この記事の要点
- 成年後見人の任務が終わったときは、成年後見人(またはその相続人)が、2か月以内に「管理の計算」をしなければなりません。期間は家庭裁判所が延ばすことができます(民法870条)
- 管理していた財産を引き継ぐ相手は、終わり方によって変わります。本人が亡くなったときは相続人、後見開始の審判が取り消されたときは本人、辞任・解任で交代するときは後任の成年後見人です
- 後見監督人がいるときはその立会いが必要で、返す金額には利息が付き、後見に関して生じた債権には時効があります。保佐人・補助人にも同じ規定が準用されています
成年後見は、いつまでも続くとは限りません。そして、成年後見人の任務が終わったときに「預かっていた通帳をそのまま渡せば終わり」というわけではなく、民法は、任務の終わりに「管理の計算」という締めくくりの作業を求めています。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
成年後見人の任務が終わる3つの場面と、財産を引き継ぐ相手
成年後見人の任務が終わる主な場面と、管理していた財産を引き継ぐ相手は、次のように整理できます。
- 本人(成年被後見人)が亡くなったとき:本人の財産は、相続の開始と同時に相続人が引き継ぎます(民法896条)。そのため、財産を引き継ぐ相手は、原則として相続人です。相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任します(民法951条・952条1項)。本人が亡くなった直後に成年後見人ができる限られた行為については成年後見人の仕事は本人が亡くなったら終わる?──死後事務でできることとできないことで解説しています
- 後見開始の審判が取り消されたとき:判断能力が回復するなどして家庭裁判所が後見開始の審判を取り消すと、成年後見そのものが終わり、本人が自分で財産を管理することになります。引き継ぐ相手は本人です。取消しの手続は判断能力が回復したら成年後見は終わる?──後見開始の審判の取消しのしくみをご覧ください
- 成年後見人が辞任・解任されたとき:成年後見そのものは続き、交代するのは成年後見人という「人」です。被後見人の財産を管理するのは後見人の役目ですから(民法859条1項)、引き継ぐ相手は後任の成年後見人です
このほか、成年後見人本人が亡くなった場合も任務は終わります。民法870条が「後見人又はその相続人は」と定めているとおり、この場合は成年後見人の相続人が管理の計算をすることになります。
共通の締めくくり──「管理の計算」(民法870条)
民法870条は、「後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない」と定めています。管理の計算とは、簡単にいえば、在任中の収入と支出を明らかにして、管理していた財産がいまどうなっているかを確定させる作業です。ただし書で「この期間は、家庭裁判所において伸長することができる」とされているので、2か月で終えることが難しい事情があるときは、家庭裁判所に期間を延ばしてもらう道があります。
終了したときに家庭裁判所へどのような報告や書類を出すかは、条文に細かく書かれているわけではなく、家庭裁判所ごとの案内に従うことになります(運用には地域差がありえますので、管轄の家庭裁判所でご確認ください)。
後見監督人がいるときは立会いが必要(民法871条)
後見監督人が選ばれている場合、管理の計算は、後見監督人の立会いのもとでしなければなりません(民法871条)。後見監督人の役割については後見監督人とは?成年後見人を見守る仕組みと選ばれるケースで解説しています。
返す金額には利息が付く(民法873条)
計算の結果、成年後見人が本人に返すべき金額がある場合も、逆に本人が成年後見人に返すべき金額(成年後見人が立て替えた費用など)がある場合も、その金額には、後見の計算が終了した時から利息を付けなければなりません(民法873条1項)。
さらに、成年後見人が本人のお金を自分のために使ってしまったときは、使った時から利息を付けなければならず、それでもなお損害があるときは、その賠償の責任も負います(同条2項)。
後見に関して生じた債権の時効(民法875条)
成年後見人または後見監督人と本人との間で、後見に関して生じた債権(たとえば、返還を求める権利や立替金の支払いを求める権利)については、親権者と子の間の財産管理に関する時効の規定(民法832条)が準用されます(民法875条1項)。準用される832条1項は、管理権が消滅した時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると定めています。
保佐人・補助人にも準用されている
保佐人・補助人の任務が終わった場合にも、管理の計算(民法870条)、監督人の立会い(同871条)、利息(同873条)の規定が準用されています(保佐は民法876条の5第3項、補助は民法876条の10第2項)。保佐人・補助人や監督人と本人との間で生じた債権の時効についても、832条が準用されています(同じく876条の5第3項・876条の10第2項)。また、急迫の事情があるときに必要な処分をしなければならないとする委任の規定(民法654条)と、委任の終了を相手方に対抗するための通知の規定(民法655条)も、後見(民法874条)・保佐・補助(876条の5第3項・876条の10第2項)について準用されています。
改正の動き(施行日は未定)
成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が令和8年6月24日に公布されています。
決まったこと:改正後の民法7条は「補助開始の審判」の規定に改められます(改正後7条1項)。成年後見の仕組みを補助の制度に組み入れる改正と読めるもので、これに合わせて、改正後の民法では、いまの870条〜875条は「未成年後見」についての規定になり、補助人については、補助の計算(2か月以内・家庭裁判所による伸長。改正後876条の23)、補助監督人の立会い(同876条の24)、返還金の利息(同876条の25)、委任の規定の準用(同876条の27)、事務に関して生じた債権の消滅時効(832条の準用。同876条の28)が、それぞれ独立の条文として置かれます。
経過措置として、改正法の附則では、施行日前に後見開始の審判を受けた成年被後見人と、その成年後見人・成年後見監督人に関する民法の規定の適用については、附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による(改正前の規定による)とされています(令和8年法律第45号附則2条1項)。また、施行日前にされた後見開始の審判の請求で、施行日前に審判が確定していないものは、施行日以後は補助開始の審判の請求とみなされます(同条8項)。
施行未定のこと:この部分の施行日は「公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており(同法附則1条)、執筆時点では政令が定められていません。施行されるまでは、本記事で説明した現行の規定が適用されます。
まとめ
成年後見人の任務が終わったときは、終わり方にかかわらず、成年後見人(またはその相続人)が2か月以内に管理の計算をし、管理していた財産を、本人の死亡なら相続人、審判の取消しなら本人、辞任・解任なら後任の成年後見人へと引き継ぎます。後見監督人がいるときはその立会いが必要で、返す金額には利息が付き、後見に関して生じた債権には5年の時効があります。保佐人・補助人にも同じ規定が準用されています。
終了したときの具体的な手続や提出書類は、管轄の家庭裁判所の案内でご確認ください。制度について一般的な相談をしたいときは、お近くの司法書士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの相談窓口、お近くの司法書士にお問い合わせください。相続人の間で、誰に財産を引き渡すかをめぐって意見が対立している場合は、弁護士へのご相談が適しています。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第654条・第655条・第832条・第859条・第870条〜第875条・第876条の5・第876条の10・第896条・第951条・第952条(e-Gov法令検索・現行): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 民法(令和8年法律第45号による改正後・未施行)第7条・第870条〜第875条・第876条の23〜第876条の28、同法附則第1条・第2条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089_20281223_508AC0000000045
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート: https://legal-support.or.jp/