この記事の要点

  • 農地を農地でない用途に使うには「①農地法の許可・届出 → ②現況の変更 → ③地目変更登記」の順番で進める。登記は一番最後
  • 農地転用の許可申請・届出の代理は行政書士の業務、地目変更登記の申請代理は土地家屋調査士の独占業務。担当がはっきり分かれている
  • 地目に変更があった日から1か月以内に登記を申請する義務があり(不動産登記法37条1項)、正当な理由なく放置すると過料の対象になり得る(同法164条1項)
  • まずは自分の土地がどの許可・届出の対象になるかを確認するところから始める

農地を宅地に変えて家を建てたい、駐車場にしたい――そんなとき、多くの方が迷うのは「何を先にやればいいのか」という順番です。結論から言うと、地目変更登記は一連の手続きの中で一番最後に来るものであり、農地法の許可・届出より先に登記だけを済ませることはできません。

この記事では、地目の種類(田・畑・宅地・雑種地など)そのものの説明は行いません。それは土地の「地目」とは?田・畑・宅地・雑種地で何が変わる?で扱っています。また、農地を相続した場合の届出や「売る・貸す・転用する」際の制約についても農地を相続したら──農業委員会への届出と相続登記に譲り、本記事では転用を伴う地目変更登記の手続きの順番だけに絞って整理します。

ステップ1:農地法の許可または届出を得る

農地を農地以外の用途に使う(転用する)には、まず農地法の許可、または届出が必要です。

  • 農地を持ち主自身が転用する場合は農地法4条1項の許可(市街化区域内の農地であれば、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可は不要。同項7号)
  • 農地を転用目的で他人に譲渡・貸与する場合(買う側・借りる側から見れば、転用するつもりで農地を買う・借りる場合)は農地法5条1項の許可。この許可は売主・買主など当事者が受けるものです(同じく市街化区域内の農地は届出で足りる。同項6号)

なお、農地法4条1項には、このほかにも許可を要しない場合が定められています。ただし、個人が自分の農地を転用する場面で実際に問題になるのは、上に挙げた市街化区域内の届出です。

また、農地を農地のまま売買・貸借する場合は、転用ではなく農地法3条1項の許可(農業委員会の許可)の話になり、本記事で扱う地目変更にはつながりません。「転用するかどうか」で、必要な許可の種類が変わる点に注意してください。

許可・届出のいずれも、対象となる農地の面積や区域区分によって窓口や必要書類が変わります。この許可申請書・届出書の作成や提出の代理は行政書士の業務であり、司法書士や土地家屋調査士が代わって行うものではありません。転用の可否や必要な書類について迷ったら、まずこの段階で行政書士に相談することになります。

ステップ2:実際に現況を変える

許可(または届出の受理)が下りたら、次に行うのは造成工事や建物の着工など、土地の実際の状態(現況)を変えることです。

ここが誤解されやすい点ですが、許可が下りた時点ではまだ登記簿上の地目は「田」や「畑」のままです。登記簿の地目は、その土地が実際にどう使われているか(現況)に基づいて認定される仕組みになっているため、書類上の許可だけでは地目は変わりません。造成が終わって駐車場として使われ始めた、建物が建ったなど、土地の使われ方が実際に変わった状態になって初めて、次のステップに進みます。なお、どの段階で地目が変わったと言えるかは土地の状況によって判断が分かれることがあります。たとえば宅地は建物の敷地であることが前提になるため、造成が終わっただけの段階ではまだ宅地とは認定されないこともあります。判断に迷う場合は、この段階で土地家屋調査士に確認してください。

ステップ3:現況が変わった後に地目変更登記を申請する

現況が実際に変わったら、その変更があった日から1か月以内に地目変更登記を申請する義務があります(不動産登記法37条1項)。申請義務者は、その土地の表題部所有者、または所有権の登記名義人です。

この地目変更登記の申請代理は土地家屋調査士の独占業務です。現況を確認したうえで図面等を整え、法務局に地目変更の登記を申請するのは土地家屋調査士の役割であり、農地転用の許可・届出を担った行政書士とは担当が変わります。正当な理由なく1か月の期限を過ぎても放置すると、10万円以下の過料の対象になり得ます(不動産登記法164条1項)。

順番を逆にできない理由

まとめると、次の順番になります。

  1. 農地法の許可・届出(行政書士が代理できる領域)
  2. 造成・着工など現況の変更
  3. 地目変更登記の申請(土地家屋調査士が代理できる領域)

登記は「今の状態を正しく公示する」ための制度なので、現況がまだ農地のままなのに地目変更登記だけを先に済ませることはできません。逆に、許可や届出を得ないまま現況だけを変えてしまうと、無断転用として農地法違反に問われるおそれがあります。許可・届出 → 現況変更 → 登記という順番を守ることが、あとから補正や指摘を受けないための一番の近道です。

