この記事の要点
- 成年後見人は1人とは限らない。すでに成年後見人がいる場合でも、家庭裁判所は必要があると認めるときは、さらに成年後見人を選任することができる(民法第843条第3項)
- 成年後見人が数人あるとき、家庭裁判所は職権で、「共同して」権限を使うか、「事務を分掌して(分担して)」権限を使うかを定めることができ、その定めは後見登記に記録される(民法第859条の2第1項、後見登記等に関する法律第4条第1項第7号)
- 成年後見人が数人あっても、第三者からの意思表示は、そのうちの1人に対してすれば足りる(民法第859条の2第3項)
成年後見人というと、1人の後見人が本人の財産のことも生活のこともすべて引き受けるイメージがあるかもしれません。結論から言うと、成年後見人は2人以上選ばれることがあり、その場合に後見人どうしでどう権限を使うかは、家庭裁判所が定めることができます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。
成年後見人は「さらに」選任できる
民法第843条第1項は、家庭裁判所が後見開始の審判をするときに、職権(申立てがなくても裁判所自身の判断で)で成年後見人を選任すると定めています。そのうえで同条第3項は、成年後見人がすでに選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、本人(成年被後見人)やその親族その他の利害関係人、または成年後見人の請求により、あるいは職権で、さらに成年後見人を選任することができるとしています。
成年後見人を選ぶときに家庭裁判所が考慮する事情(同条第4項)や、親族・専門職・市民後見人・法人といった選択肢については、成年後見人には誰がなれる?で解説しています。
「共同して」か「分掌して」か──家庭裁判所が定める
民法第859条の2第1項は、成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる、としています。
- 共同して:複数の成年後見人が一緒に(そろって)権限を使う形
- 事務を分掌して:事務を受け持ちに分け、それぞれが受け持った範囲で権限を使う形
条文上、この定めは家庭裁判所が「職権で」するものとされており、家庭裁判所は職権でその定めを取り消すこともできます(同条第2項)。定めがされたときは、その定めは後見登記に記録されます(後見登記等に関する法律第4条第1項第7号)。後見登記の証明書については成年後見の『登記されていないことの証明書』とは?をご覧ください。
なお、未成年後見人については、民法第857条の2第1項が「未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する」と定めていますが、成年後見人については同じ形の規定は置かれておらず、第859条の2は家庭裁判所が「定めることができる」という形になっています。成年後見人が複数選ばれている場合は、家庭裁判所による定めがあるかどうか、あるならその内容を確認しておくことが大切です。
相手方からの通知は1人に届けば足りる
民法第859条の2第3項は、成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りると定めています。たとえば本人と契約している相手方が契約の解除を伝えるような場面で、成年後見人の全員に伝えなくても、そのうちの1人に伝えれば足りるということです。
保佐・補助や監督人にも準用されている
第859条の2の規定は、保佐の事務(民法第876条の5第2項)と補助の事務(同法第876条の10第1項)にも準用されています。また、成年後見監督人(同法第852条)、保佐監督人(同法第876条の3第2項)、補助監督人(同法第876条の8第2項)にも準用されています。後見監督人の役割については後見監督人とは?で解説しています。
なお、成年後見制度については見直しの法改正(民法等の一部を改正する法律・令和8年法律第45号。2026年6月24日公布)があり、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化する内容となっています。施行後は、民法第859条の2に当たる定めは補助人についての規定(改正後の民法第876条の12)として置かれ、条文の番号や内容が現在とは異なります。成年後見制度の見直し部分の施行日は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、執筆時点ではまだ定まっていません。この記事は、施行前の現行制度に基づいて説明しています。
まとめ
成年後見人は1人とは限らず、家庭裁判所は必要があると認めるときは、さらに成年後見人を選任することができます(民法第843条第3項)。成年後見人が数人あるときは、共同して権限を使うか、事務を分掌して使うかを家庭裁判所が職権で定めることができ(第859条の2第1項)、その定めは後見登記に記録されます。また、第三者からの意思表示は、そのうちの1人に対してすれば足ります(同条第3項)。複数の成年後見人の選任や権限の分け方について知りたい場合は、申立て先の家庭裁判所の案内を確認するほか、お近くの司法書士会や、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年10月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第843条・第852条・第857条の2・第859条の2・第876条の3・第876条の5・第876条の8・第876条の10(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 民法 第876条の12(令和8年法律第45号による改正後・未施行の条文。e-Gov法令検索の改正履歴で確認): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 後見登記等に関する法律 第4条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000152
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」法律本文(附則第1条): https://www.moj.go.jp/content/001465477.pdf
- 法務省「民法等改正法の概要」: https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf