問題:
不在者の財産の管理及び失踪の宣告に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
イ. 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、失踪の宣告をすることができる。
ウ. 沈没した船舶の中に在った者の生死が船舶の沈没後1年間明らかでないために失踪の宣告がされたときは、その者は、船舶が沈没した後1年の期間が満了した時に死亡したものとみなされる。
エ. 不在者の生死が明らかでない場合において、不在者が置いた管理人が不在者の定めた権限を超える行為を必要とするときは、その管理人は、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。
オ. 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失うが、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民法26条は、「不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。」と定めている。不在者が自ら管理人を置いた場合であっても、不在者の生死が明らかでなくなったときは、家庭裁判所が関与する余地が認められている。なお、不在者が管理人を置かなかったときの財産の管理について必要な処分(同法25条1項前段)及び本人の不在中に管理人の権限が消滅したときの処分(同項後段)についても、請求権者は「利害関係人又は検察官」とされている。
イ 誤り。民法30条1項は、「不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。」と定めている。失踪の宣告の請求権者は利害関係人に限られ、検察官は含まれていない。これに対し、不在者の財産の管理に関する処分(同法25条1項)、管理人の改任(同法26条)及び不在者が置いた管理人に対する財産目録の作成の命令(同法27条2項)については、利害関係人のほか検察官も請求することができる。本肢は、失踪の宣告についても検察官が請求することができるとしている点で誤りである。
ウ 誤り。民法30条2項は、「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。」と定め、同法31条は、「前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。」と定めている。同法30条2項による失踪の宣告(いわゆる特別失踪)を受けた者が死亡したものとみなされるのは、危難が去った時、すなわち本肢では船舶が沈没した時であり、1年の期間が満了した時ではない。期間の満了時に死亡したものとみなされるのは、同条1項による失踪の宣告(いわゆる普通失踪)の場合である。
エ 正しい。民法28条は、「管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。」と定めている。同条前段が掲げる同法103条は、権限の定めのない代理人が「保存行為」(1号)及び「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(2号)のみをする権限を有すると定めている。本肢は、同法28条後段の場面であり、不在者が置いた管理人であっても、不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所の許可を得て不在者の定めた権限を超える行為をすることができる。
オ 正しい。民法32条2項は、「失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。」と定めている。なお、同条1項は、「失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。」と定めている。
問題:
添付(付合・混和・加工)に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 付合により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も消滅するが、その物の所有者が合成物の共有者となったときは、その物について存する他の権利は、以後その持分について存する。
イ. 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し、独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、動産の付合に関する民法243条の規定に基づいて決定すべきである。
ウ. 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供し工事を施して仕上げた建物の所有権の帰属を民法246条2項の規定に基づいて決定する場合には、建前が法律上独立の不動産である建物としての要件を具備するに至った時点における状態に基づいて、加工者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。
エ. 建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、その二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、その二階部分につき独立の登記がされていても、その二階部分は、区分所有権の対象たる部分に当たらない。
オ. 付合、混和又は加工に関する規定の適用によって損失を受けた者は、これによって利益を受けた者に故意又は過失があるときに限り、その償金を請求することができる。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。民法247条1項は、「第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。」と定め、同条2項は、「前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。」と定めている。なお、付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する(同法244条)。