ただし、この順番はこれから転用する場合の話です。すでに許可や届出を経ないまま現況が変わってしまっている土地や、長年耕作されないまま農地ではなくなっている土地は、この順番の前提から外れます。こうした場合は、農地法上の扱いと登記の扱いを合わせて整理する必要があり、取り得る手順も土地の状況によって変わります。自分の土地が当てはまりそうなときは、この記事の順番にそのまま当てはめず、個別に確認してください。

なお、増築などで建物の床面積が変わった場合の表題部変更登記も、同じく「現況が変わった後に登記する」「1か月以内の義務」という構造は共通しています。詳しくは増築したときの登記──床面積が変わったら表題部の変更登記をご覧ください。

まとめ

農地を転用するときの地目変更登記は、農地法の許可・届出を得て、実際に現況が変わったあとに申請するものです。順番を逆にすることはできず、現況変更から1か月以内という申請期限もあります。許可・届出は行政書士、地目変更登記は土地家屋調査士とそれぞれ担当が分かれており、地目変更登記そのものを司法書士が代理するわけではありません。司法書士が扱うのは、所有権の移転など権利に関する登記の部分です。ただ、農地の相続登記や売買の登記と一続きになる場面も多く、どの手続きをどの順番で進めるかという全体の見取り図は共通しているため、どちらに何を相談すればよいか迷ったら、まずはお近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 地目変更登記や農地転用の手続きにかかる費用は? 地目変更登記そのものには登録免許税はかかりません(登録免許税は登録免許税法別表第一に掲げる登記に課されるところ(同法2条)、地目変更登記はそこに掲げられていません)が、土地家屋調査士に依頼する場合は報酬が発生します。一筆の土地の一部だけを転用して分筆をあわせて行う場合など、手続きの組み合わせによっては、その分の費用が別に必要になります(所有権の登記のある土地の分筆登記には、分筆後の土地一筆につき1,000円の登録免許税がかかります。同法別表第一第一号(十三)イ)。農地転用の許可申請・届出を行政書士に依頼する場合も別途報酬がかかります。金額は土地の状況や依頼先によって幅があるため、それぞれの専門家に見積もりを確認するのが確実です。

Q. 地目変更登記の申請を忘れて放置するとどうなりますか? 現況が変わった日から1か月以内に申請する義務があり(不動産登記法37条1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条1項)。登記簿の地目と実際の使われ方が食い違ったままだと、将来その土地を売却したり相続したりする際に手続きが滞る原因にもなります。

Q. 自分で手続きすることはできますか?どこに相談すればいいですか? 農地転用の許可申請・届出は行政書士、地目変更登記の申請代理は土地家屋調査士の業務であり、いずれも制度上は自分で行うこと自体は可能ですが、書類の作成や現況の扱いには専門知識が必要です。人に頼む場合は、転用の許可申請・届出は行政書士に、地目変更登記は土地家屋調査士に依頼することになります。そのうえで、どの手続きが自分の土地に当てはまるか分からない場合は、まずお近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】地目認定の現況主義と農地転用許可の位置づけ

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文で触れた「現況が変わってから地目変更登記を申請する」という順番の背景には、登記簿の地目が土地の実際の状態を基準に定められているという仕組みがある。これは現況主義と呼ばれることがあるが、準則の条文にこの語が使われているわけではなく、次のような定め方を指した呼び名である。不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)第68条は、地目を定めるにあたって「土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとする」としており、書類上の許可の有無そのものではなく、その土地の実際の状態と利用目的を基準にする建前になっている。同条が「現況」と並べて「利用目的」も挙げていることからも分かるとおり、見た目の状態だけを機械的に見るという趣旨ではない。

この現況を確認する手段として、登記官には調査権限が与えられている。不動産登記法29条1項は、表示に関する登記の申請があった場合や職権で登記しようとする場合に、必要があると認めるときは対象不動産の表示に関する事項を調査できると定め、同条2項は、日出から日没までの間に限り現地を検査し、所有者その他の関係者に文書等の提示を求め、または質問できるとしている(登記官には身分証明書の携帯・提示義務も課されている)。いわゆる実地調査は、この規定に基づいて行われるものである。

地目の認定時点、つまり「いつ地目が変わったと言えるか」については、準則第68条が「土地全体としての状況を観察して定める」というあてはめの枠組みそのものを基準として置いており、造成や工事のどの段階で新しい地目になるかを一律に定めた規定は置かれていない。ここで個別の判断にゆだねられていると言えるのは、規定が欠けているからではなく、同条の置いた基準が現地の観察と評価を求める形のものだからである(規定の不存在それ自体から個別判断が導かれるわけではない)。許可を得ただけで現地に手を付けていない段階では、現況にも利用の実態にも変化がないため従前の地目のままと考えられ、工事の途中の状態をどう評価するかは、現地の状況に応じた個別の判断になる。なお、準則第68条第3号は宅地を「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地」と定めており、造成が終わっただけの段階と建物が建った段階とで評価が分かれ得る点にも注意が必要である。この見極めは現地を確認したうえで行うものであり、判断に迷う場合は土地家屋調査士に相談することになる。

