この記事の要点

  • 相続登記義務化の経過措置は2027年3月31日が期限。残り半年でやることを順番に整理する
  • ①登記簿で今の名義を確認する→②戸籍を集めて相続人を確定する→③協議がまとまれば相続登記へ→④まとまらない・間に合わないなら相続人申告登記で期限を守る
  • 相続人申告登記は義務を履行したことにはなるが、権利の登記ではないため、その後の遺産分割で不動産を取得した場合は、改めて相続登記が必要になる

相続登記の義務化には、2024年4月より前に発生していた相続(過去の相続)を対象とする経過措置があり、その期限は2027年3月31日です。経過措置そのものの内容はこちらの記事で、3年の期限の数え方(起算日)はこちらの記事で解説していますので、この記事では繰り返しません。

ここでは、「残り半年で、何を、どの順番で進めればよいか」だけに絞って整理します。

1. 登記簿で今の名義を確認する

まず最初にやることは、対象の不動産の登記簿(登記事項証明書)を取得して、今の名義を確認することです。登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送のほか、オンラインで請求することもできます。また、名義を確認したいだけであれば、オンラインの「登記情報提供サービス」で登記情報(画面で見る形のデータ。証明書ではありません)を取得する方法もあります。

確認しておきたいポイントは次の3点です。

  • 誰の名義になっているか(亡くなった方の名義のままか、さらにその前の代からか)
  • 対象の不動産がいくつあるか(土地が複数の筆に分かれている場合、そのすべてが登記の対象になります)
  • 単独名義か、共有名義か

「祖父の名義のまま」「曾祖父の代で止まっている」といったケースも珍しくありません。名義人が古い代までさかのぼるほど、次のステップの戸籍収集の負担が大きくなる傾向があるため、まずは現状を正確に把握することが出発点になります。

2. 戸籍を集めて相続人を確定する

名義が確認できたら、次は亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人にあたる方の戸籍を集めて、相続人が誰であるかを確定する作業に進みます。

この工程は、手続き全体の中でもっとも時間がかかりやすい部分です。特に次のようなケースでは、戸籍の収集だけで数ヶ月かかることもあります。

  • 名義人の死亡から何十年も経っている(数次相続が発生している)
  • 転籍・分籍を繰り返している
  • 相続人の中に、連絡先が分からない・疎遠な方がいる

半年という残り期間を考えると、戸籍集めは早めに着手するほど選択肢が広がります。

3. 遺産分割協議がまとまるなら、相続登記へ

戸籍がそろい相続人が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。協議がまとまれば、協議書を作成し、それに基づいて相続登記(所有権移転登記)を申請します。これが本来のゴールです。

なお、相続登記の登録免許税は不動産の価額(固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とする額。登録免許税法附則7条)の0.4%が原則ですが(登録免許税法別表第一第一号(二)イ)、その価額が100万円以下の土地については、租税特別措置法第84条の2の3第2項に基づく免税措置(令和9年〈2027年〉3月31日まで)の対象になります。詳しい要件はこちらの記事で解説しています。

4. まとまらない・間に合わないなら、相続人申告登記で期限を守る

半年という期間の中で、遺産分割協議が思うように進まないこともあります。相続人の一部と連絡が取れない、評価をめぐって話し合いが平行線になっている、といった事情は珍しくありません。

そうした場合の選択肢が相続人申告登記です。自分が相続人であることを法務局に申し出るだけの簡易な手続きで、これによって相続登記の義務を履行したものとみなされ(不動産登記法76条の3第2項)、10万円以下の過料(同法164条1項)を回避できます。ほかの相続人の協力を得なくても単独で申し出ることができ、必要な戸籍も原則として自分と被相続人のつながりが分かる範囲で足り、登録免許税もかかりません。ただし、これで義務を果たしたことになるのは、申し出た本人の分だけです。ほかの相続人にも義務がある場合は、それぞれご自身で申し出る必要があります。

なお、申出よりも前にすでに遺産分割が成立している場合は、その分割によって取得した分については、申出をしても義務を果たしたことにはなりません(同項のかっこ書き)。分割がまとまっているのであれば、本来の相続登記を申請することになります。

ただし、大事な注意点があります。相続人申告登記は所有権の移転を示す登記ではありません。あくまで「相続人であると申し出た」という事実が記録されるだけで、登記簿上の名義人は変わらないままです。遺産分割協議が後日まとまり、その分割によってご自身がその不動産の所有権を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、改めて本来の相続登記(所有権移転登記)を申請する必要があります(同法76条の3第4項)。逆に、その分割でご自身がその不動産を取得しなかった場合には、この規定による申請義務は生じません(登記を申請することになるのは、その不動産を取得した相続人です)。

なお、①〜④という順番は、典型的な進め方を示したものです。実際には、一部の不動産についてだけ協議がまとまった、相続人の一部が所在不明で協議そのものができない、といったケースもあります。こうした場合は進め方が変わり、家庭裁判所の手続きを先に検討したほうがよいこともあります(例えば、所在の分からない相続人について家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人が家庭裁判所の許可を得たうえで、その相続人に代わって遺産分割に加わる方法があります)。

どの選択肢が合っているかは、相続人の人数や協議の進み具合など個別の事情によって変わります。迷う場合は、早めにお近くの司法書士にご相談ください。

まとめ

相続登記義務化の経過措置の期限は2027年3月31日、残り半年です。やることの順番は、①登記簿で今の名義を確認する、②戸籍を集めて相続人を確定する、③協議がまとまれば相続登記へ進む、④まとまらない・間に合わない場合は相続人申告登記でひとまず期限を守る、という流れになります。まだ何も手を付けていない方は、まず登記簿の確認から始めてみてください。手続きに不安がある場合は、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどのくらいかかりますか? 相続登記の登録免許税は不動産の価額(固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とする額)の0.4%が原則ですが、その価額が100万円以下の土地は免税措置(令和9年〈2027年〉3月31日まで)の対象になります。相続人申告登記は登録免許税がかかりません。いずれも戸籍等の取得実費や、専門家に依頼する場合は別途報酬がかかります。

Q. 期限はいつまでですか? 2024年4月より前に発生していた相続(過去の相続)は、原則として2027年3月31日が経過措置の期限です。ただし、相続で不動産を取得したことを知った日が2024年4月以降になる場合は、その日から3年以内が期限になります(民法等の一部を改正する法律〈令和3年法律第24号〉附則5条6項、法務省「相続登記の申請義務化について」)。2024年4月以降に発生した相続も、取得を知った日から3年以内です。

Q. 自分でできますか?どこに相談すればいいですか? 戸籍収集や登記簿の確認はご自身でも進められますが、相続人が多い、協議がまとまらないといった事情がある場合は、お近くの司法書士にご相談ください。間に合いそうにない場合の選択肢として、相続人申告登記もあります。


【さらに深掘り】相続人申告登記後の本登記義務と数次相続・名寄せの実務

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

1. 相続人申告登記をしても、義務は「先送り」されるだけ

  • 相続人申告登記(不動産登記法76条の3)は、76条の2第1項の申請期間(3年)内に申出をした者について、同項の所有権の取得(相続または相続人に対する遺贈による取得。当該申出前の遺産分割によるものを除く)に係る所有権移転登記の申請義務を履行したものとみなす制度(76条の3第2項)。条文上、みなし効は「期間内に申出をした者」に限られている点に注意。
  • ただし、これはあくまで義務の履行を「みなす」規定であり、所有権の移転そのものを公示する登記ではない。登記簿上の名義人は被相続人のままである。
  • 申告登記をした者が、その後の遺産分割によって所有権を取得したときは、その遺産の分割の日から3年以内に、改めて所有権移転登記(本来の相続登記)を申請しなければならない(同条4項)。これを怠ると、新たな申請義務の違反として過料の対象になり得る。
  • つまり相続人申告登記は「期限を止める」制度ではなく、「義務の中身を、分割成立後の本登記義務に置き換える」制度と理解したほうが実務的に正確である。
  • なお、遺産分割を待たずに法定相続分(民法900条・901条)どおりの相続登記(所有権移転登記)を申請する道もある。76条の2第2項は「前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。…)」と定めており、法定相続分どおりの相続登記は同条1項前段の登記として位置づけられている。この場合、その後の遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者には、分割の日から3年以内に所有権移転登記を申請する追加的な義務が生じる(同条2項)。法務省民事局長通達(令和5年9月12日付け法務省民二第927号)も、この場面を「法定相続分での相続登記(所有権の移転の登記)がされた後に遺産の分割があったとき」の追加的申請義務として整理している。相続人申告登記との違いは、法定相続分の登記は所有権の移転を公示する本来の登記である(登記名義人が相続人に変わる)点にある。

2. 数次相続では「誰の相続について」義務が生じているかを個別に見る

  • 76条の2第1項の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」である。
  • ただし、2024年(令和6年)4月1日より前に相続が開始していた場合は、経過措置により、この起算点が「知った日又は施行日のいずれか遅い日」と読み替えられる(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項)。過去の相続の期限が一律に2027年3月31日と説明されるのは、知った日が施行日より前であれば起算日が2024年4月1日に揃うからである。逆に、相続の開始自体は施行日前でも、所有権を取得したことを知ったのが施行日以後にずれ込むケースでは、期限も2027年3月31日より後になる。
  • 数次相続(例:祖父Aが死亡し、父Bが相続登記をしないままBも死亡し、子Cが相続する場合)が絡むケースでも、この起算点は相続ごと・取得者ごとに判断されると解されている。「祖父の代の相続だから経過措置の対象」「父の代の相続だから通常の3年」という単純な年代の線引きではなく、最終的に所有権を取得した相続人について、自己の取得を知った日を基準に3年の期限を見るのが基本的な整理である。
  • もっとも、76条の2第1項は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」と定めるにとどまり、数次相続の場合に中間の相続人(上の例の父B)が生前に負っていた申請義務の扱いまでを条文自体が明示しているわけではない。ここは条文の文言から一義的に導かれる部分ではなく、見解が分かれうる点である。
  • 実際の申請手続で、AからBへの相続とBからCへの相続をどのように処理するか(申請の件数や添付書類の組み立て)は登記手続上の技術の話であり、義務がいつから発生しているかという起算点の考え方とは別の論点である。義務の起算日は、取得者ごとに個別に確認する必要がある。
  • なお、相続登記の申請義務化に関する法務省民事局長通達(令和5年9月12日付け法務省民二第927号)には、数次相続の場合の起算点を個別に扱った記述は見当たらない(2026年9月確認)。通達で数次相続の扱いが明示されているのは、相続人申告登記の申出手続の場面(中間相続人がいる場合の申出事項・添付情報。令和6年3月15日付け法務省民二第535号通達)であり、起算点の問題とは別である。

3. 所有不動産記録証明制度(119条の2)との関係

  • 2026年(令和8年)2月2日から、所有不動産記録証明制度の運用が始まっている。何人も、登記官に手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産に係る登記記録の事項を証明した書面(所有不動産記録証明書)の交付を請求できる制度である(不動産登記法119条の2第1項)。
  • 相続人その他の一般承継人は、被相続人(被承継人)名義の所有不動産記録証明書を請求できる(同条2項)。全国の不動産を対象に、管轄の限定なく一覧的な名寄せができるため、「遠方に把握していなかった不動産があった」という登記漏れを防ぐ手段として、戸籍収集と並行して活用できる。
  • 検索は氏名・住所を条件として行われるため、被相続人の過去の氏名や住所を検索条件とする場合には、それらを証する情報(戸除籍謄本、住民票の写し、戸籍の附票の写し等)を併せて提出する必要がある(法務省「所有不動産記録証明制度について」)。転居や婚姻によって登記名義人の表示が古いままになっているケースでは、相続人確定のために集めた戸籍一式がそのまま検索条件の裏付けになるため、この点でも戸籍収集を先に進める意味がある。

4. 参考条文

  • 不動産登記法76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
  • 不動産登記法76条の3(相続人である旨の申出等)
  • 不動産登記法119条の2(所有不動産記録証明書の交付等)
  • 不動産登記法164条1項(過料。76条の2第1項・2項、76条の3第4項の申請を正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料)
  • 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項(施行日前に相続が開始していた場合の経過措置=2027年3月31日の根拠)
  • 登録免許税法別表第一第一号(二)イ(相続による所有権移転登記の税率=不動産の価額の1000分の4)
  • 登録免許税法附則7条(不動産登記に係る不動産価額の特例=課税標準たる不動産の価額は、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎として政令で定める価額によることができる)
  • 租税特別措置法84条の2の3第2項(価額100万円以下の土地に係る相続登記等の免税。令和9年〈2027年〉3月31日まで)

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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