。法務局で必要と言われた書面について、土地のある市区町村の固定資産税の担当窓口に、請求のしかたを問い合わせてください。相続人が請求するときに用意する書類の考え方は、固定資産評価証明書の取り方を参考にしてください。

4. 税額が足りないと、申請が進まないこともある

申請書に書いた登録免許税が、登記官の認定した価額で計算した額に足りないときは、登記官から認定した額の通知があり、差額を納めなければなりません(登録免許税法26条)。差額を納めないままでは、申請が却下されることがあります(不動産登記法25条12号)。前に挙げた国税不服審判所の裁決例では、登記官が課税標準と税額を認定したのに対し、その税額が納付されていないとして登記申請が却下された経緯が示されています。手戻りを防ぐためにも、価格のない土地があるときは、申請の前に法務局に確認しておくのが確実です。

認定された価額が100万円以下なら、免税の対象になりうる

租税特別措置法84条の2の2第2項は、土地の相続による所有権の移転の登記について、登録免許税法10条1項の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であれば、令和9年(2027年)3月31日までの間に受ける登記には登録免許税を課さないと定めています。

価格のない土地では、この「100万円以下かどうか」の判定にも、認定された価額を使うことになります。証明書の価格欄が空欄や0円だからといって、それだけで「100万円以下」と判断することはできず、免税になるかどうかも、認定される価額しだいです。亡くなった方が持分で持っていた場合の判定のしかたや、申請書に根拠の条項を書かないと免税を受けられない点は、100万円以下の免税の記事をご覧ください。

墓地の場合──「墳墓地に関する登記」は非課税

登録免許税法5条10号は、「墳墓地に関する登記」には登録免許税を課さないと定めています。前橋地方法務局富岡支局のお知らせに付けられた市の単価一覧でも、墓地は登録免許税が非課税のため計算不要とされています。

ただし、次の点に注意してください。

  • 相続する土地が「墳墓地」に当たるかどうか、また申請書の登録免許税の欄をどう書くかは、申請の前に管轄の法務局に確認してください。
  • 非課税になるのは登録免許税です。登録免許税がかからないだけで、登記の名義を移すには、ほかの土地と同じく登記の申請が必要です。
  • 霊園などのお墓の区画を使う権利(永代使用権)の名義変更は、登記ではなく、墓地の管理者に対する手続きです。こちらはお墓の名義変更で解説しています。墓地の土地そのものを個人で持っている場合に、誰が引き継ぐかの決まり方が通常の相続と異なりうる点も、同じ記事で触れています。

まとめ

評価証明書に価格が載っていない土地でも、相続登記の登録免許税がかからないとは限りません。台帳に価格のない土地の課税標準は、似た土地の台帳の価格をもとに、登記官が認定して決めます(登録免許税法施行令附則3項)。認定の方法や必要な書面は地域によって案内が異なるため、解説記事の割合や計算式を当てはめず、管轄の法務局で確かめ、市区町村の窓口で必要な書面を請求する、という順番で進めるのが確実です。認定された価額が100万円以下なら免税の対象になりうること、墓地(墳墓地)に関する登記は非課税とされていることもあわせて押さえておきましょう。

価格のない土地が複数ある、どの土地が対象になるか判断がつかないなど、手続きに迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 価格のない土地の登録免許税は、いくらくらいかかりますか? 相続による所有権の移転の登記の税率は1000分の4です(登録免許税法別表第一第一号(二)イ)。登記官が認定した価額(亡くなった方が持分で持っていた場合は、その価額に持分の割合を掛けた額。同法10条2項)に、この税率を掛けて計算します。金額は認定された価額によって決まるため、事前に管轄の法務局で確認してください。認定価額が100万円以下なら、免税の対象になりえます。このほか、市区町村で書面を取るときの手数料がかかることがあります。

Q. 価格のない土地の相続登記を放置すると、どうなりますか? 相続により所有権を取得した人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。価格が載っていない私道の持分なども、登記されている土地であれば同じです。また、100万円以下の土地の免税は、令和9年(2027年)3月31日までの間に受ける登記が対象です。くわしくは相続登記の過料の記事をご覧ください。

Q. 自分で手続きできますか?どこに相談すればいいですか? ご自身で申請することもできます。課税標準の認定や必要な書面は管轄の法務局に、近傍宅地の価格がわかる書面の請求は土地のある市区町村の窓口に、それぞれ問い合わせてください。相続税の申告のための土地の評価が気になる場合は、登録免許税とは別の話になるため、税理士にご相談ください。価格のない土地が多い、相続関係が複雑など、手続き全体に不安があるときは、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】認定価額が適法とされる範囲と、認定後の納付・墓地の非課税の確かめ方

ご注意 以下は執筆時点(2026年10月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文では、価格のない土地の課税標準は登記官が認定すること、確かめる先は管轄の法務局と市区町村の窓口であることを説明しました。ここでは、不動産登記実務の観点から、①認定された価額がどのような場合に適法とされるか、②認定の通知を受けた後の納付と申請の扱い、③墓地の非課税を確かめるときの観点、の3点を整理します。申請の日によって基礎となる価格の時点が替わる点は計算記事の【さらに深掘り】で扱っていますので、ここでは繰り返しません。