一筆の土地の一部だけ地目が変わった場合は扱いが異なる。登記簿は一筆ごとに一つの地目を記録する仕組みであり、不動産登記法39条2項は、分筆の登記の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となったときは、登記官が職権でその土地の分筆の登記をしなければならないと定めている。つまり、同じ一筆の中に地目の異なる部分が生じたときは、地目変更登記だけでは処理できず、分筆と組み合わせて地目の異なる部分を別の筆に切り分けることになる。田の一部だけを造成して宅地にする、といったケースが典型である。

農地転用の許可と地目変更登記の関係も、現況主義から説明できる。農地法の許可(または届出の受理)は、あくまで「転用してよい」という行政上の許可であって、それ自体が地目を変更するものではない。地目は、許可を得たあとに実際に現況が変わって初めて変更の対象になる。なお、不動産登記令の別表五の項(地目に関する変更の登記又は更正の登記)は、申請情報として「変更後又は更正後の地目」を掲げるのみで、この登記に固有の添付情報を定めていない(同表四の項の土地の表題登記や六の項の地積の変更の登記が土地所在図・地積測量図等を掲げているのと対照的である)。農地転用の許可書(または届出の受理を証する書面)は、その土地がもはや農地でなくなったことを裏付ける資料として実務上添付されているものであり、令が一律に要求している添付情報ではない(不動産登記事務取扱手続準則にも、農地転用の許可書を地目変更登記の添付情報とする旨の規定は置かれていない)。他方、法務局が公開している「土地地目変更登記申請書」の記載例は、添付情報として「許可書」を掲げ、農地を農地以外の地目に変更する場合には農地法の規定による許可書を添付するよう注記しており、登記所の側でもこの添付を前提とした案内がされている。もっとも、令の別表に掲げられていないことから直ちに「提出しなくてよい」という反対解釈が成り立つわけではない。前述のとおり登記官には法29条の調査権限があり、必要があると認めるときは関係資料の提示を求めることができる立場にあるからである。この添付情報の整備や提出方法は登記申請の実務に関わる事項であり、本記事では立ち入らない。

なお、地目の変更登記は所有者側の申請が原則だが、登記官が実地調査などを通じて現況と登記簿の食い違いを把握した場合には、不動産登記法28条に基づき職権で地目変更の登記をすることもできる。所有者が1か月の申請義務を怠っている場合でも、この職権登記によって登記簿と現況のズレが解消されることがある。もっとも、職権登記があり得ることを理由に所有者の申請義務が免除されるわけではない。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

  • 不動産登記法(平成16年法律第123号)(e-Gov法令検索)── 28条(職権による表示に関する登記)、29条(登記官による調査=1項の調査権限・2項の日出から日没までの検査・提示要求・質問と身分証明書の携帯提示)、37条1項(地目又は地積の変更の登記の申請=変更があった日から1月以内)、39条2項(一筆の土地の一部が別の地目となったときの職権分筆)、164条1項(過料=10万円以下)
  • 不動産登記令(平成16年政令第379号)(e-Gov法令検索)── 別表四の項(土地の表題登記)、五の項(地目に関する変更の登記又は更正の登記=申請情報は「変更後又は更正後の地目」のみで添付情報の定めなし)、六の項(地積に関する変更の登記又は更正の登記=地積測量図)
  • 不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達・最終改正令和6年12月2日)(法務省「不動産登記関係の主な通達等」掲載PDF)── 68条(地目=土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも土地全体としての状況を観察して定める。同条3号が宅地=建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地)、69条(地目の認定)
  • 農地法(昭和27年法律第229号)(e-Gov法令検索)── 3条1項(農地のままの権利移動の許可)、4条1項(転用の許可)・同項7号(市街化区域内の農地はあらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合は許可不要)、5条1項(転用目的の権利移動の許可)・同項6号(市街化区域内の届出)
  • 登録免許税法(昭和42年法律第35号)(e-Gov法令検索)── 2条(課税の範囲=別表第一に掲げる登記等に課する)、別表第一第一号(十三)イ(所有権の登記のある不動産の表示の変更の登記のうち土地の分筆による登記事項の変更の登記=分筆後の不動産一個につき千円)・同号(十四)(登記事項の更正・変更の登記のうち土地又は建物の表示に関するものを除く)
  • 土地地目変更登記申請書の記載例(法務局「不動産登記の申請書様式について」)── 添付情報欄に「許可書」を掲げ、注1で「農地(田、畑、牧場)を農地以外の地目に変更する場合には、農地法の規定による都道府県知事等の許可が必要ですので、その許可書を添付してください」と案内

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