イ 誤り。最判昭和54年1月25日(民集33巻1号26頁)の裁判要旨は、「建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法二四六条二項の規定に基づいて決定すべきである。」としている(漢数字は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。同判決の参照法条には、民法243条及び246条2項が掲げられている。民法246条1項は、「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。」と定め、同条2項は、「前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。」と定めている。本肢は、動産の付合に関する同法243条(「所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。」)の規定に基づいて決定すべきであるとしている点で誤りである。
ウ 誤り。イで挙げた最判昭和54年1月25日の裁判要旨は、「建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供し工事を施して仕上げた建物の所有権の帰属を民法二四六条二項の規定に基づいて決定する場合において、建前が、屋根瓦が葺かれ、荒壁が塗られて法律上独立の不動産である建物としての要件を具備するに至つた時点における状態に基づいてではなく、加工者の工事が一応終了したと認められる時点までの間に加工者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。」としている(漢数字及び「至つた」は裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨の表記のまま)。本肢は、建物としての要件を具備するに至った時点における状態に基づいて比較すべきであるとしている点で誤りである。
エ 正しい。最判昭和44年7月25日(民集23巻8号1627頁)の裁判要旨は、「建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても、右二階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。」としている。同判決の参照法条には、民法242条及び建物の区分所有等に関する法律1条が掲げられている。民法242条は、「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」と定めているが、同判決は、賃貸人の承諾を得た増築であっても、上記の事情の下では、二階部分は区分所有権の対象たる部分に当たらないとしたものである(判示事項は「…区分所有権が成立しないとされた事例」とされている。)。
オ 誤り。民法248条は、「第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。」と定めている。償金の請求は不当利得に関する規定(同法703条・704条)に従って行うものであり、利益を受けた者の故意又は過失は要件とされていない。本肢は、故意又は過失があるときに限り請求することができるとしている点で誤りである。なお、同法703条は、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と定めている。
問題:
遺言執行者に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 遺言執行者が数人ある場合には、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き、その任務の執行は過半数で決するが、各遺言執行者は、保存行為をすることができる。
イ. 遺言執行者がある場合において、相続人が相続財産の処分をしたときは、その処分は無効であり、この無効は、善意の第三者に対しても対抗することができる。
ウ. 特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、当該所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる。
エ. 特定財産承継遺言の目的である財産が預貯金債権である場合には、遺言者が遺言で別段の意思を表示したときを除き、遺言執行者は、その預貯金債権の一部のみが特定財産承継遺言の目的であるときであっても、その預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。
オ. 遺言執行者は、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができ、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
ア 正しい。民法1017条1項は、「遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と定め、同条2項は、「各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。」と定めている。
イ 誤り。民法1013条1項は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と定め、同条2項は、「前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。相続人がした相続財産の処分は無効であるが、その無効は善意の第三者に対抗することができない。本肢は、善意の第三者に対しても対抗することができるとしている点で誤りである。なお、同条3項は、「前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。」と定めている。同条2項及び3項は、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)により加えられた規定であり、同法の施行日(令和元年7月1日)前に開始した相続については、同法附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による(同法附則2条)。
