この記事の要点

  • 増築で床面積・構造・種類が変わったら、変更があった日から1か月以内に建物の表題部の変更登記を申請する義務がある(不動産登記法51条1項)
  • 申請には増築後の建物の形を反映した建物図面・各階平面図が必要で、測量・作図を伴うため依頼先は土地家屋調査士
  • 正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になり得る(不動産登記法164条1項)
  • 固定資産税の家屋調査とは別の手続き。税額の計算や軽減の適用は市区町村の資産税担当・税理士の領域
  • 登記記録と実際の建物の状態が食い違ったまま放置すると、将来の売却や相続登記でつまずく原因になる

増築の工事が終わっても、それで一区切りとはいきません。増築によって床面積や構造、建物の種類が変わったときは、その変更を登記記録に反映させる建物の表題部の変更登記を、変更があった日から1か月以内に申請しなければなりません。この記事では、増築でどんなときに登記が必要になるか、申請に必要なもの、期限と過料、固定資産税との関係、依頼先の順に整理します。

増築で登記が必要になるのはどんなとき

建物の登記記録には、所在・家屋番号・種類(居宅など)・構造(木造2階建など)・床面積といった、建物の物理的な状況を記録する「表題部」があります。床面積・構造・種類は、この表題部に記録される登記事項です(不動産登記法44条1項3号)。

増築によって、次のような変化があったときは、登記記録の書き換えが必要になります。

  • 床面積が増えた:2階部分を新たに増築した、平屋に部屋を増設した、など
  • 構造が変わった:木造の建物に鉄骨造の部分を増築した、など
  • 種類が変わった:居宅の一部を店舗や事務所に用途変更しながら増築した、など

これらは、増築前の登記記録に書かれている内容と、増築後の実際の建物の状態が食い違うことを意味します。登記記録は「今どんな建物がそこにあるか」を公示する仕組みですから、実態が変わった以上、記録の側も書き換える必要があります。

表題部の変更登記とは──「どんな建物か」を記録し直す手続き

床面積・構造・種類など、建物の表示に関する登記事項に変更があったときは、変更があった日から1か月以内に、表題部所有者または所有権の登記名義人が変更の登記を申請しなければなりません(不動産登記法51条1項)。これを一般に「建物表題部変更登記」と呼びます。

新築のときに行う「表題登記」が、登記記録をゼロから作る手続きであるのに対し、表題部変更登記は、すでにある登記記録の内容を、変わったところだけ書き換える手続きです。家を新築したときの「所有権保存登記」で整理したとおり、新築建物は「どんな建物か」を記録する表題登記(土地家屋調査士の担当)と、「誰のものか」を記録する所有権保存登記(司法書士の担当)の2段階で登記されます。増築で必要になるのは、このうち表題部の内容を更新する手続きにあたります。所有権が誰のものかという甲区の記載自体は、増築だけでは変わりません。

なお、増築ではなく建物を取り壊した場合は、登記記録そのものを閉じる「建物滅失登記」になります。この違いは建物滅失登記を自分で申請する手順で扱っていますので、あわせてご覧ください。

申請書に必要なもの──建物図面・各階平面図の作成が要

表題部変更登記の申請では、増築後の建物の形状を反映した建物図面(敷地上の建物の位置を示す図面)と各階平面図(各階の形状・床面積を示す図面)の提出が求められます。これは、増築によって床面積や形状そのものが変わっており、登記記録の数値を単に書き換えるだけでは足りず、増築後の状態を測量したうえで図面に反映する必要があるためです。

この測量・調査・図面の作成は、土地家屋調査士法で定められた土地家屋調査士の業務です。同法は、不動産の表示に関する登記につき必要な土地・家屋の調査または測量を行うこと(同法3条1項1号)と、不動産の表示に関する登記の申請手続について代理することを、土地家屋調査士の業務として定めています(同項2号)。増築後の表題部変更登記は測量と図面作成を伴うため、人に依頼するのであれば、依頼先は土地家屋調査士になります。

