この記事の要点
- 少額訴訟の判決には控訴できず、不服があるときは判決をした簡易裁判所に「異議」を申し立てる。期限は電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間(民事訴訟法377条・378条1項)
- 適法な異議があると、訴訟は口頭弁論の終結前の状態に戻り、通常の手続で審理と裁判がやり直される。ただし反訴ができないことなど、一部のルールは引き続き適用される(同法379条)
- 異議の後に出た判決にも控訴はできず、上級の裁判所に判断を求める道としては、憲法違反を理由とする場合に限って最高裁判所に上告する道が残されているだけ(同法380条)
少額訴訟の判決に納得できない場合、地方裁判所に控訴することはできません(民事訴訟法377条)。用意されているのは、判決をした同じ簡易裁判所に「異議(いぎ)」を申し立てて、通常の手続で審理し直してもらう方法です。通常の判決に対する控訴の仕組みは簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へで整理しましたので、ここでは異議の申立てから、その後の審理と判決までに絞ってご説明します。
これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。異議を申し立てるべきかどうか、異議によって結論が変わる見込みがあるかといった個別の判断はここでは扱いません。
異議の期限は2週間・申立て先は判決をした裁判所
異議は、電子判決書(判決の内容を記録した電子データで、従来の判決書にあたるもの)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に申し立てます(民事訴訟法378条1項本文)。少額訴訟の判決は、口頭弁論の終結後すぐに言い渡す場合には、電子判決書を作らずに言い渡すこともでき、その場合は当事者、主文、請求、理由の要旨などを記録した電子調書が作られ(同法374条2項・254条2項)、この電子調書の送達を受けた日が期間の基準になります。送達を受ける前に申し立てた異議も有効です(同法378条1項ただし書)。
不変期間とは、裁判所が伸ばしたり縮めたりすることのできない期間です(同法96条1項ただし書。遠い土地に住む人のために付加期間を定める例外が同条2項にあります)。異議の申立ては書面ですることとされています(民事訴訟規則230条・217条1項)。もっとも、法令で書面によるとされている申立ても、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所のオンラインシステムを使って行うことができます(民事訴訟法132条の10第1項)。また、弁護士などの、依頼を受けて訴訟代理人になった人(簡易裁判所の許可を得て代理人になった人を除きます)は、原則としてオンラインで申し立てなければなりません(同法132条の11第1項1号)。具体的な方法は、裁判所の案内で確認してください。
この「電子判決書」などの送達を基準とする定めや、オンライン申立てに関する現在の定めは、2026年5月21日に施行された民事訴訟法の改正(令和4年法律第48号)によるものです。同日より前に提起された少額訴訟の判決に対する異議については、改正前の規定によることとされています(令和4年法律第48号附則22条)。オンライン申立ての定めも、同日以後に提起された事件に適用されます(同附則11条)。
異議の放棄・取下げと、不適法な異議の却下
異議を申し立てる権利は、申立ての前に限って放棄することができます(民事訴訟法378条2項・358条)。いったん申し立てた異議は、通常の手続による第一審の終局判決があるまで取り下げることができますが、取下げには相手方の同意が必要です(同法378条2項・360条1項・2項)。また、異議が不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は口頭弁論を開かずに、判決で異議を却下することができます(同法378条2項・359条)。
異議の後は「通常の手続」で審理し直す
適法な異議があったときは、訴訟は口頭弁論の終結前の程度に戻り、通常の手続によって審理と裁判が行われます(民事訴訟法379条1項)。少額訴訟の特徴である「原則として最初の期日で審理を終える」というルール(同法370条)や、すぐに取り調べられる証拠に限るというルール(同法371条)は、異議後の審理に準用される規定には含まれていません(同法379条2項)。そのため、異議後の審理は1回の期日で終わるとは限りません。
一方で、次のルールは異議後の審理にも準用されます(同法379条2項)。
- 反訴(被告の側から原告に新たな請求を起こすこと)はできない(同法369条)
- 証人や当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序で行う(同法372条2項)
- 請求を認める判決で、被告の資力などを考えて特に必要があるときは、判決の言渡しの日から3年を超えない範囲で、支払時期の定めや分割払いの定めなどをすることができる(同法375条)
異議後の判決は、手形訴訟の異議後の判決に関する規定(同法362条)が準用されるため、異議後の審理の結論が少額訴訟の判決と同じであれば、その判決を「認可」し(少額訴訟の判決の手続が法律に違反していた場合を除きます)、それ以外の場合は少額訴訟の判決を「取り消し」たうえで判断を示す形になります。異議後の訴訟費用の負担についても、手形訴訟の規定(同法363条)が準用されます。なお、異議後の訴訟の電子判決書などには「少額異議判決」と表示することとされています(民事訴訟規則231条1項)。
異議後の判決にも控訴はできない
異議の後に出た判決に対しても、控訴をすることはできません(民事訴訟法380条1項)。これは、異議後に通常の手続で審理してされた判決(同法379条1項)だけでなく、口頭弁論を開かずに不適法な異議を却下した判決(同法378条2項・359条)にも当てはまります。
上級の裁判所に判断を求める道として残されているのは、同法380条2項が準用する327条(見出しは「特別上告」)により、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限って、最高裁判所に上告する道です。つまり、少額訴訟の判決に対する不服申立ては、原則として判決をした簡易裁判所での異議と、その後の審理の中で決着がつく仕組みになっています。
少額訴訟の手続きそのもの(60万円以下という要件や、被告が最初の期日で弁論をする前であれば通常の手続への移行を申し出られることなど)は、少額訴訟とは|60万円以下・原則1回の期日で終わる手続きの仕組みと注意点で整理しています。
まとめ
少額訴訟の判決には控訴ができず、不服があるときは、電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に、判決をした簡易裁判所へ異議を申し立てます。適法な異議があれば通常の手続で審理し直されますが、反訴ができないことなど一部のルールは残り、異議後の判決にも控訴はできません。期限が短い手続きですので、判決を受け取ったら早めに、お近くの司法書士(請求額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民事訴訟法 第96条・第132条の10・第132条の11・第254条・第327条・第358条〜第363条・第368条〜第375条・第377条〜第380条、附則(令和4年法律第48号)第11条・第22条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- 民事訴訟規則 第217条・第218条・第230条・第231条(裁判所ウェブサイト 規則集PDF): https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf
- 裁判所ウェブサイト「民事規則集」(上記PDFの掲載ページ): https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/kisokusyu/minzi_kisoku/index.html