ウ 正しい。最判平成11年12月16日(民集53巻9号1989頁)の裁判要旨は、「特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、右所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる。」としている。同判決の参照法条には、民法908条、1012条、1013条、1015条及び民訴法第1編第3章当事者が掲げられている(民法の各条は、同判決当時の規定であり、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)による改正前のもの)。なお、同改正により、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が同法899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるものとされた(同法1014条2項)。同項から同条4項までの規定は、平成30年法律第72号の施行日(令和元年7月1日)前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者によるその執行については、適用しない(平成30年法律第72号附則8条2項)。
エ 誤り。民法1014条3項は、「前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。」と定めている。解約の申入れをすることができるのは、預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限られる。本肢は、一部のみが目的である場合にも解約の申入れをすることができるとしている点で誤りである。なお、払戻しの請求については、このような限定はない。また、同条4項は、「前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と定めている。
オ 正しい。民法1016条1項は、「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」と定め、同条2項は、「前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」と定めている。同条は平成30年法律第72号により改められた規定であり、同法の施行日前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、同条の規定にかかわらず、なお従前の例による(同法附則8条3項)。
問題:
敷地権に関する建物の表題部の変更の登記及び更正の登記に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、「区分所有法」とは、建物の区分所有等に関する法律をいう。
ア. 区分所有法5条1項の規約を設定したことにより敷地権が生じたことを原因とする建物の表題部の変更の登記を申請するときは、当該規約を設定したことを証する情報を提供しなければならない。
イ. 区分所有法22条1項ただし書の規約における別段の定めがあることにより、区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができることとなったことを原因とする建物の表題部の変更の登記を申請する場合において、敷地権の目的である土地が他の登記所の管轄区域内にあるときは、当該土地の登記事項証明書を提供しなければならない。
ウ. 建物の表題部の変更の登記により新たに敷地権の登記をした場合において、当該建物について所有権の登記及び抵当権の設定の登記があるときは、登記官は、これらの登記のそれぞれについて、付記登記によって建物のみに関する旨を記録しなければならない(当該抵当権の設定の登記と登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一である抵当権の登記は、敷地権についてされていないものとする。)。
エ. 敷地権付き区分建物について、敷地権であった権利が敷地権でない権利となったことによる建物の表題部に関する変更の登記をしたときは、登記官は、敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区にされている敷地権である旨の登記の抹消をするとともに、同区に、敷地権であった権利、その権利の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が2人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分を記録しなければならない。
オ. 敷地権の不存在を原因とする建物の表題部に関する更正の登記をした場合において、不動産登記法73条1項本文の規定により敷地権の移転の登記としての効力を有する登記があるときは、登記官は、その権利の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に当該登記の全部を転写しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記令別表15の項は、「敷地権の発生若しくは消滅を原因とする建物の表題部の変更の登記又は敷地権の存在若しくは不存在を原因とする建物の表題部の更正の登記」の添付情報として、「区分所有法第五条第一項の規約を設定したことにより敷地権が生じたときは、当該規約を設定したことを証する情報」を掲げている(同項添付情報欄イ)。区分所有法5条1項は、「区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。」と定めている。なお、敷地権が区分所有法22条2項ただし書の規約で定められている割合によるものであるときは、当該規約を設定したことを証する情報も提供しなければならない(同項添付情報欄ホ(1))。
イ 誤り。不動産登記令別表15の項添付情報欄ハは、「区分所有法第二十二条第一項ただし書の規約における別段の定めがあることその他の事由により区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができることとなったときは、当該事由を証する情報」を掲げている。他方、敷地権の目的である土地が他の登記所の管轄区域内にあるときの「当該土地の登記事項証明書」を定める同欄ホ(2)は、「イ及びニの場合には、次に掲げる情報」とされており、区分所有法5条1項の規約の設定により敷地権が生じたとき(同欄イ)と、登記された権利であって敷地権でなかったものが同欄ハの規約の変更その他の事由により敷地権となったとき(同欄ニ)、すなわち敷地権が生じる場合に限って提供を求めている。本肢のように敷地権であった権利が分離処分可能となった場合(同欄ハ)は、同欄ホの対象に含まれていないから、同欄ホ(2)の登記事項証明書の提供を要するとしている点で誤りである。
ウ 誤り。不動産登記規則123条1項本文は、「登記官は、建物の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記により新たに敷地権の登記をした場合において、建物についての所有権又は特定担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記があるときは、所有権の登記を除き、当該権利に関する登記についてする付記登記によって建物のみに関する旨を記録しなければならない。」と定めている。建物のみに関する旨の付記登記の対象から所有権の登記は除かれているから、本肢の場合にこれがされるのは抵当権の設定の登記だけである。なお、同項ただし書は、特定担保権に係る権利に関する登記であって、その登記の目的等(登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付)が当該敷地権についてされた特定担保権に係る権利に関する登記の目的等と同一であるものは、建物のみに関する旨の記録の対象から除いており、同条2項は、この場合には、登記官は、職権で、当該敷地権についてされた特定担保権に係る権利に関する登記の抹消をしなければならないとしている。
エ 正しい。不動産登記規則124条1項前段は、「登記官は、敷地権付き区分建物について、敷地権であった権利が敷地権でない権利となったことによる建物の表題部に関する変更の登記をしたときは、当該敷地権の目的であった土地の登記記録の権利部の相当区に敷地権の変更の登記により敷地権を抹消する旨及びその年月日を記録し、同区の敷地権である旨の登記の抹消をしなければならない。」と定めている。そして、同条2項は、「登記官は、前項前段の場合には、同項の土地の登記記録の権利部の相当区に、敷地権であった権利、その権利の登記名義人の氏名又は名称及び住所、当該登記名義人の法人識別事項等の登記があるときは当該法人識別事項等並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分を記録し、敷地権である旨の登記を抹消したことにより登記をする旨及び登記の年月日を記録しなければならない。」と定めている。本肢は法人識別事項等の記録等に触れていないが、本肢が掲げる事項は、いずれも同条1項前段及び2項により登記官がしなければならないものとされている事項である。なお、敷地権であった権利が消滅したことによる建物の表題部に関する変更の登記をしたときも、同条1項前段と同様に、敷地権である旨の登記の抹消がされる(同項後段)が、同条2項の記録は、同条1項前段の場合(敷地権でない権利となった場合)について定められたものである。また、敷地権付き区分建物の登記記録に特定登記があるときの土地の登記記録への転写は、同条3項が定めている。
オ 正しい。不動産登記規則126条1項は、「登記官は、敷地権の不存在を原因とする建物の表題部に関する更正の登記をしたときは、その権利の目的である土地の登記記録の権利部の相当区に敷地権の更正の登記により敷地権を抹消する旨及びその年月日を記録し、同区の敷地権である旨の登記の抹消をしなければならない。」と定め、同条2項は、「登記官は、前項の場合において、法第七十三条第一項本文の規定により敷地権の移転の登記としての効力を有する登記があるときは、前項の土地の登記記録の権利部の相当区に当該登記の全部を転写しなければならない。」と定めている。同条3項は、同規則124条3項から10項までの規定を2項の場合について準用している。
問題:
一の申請情報による表示に関する登記の申請に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. いずれも畑である甲土地及び乙土地(同一の登記所の管轄区域内にあり、いずれもAが所有権の登記名義人である。)について、同一の日にいずれも宅地に地目が変更された場合には、甲土地及び乙土地の地目に関する変更の登記は、一の申請情報によって申請することができる。
イ. 甲土地の地目に関する変更の登記と、甲土地と同一の登記所の管轄区域内にある乙土地(甲土地と所有権の登記名義人が同一である。)の地積に関する更正の登記とは、一の申請情報によって申請することができる。
ウ. 甲建物を区分して、その一部を乙建物の附属建物としようとする場合には、建物の区分の登記及び建物の合併の登記は、一の申請情報によって申請することができる。
エ. 同一の建物について申請する床面積に関する変更の登記と構造に関する更正の登記とは、一の申請情報によって申請することができる。
オ. 同一の登記所の管轄区域内にある甲建物及び乙建物(いずれもBが表題部所有者である。)が、甲建物は令和8年5月1日に、乙建物は同月10日に、それぞれ取壊しにより滅失した場合には、甲建物及び乙建物の滅失の登記は、一の申請情報によって申請することができる。
答え:
誤っているものは、イ・オの2つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記令4条は、「申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」と定めている。甲土地及び乙土地は同一の登記所の管轄区域内にあり、申請する登記の目的(地目に関する変更の登記)並びに登記原因及びその日付(同一の日における畑から宅地への地目の変更)が同一であるから、同条ただし書により、一の申請情報によって申請することができる。
イ 誤り。甲土地の地目に関する変更の登記と乙土地の地積に関する更正の登記とは、不動産が異なるうえ、登記の目的も異なるから、不動産登記令4条ただし書前段には当たらない。また、同条ただし書の「法務省令で定めるとき」を定める不動産登記規則35条のうち、表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記を一の申請情報によってすることを認める同条6号(「同一の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも不動産の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記であるとき。」)及び7号(「同一の不動産について申請する二以上の登記が、不動産の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記及び土地の分筆の登記若しくは合筆の登記又は建物の分割の登記、建物の区分の登記若しくは建物の合併の登記であるとき。」)は、いずれも「同一の不動産について申請する」ものに限っており、同条の他の各号にも本肢の場合を掲げたものはない。したがって、所有権の登記名義人が同一であっても、一の申請情報によって申請することはできない。
ウ 正しい。不動産登記規則35条4号は、「甲建物を区分して、その一部を乙建物の附属建物としようとする場合において、建物の区分の登記及び建物の合併の登記の申請をするとき。」を掲げている。なお、同条5号は、「甲建物を区分して、その一部を乙建物又は乙建物の附属建物に合併しようとする場合(乙建物又は乙建物の附属建物が当該一部と接続する区分建物である場合に限る。)において、建物の区分の登記及び建物の合併の登記の申請をするとき。」を掲げており、区分した一部を乙建物又はその附属建物そのものに合併する場合には、接続する区分建物であることが要件とされている。また、同条1号は土地の一部を分筆して他の土地に合筆しようとする場合の分筆の登記及び合筆の登記を、同条2号は甲建物の附属建物を分割して乙建物の附属建物としようとする場合の、同条3号は甲建物の附属建物(区分建物に限る。)を分割して乙建物又は乙建物の附属建物に合併しようとする場合(乙建物又は乙建物の附属建物が甲建物の附属建物と接続する区分建物である場合に限る。)の、建物の分割の登記及び建物の合併の登記を掲げている。
エ 正しい。不動産登記規則35条6号は、「同一の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも不動産の表題部の登記事項に関する変更の登記又は更正の登記であるとき。」を掲げている。床面積に関する変更の登記と構造に関する更正の登記とは、同一の建物についての表題部の登記事項に関する変更の登記及び更正の登記であるから、これに当たる。
オ 誤り。不動産登記令4条ただし書前段により一の申請情報によって申請することができるのは、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに「登記原因及びその日付」が同一であるときである。甲建物と乙建物とでは、登記の目的(建物の滅失の登記)及び登記原因(取壊し)は同一であるが、登記原因の日付が異なるから、同条ただし書前段には当たらない。また、この場合を掲げた規定は不動産登記規則35条にもない。したがって、同条本文により、建物ごとに申請情報を作成して提供しなければならない。
問題:
地役権図面及び地役権の登記がある土地の分筆の登記に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 地役権図面は、地積測量図と同様に、原則として250分の1の縮尺により作成しなければならない。
イ. 地役権図面(書面である場合に限る。)には、作成の年月日を記録し、承役地の所有者である地役権設定者が署名し、又は記名押印しなければならない。
ウ. 承役地についてする地役権の登記がある土地について分筆の登記を申請する場合において、地役権設定の範囲が分筆後の土地の一部であるときは、当該地役権設定の範囲を申請情報の内容とし、当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面を提供しなければならない。
エ. 承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、地役権設定の範囲が分筆後の甲土地のみに存することとなり、乙土地に地役権が存しないこととなるとき(不動産登記法40条の場合を除く。)は、登記官は、乙土地の登記記録に当該地役権の登記を転写した上で、これを抹消する記号を記録しなければならない。
オ. 登記官は、地役権図面を添付情報とする申請に基づく分筆の登記をしたときは、従前の地役権図面を閉鎖しなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・イ・エの3つである。
解説:
ア 誤り。不動産登記令2条4号は、地役権図面を「地役権設定の範囲が承役地の一部である場合における当該地役権設定の範囲を明らかにする図面であって、法務省令で定めるところにより作成されるもの」と定義している。そして、不動産登記規則79条1項は、「地役権図面には、地役権設定の範囲を明確にし、方位、縮尺、地番及び隣地の地番並びに申請人の氏名又は名称を記録しなければならない。」と定め、同条2項は、「地役権図面は、適宜の縮尺により作成することができる。」と定めている。これに対し、地積測量図については、同規則77条4項が、「地積測量図は、二百五十分の一の縮尺により作成するものとする。ただし、土地の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない。」と定めている。地役権図面は適宜の縮尺により作成することができ、250分の1を原則とするものではない。
イ 誤り。不動産登記規則79条3項は、「地役権図面には、作成の年月日を記録しなければならない。」と定め、同条4項は、「地役権図面(書面である場合に限る。)には、地役権者が署名し、又は記名押印しなければならない。」と定めている。署名又は記名押印をするのは地役権者であって、承役地の所有者である地役権設定者ではない。なお、土地所在図、地積測量図、建物図面及び各階平面図(書面である場合に限る。)については、同規則74条2項が、「作成の年月日を記録し、申請人が記名するとともに、その作成者が署名し、又は記名押印しなければならない。」と定めており、地役権図面とは定め方が異なる。
ウ 正しい。不動産登記令別表8の項は、分筆の登記の申請情報として、「地役権の登記がある承役地の分筆の登記を申請する場合において、地役権設定の範囲が分筆後の土地の一部であるときは、当該地役権設定の範囲」を掲げ(申請情報欄ロ)、添付情報として、この場合における「当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報又は当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面」を掲げている(添付情報欄ロ)。この分筆の登記をするときは、登記官は、分筆後の甲土地又は乙土地の登記記録の当該地役権に関する登記に当該地役権設定の範囲及び地役権図面番号を記録しなければならず(不動産登記規則103条1項)、要役地の登記記録についても変更の登記をしなければならない(同条2項)。
エ 誤り。不動産登記規則104条4項は、「第二項の規定は、承役地についてする地役権の登記がある甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、乙土地に地役権が存しないこととなるとき(法第四十条の場合を除く。)について準用する。」と定めている。準用される同条2項は、「分筆後の甲土地の登記記録の当該権利に関する登記についてする付記登記によって乙土地について当該権利が消滅した旨を記録しなければならない。この場合には、第百二条第一項の規定にかかわらず、当該消滅した権利に係る権利に関する登記を乙土地の登記記録に転写することを要しない。」としている。したがって、本肢の場合には、分筆後の甲土地の登記記録の地役権の登記についてする付記登記によって乙土地について地役権が消滅した旨を記録するのであり、乙土地の登記記録に地役権の登記を転写することを要しない。なお、分筆後の甲土地に地役権が存しないこととなるとき(法40条の場合を除く。)については、同条5項が同条3項を準用し、分筆後の甲土地の登記記録の地役権の登記についてする付記登記によって分筆後の甲土地について地役権が消滅した旨を記録し、当該地役権の登記を抹消する記号を記録するものとしている。
オ 正しい。不動産登記規則87条1項は、「登記官は、地役権の登記の抹消をしたとき又は地役権図面を添付情報とする申請に基づく分筆の登記、合筆の登記若しくは地役権の変更の登記若しくは更正の登記をしたときは、従前の地役権図面を閉鎖しなければならない。」と定めている。なお、登記官は、申請情報と併せて地役権図面の提供があった場合において、当該申請に基づく登記をしたときは、地役権図面に地役権図面番号を付さなければならず(同規則86条1項前段)、地役権図面番号は1年ごとに更新するものとされている(同条3項)。
問題:
土地家屋調査士法人(以下「調査士法人」という。)の社員の脱退、解散、継続及び合併に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 調査士法人の社員である土地家屋調査士が、法務大臣から2年以内の業務の停止の処分を受けたときは、当該社員は、当該調査士法人を脱退する。
イ. 調査士法人は、社員が1人となったときは、解散する。
ウ. 社員が1人である調査士法人において、当該社員の土地家屋調査士の登録が取り消されたことにより当該調査士法人が解散したときは、清算人は、新たに社員を加入させて調査士法人を継続することができる。
エ. 調査士法人の清算人は、土地家屋調査士でなければならない。
オ. 調査士法人は、総社員の同意があるときは、他の調査士法人と合併することができ、合併は、合併契約において定めた効力発生日にその効力を生ずる。
答え:
正しいものは、ア・エの2つである。
解説:
ア 正しい。土地家屋調査士法38条は、「調査士法人の社員は、次に掲げる理由によつて脱退する。」とし、「調査士の登録の取消し」(1号)、「定款に定める理由の発生」(2号)、「総社員の同意」(3号)、「第二十八条第二項各号のいずれかに該当することとなつたこと。」(4号)及び「除名」(5号)を掲げている。同法28条2項は、社員となることができない者として、「第四十二条の規定により業務の停止の処分を受け、当該業務の停止の期間を経過しない者」(1号)、同法43条1項の規定により調査士法人が解散又は業務の全部の停止の処分を受けた場合においてその処分を受けた日以前30日内にその社員であった者で所定の期間を経過しないもの(2号)及び「調査士会の会員でない者」(3号)を掲げている。そして、同法42条は、調査士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該調査士に対し、「戒告」(1号)、「二年以内の業務の停止」(2号)又は「業務の禁止」(3号)の処分をすることができると定めている。社員が同条2号の業務の停止の処分を受けたときは、同法28条2項1号に該当することとなるから、同法38条4号により脱退する。
