この記事の要点

  • 簡易裁判所の判決に対する控訴は、判決書(電子判決書)などの送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法285条)
  • 控訴審を担当するのは地方裁判所だが、控訴状は判決をした簡易裁判所に提出する(裁判所法24条3号、民事訴訟法286条1項)
  • 少額訴訟の判決には控訴できず、同じ簡易裁判所への異議(期限は同じく2週間)だけが用意されている(民事訴訟法377条・378条1項)

簡易裁判所で判決が出たものの、その内容に納得できない──そうした場合に、上の裁判所に改めて判断を求める手続きが「控訴(こうそ)」です。結論からいえば、控訴には2週間という短い期限があり、提出先も間違えやすいため、判決を受け取ったらまず期限を確認することが先決です。

これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。控訴すべきかどうか、控訴して結論が変わる見込みがあるかといった個別の判断はここでは扱いません。

期限は送達から2週間・延ばすことはできない

控訴は、電子判決書(判決の内容を記録した電子データで、従来の判決書にあたるもの)の送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければなりません(民事訴訟法285条本文)。判決の言渡しの方式によっては、判決書の代わりに、主文や理由の要旨などを記録した電子調書が送達され、その場合はこの調書の送達を受けた日が基準になります(同条・同法254条2項)。

この「電子判決書」などの送達を基準とする定めは、2026年5月21日に施行された民事訴訟法の改正(令和4年法律第48号)によるものです。同日より前に訴えが提起された事件の判決については、改正前の規定(判決書又はこれに代わる調書の送達を受けた日から2週間)によるとされています(令和4年法律第48号附則20条)。どちらの場合も、期間が2週間であることは変わりません。

不変期間とは、裁判所であっても伸ばしたり縮めたりすることができない期間のことです(同法96条1項ただし書。遠く離れた土地に住む人のために付加期間を定める例外は同条2項にあります)。期間の計算は民法の規定に従うため(同法95条1項)、送達を受けた当日は数えず、翌日から数えるのが原則です(民法140条)。期間の末日が土曜日・日曜日・祝日や年末年始(12月29日から1月3日まで)にあたるときは、その翌日に期間が満了します(民事訴訟法95条3項)。

なお、送達を受ける前に控訴しても、その控訴は有効です(同法285条ただし書)。本人の責任とはいえない事情で期間を守れなかった場合に、事情がなくなってから1週間以内(外国にいる当事者は2か月以内)に限って遅れた控訴をすることができる「追完」の規定もありますが(同法97条1項)、これは例外的な救済の規定です。

審理は地方裁判所、控訴状の提出先は簡易裁判所

簡易裁判所の民事事件の判決に対する控訴は、地方裁判所が審理します(裁判所法24条3号)。ただし、控訴状は地方裁判所に直接出すのではなく、判決をした第一審の簡易裁判所に提出します(民事訴訟法286条1項)。控訴状には、当事者と法定代理人、第一審判決の表示とその判決に対して控訴をする旨を記載します(同条2項)。

手数料は訴額に応じた部分の1.5倍が基本

控訴の提起にも手数料がかかります。民事訴訟費用等に関する法律の別表第二の二の項は、控訴の提起の手数料を、訴えの提起の手数料のうち訴額に応じて算出する部分(同表一の項イ)の1.5倍の額に、定額(書面での申立ては1,900円、オンラインでの申立ては800円)を合算した額と定めています(同法3条2項)。請求について判断しなかった判決(訴えを却下した判決など)に対する控訴には、別の定めがあります(同表四の項)。この定額を加える仕組みも上記の改正(令和4年法律第48号)で設けられたもので、2026年5月21日より前に訴えが提起された事件では、控訴の手数料は改正前の例(訴額に応じて算出した額の1.5倍のみ)によります(令和4年法律第48号附則25条)。郵便切手の扱いを含めた費用の全体像は、裁判所に納める費用はいくら|訴え提起手数料と予納郵便切手の基礎で整理しています。実際に納める額は、裁判所の案内で確認するのが確実です。

少額訴訟の判決は「異議」だけ

少額訴訟の判決には控訴できません(民事訴訟法377条)。不服がある場合は、判決書等の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、判決をした同じ簡易裁判所に異議を申し立てます(同法378条1項)。2026年5月21日より前に提起された少額訴訟では、改正前の規定により判決書又はこれに代わる調書の送達が基準になります(令和4年法律第48号附則22条)。異議の後に出た判決に対しても、控訴はできません(同法380条1項)。少額訴訟の仕組みそのものは、少額訴訟とは|60万円以下・原則1回の期日で終わる手続きの仕組みと注意点をご覧ください。

司法書士が関われる範囲

認定を受けた司法書士(司法書士法3条2項)が裁判所の手続で代理できるのは、簡易裁判所における手続に限られます(同法3条1項6号)。同号ただし書は上訴の提起を原則として代理の対象から外していますが、「自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るもの」は除かれているため、その事件の控訴の提起は代理できます。一方、控訴審は地方裁判所で審理されるため、控訴審で代理人として訴訟行為をすることは同号の範囲に含まれません。なお、代理とは別に、裁判所に提出する書類の作成も司法書士の業務として定められています(同項4号)。

まとめ

簡易裁判所の判決に対する控訴は、判決書等の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、控訴状を判決をした簡易裁判所に提出して行い、審理は地方裁判所が担当します。手数料は、訴額に応じて算出する部分の1.5倍に定額を加えた額です。少額訴訟の判決には控訴できず、同じ簡易裁判所への異議(2週間)になります。

期限が短い手続きですので、判決を受け取ったら早めにお近くの司法書士にご相談ください。140万円を超える請求の事件や、地方裁判所での控訴審の代理については、弁護士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。

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