この記事の要点

  • 裁判所に納める費用が払えないときは、裁判所に「訴訟上の救助(訴訟救助)」を申し立てる方法がある。認められると、裁判費用などの支払いが猶予される(民事訴訟法82条・83条)
  • 猶予は免除ではない。資力の要件を欠くことがわかれば救助が取り消されて支払いを命じられることがあり、猶予された費用を、負担することとされた相手方から直接取り立てる仕組みもある(同法84条・85条)
  • 法テラスの民事法律扶助は、弁護士・司法書士に支払う報酬などを法テラスが立て替える別の制度。判断するところも、対象となる費用も異なる

「訴えを起こしたいけれど、裁判所に納める費用が用意できない」。そんなときのために、民事訴訟法には、裁判所が費用の支払いを待ってくれる「訴訟上の救助」という制度があります。ただし、結論から言えば、これは払わなくてよくなる制度ではなく、支払いを猶予してもらう制度です。

これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。救助が認められるかどうか、個別の事件の見通しはここでは扱いません。

救助を受けるための2つの要件

民事訴訟法82条1項は、次のように定めています。

訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができる。ただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限る。

要件は2つに分けて読めます。

  • 資力の要件……費用を支払う資力がないこと、または、支払うと生活に著しい支障が生じること(本文)
  • 見込みの要件……「勝訴の見込みがないとはいえない」こと(ただし書)

条文は「勝訴の見込みがある」ではなく「勝訴の見込みがないとはいえない」という言い方をしています。いずれの要件も、満たすかどうかは事件ごとに裁判所が判断します。

また、救助の決定は審級ごとにされます(同条2項)。第一審で救助を受けていても、控訴審では改めて決定を受ける必要があります。

認められると何が変わるか──「猶予」であって「免除」ではない

救助の決定は、その定めるところに従い、訴訟と強制執行について次の効力をもちます(同法83条1項)。

  1. 裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用の支払の猶予
  2. 裁判所において付添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払の猶予
  3. 訴訟費用の担保の免除

1号・2号は、いずれも「支払の猶予」です。訴えを起こすときに裁判所に納める手数料も、救助による支払の猶予の対象です(最高裁判所も、訴え提起の手数料が訴訟上の救助の対象となることを前提に、共同で訴えを起こした各原告について救助の付与対象となる額を判断しています。最高裁判所令和5年10月19日決定・令和5年(許)第1号)。手数料の額や納め方の基本は、裁判所に納める費用の基礎で整理しています。

なお、2号に挙がっているのは「裁判所において付添いを命じた弁護士」の報酬です。自分で選んで依頼した弁護士・司法書士への報酬は、この列挙には挙がっていません。

救助の効力は、救助を受けた本人のためだけに生じます(同条2項)。訴訟を引き継いだ人(承継人)に対しては、裁判所が決定で、猶予した費用の支払いを命じます(同条3項)。

取消しと、相手方からの取立て

救助を受けた人が82条1項本文の要件、つまり資力の要件を欠くことが判明したとき、または欠くに至ったときは、訴訟記録のある裁判所は、利害関係人の申立てにより、または職権で、いつでも救助の決定を取り消し、猶予した費用の支払いを命じることができます(同法84条)。

また、猶予した費用は、これを負担することとされた相手方から直接取り立てることができるとされています(同法85条前段)。

救助に関する決定に対しては、即時抗告をすることができます(同法86条)。即時抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりません(同法332条)。

申立ての方法──書面で、事由を疎明する

訴訟上の救助の申立ては書面でしなければならず、救助の事由は疎明しなければなりません(民事訴訟規則30条)。疎明(そめい)とは、裁判所に一応確からしいと認めてもらうための立証のことで、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならないとされています(民事訴訟法188条)。収入や資産の状況を示すために、どのような資料を添えるかは、申立先の裁判所の案内で確認してください。

なお、令和8年5月21日からは、法令で書面によるとされている申立ても、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所のシステム(電子情報処理組織)を使ってオンラインですることができ、その場合は書面でしたものとみなされます(民事訴訟法132条の10第1項・2項)。弁護士など、委任を受けた訴訟代理人(簡易裁判所の許可を得て代理人になった人を除く)が申し立てる場合は、原則としてこの方法によらなければなりません(同法132条の11第1項1号)。認定司法書士は、民事訴訟法54条1項本文の規定にかかわらず簡易裁判所の訴訟代理人となることができるとされていて(司法書士法3条6項)、同項ただし書の許可を得て代理人になる場合とは根拠が異なります。そのため、認定司法書士が代理人として申し立てる場合も、原則としてこの方法によることになります。裁判所の案内でも、弁護士などの訴訟代理人等についてはオンラインによる手続が義務化されているとされ、日本司法書士会連合会の案内でも、司法書士・弁護士が訴訟代理人となる場合は原則としてオンライン提出が義務付けられるとされています。

法テラスの「立替え」との違い

費用の心配があるときに、もうひとつ思い浮かぶのが法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助です。こちらは、総合法律支援法30条1項2号にもとづき、代理人や裁判所に提出する書類の作成を依頼した専門家に支払う報酬・実費を、法テラスが立て替える制度です。

訴訟上の救助 法テラスの民事法律扶助(立替え)
根拠 民事訴訟法82条〜86条 総合法律支援法30条1項2号
判断するところ 事件を扱う裁判所 法テラス
対象となる費用 裁判費用など(83条1項各号) 代理人・書類作成を依頼した専門家への報酬と実費
効果 支払の猶予 費用の立替え(利用者は法テラスに返済する)

どちらの条文にも「資力がない」「その支払により生活に著しい支障を生ずる」という似た言葉が使われていますが、制度としては別のものです。法テラスの立替えを利用できるかどうかは、法テラスが審査して判断します。制度の概要と利用の流れは、法テラスとは──収入要件と立替制度、利用の流れで解説しています。

司法書士に頼める範囲

簡易裁判所における民事訴訟法の手続で、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものは、法務大臣の認定を受けた司法書士が代理できる範囲とされています(司法書士法3条1項6号イ・同条2項、裁判所法33条1項1号)。また、裁判所に提出する書類の作成は、司法書士の業務です(司法書士法3条1項4号)。140万円を超える事件の代理や、地方裁判所での代理は弁護士の領域です。

まとめ

訴訟上の救助は、費用を支払う資力がない人などについて、勝訴の見込みがないとはいえない場合に、裁判所が裁判費用などの支払いを猶予する制度です。救助は審級ごとに決定され、申立ては書面で、事由の疎明が必要です。ただし免除ではなく、資力の要件を欠くことがわかれば取り消されて支払いを命じられることがあり、猶予された費用は負担することとされた相手方から取り立てられる仕組みもあります。専門家への報酬を立て替える法テラスの民事法律扶助とは、判断するところも対象となる費用も異なります。手続きの選び方に迷うときは、お近くの司法書士(請求額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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