1. 認定価額が「合理的」とされる範囲──平成23年8月2日裁決の判断

本文で触れた国税不服審判所の裁決例(平成23年8月2日裁決)は、売買で取得した土地の持分の所有権移転登記について、登記官が行った課税標準と税額の認定に対し、申請人が審査請求をした事案です。相続登記の事案ではありませんが、登録免許税法施行令附則3項の文言は登記の原因によって区別していないため、価格のない土地の認定を考える手がかりになります。

裁決は、附則3項の趣旨を、台帳に価格のある不動産とない不動産のあいだで不均衡が生じないよう、あくまで台帳の価格に依拠して価額を求めることにあると解しました。そのうえで、登記官が認定した価額は、その不動産に類似する不動産の適正な台帳の価格を基礎として合理的に算定されたものであれば適法である、という判断の枠組みを示しています。

この事案の土地は、評価証明書の評価額欄が0円で、備考欄に近傍類似価格(宅地)が書かれた、行き止まりの私道として使われている細長い不整形の土地でした。裁決は、その地域で標準とされる宅地の価格のもとになる数値を基礎にすること自体は相当としました。一方で、登記官は、備考欄の近傍類似価格に、法務局の内部の通知が定める公衆用道路の補正をして課税標準を計算していましたが、裁決は、近傍類似価格がその土地の形などに応じた調整をしないで算定されたものであるため、それを使って算定した課税標準は「合理的に算定されたもの」とは認められないとしました。そして、奥行きや形が標準とされる宅地と違うこと、特定の人の通行に使われている私道であることに応じた調整をして計算し直し、認定のうちその額を超える部分を取り消しています。

また、申請人は不動産鑑定評価書の写しを申請書に添付し、その鑑定評価額を基礎に計算すべきだと主張しましたが、裁決は、鑑定で使われた取引事例の扱いが合理的とはいえないとして、この主張を採用しませんでした。

この裁決から読み取れるのは、次の2点です。

  • 評価証明書の備考欄などに書かれた近傍の宅地の価格は、認定の基礎として使われることがありますが、それをもとに、その土地の形などに応じた調整をしないで算定した額は、合理的な認定とされないことがある。
  • 申請する側が鑑定評価書を出しても、この事案では、その内容が合理的とはいえないとして採用されなかった。鑑定評価書を出せば、課税標準がその評価額になる、というものではない。

いずれも1件の裁決例における個別事案の判断です。実際の認定のしかたは、本文のとおり管轄の法務局に確認してください。

2. 認定の通知を受けたら──差額の納付と、却下・登記後の扱い

登録免許税法26条1項は、申請書に書かれた課税標準や税額が国税に関する法律の規定に従っていないとき、そのほか登記官が調査したところと異なるときは、登記官が認定した課税標準や税額を、登記を受ける人に通知すると定めています(他の法令の規定により申請を却下するときを除きます)。通知を受けた人は、登記を受けることをやめる場合を除き、遅滞なく、通知された税額と申請書に書いた税額との差額を納付し、その領収証書を提出しなければなりません(同条2項)。登記官が認めるときは、差額に当たる金額の印紙を提出する方法で納付することもできます(同条3項)。

一方、不動産登記法25条12号は、登録免許税を納付しないときを申請の却下事由としています。ただし、同条ただし書により、補正できる不備について、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは、却下されません。本文の裁決例でも、申請人が認定に対して審査請求をした後に、認定による登録免許税が納付されていないとして申請が却下されています。認定に納得できない場合でも、差額を納付しないままでは申請が却下に進みうる、という点は押さえておく必要があります。

登記がされた後に納付の不足が分かった場合は、登記官が納税地の所轄税務署長にその旨を通知し(登録免許税法28条1項)、税務署長が不足額を徴収します(同法29条1項)。反対に、申請書に書いた課税標準や税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったり誤っていたりして納めすぎた場合は、登記を受けた日から5年を経過する日までに登記官に申し出て、税務署長への通知をするよう請求することができます(同法31条2項。同条の見出しは「過誤納金の還付等」です)。

3. 墓地の非課税を確かめるときの観点

登録免許税法5条10号が非課税としているのは「墳墓地に関する登記」です。一方、登記記録に記録される地目は不動産登記規則99条で区分されており、その中の一つが「墓地」です。不動産登記事務取扱手続準則68条は、墓地を「人の遺体又は遺骨を埋葬する土地」とし、地目は土地の現況と利用目的に重点を置き、土地全体の状況を観察して定めるとしています。

当てはめを確かめるときは、次の3つを並べて見るのが出発点になります。

  • 登記事項証明書に記録されている地目
  • 評価証明書などに書かれている現況の地目
  • 実際の使われ方(遺骨を埋葬するお墓として使われているか)

この3つは一致するとは限りません。本文の裁決例の土地も、登記記録の地目は山林で、評価証明書の現況地目は公衆用道路でした。登記記録の地目は墓地以外なのに実際はお墓として使われている、あるいはその逆、といった食い違いがあるときは、墳墓地に当たるかどうか、それをどの資料で示すかを、申請の前に管轄の法務局に確認してください。

申請書の書き方については、鳥取地方法務局のウェブサイトに掲載されている「登録免許税計算補助シート(相続用)」が、墓地は課税価格の計算に入れず、登録免許税額の下に「登録免許税法第5条第10号により非課税」と書くよう案内しています。なお、不動産登記規則189条2項は、法令の規定により登録免許税を免除されている場合には、税額などに代えて、免除の根拠となる法令の条項を申請情報の内容としなければならないと定めています。具体的な書き方は、申請先の法務局の案内に従ってください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい