この記事の要点

  • 和解に代わる決定は、簡易裁判所の金銭の支払を求める訴訟で、被告が原告の言い分を争わない場合に、裁判所が分割払いや支払時期の猶予を定めたうえで支払を命じる「決定」です(民事訴訟法275条の2)
  • 当事者は決定の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ、異議があれば決定は効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます
  • 少額訴訟の判決で分割払いなどを定める仕組み(375条)とは、裁判の形式(決定か判決か)・期間の上限(5年か3年か)・不服申立ての方法が異なります

「和解に代わる決定」とは、当事者の話し合いで和解が成立していなくても、裁判所が分割払いなど和解に近い内容を「決定」という形で示し、当事者から異議が出なければ、和解が成立したのと同じ効力を持たせる仕組みです。民事訴訟法の「簡易裁判所の訴訟手続に関する特則」の章に置かれている規定です。

これは執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でこの決定が出されるかどうかの見通しや、異議を出すべきかどうかといった判断はここでは扱いません。

どんなときに使われるか(要件)

条文が定める要件は、次のとおりです(275条の2第1項)。

  1. 金銭の支払を求める訴えであること
  2. 被告が口頭弁論(法廷での審理)で、原告の主張した事実を争わず、そのほかに反論や証拠などの「防御の方法」を何も出していないこと
  3. 被告の資力(支払能力)その他の事情を考慮して、裁判所が相当と認めること
  4. 裁判所が原告の意見を聴くこと

たとえば、被告がお金を借りたこと自体は認めたうえで、一括では払えないと述べているような場面が想定されます。なお、条文は「決定をすることができる」と定めており、この決定をするかどうかは裁判所の判断に委ねられています。当事者が希望すれば必ず出してもらえる、という仕組みではありません。

決定で定められる内容

和解に代わる決定では、裁判所は請求された金銭の支払を命じるとともに、次のような定めをすることができます(275条の2第1項・2項)。

  • 支払時期の定め(支払の猶予)や分割払いの定め:後で説明する2週間の異議申立て期間が経過した時から、5年を超えない範囲で定めます
  • 期限の利益の喪失の定め:分割払いを定める場合は、被告が支払を怠ったときに残りを一括で支払わなければならなくなる旨(期限の利益の喪失)を必ず定めます
  • 遅延損害金の免除の定め:上記の支払時期や分割払いの定めとあわせて、定めどおりに支払ったときは、訴えを起こした後の遅延損害金(支払が遅れたことによる賠償金)の支払義務を免除する旨を定めることもできます

2週間以内の異議で失効、異議がなければ和解と同じ効力

決定に対しては、当事者は、決定の告知を受けた日から2週間の不変期間内に、決定をした裁判所に異議を申し立てることができます(275条の2第3項)。不変期間とは、裁判所の判断で延ばしたり縮めたりすることができない期間のことです(96条1項ただし書。遠隔の地に住む人のために裁判所が「付加期間」を定めることができる例外はあります〔同条2項〕)。異議を申し立てられるのは「当事者」とされており、被告だけでなく原告も含まれます。

  • 期間内に異議があったとき:決定は効力を失います(同条4項)
  • 期間内に異議がなかったとき:決定は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(同条5項)

裁判上の和解は、確定判決と同一の効力を持ち(267条1項。現行の条文は、裁判所書記官が和解について電子調書を作成してファイルに記録したときに、その記録が確定判決と同一の効力を有する、という形で定めています)、強制執行の根拠となる「債務名義」にあたります(民事執行法22条7号)。裁判上の和解の効力については訴訟上の和解(裁判上の和解)の基礎で詳しく取り上げています。つまり、異議が出ずに決定が裁判上の和解と同一の効力を持った後、定めどおりの支払がされなければ、この決定を根拠に強制執行の手続きへ進むことができます。

少額訴訟の「分割払いの判決」との違い

60万円以下の金銭請求に使える少額訴訟には、判決の中で分割払いなどを定める仕組み(375条)があります。どちらも、支払時期や分割払いの定め、期限の利益の喪失の定め、訴え提起後の遅延損害金の免除の定めをする点は共通していますが、次の点が異なります。

項目 和解に代わる決定(275条の2) 少額訴訟の判決による支払の猶予(375条)
裁判の形式 決定 請求を認容する判決
主な要件 被告が原告の主張した事実を争わず、防御の方法も出さない場合で、相当と認めるとき(原告の意見を聴く) 被告の資力その他の事情を考慮して、特に必要があると認めるとき
期間の上限 異議申立て期間の経過時から5年 判決の言渡しの日から3年
不服申立て 告知から2週間以内の異議で決定は効力を失う 支払の猶予などの定めに関する裁判には不服を申し立てることができない(375条3項)

140万円を超える請求は弁護士の領域

認定を受けた司法書士が訴訟の代理人として関与できるのは、簡易裁判所の訴訟で、訴額(訴訟の目的の価額)が140万円を超えない場合に限られます(司法書士法3条1項6号イ・裁判所法33条1項1号)。140万円を超える請求については、弁護士にご相談ください。

まとめ

和解に代わる決定は、簡易裁判所の金銭の支払を求める訴訟で、被告が原告の言い分を争わない場合に、裁判所が5年以内の分割払いや支払猶予などを定めて支払を命じる仕組みです。告知から2週間以内に当事者から異議があれば効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます。異議の期限は、原則として裁判所の判断で延ばすことのできない不変期間ですので、決定の告知を受けたら日付を確認しておくことが大切です。具体的な事案での対応はご事情によって異なりますので、お近くの司法書士(訴額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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