イ 誤り。土地家屋調査士法39条1項は、「調査士法人は、次に掲げる理由によつて解散する。」とし、「定款に定める理由の発生」(1号)、「総社員の同意」(2号)、「他の調査士法人との合併」(3号)、「破産手続開始の決定」(4号)、「解散を命ずる裁判」(5号)、「第四十三条第一項第三号の規定による解散の処分」(6号)及び「社員の欠亡」(7号)を掲げている。解散の理由とされているのは社員の欠亡であり、社員が1人となったことは解散の理由とされていない。なお、同条2項は、調査士法人は、同条1項3号の事由以外の事由により解散したときは、解散の日から2週間以内に、その旨を、主たる事務所の所在地の調査士会及び調査士会連合会に届け出なければならないとしている。
ウ 誤り。土地家屋調査士法39条の2は、「調査士法人の清算人は、社員の死亡により前条第一項第七号に該当するに至つた場合に限り、当該社員の相続人(第四十一条第三項において準用する会社法第六百七十五条において準用する同法第六百八条第五項の規定により社員の権利を行使する者が定められている場合にはその者)の同意を得て、新たに社員を加入させて調査士法人を継続することができる。」と定めている。継続が認められるのは、社員の死亡により社員の欠亡(同法39条1項7号)に該当するに至った場合に限られる。本肢の場合、唯一の社員は調査士の登録の取消しにより脱退し(同法38条1号)、その結果として社員の欠亡に該当するに至ったものであり、社員の死亡によるものではないから、同法39条の2による継続をすることはできない。
エ 正しい。土地家屋調査士法39条3項は、「調査士法人の清算人は、調査士でなければならない。」と定めている。なお、調査士法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属し(同法39条の3第1項)、その監督に関する事件は、主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する(同法39条の4)。
オ 誤り。土地家屋調査士法40条1項は、「調査士法人は、総社員の同意があるときは、他の調査士法人と合併することができる。」と定め、同条2項は、「合併は、合併後存続する調査士法人又は合併により設立する調査士法人が、その主たる事務所の所在地において登記することによつて、その効力を生ずる。」と定めている。合併の効力は、登記によって生ずるのであって、合併契約で定めた効力発生日に生ずるのではない。なお、合併をする調査士法人の債権者は合併について異議を述べることができ(同法40条の2第1項)、合併をする調査士法人は、債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨等を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければならず、その期間は1箇月を下ることができない(同条2項)。また、調査士法人は、合併したときは、合併の日から2週間以内に、登記事項証明書(合併により設立する調査士法人にあっては、登記事項証明書及び定款の写し)を添えて、その旨を主たる事務所の所在地の調査士会及び調査士会連合会に届け出なければならない(同法40条3項)。
問題:
筆界特定の申請に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 筆界特定の申請は、対象土地について筆界特定を必要とする理由を明らかにしてしなければならず、この理由として明らかにすべきものは、筆界特定の申請に至る経緯その他の具体的な事情である。
イ. 甲土地と乙土地との筆界及び甲土地と丙土地との筆界について筆界特定の申請をする場合には、対象土地が異なるから、これらの申請を一の筆界特定申請情報によってすることはできない。
ウ. 一筆の土地の一部の所有権を取得した者は、当該一部について分筆の登記及び自己を登記名義人とする所有権の移転の登記がされるまでは、筆界特定の申請をすることができない。
エ. 筆界特定の申請人が対象土地の筆界として特定の線を主張するときは、その線及びその根拠を筆界特定申請情報の内容とするものとされ、これを筆界特定申請情報の内容とするに当たっては、図面を利用する等の方法により、現地の状況及び筆界として主張されている線の位置を具体的に明示するものとされている。
オ. 筆界特定申請書を法務局又は地方法務局に提出する方法による筆界特定の申請は、対象土地の所在地を管轄する登記所を経由してすることができる。
答え:
正しいものは、ア・エ・オの3つである。
解説:
ア 正しい。不動産登記法131条3項は、「筆界特定の申請は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。」とし、「申請の趣旨」(1号)、「筆界特定の申請人の氏名又は名称及び住所」(2号)、対象土地に係る所在及び地番(表題登記がない土地にあっては所在)(3号)、「対象土地について筆界特定を必要とする理由」(4号)及び法務省令で定める事項(5号)を掲げている。そして、不動産登記規則207条1項は、「法第百三十一条第三項第四号に掲げる事項として明らかにすべきものは、筆界特定の申請に至る経緯その他の具体的な事情とする。」と定めている。なお、筆界特定の申請人は、政令で定めるところにより、手数料を納付しなければならず(同法131条4項)、手数料を納付しないときは、申請は却下される(同法132条1項8号)。
イ 誤り。不動産登記規則208条は、「対象土地の一を共通にする複数の筆界特定の申請は、一の筆界特定申請情報によってすることができる。」と定めている。甲土地と乙土地との筆界についての申請と甲土地と丙土地との筆界についての申請とは、対象土地のうち甲土地を共通にするから、一の筆界特定申請情報によってすることができる。