このほか、申請書には増築後の所在・家屋番号・種類・構造・床面積など、変更後の建物の表示を記載します。建築確認済証や工事完了を示す書類の提出を求められることもあります。実際にどの書類が必要になるかは、増築の内容や管轄の法務局によって扱いが異なることがあるため、依頼する土地家屋調査士に確認するのが確実です。

期限は1か月、怠ると過料の対象に

表題部変更登記の申請義務には期限があります。変更があった日から1か月以内に申請しなければなりません(不動産登記法51条1項)。増築の場合にいつを「変更があった日」と見るかは、依頼する土地家屋調査士に確認してください。

新築時の表題登記についても、所有権を取得した日から1か月以内という同じ考え方の期限が定められています(同法47条1項)。

正当な理由がないのにこの申請を怠ると、過料の対象になり得ます(不動産登記法164条1項)。増築の登記は、新築のときの登記に比べると見落とされやすい面があります。「もう建物は登記されているのだから」と思い込み、増築部分については何もしないまま時間が経ってしまうケースは少なくありません。増築の工事が完了したら、なるべく早く土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

固定資産税の家屋調査との関係──税額の計算は別の話

増築をすると、市区町村から固定資産税の家屋調査の連絡が来ることがあります。これは、市区町村が固定資産税を課税するために、増築後の建物の状況を確認する調査で、登記の手続きとは別の制度です。

登記は法務局が管理する制度で、表題部変更登記をすることで登記記録が更新されます。一方、固定資産税の課税は市区町村の事務であり、市区町村が独自に家屋調査を行って課税標準を見直すこともあれば、登記所から市区町村へ表示に関する登記の内容が通知される仕組みもあります(地方税法382条1項)。どちらが先に動くかは自治体や状況によって異なり、一方の手続きをすれば他方の手続きが自動的に済むというものではありません。

増築によって固定資産税の税額がどう変わるか、軽減措置の適用があるかどうかといった税額の計算そのものは、司法書士や土地家屋調査士の業務の範囲外です。具体的な税額や軽減の当てはめについては、市区町村の資産税担当の窓口、または税理士にご確認ください。

増築の登記を自分でできるか・専門家に相談すべき場面

表題部変更登記は、制度上は所有者本人が自分で申請することもできます。ただし、増築を伴う変更登記では、増築後の建物図面・各階平面図の作成という測量を伴う作業が必須になるため、実務上は土地家屋調査士に依頼するケースがほとんどです。

次のような場面では、早めに土地家屋調査士へ相談することをおすすめします。

  • 増築部分の床面積や構造をどう測ればよいか分からない:増築の規模が大きい、既存部分との接続が複雑である場合です
  • 登記記録上の建物と、増築後の実際の建物の状態がどこまで食い違っているか把握できていない:過去にも増築や改築を重ねていて、登記記録の内容が現況とずれている可能性がある場合です
  • 建築確認を取らずに増築した、または建築確認の内容と実際の増築内容が異なる:登記の申請にどのような影響が出るか、事前に確認しておく必要がある場合です
  • 建物の所有者がすでに亡くなっている:表題部所有者や登記名義人が死亡している場合、相続人その他の一般承継人が申請人になりますが、誰が申請できるかの整理から必要になることがあります

登記の世界では、建物の物理的な状況を扱う表題部と、所有権などを扱う権利部で担当する資格者が分かれています。その分担は土地家屋調査士と司法書士──同じ『登記』でも表題部と権利部で分かれるで整理しています。増築後、抵当権の設定など権利部にかかわる手続きが必要になる場合は、司法書士が担当することになります。

まとめ

増築で床面積・構造・種類が変わったときは、変更があった日から1か月以内に、建物の表題部の変更登記を申請する義務があります(不動産登記法51条1項)。申請には増築後の建物図面・各階平面図の作成が必要で、測量を伴う作業のため、依頼先は土地家屋調査士です。正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になり得ます(同法164条1項)。固定資産税の家屋調査は登記とは別の手続きで、税額の計算や軽減の適用は市区町村の資産税担当や税理士の領域になります。

増築後の登記をどう進めればよいか迷う場合や、相続の絡む建物の増築部分をどう扱えばよいか分からない場合は、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 増築の登記にかかる費用はいくらくらいですか?

