この記事の要点

  • 補助は、判断能力が「不十分」な方のための類型で、本人以外の人が申し立てるときは本人の同意が必要です(民法15条2項)
  • 補助開始の審判だけでは補助人に権限は生まれず、「同意権を付ける審判」か「代理権を付ける審判」の少なくとも一方を一緒にしなければなりません(民法15条3項)
  • 同意権を付けられるのは、民法13条1項に挙げられた行為の一部に限られます(民法17条1項ただし書)

結論からお伝えします。補助は、本人に判断能力がある程度残っていることを前提に、本人が納得した範囲で、必要な支援だけを選んで付ける仕組みです。後見・保佐・補助の3類型の全体像は法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で整理していますので、この記事では補助に絞って見ていきます。

※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

補助の対象になる方と、申し立てられる人

民法15条1項は、補助開始の審判の対象を「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」と定めています。事理を弁識する能力とは、物事の損得や結果を見分ける力のことです。ただし、判断能力を欠く常況にある方(後見の対象)や、著しく不十分な方(保佐の対象)は、補助ではなくそれぞれの類型の対象になります(同項ただし書)。

申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官です(同項本文)。このほか、たとえば老人福祉法32条は、65歳以上の方について、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは市町村長も補助開始の審判を請求できると定めています。

本人以外が申し立てるときは、本人の同意が必要

本人以外の人の請求で補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません(民法15条2項)。後見開始(民法7条)や保佐開始(民法11条)の条文には、このような本人の同意の定めはありません。

条文そのものに理由は書かれていませんが、補助の制度が新しく設けられた平成11年の民法改正に先立って、法務省民事局が公表した「民法の一部を改正する法律案等要綱の概要」(平成11年2月)は、補助について「自己決定の尊重の観点から」本人の申立てまたは同意を審判の要件とする、と説明しています。同じ資料は、補助の対象を、後見や保佐の程度に至らない「軽度の状態にある者」としています。この2つの説明を合わせて読むと、判断能力が一定程度残っている方について、支援を受けるかどうかを本人自身が決められるようにした仕組みといえます。

本人の同意が求められるのは、入り口の補助開始の審判だけではありません。次に述べる同意権を付ける審判(民法17条2項)、代理権を付ける審判(民法876条の9第2項で準用する876条の4第2項)も、本人以外の人が請求するときは本人の同意が必要です。

補助開始の審判だけでは、補助人に権限はない

民法15条3項は、補助開始の審判は、民法17条1項の審判か876条の9第1項の審判と「ともにしなければならない」と定めています。補助人に何ができるかは、この2つの審判で決まります。

  • 同意権を付ける審判(民法17条1項)……家庭裁判所が定めた特定の法律行為を本人がするときに、補助人の同意が必要になります。補助人の同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)を得ずにした行為は、取り消すことができます(同条4項)。取り消すことができるのは、本人のほか、同意をすることができる補助人などです(民法120条1項)
  • 代理権を付ける審判(民法876条の9第1項)……家庭裁判所が定めた特定の法律行為について、補助人が本人に代わって行うことができるようになります

どちらか一方だけでも、両方を組み合わせてもかまいません。対象となる行為は、いずれも審判で個別に定められます。

同意権を付けられる範囲は、民法13条1項の行為の一部

同意権を付けられる行為は、民法13条1項に規定する行為の一部に限られます(民法17条1項ただし書)。民法13条1項は、借財や保証、不動産など重要な財産の権利の得喪、相続の承認・放棄や遺産分割など、保佐人の同意が必要な10種類の行為を挙げている条文です(内容は保佐人の同意が必要な行為とは?で解説しています)。補助では、この中から本人にとって必要なものを選んで付けることになります。

一方、代理権を付ける審判について、民法876条の9には、民法13条1項の範囲に限るという定めは置かれていません。

なお、補助人が本人の利益を害するおそれがないのに同意しないときは、本人の請求により、家庭裁判所が補助人の同意に代わる許可を与えることができます(民法17条3項)。

審判は後から取り消すこともできる

補助の原因(判断能力が不十分であること)がなくなったときは、家庭裁判所は、本人や補助人などの請求により補助開始の審判を取り消さなければなりません(民法18条1項)。同意権を付ける審判の全部または一部を取り消すこともでき(同条2項)、代理権を付ける審判も同様です(民法876条の9第2項で準用する876条の4第3項)。同意権と代理権の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は補助開始の審判も取り消さなければなりません(民法18条3項)。権限のない補助だけが残ることはない、という仕組みです。

改正の動き

成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が令和8年6月24日に公布されています。法務省の公表資料によれば、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化する内容で、成年後見制度の見直しに係る部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています(執筆時点で確認した法務省の公表ページには、具体的な施行日の記載はありません)。e-Gov法令検索に掲載されている改正後(未施行)の条文では、補助開始の審判は改正後の民法7条に置かれ、本人以外の請求には本人の同意が必要という原則を維持しつつ、「本人がその意思を表示することができない場合」は同意を要しないとするただし書が加わります(改正後の民法7条2項)。同意権の対象も、現在の民法13条1項の10種類をもとに、預金・貯金の預入れや払戻しの請求を加えるなどして11種類に整理された行為の中から家庭裁判所が定める形になり(改正後の民法9条2項)、判断能力を欠く常況にある方のための「特定補助人」の仕組みも設けられます(改正後の民法10条)。施行されるまでは、本記事で説明した現行の補助制度が適用されます。

まとめ

補助は、判断能力が不十分な方について、本人の同意を前提に、同意権・代理権のうち必要なものだけを選んで付ける仕組みです。補助開始の審判は同意権または代理権を付ける審判と一緒にしなければならず、同意権の範囲は民法13条1項の行為の一部に限られます。不要になった権限は後から取り消すこともできます。

補助の申立てや、どの行為に同意権・代理権を付けるかは、本人の状態や生活の状況によって判断が分かれます。具体的な手続きをご検討の際は、家庭裁判所の手続案内、お近くの司法書士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどの相談窓口にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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