この記事の要点

  • 公示送達は、相手の住所・居所その他送達をすべき場所が分からないときなどに、申立てにより裁判所書記官が行う特別な送達の方法です(民事訴訟法110条1項)
  • 令和8年5月21日以降に提起された訴えなどでは、裁判所の掲示場(または裁判所内の端末の画面)に加えて、インターネットで誰でも見られる状態に置く方法で行われ、原則としてその措置を始めた日から2週間を経過すると効力が生じます(同111条・112条)
  • 申立てには住民票や現地の状況などの所在調査の結果を示すのが一般的です。また、少額訴訟では通常の手続きに移り、支払督促ではそもそも使えないという制約もあります

これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でどの手続きを選ぶべきかの判断はここでは扱いません。

そもそも「送達」とは

送達(そうたつ)とは、裁判所が訴状や期日の呼出状などの書類を、決められた方式で当事者に正式に届ける手続きです。送達は特別の定めがある場合を除いて裁判所の職権で行われ、その事務は裁判所書記官が取り扱います(民事訴訟法98条)。訴えを起こすと、訴状は被告に送達しなければならないとされています(同138条1項)。

送達は、原則として送達を受けるべき人に書類を手渡す方法で行い(同102条の2)、その場所は住所・居所・営業所または事務所が基本です(同103条1項)。そのため、相手の居場所が分からないと、訴状が届かず裁判を先に進められないという問題が生じます。そこで用意されているのが公示送達です。

公示送達が使える場合(民事訴訟法110条)

公示送達は、次のような場合に、申立てにより裁判所書記官が行うことができます(同110条1項)。

  • 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合(同項1号)
  • 書留郵便等に付する送達(同107条1項)によっても送達できない場合(同項2号)
  • 外国でする送達ができない、またはできないと認めるべき場合など(同項3号・4号)

1号には「第109条の2の規定により送達をすることができる場合を除く」という括弧書きがあります。109条の2は、オンラインで送達を受ける旨の届出をしている人に対し、裁判所のシステムを使って送達する方法です。この方法で送達できる相手については、居場所が分からなくても1号による公示送達はせず、そちらの方法で送達するということです。

このほか、訴訟の遅れを避けるため必要があるときは、申立てがなくても裁判所が書記官に公示送達を命じることができ(同条2項)、同じ当事者に対する2回目以降の公示送達は、原則として職権で行われます(同条3項)。

公示送達の方法と、効力が生じる時期

公示送達の方法は、令和4年の民事訴訟法改正(IT化)で変わりました。現在の111条では、書記官が書類を保管し、いつでも本人に渡す旨などを、最高裁判所規則で定める方法で不特定多数の人が閲覧できる状態に置くとともに、裁判所の掲示場に掲示するか、裁判所に設置した端末の画面で閲覧できる状態に置くことで行うとされています。最高裁判所規則で定める方法とは、インターネットを使う方法です(民事訴訟規則46条1項)。書記官は、公示送達があったことを官報や新聞に掲載することもできます(同条2項)。

この改正は令和8年5月21日に施行されました。改正前の公示送達は「裁判所の掲示場に掲示してする」だけの方法でしたが、改正後の規定は施行日以後に提起された訴えなどに適用され、施行日前の事件は従前の例によるとされています(令和4年法律第48号附則8条)。

効力が生じるのは、原則として上記の措置を始めた日から2週間を経過した時です(民事訴訟法112条1項本文)。同じ当事者に対する2回目以降の公示送達は、措置を始めた日の翌日に効力が生じます(同項ただし書)。外国でする送達についての公示送達では、この期間は6週間とされ(同条2項)、これらの期間は短縮できません(同条3項)。

申立ての前に必要な所在調査

公示送達は、相手が実際には書類を目にしないまま手続きが進む仕組みです。そのため申立てでは、相手の居場所が本当に分からないことを示す調査結果を添えるのが一般的です。

裁判所が公開している書式例(東京地方裁判所の「公示送達申立書兼調査報告書」)を見ると、住民票や戸籍の附票で住民登録上の住所を確認したうえで、その場所の現地調査(表札・郵便受け・電気などのメーターの状況など)、勤務先の調査、管理会社や近隣の方からの聞き取り、相手への連絡を試みた結果などを報告する形になっています。求められる調査の範囲や書式は裁判所によって異なることがありますので、申立先の裁判所の案内を確認することが基本です。

また、住所は分かっているものの不在で受け取ってもらえないという場合には、公示送達より先に、書留郵便等に付する送達(民事訴訟法107条)などの方法が問題になります。公示送達が使えるのは110条1項の各号に当たる場合に限られ、その中心にあるのが「送達すべき場所が分からない」場合(同項1号)です。

公示送達で注意すべきこと

まず、使える手続きに制約があります。少額訴訟では、公示送達によらなければ被告に最初の期日の呼出しができないときは、裁判所は通常の手続きに移す決定をしなければなりません(同373条3項3号。少額訴訟の仕組みは少額訴訟とは|60万円以下・原則1回の期日で終わる手続きの仕組みと注意点で整理しています)。支払督促は、日本で公示送達によらずに送達できる場合に限って発することができるため(同382条ただし書)、相手の居場所が分からないときは使えません。

次に、公示送達で呼出しを受けた当事者については、期日に欠席しても相手の主張を認めたものとみなす扱い(自白の擬制)は働きません(同159条3項ただし書。詳しくは訴状が届いたら|答弁書を出さないとどうなるか)。原告の側は、欠席だけで主張が認められるわけではないことを前提に、証拠をそろえておく必要があります。

最後に、所在調査は形式的に済ませないことが大切です。民事訴訟法には、自分の責めに帰することができない事由で控訴期間(判決の送達を受けた日から2週間の不変期間。同285条)などの不変期間を守れなかった当事者が、その事由がなくなってから1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限り、遅れた訴訟行為をすることができる仕組みがあります(同97条1項)。公示送達で手続きが進んだことを知らないまま控訴期間が過ぎた相手方について、期間を守れなかったことに責任がないと認められれば、この仕組みによって後から判決を争われ、手続きが長引くおそれがあります。責任がないといえるかどうかは、期間を守れなかった相手方の側の事情から判断されるものです。ただ、本当は居場所を調べられたのに公示送達で手続きを進めた場合には、相手方が訴えを知らなかったことに落ち度はないと判断される方向に働きやすく、そのような争いを招くおそれが高まると考えられます。

まとめ

公示送達は、相手の住所・居所その他送達をすべき場所が分からないときなどに、申立てにより裁判所書記官が行う送達の方法です(民事訴訟法110条)。令和8年5月21日以降に提起された訴えなどでは、インターネットで閲覧できる状態に置く措置と裁判所での掲示等によって行われ、原則として措置の開始から2週間で効力が生じます(同111条・112条)。申立てには住民票や現地調査などの所在調査の結果を示すのが一般的で、少額訴訟では通常の手続きに移り、支払督促ではそもそも使えないという制約もあります。

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参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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