この記事の要点

  • 簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可を得れば、弁護士でない人(家族や会社の社員など)を代理人にできます(民事訴訟法54条1項ただし書)
  • 許可を求めるには、申請書と、本人と代理人の関係がわかる書類を出します。許可はいつでも取り消されることがあります
  • 和解や訴えの取下げなどを代理人に任せるには、委任状で特別に任せておく必要があります

結論から言うと、簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可があれば、弁護士でない家族や会社の社員に代わりに手続きをしてもらうことができます。民事訴訟(民事裁判)については、簡易裁判所だけに設けられた仕組みです。本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。

原則は「弁護士でなければ代理人になれない」

民事訴訟法54条1項本文は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人(裁判で本人に代わって手続きをする人)になれないと定めています。そのうえで同項ただし書が、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができるとしています。

「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」の例としては、会社の支配人(会社法11条1項)が一般に挙げられます。また、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、司法書士法3条6項により、民事訴訟法54条1項本文にかかわらず、簡易裁判所における一定の手続き(訴訟であれば、訴訟の目的の価額が140万円を超えないもの)で訴訟代理人になれます(司法書士法3条1項6号イ・2項、裁判所法33条1項1号)。認定司法書士は、この記事で扱う裁判官の許可とは別の根拠で代理人になるということです。140万円の数え方は「140万円以下」とは何の金額?で解説しています。

どんな人なら許可されるのか

条文には、どういう人なら許可されるかの基準は書かれておらず、許可するかどうかは裁判官が判断します。裁判所が公開している代理人許可申請書の記載例・記載要領では、家族などの親族や、会社の社員・従業員を代理人とする場合が示されています。申請の理由の欄には「本人が病気で出頭できないため」「本人が仕事の都合で出頭できないため」「代理人は事件の内容に詳しいため」といった選択肢が設けられています。

なお、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で他人の訴訟の代理などを業として行うことは、弁護士法72条で原則として禁じられています。

申請の手続き

裁判所の記載例・記載要領によると、おおむね次のとおりです。細かな書式や運用は裁判所によって異なることがあるため、事件を扱う簡易裁判所の担当係に確かめるのが確実です。

  • 代理人許可申請書を、裁判の期日の前に担当係へ出す
  • 本人と代理人の関係を証明する書類を付ける(親族なら続柄の記載がある住民票の写し〔マイナンバーの記載がないもの〕や戸籍謄本など、社員なら所属や役職などを明示した社員証明書)
  • 手数料は500円(民事訴訟費用等に関する法律の別表に定めがあります)。裁判所の記載例では、令和8年5月21日より前に訴えが起こされた事件は収入印紙を貼る方法、同日以降に訴えが起こされた事件は原則として電子納付の方法で納めるとされています

許可を受けた代理人について知っておきたいこと

  • 許可は、いつでも取り消すことができるとされています(民事訴訟法54条2項)
  • 訴訟代理人は、委任を受けた事件について、訴訟行為をし、弁済を受領することができますが(同法55条1項)、反訴の提起、訴えの取下げ、和解、請求の放棄・認諾、控訴などは、特別の委任を受けなければなりません(同条2項)。裁判所の記載例の委任状にも、「民事訴訟法第55条2項に定める訴訟行為」を任せる項目が設けられています。裁判の途中の和解については訴訟上の和解の基礎もご覧ください
  • 訴訟代理権は制限できないという原則(同条3項本文)は、弁護士でない訴訟代理人には当てはまりません(同項ただし書)
  • 現在の民事訴訟法では、委任を受けた訴訟代理人(弁護士や認定司法書士など)は、原則としてインターネット(電子情報処理組織)を使って申立て等をしなければならないとされていますが、裁判官の許可を得て訴訟代理人になった人は、この義務の対象から除かれています(民事訴訟法132条の11第1項1号)

まとめ

簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可を得れば、家族や会社の社員などを代理人にすることができます。許可を求めるには申請書・関係を示す書類・手数料が必要で、許可は取り消されることもあります。和解や取下げなどを任せるなら、委任状で特別の委任をしておく必要があります。

手続きの進め方に迷うときは、お近くの司法書士(訴訟の目的の価額が140万円を超える場合は弁護士)にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

あわせて読みたい