増築による表題部変更登記そのものに登録免許税はかかりません。実際にかかるのは、土地家屋調査士に依頼する場合の測量・図面作成・申請代理の報酬が中心です。報酬は事務所や増築の規模によって異なるため、依頼先に見積りを取って確認してください。

Q. 増築の登記を忘れて放置するとどうなりますか?

正当な理由がないのに申請を怠ると、過料の対象になり得ます(不動産登記法164条1項)。それだけでなく、登記記録と実際の建物の状態が食い違ったままになるため、将来その建物を売却するとき、担保に入れるとき、相続登記をするときに、増築部分の登記を先に済ませるよう求められることがあり、手続きが滞る原因になります。気づいた時点で、早めに土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

Q. 自分でできそうか、どこに相談すればよいか迷います。

制度上は所有者本人が自分で申請することもできますが、増築後の建物図面・各階平面図の作成には測量が必要で、専門知識を要します。表題部変更登記の申請を人に頼むのであれば、依頼先は土地家屋調査士です。増築部分に抵当権を設定するなど権利部にかかわる手続きが必要になったり、所有者の相続が絡んだりする場合は、あわせてお近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】増築で床面積の算定方法・建物の扱いが変わる場合

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

壁芯計算と内法計算の違い

建物の床面積は、不動産登記規則115条により、原則として「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」(壁芯計算)で算定します。区分建物(マンションの専有部分など)については、同条の括弧書きにより「壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積」(内法計算)によります。増築によって非区分建物のまま床面積が増える通常のケースでは壁芯計算が用いられますが、増築部分を区分建物として登記することになる場合(次項)は、その部分の算定方法が変わる点に注意が必要です。

増築部分を「区分建物」として扱うかが問題になるケース

増築の内容によっては、増築部分が既存の建物と別個の「区分建物」として扱われるかどうかが問題になることがあります。区分所有法上、建物の部分が区分所有権の目的となるためには、構造上の独立性(他の部分と壁等で区分されていること)と利用上の独立性(独立して住居・店舗等の用途に供することができること)の両方を備えている必要があります(区分所有法1条)。例えば、二世帯住宅の増築で世帯間の行き来をなくし玄関を分離するような工事は、独立して住居の用途に供することができるという利用上の独立性を基礎づける事情の一つにはなり得ます。ただし、区分建物として扱われるには構造上の独立性(壁等による区分)も別途満たす必要があり、玄関分離という一つの事情だけで区分建物としての要件を満たすと判断できるわけではありません。逆に、増築部分に既存部分との行き来を設ける工事は、独立性を弱める方向に働きます。

増築部分は「主である建物」の一部か「附属建物」か

増築部分を、既存の建物と一体のものとして登記するか、既存建物とは別に「附属建物」として登記するかは、増築部分の構造・用途・既存建物との接続状況によって判断が分かれます。附属建物として登記する場合は、主である建物の登記記録の中に、附属建物として符号を付して床面積等を記載する形になります。どちらの扱いになるかは既存の登記記録の構成に応じて個別に判断されるため、依頼する土地家屋調査士との事前の打ち合わせが実務上重要です。

未登記のまま長期間放置された増築部分

過去に行われた増築が長期間登記されないまま放置されているケースでは、増築時期を特定する資料(建築確認書類、固定資産税の家屋調査の記録等)が散逸していることが多く、現況の測量だけでなく、いつの時点の増築かを示す資料の収集にも時間がかかることがあります。複数回の増改築を経ている建物では、現況の測量結果と既存の登記記録・図面との整合性を一つずつ確認する作業が必要になるため、通常の増築登記よりも調査に要する期間が長くなる傾向があります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月)。

上記の条文はいずれもe-Gov法令検索のAPI経由で原文(XML)を取得し、記事本文・深掘りセクションの記述と照合しました。すべて原典確認済です。

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