ウ 誤り。不動産登記規則207条2項は、不動産登記法131条3項5号の法務省令で定める事項の一つとして、「申請人が一筆の土地の一部の所有権を取得した者であるときは、その旨」(4号)を掲げ、同規則209条1項は、筆界特定の申請をする場合に提供しなければならない情報の一つとして、「申請人が一筆の土地の一部の所有権を取得した者であるときは、当該申請人が当該一筆の土地の一部について所有権を取得したことを証する情報」(5号)を掲げている。このように、同規則は、一筆の土地の一部の所有権を取得した者が、その一部についての分筆の登記及び所有権の移転の登記がされていない段階で筆界特定の申請人となる場合を予定しており、これらの登記がされるまで申請をすることができないとはされていない。筆界特定手続に関する事務の取扱いについての通達(平成17年12月6日法務省民二第2760号)も、筆界特定の申請をすることができる者は土地の所有権登記名義人等であるとしたうえで、「その他、1筆の土地の一部の所有権を取得した者も、当該土地を対象土地の1つとする筆界特定の申請をすることができる(規則第207条第2項第4号参照)」とし、1筆の土地の一部の所有権を取得した原因(時効取得・売買その他の承継取得のいずれか)は問わず、申請人が所有権を取得した土地の部分が筆界特定の対象となる筆界に接していることも要しないとしている(句読点及び数字の表記は改めた。)。なお、同法123条5号は、「所有権登記名義人等」を、「所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人、所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者、表題登記がない土地にあっては所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。」と定義している。
エ 正しい。不動産登記規則207条3項は、筆界特定申請情報の内容とするものとして、「申請人が対象土地の筆界として特定の線を主張するときは、その線及びその根拠」(5号)を掲げ、同条4項は、同条3項5号に掲げる事項等を筆界特定申請情報の内容とするに当たっては、「図面を利用する等の方法により、現地の状況及び筆界として主張されている線の位置を具体的に明示するものとする。」と定めている。同条3項5号は、申請人が特定の線を主張する「とき」の定めであり、特定の線を主張することが筆界特定の申請の要件とされているものではない。なお、同項6号は、「対象土地の所有権登記名義人等であって申請人以外のものが対象土地の筆界として特定の線を主張しているときは、その線」を掲げている。
オ 正しい。不動産登記規則206条2号は、不動産登記法131条5項において準用する同法18条2号の規定により筆界特定申請書を法務局又は地方法務局に提出する方法による筆界特定の申請を「筆界特定書面申請」と定義し、同規則211条9項は、「筆界特定書面申請は、対象土地の所在地を管轄する登記所を経由してすることができる。」と定めている。筆界特定の申請は、筆界特定登記官に対してするものであり(同法131条1項)、筆界特定申請情報は法務局又は地方法務局に提供する(同法131条5項において読み替えて準用する同法18条)が、書面申請については、対象土地の所在地を管轄する登記所を経由してすることもできる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・不在者の財産管理と失踪の宣告) | 不在者の財産管理人の改任と権限外行為の許可、失踪の宣告の請求権者、特別失踪の死亡の擬制の時期、失踪の宣告の取消しと返還義務 | 民法25条〜28条、30条、31条、32条、103条 |
| 第2問 | 民法(物権・添付) | 付合による他の権利の帰すう、建前に第三者が工事を施した場合の所有権の帰属と価格の比較時点、賃借人の増築部分と区分所有権、償金の請求 | 民法242条〜248条、703条、704条、最判昭54.1.25、最判昭44.7.25 |
| 第3問 | 民法(相続・遺言執行者) | 遺言執行者が数人ある場合の任務の執行、相続人の処分行為の効力と善意の第三者、相続させる旨の遺言と真正な登記名義の回復、預貯金債権の解約の申入れの範囲、復任権 | 民法1013条、1014条、1016条、1017条、平成30年法律第72号附則2条、8条、最判平11.12.16 |
| 第4問 | 不動産登記法(区分建物・敷地権) | 敷地権の発生・消滅を原因とする建物の表題部の変更の登記の添付情報(規約設定証明情報・他の登記所管轄の土地の登記事項証明書の要否)、新たに敷地権の登記をした場合の建物のみに関する旨の付記登記の対象、敷地権でない権利となった場合・敷地権の不存在の場合の土地の登記記録の処理 | 不動産登記法73条1項、不動産登記令別表15の項、不動産登記規則123条、124条、126条、区分所有法5条1項、22条 |
| 第5問 | 不動産登記令・不動産登記規則(申請情報) | 一の申請情報による申請(二以上の不動産について登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一である場合、同一の不動産についての表題部の変更・更正の登記、区分と合併)、登記原因の日付が異なる場合 | 不動産登記令4条、不動産登記規則35条1号〜7号 |
| 第6問 | 不動産登記規則・不動産登記令(地役権図面・分筆) | 地役権図面の縮尺・署名等(地積測量図・土地所在図等との対比)、承役地の分筆の申請情報・添付情報、乙土地に地役権が存しないこととなる場合の付記登記、地役権図面の閉鎖と図面番号 | 不動産登記令2条4号、別表8の項、不動産登記規則74条2項、77条4項、79条、86条、87条1項、103条、104条 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(調査士法人) | 業務の停止の処分と法定脱退、解散事由(社員の欠亡)、社員の死亡に限った法人の継続、清算人の資格と裁判所の監督、合併の要件・効力発生時期・債権者異議 | 土地家屋調査士法28条2項、38条、39条、39条の2〜39条の4、40条、40条の2、42条 |
| 第8問 | 筆界特定 | 筆界特定を必要とする理由、対象土地の一を共通にする複数の申請、一筆の土地の一部の所有権を取得した者による申請、申請人が主張する筆界の線の明示、書面申請の登記所経由 | 不動産登記法123条5号、131条、132条1項8号、不動産登記規則206条、207条、208条、209条1項、211条9項、平成17年12月6日民二第2760号通達 |